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イケてる? 私の勇躍編
第45話 ダンジョンお掃除伝説
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やって来ました、第二の企業案件……!!
「本日はよろしくお願い致します。弊社の掃除機、バキュームガルーダの力はですね、ダンジョンで発見された上位デーモン、ガルーダにヒントを得ましてその強力無比な吸引力と内部に設置された魔法的ストレージがですね……」
バナーソニックさんというかなり有名な企業の営業さんから、たっぷりレクチャーを受けた。
眼の前にある、ちっちゃい翼が生えたカワイイ掃除機。
どうやらすっごい技術がみっしりと詰まった凄いヤツらしい。
「ほう……」
私は唸った。
「あの、こんないい商品を私が、その、宣伝してもいいんです……?」
「もちろんです!!」
営業の人が鼻息を荒くした。
なんか勢いで手をぎゅっと握ってきそうになったので、兄がすごい速度で割り込んできて、営業の人を弾き飛ばした。
「ウグワーッ!? こ、これは失礼しました。ついつい弊社の商品への愛が暴走し。先日のダンジョンハザードで、きら星はづきさんがレビューしたダイキーヌのエアコン、その最上位モデルが史上空前の売れ行きを見せているのはご存知ですか?」
「えっ!? そうなんですか!?」
衝撃的な言葉に、私はめちゃくちゃ甲高い声で返事してしまった。
「それはその、今年の夏はめっちゃくちゃ暑くなるから、とかじゃなくて……」
「あなたです!! あなたがレビューしたから売れたんです!! あなたの力です!!」
ドーン!!
と私を指し示す営業の人!
「ギニャー! プレッシャー!」
凄いプレッシャーを掛けられてしまった。
バナーソニックさんの掃除機開発部の命運がかかっているらしい。
ひええ、そんなもの、一介の高校生に背負わせるんじゃなーい。
「ということでこんきらー。なんかすっごいプレッシャーを負っているきら星はづきです」
※『声震えてて草』『企業案件なんだから頑張れ』『掃除機今ポチリました』
「速い!! 韋駄天かお前ら」
私は驚愕した。
まだ掃除機の姿すら出てきてないだろ!!
「落ち着けお前ら。きょ、今日はですね、この掃除機、バキュームガルーダの威力を試して行きたいと思います」
※『また物騒な名前のが出てきたな』『はづきっちに関わりがある商品はみんなやる気に満ちた名前だからな』
そうかも知れない。
殺虫剤とかも、なんとかジュデッカだし。
「じゃ、この廃墟になったダンジョンをクリーンして、ついでにモンスターもクリーンにしてみましょう! レッツゴー」
私は掃除機を引っ張りながら、ダンジョン内へ潜っていった。
この掃除機、車輪がかなりスムーズに回る!
これはすごい。お散歩させてると楽しいかも……。
※『違う楽しみに目覚め始めてるぞ』『はづきっち、掃除掃除~!』
「そ、そうでした!!」
ハッとする私。
そこへ、早速ダンジョンにいるモンスターが襲いかかってきた。
『もがーっ!! フレッシュミート!! アイウォントゥトゥイート!!』
「なんか英語喋ってるモンスター!! は、はわゆー!!」
物凄く大きな丸々と太った体に、大きな口と汚れたエプロン、そして私くらいなら真っ二つにしちゃいそうな肉きり包丁を持ったモンスターだ。
※『ブッチャーだ!』もんじゃ『気をつけろはづきっち! ブッチャーはそれなりに強力なデーモンになりかけのモンスターで』
「吸引!」
『ウグワーッ!! アイドントライクイーテンッ』
掃除機のスイッチを入れて、シュッと吸い込んだ。
なんか叫びながら吸い込まれていくブッチャー。
途中で詰まったので、私は外からぺちぺち叩いた。
すると、掃除機がピカーっと輝き、中から『ウグワーッ!!』と断末魔が聞こえた。
「きょ、脅威の吸引力! おわかりいただけたでしょうか」
※『宣伝が過剰過ぎる』『本当にあの威力あったらリビングで寝転がってるお父さん吸われちゃうじゃん』『家庭崩壊(物理)』
「えっ!? 本来の目的じゃない使い方だった!? あ、これはどうも……失礼しました」
私はペコペコしながら愛想笑いした。
※『登録者六十万人の配信者なのにめちゃくちゃ腰が低い』『俺たちの姫は常に気遣いを忘れないからな……』『天使』
おいおい、褒めるなよお前らー。
私はこの頼りない双肩に、掃除機開発部の人たちの明日が掛かっているプレッシャーで胃が痛いだけなのだ……!
「じゃあ本来の使い方を……ポチッと……」
『ウグワーッ!?』
※『フロアイミテーターだ!!』『正体を現す前に吸われた!』
『ウグワーッ!?』
※『シャドウストーカーだ!!』『待ち構えてたら吸われた!』
『ウグワーッ!?』
※『スカルワイバーンだ!』『骨がバラバラになりながら吸われていく!』『バナーソニックの掃除機すげー!!』
ひえーっ、過剰広告!
「えー、皆さん、掃除機は本来こう言う使い方じゃないんですけど、同接数が無くても割りとこの掃除機は凄いのでよろしくお願いします……!」
※『きちんとフォローできて偉い』『はづきっちの成長が見える』『焦ってるのかわいい』
とりあえず、スイッチの切りどころが分からず、掛けっぱなしでダンジョンを歩き回ったお陰で……。
「モンスターをあらかた吸い込んだっぽいので、これから本格的な掃除をしようと思います」
※『今までの武器の中でもかなり強力だな』
「武器じゃありませえん! 掃除機です! 掃除機ですよろしくお願いします!」
※『お、おう』『アッハイ』おこのみ『はづきっちがそう言うならそうなんやろなあ……』
「ええと、この四角いヘッドは部屋の隅をこうやって掃除するのに向いてて……。吸引力も段階が分かれてて、今までが全てを吸い込むブラックホールっていう段階で」
※『制作者気合い入りすぎだろ』『最初から今までずっとマックスで吸引してきてたの草』『はづきっち加減を知らない』
うるさいぞ!?
とにかく、優しい吸引にして、あちこちの瓦礫を吸い込んだ。
「えっと、注意なのが、Aフォンと同じ魔法科学を使ってるので、掃除機より大きいものを吸い込めます。生き物は吸い込まないようになってますけど、大事なものは床に置かないでください。吸われたら取り出すのが凄く大変なので……」
モンスターは生き物じゃないカウント。
掃除機もそう判断してたみたい。
※『あっ、通販サイトが品切れになっている』『すげえ経済効果だな……』『割引の話も何もされてないのに』
「もう!? あ、バナーソニックの人からOK出ました! えっと、後からでもいいんでこのコード打ち込んでください! 税金分キャッシュバックされるそうなんで!」
※『うおおおおお』『バナーソニック太っ腹』『キャッシュバックありがてえ』
お、お前らー!
盛り上げてくれてありがとうな……!!
こうして、第二の企業案件は問題もなく終了した。
掃除機開発部の人たちは、結構いい臨時ボーナスをもらえることになったらしい。
翌日、案件から購入した掃除機には、私をキャラクター化したプリントがされることになった。
あちこちで私の顔がついた掃除機が活躍するのか……!
複雑な気分……!!
「本日はよろしくお願い致します。弊社の掃除機、バキュームガルーダの力はですね、ダンジョンで発見された上位デーモン、ガルーダにヒントを得ましてその強力無比な吸引力と内部に設置された魔法的ストレージがですね……」
バナーソニックさんというかなり有名な企業の営業さんから、たっぷりレクチャーを受けた。
眼の前にある、ちっちゃい翼が生えたカワイイ掃除機。
どうやらすっごい技術がみっしりと詰まった凄いヤツらしい。
「ほう……」
私は唸った。
「あの、こんないい商品を私が、その、宣伝してもいいんです……?」
「もちろんです!!」
営業の人が鼻息を荒くした。
なんか勢いで手をぎゅっと握ってきそうになったので、兄がすごい速度で割り込んできて、営業の人を弾き飛ばした。
「ウグワーッ!? こ、これは失礼しました。ついつい弊社の商品への愛が暴走し。先日のダンジョンハザードで、きら星はづきさんがレビューしたダイキーヌのエアコン、その最上位モデルが史上空前の売れ行きを見せているのはご存知ですか?」
「えっ!? そうなんですか!?」
衝撃的な言葉に、私はめちゃくちゃ甲高い声で返事してしまった。
「それはその、今年の夏はめっちゃくちゃ暑くなるから、とかじゃなくて……」
「あなたです!! あなたがレビューしたから売れたんです!! あなたの力です!!」
ドーン!!
と私を指し示す営業の人!
「ギニャー! プレッシャー!」
凄いプレッシャーを掛けられてしまった。
バナーソニックさんの掃除機開発部の命運がかかっているらしい。
ひええ、そんなもの、一介の高校生に背負わせるんじゃなーい。
「ということでこんきらー。なんかすっごいプレッシャーを負っているきら星はづきです」
※『声震えてて草』『企業案件なんだから頑張れ』『掃除機今ポチリました』
「速い!! 韋駄天かお前ら」
私は驚愕した。
まだ掃除機の姿すら出てきてないだろ!!
「落ち着けお前ら。きょ、今日はですね、この掃除機、バキュームガルーダの威力を試して行きたいと思います」
※『また物騒な名前のが出てきたな』『はづきっちに関わりがある商品はみんなやる気に満ちた名前だからな』
そうかも知れない。
殺虫剤とかも、なんとかジュデッカだし。
「じゃ、この廃墟になったダンジョンをクリーンして、ついでにモンスターもクリーンにしてみましょう! レッツゴー」
私は掃除機を引っ張りながら、ダンジョン内へ潜っていった。
この掃除機、車輪がかなりスムーズに回る!
これはすごい。お散歩させてると楽しいかも……。
※『違う楽しみに目覚め始めてるぞ』『はづきっち、掃除掃除~!』
「そ、そうでした!!」
ハッとする私。
そこへ、早速ダンジョンにいるモンスターが襲いかかってきた。
『もがーっ!! フレッシュミート!! アイウォントゥトゥイート!!』
「なんか英語喋ってるモンスター!! は、はわゆー!!」
物凄く大きな丸々と太った体に、大きな口と汚れたエプロン、そして私くらいなら真っ二つにしちゃいそうな肉きり包丁を持ったモンスターだ。
※『ブッチャーだ!』もんじゃ『気をつけろはづきっち! ブッチャーはそれなりに強力なデーモンになりかけのモンスターで』
「吸引!」
『ウグワーッ!! アイドントライクイーテンッ』
掃除機のスイッチを入れて、シュッと吸い込んだ。
なんか叫びながら吸い込まれていくブッチャー。
途中で詰まったので、私は外からぺちぺち叩いた。
すると、掃除機がピカーっと輝き、中から『ウグワーッ!!』と断末魔が聞こえた。
「きょ、脅威の吸引力! おわかりいただけたでしょうか」
※『宣伝が過剰過ぎる』『本当にあの威力あったらリビングで寝転がってるお父さん吸われちゃうじゃん』『家庭崩壊(物理)』
「えっ!? 本来の目的じゃない使い方だった!? あ、これはどうも……失礼しました」
私はペコペコしながら愛想笑いした。
※『登録者六十万人の配信者なのにめちゃくちゃ腰が低い』『俺たちの姫は常に気遣いを忘れないからな……』『天使』
おいおい、褒めるなよお前らー。
私はこの頼りない双肩に、掃除機開発部の人たちの明日が掛かっているプレッシャーで胃が痛いだけなのだ……!
「じゃあ本来の使い方を……ポチッと……」
『ウグワーッ!?』
※『フロアイミテーターだ!!』『正体を現す前に吸われた!』
『ウグワーッ!?』
※『シャドウストーカーだ!!』『待ち構えてたら吸われた!』
『ウグワーッ!?』
※『スカルワイバーンだ!』『骨がバラバラになりながら吸われていく!』『バナーソニックの掃除機すげー!!』
ひえーっ、過剰広告!
「えー、皆さん、掃除機は本来こう言う使い方じゃないんですけど、同接数が無くても割りとこの掃除機は凄いのでよろしくお願いします……!」
※『きちんとフォローできて偉い』『はづきっちの成長が見える』『焦ってるのかわいい』
とりあえず、スイッチの切りどころが分からず、掛けっぱなしでダンジョンを歩き回ったお陰で……。
「モンスターをあらかた吸い込んだっぽいので、これから本格的な掃除をしようと思います」
※『今までの武器の中でもかなり強力だな』
「武器じゃありませえん! 掃除機です! 掃除機ですよろしくお願いします!」
※『お、おう』『アッハイ』おこのみ『はづきっちがそう言うならそうなんやろなあ……』
「ええと、この四角いヘッドは部屋の隅をこうやって掃除するのに向いてて……。吸引力も段階が分かれてて、今までが全てを吸い込むブラックホールっていう段階で」
※『制作者気合い入りすぎだろ』『最初から今までずっとマックスで吸引してきてたの草』『はづきっち加減を知らない』
うるさいぞ!?
とにかく、優しい吸引にして、あちこちの瓦礫を吸い込んだ。
「えっと、注意なのが、Aフォンと同じ魔法科学を使ってるので、掃除機より大きいものを吸い込めます。生き物は吸い込まないようになってますけど、大事なものは床に置かないでください。吸われたら取り出すのが凄く大変なので……」
モンスターは生き物じゃないカウント。
掃除機もそう判断してたみたい。
※『あっ、通販サイトが品切れになっている』『すげえ経済効果だな……』『割引の話も何もされてないのに』
「もう!? あ、バナーソニックの人からOK出ました! えっと、後からでもいいんでこのコード打ち込んでください! 税金分キャッシュバックされるそうなんで!」
※『うおおおおお』『バナーソニック太っ腹』『キャッシュバックありがてえ』
お、お前らー!
盛り上げてくれてありがとうな……!!
こうして、第二の企業案件は問題もなく終了した。
掃除機開発部の人たちは、結構いい臨時ボーナスをもらえることになったらしい。
翌日、案件から購入した掃除機には、私をキャラクター化したプリントがされることになった。
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