TSして魔法少女になった俺は、ダンジョンをカワイく攻略配信する~ダンジョン配信は今、カワイイの時代へ~

あけちともあき

文字の大きさ
上 下
6 / 132
美少女爆誕編

第6話 今ある手札で乗り切れ

しおりを挟む
 まずはマシロをテーブルの上に乗せて、これをフロートで浮かせておく。
 テーブルを引っ張ったら、簡単に動くみたいだ。

『基本的にある程度の力で空間に固定されます。主様は魔法を使った本人だから、位置を変えたり動かしたりできるんですよー』

「なるほど、じゃあフロートは障害物や足場にできるね」

 俺は自分の魔法ができることを、フロータに確認していく。
 何せ、今持っている手札は、メタモルフォーゼとレビテーション、そしてフロートしか無い。
 これでダンジョンをくぐり抜けねばならないし、後輩であるマシロを無事に外に送り届ける必要があるのだ。

「ええと、フロートは接触しなくてもよし、と……」

『主様! ダンジョンの腕がこちらに向かってきます! ご注意を!』

「またか! じゃあこのあたり一帯に……浮かべ、テーブル、椅子! フロート!」

 結構いい加減な呪文詠唱だったが、ちゃんと効果を発揮した。
 俺の周囲にあるテーブルと椅子が浮かび上がり、ダンジョン奥から伸びてきた真っ黒な腕が、それにガンガンとぶち当たる。

 本当に抜けてこない。
 やがて腕はあきらめたらしく、引っ込んでいった。

「あれはなんなんだ……?」

『さあ……? 私も書庫の外に出たのは数十年ぶりだと思いますし。時間の経過とか、閉鎖空間では分かりませんからねえ』

 外に出たことがないなら、ダンジョンのことは分からないだろう。
 動きながら調べるしか無いか。

 それでは移動開始だ。
 俺はフロートで浮かんだテーブルが、どうやれば移動できるかを確認した。

 これ、空中でバタ足しても移動できるじゃないか!
 いいねいいね。

 テーブルに上がり、後ろに突き出した足をバタバタさせることでふわふわ移動することにした。
 速度はおおよそ、速歩きくらい。
 なかなかの勢いだ。

『主様がバタバタしててカワイイ~』

「俺は必死なんですけどね! さてさて、次にレビテーションはどこまでやれるかな?」

 移動しながら確認する。
 ダンジョンにつきもののモンスターが出てこないうちに、やれることをやっておかねば。

 自分に使ったら、ふわっと浮かび上がった。
 これも、バタ足とか平泳ぎ、クロールで移動できる。

 あんまりかっこよくないな!
 空を普通に飛ぶ魔法はないの?

『主様が魔女として成長なさらないと、解放されない魔法ですねえ』

「自分の中に記された魔法なのに融通が効かないなあ……」

『面目次第もございません! ですが主様は、魔女見習い以前の状態からいきなり修羅場スタートという苦境を体験なさってますから、きっと凄い魔女になると思いますよ! ……生きていれば』

「最後!」

 フロータは脳天気な口調だけど、まあまあリアリストだ。
 俺も死なないようにしないと。

 そういうことで、周囲にある資材とか書類をフロートで浮かせ、テーブルの前に並べて盾、あるいは武器とする。
 浮かせてしまえば重さは関係ないようだ。

『グギャギャギャッ!』『ギャギャギャアッ!!』

「ウグワーッ!!」

 前方で人間ではないものの声と、断末魔が聞こえた。
 その様子はすぐに見えてくる。

 緑色の肌をして、カッターナイフとかパソコンのディスプレイを手にした怪物が、倒れ伏した人に攻撃を加えている。
 血が広がっている。
 こりゃあ、まずい。

『気づかれました! 仕掛けてきますよ!』

「分かってる。うわあ、ゴブリン、初めて生で見た。全然雑魚モンスターじゃないじゃないか」

 ダンジョンが発生すると、どこからかモンスターが出現する。
 その中でもゴブリンは典型的なタイプだ。
 雑兵に当たるモンスターで、いつも配信者が戦っている様子を見ると弱く感じるのに、自分が相対するととてもそうは見えない。

『ギャアアアアッ!!』『グギャギャーッ!!』

 ゴブリンが襲いかかってきた。
 ディスプレイは骨董品レベルのブラウン管で、だからこそ重く、鈍器としての破壊力がある。
 これが襲ってくる前に、辺りにぶちまけられた書類の山をフロートで浮かせて盾とした。

『ギャオオオ!』

 ゴブリンがの振り回すディスプレイが書類にぶつかると、書類の山がちょっと後退した。

「書類が弾かれた! 安心できる盾として運用はできないか。だったら……!」

 フロートで書類を浮かせ直す。
 量としては、台車に満載して運ぶ量の書類だ。
 弊社、ペーパーレス化が遅れてて本当に良かった!
 ありがとう、無駄紙!!

 それをゴブリンの頭上まで浮かばせて……。

『グギャ……』

「フロート、解除!」

 大質量の攻撃となった書類の山が、ゴブリンの上に落下した。

『ウグワーッ!?』

 ゴブリンの一体が、書類に押しつぶされる。

『ギャッ!?』

 驚いてそちらを見た、もう一体のゴブリン。
 こちらには、俺がテーブルごと突撃だ!

 壁を蹴って一気にテーブルを押して進める。
 ゴブリンにテーブルの角がガツンと当たって、『ギャーッ』とか本当に痛そうな悲鳴が上がった。

「浮かべ、ディスプレイ! フロート!」

 この隙に、倒したゴブリンが手放したブラウン管ディスプレイを浮かび上がらせる。

「書類も浮かべ! フロート! あと、俺はレビテーション!」

 飛び上がった俺は、浮かんだ書類にディスプレイ、資材の数々をゴブリンの頭上に集める。
 頭を押さえていたゴブリンはようやく立ち上がったところだ。
 その頭上から……。

「解除!」

 俺の体重まで載せた質量攻撃で、押しつぶす!

『ウグワーッ!?』

 下敷きになったゴブリンが叫び、そして光の粒子みたいになって消えていった。

 二体のゴブリンを撃破したことになるようだ。
 いやあ……。
 どこが雑魚だ。

 手強い、手強い。

『お見事です、主様! ゴブリンたちがマナの欠片になりましたので、回収しますね』

「マナの欠片? あっ、キラキラの粒子がちょっと残っているのか」

『異界から呼び出されたモンスターの、魂魄です。私達魔導書を一時的に活性化する助けになるんですよー』

「あっ、倒れている人を……」

『あれはダメですねー。もう死んでいますよ』

「マ……マジか……!」

 ダンジョン、思っていた以上に厳しいぞ。
 こんなものをダンジョン配信だなんて言って、俺たちは娯楽で消費してるのか。
 いや、だが冒険配信者は同接が増えて、応援されるほど強くなると聞いたことがある。

 あえて娯楽化して応援することで、危険を排除しているのかもな……。

『主様、断章の気配です! このダンジョンに、魔導書の断章がありますよ!』

 フロータがピカピカと光った。
 ちょっと物思いにふける暇もない。

「分かった! 回収に行こう。ちょっとでも手札を増やさないといけないからな。今のままじゃゴブリン以上の相手が出たらまともに戦えない!」

 こうして俺はバタ足でテーブルを動かしつつ、先へ先へと向かうのだった。
 この先は、倉庫のはずだけど……。

 
しおりを挟む
感想 19

あなたにおすすめの小説

異世界で魔道具チートでのんびり商売生活

シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ダンジョン配信スタッフやります!〜ぼっちだった俺だけど、二次覚醒したのでカリスマ配信者を陰ながら支える黒子的な存在になろうと思います〜

KeyBow
ファンタジー
舞台は20xx年の日本。 突如として発生したダンジョンにより世界は混乱に陥る。ダンジョンに涌く魔物を倒して得られる素材や魔石、貴重な鉱物資源を回収する探索者が活躍するようになる。 主人公であるドボルは探索者になった。将来有望とされていたが、初めての探索で仲間のミスから勝てない相手と遭遇し囮にされる。なんとか他の者に助けられるも大怪我を負い、その後は強いられてぼっちでの探索を続けることになる。そんな彼がひょんなことからダンジョン配信のスタッフに採用される。 ドボルはカリスマ配信者を陰ながら支えようと決意するが、早々に陰謀に巻き込まれ危険な状況に陥る。絶体絶命のピンチの中で、ドボルは自分に眠る力を覚醒させる。この新たな力を得て、彼の生活は一変し、カリスマ配信者を陰から支え、奮闘する決意をする。果たして、ドボルはこの困難を乗り越え、配信を成功させることができるのか?

召喚されたら無能力だと追放されたが、俺の力はヘルプ機能とチュートリアルモードだった。世界の全てを事前に予習してイージーモードで活躍します

あけちともあき
ファンタジー
異世界召喚されたコトマエ・マナビ。 異世界パルメディアは、大魔法文明時代。 だが、その時代は崩壊寸前だった。 なのに人類同志は争いをやめず、異世界召喚した特殊能力を持つ人間同士を戦わせて覇を競っている。 マナビは魔力も闘気もゼロということで無能と断じられ、彼を召喚したハーフエルフ巫女のルミイとともに追放される。 追放先は、魔法文明人の娯楽にして公開処刑装置、滅びの塔。 ここで命運尽きるかと思われたが、マナビの能力、ヘルプ機能とチュートリアルシステムが発動する。 世界のすべてを事前に調べ、起こる出来事を予習する。 無理ゲーだって軽々くぐり抜け、デスゲームもヌルゲーに変わる。 化け物だって天変地異だって、事前の予習でサクサククリア。 そして自分を舐めてきた相手を、さんざん煽り倒す。 当座の目的は、ハーフエルフ巫女のルミイを実家に帰すこと。 ディストピアから、ポストアポカリプスへと崩壊していくこの世界で、マナビとルミイのどこか呑気な旅が続く。

社畜の俺の部屋にダンジョンの入り口が現れた!? ダンジョン配信で稼ぐのでブラック企業は辞めさせていただきます

さかいおさむ
ファンタジー
ダンジョンが出現し【冒険者】という職業が出来た日本。 冒険者は探索だけではなく、【配信者】としてダンジョンでの冒険を配信するようになる。 底辺サラリーマンのアキラもダンジョン配信者の大ファンだ。 そんなある日、彼の部屋にダンジョンの入り口が現れた。  部屋にダンジョンの入り口が出来るという奇跡のおかげで、アキラも配信者になる。 ダンジョン配信オタクの美人がプロデューサーになり、アキラのダンジョン配信は人気が出てくる。 『アキラちゃんねる』は配信収益で一攫千金を狙う!

ダンジョンで有名モデルを助けたら公式配信に映っていたようでバズってしまいました。

夜兎ましろ
ファンタジー
 高校を卒業したばかりの少年――夜見ユウは今まで鍛えてきた自分がダンジョンでも通用するのかを知るために、はじめてのダンジョンへと向かう。もし、上手くいけば冒険者にもなれるかもしれないと考えたからだ。  ダンジョンに足を踏み入れたユウはとある女性が魔物に襲われそうになっているところに遭遇し、魔法などを使って女性を助けたのだが、偶然にもその瞬間がダンジョンの公式配信に映ってしまっており、ユウはバズってしまうことになる。  バズってしまったならしょうがないと思い、ユウは配信活動をはじめることにするのだが、何故か助けた女性と共に配信を始めることになるのだった。

【書籍化】パーティー追放から始まる収納無双!~姪っ子パーティといく最強ハーレム成り上がり~

くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
【24年11月5日発売】 その攻撃、収納する――――ッ!  【収納】のギフトを賜り、冒険者として活躍していたアベルは、ある日、一方的にパーティから追放されてしまう。  理由は、マジックバッグを手に入れたから。  マジックバッグの性能は、全てにおいてアベルの【収納】のギフトを上回っていたのだ。  これは、3度にも及ぶパーティ追放で、すっかり自信を見失った男の再生譚である。

クラス召喚に巻き込まれてしまいました…… ~隣のクラスがクラス召喚されたけど俺は別のクラスなのでお呼びじゃないみたいです~

はなとすず
ファンタジー
俺は佐藤 響(さとう ひびき)だ。今年、高校一年になって高校生活を楽しんでいる。 俺が通う高校はクラスが4クラスある。俺はその中で2組だ。高校には仲のいい友達もいないしもしかしたらこのままボッチかもしれない……コミュニケーション能力ゼロだからな。 ある日の昼休み……高校で事は起こった。 俺はたまたま、隣のクラス…1組に行くと突然教室の床に白く光る模様が現れ、その場にいた1組の生徒とたまたま教室にいた俺は異世界に召喚されてしまった。 しかも、召喚した人のは1組だけで違うクラスの俺はお呼びじゃないらしい。だから俺は、一人で異世界を旅することにした。 ……この物語は一人旅を楽しむ俺の物語……のはずなんだけどなぁ……色々、トラブルに巻き込まれながら俺は異世界生活を謳歌します!

処理中です...