モフモフテイマーの、知識チート冒険記 高難易度依頼だって、知識とモフモフモンスターでクリアします!

あけちともあき

文字の大きさ
上 下
113 / 173
第三部:セントロー王国の冒険 4

第104話 こんにちは赤ちゃん その1

しおりを挟む
「大したものだ……! ワイルドエルフの皆が駆けつけてくれる前に片付けてしまった」

 後ろで俺達の活躍を見ていたビブリオス男爵が驚いている。

「現役の冒険者ですからね」

 俺が応じると、彼は不思議そうな顔をした。

「はて。開拓地で働いてくれている元冒険者は、もっと穏やかな感じだったが」

 すると、ガッチリした体格の農夫らしき男性がやって来て、男爵に告げた。

「ジーンさん、俺らは平均的冒険者だったんですよ。彼らはトップクラスの冒険者です。次元が違いますって」

 元冒険者というのはあの男性か。
 後で話を聞くと、隣の男爵に嫁入りした元執政官も、その冒険者の一人だったようだ。

「やるな。人間としてここまでできる奴は見たことがないな」

 ワイルドエルフのトーガが俺達の働きを認めている。
 いや、ちょっと警戒している?

「大丈夫。俺達に敵意はない。安心してくれていい」

「自分でそういうことを言う奴が信用できるか! いや、お前の性格は何となく分かる。ジーンと同類だろう。だが、あいつの性格に戦士としての極めて高い技量を併せ持つなんて危険極まりない」

「すっかり警戒されている」

 どうしたものだろう。

『わふわふ』

 ここでブランが前に出てきて、トーガと話を始めた。
 どうやらマーナガルムは精霊の言葉が使えるらしく、ワイルドエルフの警戒がすぐに解ける……あれ? もっと険しい表情になってないか?

「俺としたことが……。マルコシアスを凌駕するような化け物に気づかずに、開拓地へ案内してしまったのか……! なんということだ……」

 悩みだした。
 すると横から、トーガにどこか似ている女エルフが走ってきて、彼を引っ張って去っていった。

「また兄さんは変なことで悩んでる! どうもー! お邪魔しましたー!」

「行ってしまった」

『わふ』

「トーガは基本的に他人を疑うからな。彼はああして開拓地を守ってくれているのだ。悪く思わないでくれ」

「いえいえ。こちらこそ警戒させてしまって」

「ところでそこの白くて大きい犬は、見た目通りの動物ではなく高位のモンスターなのでは? ちょっと調べさせてもらっても……」

『わふ!?』

 目を輝かせたビブリオス男爵に、ブランが飛び上がった。
 警戒している……。
 アリサに対するときと一緒のパターンだな。

 だが、幸いというべきか、男爵がブランを調べることはできなかった。
 屋敷の方からアスタキシア執政官が走ってきたからだ。

「男爵、大変ですわーっ!! さっきのドタバタで、ナオがびっくりして産気づきましたわよ!!」

「なんだって!!」

 なんだって!?
 これは大変だ!
 ビブリオス男爵の子どもが誕生しようとしているらしい。

 俺達は慌てて屋敷へと向かった。

「ふむ。私はもともと生物学を研究する賢者だ。亜人の女性の出産を介助したことも多々あってね。私が取り上げよう」

「父親が産婆役をやるとか前代未聞ですわ……!!」

「男爵何気に多芸ですね」

「ああ。フィールドワークのためには一人何役もできなくてはな。よし、湯を沸かしてくれ! 我が子を取り上げるぞ」

 男爵は颯爽と、屋敷の中へ飛び込んでいった。
 なんであの人は冷静なんだろうな。
 いや、開拓記に書いてある事が本当ならば、自分の実力に自信というか、この介助を成功させる確信があるからかも知れない。

「オースさんとは別の意味で豪快な人っすねえ」

「変人ですわね……。いい意味でも悪い意味でも」

「センセエに似てたですねえ! あとあと、赤ちゃんうまれるですか? ぶじにうまれてほしいですー」

 クルミが祈るような仕草をした。
 ゼロ族である彼女が信仰するのは、風の精霊王ゼフィロスだ。

 この世界、ゼフィロシアの名の元ともなった偉大なる存在で、ラグナ新教やザクサーン教、エルド教が広まっていない地域では概ねゼフィロスが信仰されている。
 あるいは、大地母神として精霊女王レイアが信仰されるところもある。

 水に深く関係した地域では、水の精霊王オケアノス。
 火山地帯や火山島では火の精霊王アータル。

 どこか別の、遠く離れたところでは雷の精霊王とか森の精霊王とか虹の精霊女王とかもいるらしいが……。
 これは俺が呼んできた文献では、少ししか記述がなかった。
 詳しい人にいつか話を聞いてみたいな。

「ねえねえセンセエ!」

 物思いにふけっていたら、クルミが袖を引っ張ってきた。

「なんだい?」

「センセエは、クルミがセンセエの赤ちゃんをうむとき、とりあげてくれるです?」

「えっ」

 いきなり凄いことを言われて俺はびっくりした。
 頭が真っ白になる。

「俺は冷静でいる自信はないなあ……。多分生まれる近くで必死で祈ってるんじゃないかな……」

「むふー! センセエはそしたら、クルミをとっても心配してくれるですね? むふふ」

「いやあ、男親って普通そういうもんでしょ。男爵がおかしい」

「オースさん、完全にクルミとくっつく前提で話が進んでるっすよ」

「ハッ」

 カイルに突っ込まれて我に返った。
 なんてことだ。
 ごく当たり前みたいにクルミと一緒になることが前提になっていたではないか。

「そもそもオースさん、断る理由が何かありますの?」

 アリサの突っ込みが、俺の痛いところを突く。
 無い。
 全く無いのだ。

「だけど、子どもができてしまったらそこで冒険は終了じゃないか……?」

「そうでした!」

 クルミもハッとする。

「えっと、クルミがいま十歳だから、うーんと、あと二年くらいは旅をしていいですねー」

「タイムリミットが設けられた!!」

 これはなかなか短いタイムリミットだぞ。
 いや、ゼロ族の寿命を考えると妥当だとも思うが。

 俺が人生の計画を、順調にクルミによって定められていっていたその時。

 屋敷の中から、元気な赤ちゃんの泣き声が聞こえてきたのである。


しおりを挟む
感想 33

あなたにおすすめの小説

スキルで最強神を召喚して、無双してしまうんだが〜パーティーを追放された勇者は、召喚した神達と共に無双する。神達が強すぎて困ってます〜

東雲ハヤブサ
ファンタジー
勇者に選ばれたライ・サーベルズは、他にも選ばれた五人の勇者とパーティーを組んでいた。 ところが、勇者達の実略は凄まじく、ライでは到底敵う相手ではなかった。 「おい雑魚、これを持っていけ」 ライがそう言われるのは日常茶飯事であり、荷物持ちや雑用などをさせられる始末だ。 ある日、洞窟に六人でいると、ライがきっかけで他の勇者の怒りを買ってしまう。  怒りが頂点に達した他の勇者は、胸ぐらを掴まれた後壁に投げつけた。 いつものことだと、流して終わりにしようと思っていた。  だがなんと、邪魔なライを始末してしまおうと話が進んでしまい、次々に攻撃を仕掛けられることとなった。 ハーシュはライを守ろうとするが、他の勇者に気絶させられてしまう。 勇者達は、ただ痛ぶるように攻撃を加えていき、瀕死の状態で洞窟に置いていってしまった。 自分の弱さを呪い、本当に死を覚悟した瞬間、視界に突如文字が現れてスキル《神族召喚》と書かれていた。 今頃そんなスキル手を入れてどうするんだと、心の中でつぶやくライ。 だが、死ぬ記念に使ってやろうじゃないかと考え、スキルを発動した。 その時だった。 目の前が眩く光り出し、気付けば一人の女が立っていた。 その女は、瀕死状態のライを最も簡単に回復させ、ライの命を救って。 ライはそのあと、その女が神達を統一する三大神の一人であることを知った。 そして、このスキルを発動すれば神を自由に召喚出来るらしく、他の三大神も召喚するがうまく進むわけもなく......。 これは、雑魚と呼ばれ続けた勇者が、強き勇者へとなる物語である。 ※小説家になろうにて掲載中

【書籍化決定】俗世から離れてのんびり暮らしていたおっさんなのに、俺が書の守護者って何かの間違いじゃないですか?

歩く魚
ファンタジー
幼い頃に迫害され、一人孤独に山で暮らすようになったジオ・プライム。 それから数十年が経ち、気づけば38歳。 のんびりとした生活はこの上ない幸せで満たされていた。 しかしーー 「も、もう一度聞いて良いですか? ジオ・プライムさん、あなたはこの死の山に二十五年間も住んでいるんですか?」 突然の来訪者によると、この山は人間が住める山ではなく、彼は世間では「書の守護者」と呼ばれ都市伝説のような存在になっていた。 これは、自分のことを弱いと勘違いしているダジャレ好きのおっさんが、人々を導き、温かさを思い出す物語。 ※書籍化のため更新をストップします。

さんざん馬鹿にされてきた最弱精霊使いですが、剣一本で魔物を倒し続けたらパートナーが最強の『大精霊』に進化したので逆襲を始めます。

ヒツキノドカ
ファンタジー
 誰もがパートナーの精霊を持つウィスティリア王国。  そこでは精霊によって人生が決まり、また身分の高いものほど強い精霊を宿すといわれている。  しかし第二王子シグは最弱の精霊を宿して生まれたために王家を追放されてしまう。  身分を剥奪されたシグは冒険者になり、剣一本で魔物を倒して生計を立てるようになる。しかしそこでも精霊の弱さから見下された。ひどい時は他の冒険者に襲われこともあった。  そんな生活がしばらく続いたある日――今までの苦労が報われ精霊が進化。  姿は美しい白髪の少女に。  伝説の大精霊となり、『天候にまつわる全属性使用可』という規格外の能力を得たクゥは、「今まで育ててくれた恩返しがしたい!」と懐きまくってくる。  最強の相棒を手に入れたシグは、今まで自分を見下してきた人間たちを見返すことを決意するのだった。 ーーーーーー ーーー 閲覧、お気に入り登録、感想等いつもありがとうございます。とても励みになります! ※2020.6.8お陰様でHOTランキングに載ることができました。ご愛読感謝!

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

無能な勇者はいらないと辺境へ追放されたのでチートアイテム【ミストルティン】を使って辺境をゆるりと開拓しようと思います

長尾 隆生
ファンタジー
仕事帰りに怪しげな占い師に『この先不幸に見舞われるが、これを持っていれば幸せになれる』と、小枝を500円で押し売りされた直後、異世界へ召喚されてしまうリュウジ。 しかし勇者として召喚されたのに、彼にはチート能力も何もないことが鑑定によって判明する。 途端に手のひらを返され『無能勇者』というレッテルを貼られずさんな扱いを受けた上に、一方的にリュウジは凶悪な魔物が住む地へ追放されてしまう。 しかしリュウジは知る。あの胡散臭い占い師に押し売りされた小枝が【ミストルティン】という様々なアイテムを吸収し、その力を自由自在に振るうことが可能で、更に経験を積めばレベルアップしてさらなる強力な能力を手に入れることが出来るチートアイテムだったことに。 「ミストルティン。アブソープション!」 『了解しましたマスター。レベルアップして新しいスキルを覚えました』 「やった! これでまた便利になるな」   これはワンコインで押し売りされた小枝を手に異世界へ突然召喚され無能とレッテルを貼られた男が幸せを掴む物語。 ~ワンコインで買った万能アイテムで幸せな人生を目指します~

ボッチになった僕がうっかり寄り道してダンジョンに入った結果

安佐ゆう
ファンタジー
第一の人生で心残りがあった者は、異世界に転生して未練を解消する。 そこは「第二の人生」と呼ばれる世界。 煩わしい人間関係から遠ざかり、のんびり過ごしたいと願う少年コイル。 学校を卒業したのち、とりあえず幼馴染たちとパーティーを組んで冒険者になる。だが、コイルのもつギフトが原因で、幼馴染たちのパーティーから追い出されてしまう。 ボッチになったコイルだったが、これ幸いと本来の目的「のんびり自給自足」を果たすため、町を出るのだった。 ロバのポックルとのんびり二人旅。ゴールと決めた森の傍まで来て、何気なくフラっとダンジョンに立ち寄った。そこでコイルを待つ運命は…… 基本的には、ほのぼのです。 設定を間違えなければ、毎日12時、18時、22時に更新の予定です。

俺を凡の生産職だからと追放したS級パーティ、魔王が滅んで需要激減したけど大丈夫そ?〜誰でもダンジョン時代にクラフトスキルがバカ売れしてます~

風見 源一郎
ファンタジー
勇者が魔王を倒したことにより、強力な魔物が消滅。ダンジョン踏破の難易度が下がり、強力な武具さえあれば、誰でも魔石集めをしながら最奥のアイテムを取りに行けるようになった。かつてのS級パーティたちも護衛としての需要はあるもの、単価が高すぎて雇ってもらえず、値下げ合戦をせざるを得ない。そんな中、特殊能力や強い魔力を帯びた武具を作り出せる主人公のクラフトスキルは、誰からも求められるようになった。その後勇者がどうなったのかって? さぁ…

異世界で魔法が使えるなんて幻想だった!〜街を追われたので馬車を改造して車中泊します!〜え、魔力持ってるじゃんて?違います、電力です!

あるちゃいる
ファンタジー
 山菜を採りに山へ入ると運悪く猪に遭遇し、慌てて逃げると崖から落ちて意識を失った。  気が付いたら山だった場所は平坦な森で、落ちたはずの崖も無かった。  不思議に思ったが、理由はすぐに判明した。  どうやら農作業中の外国人に助けられたようだ。  その外国人は背中に背負子と鍬を背負っていたからきっと近所の農家の人なのだろう。意外と流暢な日本語を話す。が、言葉の意味はあまり理解してないらしく、『県道は何処か?』と聞いても首を傾げていた。  『道は何処にありますか?』と言ったら、漸く理解したのか案内してくれるというので着いていく。  が、行けども行けどもどんどん森は深くなり、不審に思い始めた頃に少し開けた場所に出た。  そこは農具でも置いてる場所なのかボロ小屋が数軒建っていて、外国人さんが大声で叫ぶと、人が十数人ゾロゾロと小屋から出てきて、俺の周りを囲む。  そして何故か縄で手足を縛られて大八車に転がされ……。   ⚠️超絶不定期更新⚠️

処理中です...