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ライトダーク王国編
第47話 帰ってきたジュウザの話
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スターズと話し込んでいたら、ジュウザが戻ってきた。
俺たちが移動したと言うのに、当たり前みたいに見つけるところが凄い。
「お主らは目立つ。痕跡を追うなど造作もない。さて、城を一回り見てきたが、兵士たちの様子は基本的に変わらぬな。彼らに命を下す者たちが、かの占星術師によって変えられたようだ」
「やっぱり……」
スターズが表情を曇らせた。
「私は王都の外から星見を行うべく、国内を周遊していたのです。そのお陰で、私のままでいられています。すみません、最後のお一人、名前をお聞かせ願えれば」
「ジュウザだ。拙者が見てきた所、兵士たちは変わらぬまま、命令だから仕方なくよそよそしくしているようだ。上の者たちは、皆、空や星の話ばかりをしている」
「ああ……それは間違いなく師の仕業でしょう」
地上で起こることに目を向けられないように、意識を操られているというわけか。
なるほど、占星術師は力を得て、自分の悲願を達成したというわけだな。
「難しい問題になってきてます? ボク、こういうのよく分かんないです」
「俺も詳しくないなー」
「わしもさっぱりなのじゃ! メテオを降らせて城をぶっ壊すのなら容易いんじゃがな!」
ディアボラは普通にやってしまいそうだ。
さて困った。
俺たちは野蛮に相手を殴ったりするのは得意なのだが、国の内側で蠢くようなのをどうにかする方法を、殴る以外に知らないのだ。
穏便に事は済みそうにない。
「どうしたもんかな」
「ふむ……。兵士たちは変わらないのですよね?」
スターズの確認に、ジュウザが頷いた。
「兵士たちは皆さんとも仲良く話をしていたと聞きます。彼らに接触して、中に入れてもらうのはどうでしょう」
「それはいいな。そうしよう!」
スターズの提案に乗ることになったのである。
仕事明けで、城から出てくる兵士を捕まえる。
彼は普段着になっており、解放感から大きく伸びをしていた。
「済まんな、ちょっといいか」
「あっ、勇者パーティー! さっきは悪かったなあ。なんか、あんたたちと深く関わるなという命令があってさ」
命令を口外するなという命令は出てないようだ。
ぺらぺら喋る。
そもそも、仕事明けで口が軽くなっているのかも知れない。
近くの酒場で彼と話し込むことにする。
「なんだか今日は酒場に行ってばかりいますね! あ、ミルクください!」
「わしもミルクじゃ!」
「拙者は茶を。マイティ、酒はもうやめておけ。この男にも茶を!」
「仕方ないなあ」
俺たちの様子を、兵士が楽しげに見つめている。
そして視線を巡らせたら、スターズがいたのでびっくりして飛び上がった。
「うおわっ! スターズ様!」
「ああ、気にせずに。私は今、エクセレントマイティの皆さんと協力関係なのです」
「は、はあ」
ミルクとお茶が出てきた。
兵士だけは酒を飲む。
仕事明けだもんな。
「それでどんな感じなんだ?」
「城の中だよな? あんたたちが仕事に出かけて行った直後に、占星術師様が会議を開いてな。終わったらみんな、ああやって星の話ばかりするようになっていた。空がすべてを伝えてくれるから、知らせがあるまでは動くべからずってさ。地上のことは全て些事だから、基本的にはスルーしておくって言ってた。マジかよって思ったな」
「思った以上にとんでもないことになってるな」
「すみません……。師は星見と歴史以外に興味がない人物ですから」
知識や技術は超一流だが、それに特化していて他はてんでダメな人らしい。
一芸特化の占星術師が国を乗っ取ってしまったか。
だが、そのために凄い勢いでぼろが出てるのだな。
「まだ、各部門の担当者がルーチンで仕事をしてますから、問題は表に出ないでしょう。ただ、これが一ヶ月もするとどんどん状況は悪くなります……」
「で、あろうな。マイティ、事を成すなら急ぐべきだぞ」
「おう。正面突破すりゃ楽だが」
ここでスターズが慌てた。
「いやいや、それで戦争みたいな状況になってしまったら、諸外国がライトダークに介入する隙を与えてしまいます! 我が国の星見の技術を狙う外国は多いのです。だから、隙を見せるわけにはいかない……。表から見える争いは起こしてはいけないのです」
「難しいな」
俺は腕組みして唸った。
エクセレンとディアボラは、暇になったからか揚げ芋などを注文し、二人でパクパク食べては味の講評などをやっている。
仲がいい。
「仲良しか……。おっ、なあ兵士の人よ。あんたら、国が乱れたら困るだろ」
「ああ、困る! 仕事が増えるのはいやだし、危険な状況になるのはいやだし、外国がやって来るってのは最悪だ」
「うむ。だけどこのままじゃ、国が乱れて外国がやって来るのは確定かもしれない。スターズが話した通りだな。だからほら、お前さんのよしみで俺たちを城の中に入れてくれないか」
「あんたたちをか!? だ、だが勇者パーティーは城に入れるなと言われている……」
「うむ。勇者パーティーならな。だがほれ。今日の飲みは俺が持つ! お前は存分に飲み食いしろ。俺とお前は友達だ! だから、友達にちょっと城の見学をさせてくれと言われて、中に招くというのは禁止されてないだろ」
「それは……確かに!」
「そうなのか!?」
ジュウザが目を剥いた。
「普通、部外者を城の中には入れぬものであろうが」
これにスターズが答える。
「それはですね。ライトダーク王国は星見の国で、求めるものに星見の歴史と知識をある程度までは開示するという伝統があるのです。これによって、星見の大切さと新たな星見の可能性を受け継いでいくという、社会的な意味がですね。ああ、そうか! そういう見学者として、そして兵士の友人として皆さんをお招きすると、師としても受け入れざるを得なくなる! あの方はそういうところ生真面目でしたから!」
作戦は決まった。
堂々と正面から、兵士の友人兼、星見に興味のある見学者として入城する。
エクセレントマイティの作戦始動なのだ。
だからエクセレン、棍棒を振り回すのはその後だからな。
俺たちが移動したと言うのに、当たり前みたいに見つけるところが凄い。
「お主らは目立つ。痕跡を追うなど造作もない。さて、城を一回り見てきたが、兵士たちの様子は基本的に変わらぬな。彼らに命を下す者たちが、かの占星術師によって変えられたようだ」
「やっぱり……」
スターズが表情を曇らせた。
「私は王都の外から星見を行うべく、国内を周遊していたのです。そのお陰で、私のままでいられています。すみません、最後のお一人、名前をお聞かせ願えれば」
「ジュウザだ。拙者が見てきた所、兵士たちは変わらぬまま、命令だから仕方なくよそよそしくしているようだ。上の者たちは、皆、空や星の話ばかりをしている」
「ああ……それは間違いなく師の仕業でしょう」
地上で起こることに目を向けられないように、意識を操られているというわけか。
なるほど、占星術師は力を得て、自分の悲願を達成したというわけだな。
「難しい問題になってきてます? ボク、こういうのよく分かんないです」
「俺も詳しくないなー」
「わしもさっぱりなのじゃ! メテオを降らせて城をぶっ壊すのなら容易いんじゃがな!」
ディアボラは普通にやってしまいそうだ。
さて困った。
俺たちは野蛮に相手を殴ったりするのは得意なのだが、国の内側で蠢くようなのをどうにかする方法を、殴る以外に知らないのだ。
穏便に事は済みそうにない。
「どうしたもんかな」
「ふむ……。兵士たちは変わらないのですよね?」
スターズの確認に、ジュウザが頷いた。
「兵士たちは皆さんとも仲良く話をしていたと聞きます。彼らに接触して、中に入れてもらうのはどうでしょう」
「それはいいな。そうしよう!」
スターズの提案に乗ることになったのである。
仕事明けで、城から出てくる兵士を捕まえる。
彼は普段着になっており、解放感から大きく伸びをしていた。
「済まんな、ちょっといいか」
「あっ、勇者パーティー! さっきは悪かったなあ。なんか、あんたたちと深く関わるなという命令があってさ」
命令を口外するなという命令は出てないようだ。
ぺらぺら喋る。
そもそも、仕事明けで口が軽くなっているのかも知れない。
近くの酒場で彼と話し込むことにする。
「なんだか今日は酒場に行ってばかりいますね! あ、ミルクください!」
「わしもミルクじゃ!」
「拙者は茶を。マイティ、酒はもうやめておけ。この男にも茶を!」
「仕方ないなあ」
俺たちの様子を、兵士が楽しげに見つめている。
そして視線を巡らせたら、スターズがいたのでびっくりして飛び上がった。
「うおわっ! スターズ様!」
「ああ、気にせずに。私は今、エクセレントマイティの皆さんと協力関係なのです」
「は、はあ」
ミルクとお茶が出てきた。
兵士だけは酒を飲む。
仕事明けだもんな。
「それでどんな感じなんだ?」
「城の中だよな? あんたたちが仕事に出かけて行った直後に、占星術師様が会議を開いてな。終わったらみんな、ああやって星の話ばかりするようになっていた。空がすべてを伝えてくれるから、知らせがあるまでは動くべからずってさ。地上のことは全て些事だから、基本的にはスルーしておくって言ってた。マジかよって思ったな」
「思った以上にとんでもないことになってるな」
「すみません……。師は星見と歴史以外に興味がない人物ですから」
知識や技術は超一流だが、それに特化していて他はてんでダメな人らしい。
一芸特化の占星術師が国を乗っ取ってしまったか。
だが、そのために凄い勢いでぼろが出てるのだな。
「まだ、各部門の担当者がルーチンで仕事をしてますから、問題は表に出ないでしょう。ただ、これが一ヶ月もするとどんどん状況は悪くなります……」
「で、あろうな。マイティ、事を成すなら急ぐべきだぞ」
「おう。正面突破すりゃ楽だが」
ここでスターズが慌てた。
「いやいや、それで戦争みたいな状況になってしまったら、諸外国がライトダークに介入する隙を与えてしまいます! 我が国の星見の技術を狙う外国は多いのです。だから、隙を見せるわけにはいかない……。表から見える争いは起こしてはいけないのです」
「難しいな」
俺は腕組みして唸った。
エクセレンとディアボラは、暇になったからか揚げ芋などを注文し、二人でパクパク食べては味の講評などをやっている。
仲がいい。
「仲良しか……。おっ、なあ兵士の人よ。あんたら、国が乱れたら困るだろ」
「ああ、困る! 仕事が増えるのはいやだし、危険な状況になるのはいやだし、外国がやって来るってのは最悪だ」
「うむ。だけどこのままじゃ、国が乱れて外国がやって来るのは確定かもしれない。スターズが話した通りだな。だからほら、お前さんのよしみで俺たちを城の中に入れてくれないか」
「あんたたちをか!? だ、だが勇者パーティーは城に入れるなと言われている……」
「うむ。勇者パーティーならな。だがほれ。今日の飲みは俺が持つ! お前は存分に飲み食いしろ。俺とお前は友達だ! だから、友達にちょっと城の見学をさせてくれと言われて、中に招くというのは禁止されてないだろ」
「それは……確かに!」
「そうなのか!?」
ジュウザが目を剥いた。
「普通、部外者を城の中には入れぬものであろうが」
これにスターズが答える。
「それはですね。ライトダーク王国は星見の国で、求めるものに星見の歴史と知識をある程度までは開示するという伝統があるのです。これによって、星見の大切さと新たな星見の可能性を受け継いでいくという、社会的な意味がですね。ああ、そうか! そういう見学者として、そして兵士の友人として皆さんをお招きすると、師としても受け入れざるを得なくなる! あの方はそういうところ生真面目でしたから!」
作戦は決まった。
堂々と正面から、兵士の友人兼、星見に興味のある見学者として入城する。
エクセレントマイティの作戦始動なのだ。
だからエクセレン、棍棒を振り回すのはその後だからな。
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