91 / 255
東征の魔剣士編
熟練度カンストの王様
しおりを挟む
忙しい日々であった。
俺は、火と水と風、三つの精霊界を行き来して、妖精たちとの交渉を繰り返すことになった。
何故、俺なのか。
俺が下手に、あの火竜ワイルドファイアに認められてしまったのが問題だった。
あいつ、どうやら精霊界では大変有名な怪物らしく、強さランキング的なもので言えば論議は多々あれど、必ず頂点に君臨するという話だった。
そんな訳で、火竜のお墨付きを貰った俺は、自身が妖精たちにとって印籠のような役割を果たすことになっている。
「ユーマ、次はエルフの森。荒ぶる風氏との会談となろう。時刻も押し迫ってきているから、亜竜を準備しておいたぞ」
隣で羊皮紙に書かれたスケジュール表を管理しているのは、なんと俺の秘書みたいな地位になっている元辺境伯……ローザリンデである。
ほっそりとした体を、それなりに上質な黒のドレスに包んでいる。材質は革を混ぜているそうで、見た目よりも頑丈らしい。
ドワーフどもの自信作である。
で、俺はと言うと。
「ローザは気が回るな……。俺、この鎧嵩張って動きにくいんだけど」
「貴様が我々の代表である以上、いつもの身軽な格好でいられては権威と言うものが追いつかんのだ。慣れよ」
大変厳しい肩アーマー。ブレストアーマー、腰アーマーに具足と篭手。
そして超イカス角がついた兜。
そこから靡くマントまで、全てが濃淡のあるグレーでまとめられた俺の衣装である。
素材はケラミス。
細かな細工はドワーフが担当している。
「なんじゃこのケラミスとか言うもんは」
「戦場で拾ったもんと精度が違うのう」
「気合の入り方っちゅうかのう」
「わしらも負けちゃおれんわい」
「こりゃ愛が入っとるからなあ」
「何を言っているのか貴様ら!」
「うひゃーっ」
勝手なことを抜かしたドワーフどもが、ローザに一喝されて逃げて行った。
「あれがドワーフという者たちか。どうも、腕はいいのだが性格に難有りだな」
「俺は割りと気が合うんだが」
「ユーマも変わり者だものな」
フッと笑われた。
な、なんか悔しい。
「ユーマ、行ってらっしゃい! これお弁当」
「おおー、済まんなリュカ! これで元気百倍だぞ」
「うふふ、行ってらっしゃい」
亜竜に跨った俺に、駆けつけたリュカが包みを渡した後、ジャンプして抱きついてくる。
何というか、出勤する新婚夫婦のやりとりのようで胸が熱くなる。
「あ、アタシも用意してきました! これデザートです! それから行ってらっしゃいのハグ!」
「なにっ、サマラ、お前まで来るとなると流石に重量がぐわーっ!!」
俺は押しつぶされた。
「随分と仲が進展したようだな。まさか、共に寝てはおるまいな?」
「直接的な表現やめてください!」
空の上である。
さて、ローザと他愛も無い話を……と思ったところ、この核心に切り込んでくる一撃必殺ぶり。
ローザ、君はもっと会話の機微とかを学んだほうがいい……。
「まだお互い清い体だ」
「そうか。なら良し。だが……貴様がいれば風の妖精たちの信を得られる以上、別にリュカを娶ってしまっても良いのだぞ? それは、他の巫女たちにも言えよう。火の巫女も貴様のことをあからさまに好いているではないか」
「いや、それはそうなんだが。最初にリュカと約束をしたんだ。東に向かう旅に付き合うと」
「それが、東に行く事も無くこうして各国をうろうろしている、と」
「その通りなんだけどな。ローザ、物言いが大変厳しい」
「むっ……すまない。ローザリンデとしての人生よりも、辺境伯として生きた時間が長いものでな。なかなか、こう、この物言いが抜けぬ」
背格好は、小柄で儚げな黒髪の少女。
声色だって澄んだハイトーンボイスなのだが、とにかく中身が鬼の将校みたいなきっつい性格なのである。
大変残念な美少女と言えよう。
実年齢四十三歳だし。
「ローザは、最初からそういう喋り?」
「いや、きちんと年齢相応の娘であったと記憶している。だが、課せられた役割が、私に娘であり続ける事を許さなかったのだ」
「ロールプレイしてたらその役割が染み付いてしまった訳だな」
「? よく分からない単語があるが、役割に馴染みすぎてしまった、という言い方は正しいな。既に私は貴様の補助をする立場であるし、もっと柔らかな話し方をせねばとは思うのだが」
うーむ、と考え込むローザ。
そのまま空を見上げて、うーむむむ、と唸っていたら、ポロッと亜竜から落ちそうになった。
彼女、運動神経はさほどよろしくない。
辺境伯時代も、戦場では戦っていなかったしな。
俺は咄嗟に手を差し伸べて支えた。
「お、おお、すまない。ありがとう」
支えられて初めて、自分の状況に気付いたらしい。
彼女はちょっと恥ずかしそうに礼を言うと、ふむ、と唸った。
「これは、貴様にしがみついていた方が良いようだな。前を向け」
「ほうほう」
言われるままに前を向くと、背中にむぎゅっとしがみつく気配がある。
だが、悲しいかな。
重厚なるケラミスの鎧と、豪奢な灰色のマントが邪魔をして、彼女の感触は全く分からない。
やはり鎧は良くない……!
鎧に対する俺の憤懣を生み出しつつ、空の旅はすぐに終了した。
飛行型亜竜の速度は速い。
恐らく、高速道路で自動車が普通に走るくらいの勢いで空を飛ぶ。
これを、障害物も何も無い空で行なうのだから、旅程の消化速度は他の移動手段の追随を許さない。
マーメイドたちに支えられ、俺とリュカが辿った海路が一昼夜ほどだったが、その距離を一時間ほどで駆け抜けた。
「空を飛ぶというのは、凄まじいものだな……! む、見えてきたぞ。あれがエルフの森か」
ローザが俺の肩越しに手を伸ばして指し示す。
そこには、ディアマンテの一角を覆いつくす、鬱蒼たる森があった。
この間は地上から行ったから、そのサイズ感はよく分からなかった。
だがこうして上空から見ると、とんでもなく広い森なのである。
ちょっと飛んで行くと、ヘリポートのような場所があった。
なんだあれ。
ぽっかり空いた空間にエルフが立って、両手に旗を持ってこちらに振っている。
「よし、あそこに着地な」
俺の指示に従う亜竜。
高度を下げ、ゆっくりと着地点へ降りていく。
「待っていたよ、戦士ユーマ。いや、最早、我らの王ユーマと呼んだほうが良いかな」
出迎えは、エルフの長老じきじきである。
しかし、俺も出世したものである。
自分で組織を作ってしまったようなものだから、俺がトップなのは仕方ないのだが。
「そちらが土の巫女かね? 君がこの戦いを始める切欠になったという。さあ、付いて来たまえ」
長老に案内されて、森へ一歩踏み出す。
ローザは改めて言われて、むむむ、と唸った。
「そ、そうか。この大仰な事態は、貴様が私を助ける為だったな……」
「まあ成り行き成り行き」
そんな会話をしつつ、長老の後に続いた。
森は、エルフたちにとって、行きたい場所へ転移するショートカットのような力を持っている。
長老が一歩進むと、既にそこはエルフの里だった。
「こ……これはどういう原理なのだ? なに、魔法? そうか、魔法か……」
一々気にする娘さんである。
生真面目なのだなローザは。
さて、エルフたちとは特に面白い話をしたわけでもない。
基本、秘書であるローザが長老とやり取りをし、今後のうちの軍勢とエルフの関係を決定した。
エルフはうちの軍勢に戦力を提供する。
その代わりに、うちは他勢力との調停を受け持つ。
ラグナ教の総本山であるディアマンテでは、いかなエルフといえど、一種族だけでやっていけるものではない。
常に他の種族が、ディアマンテや他の国々に手出しをすることで、定期的に人間側の戦力を疲弊させる。
これによって、数的には劣勢であるうちの軍勢と、そこに所属する妖精たちを守るわけだ。
「俺は見ての通り、政治とか出来ないから、代わりにやってくれる組織が欲しいな。元老院みたいな」
「なるほど、確かに道理だ。我ら四属性に所属する妖精たちの意見を纏めるには、人間一人では荷が重かろう」
「うむ。ただし、議長はユーマの代弁者としてこの私にやらせてもらおう。各陣営から代表者を選出し、彼らによる合議でこの集団を運営する」
「議場は森を提供しよう。各地の森に我が森へと通じるパスを通す。こうすれば、他の種族が存在する地域からこちらへ、すぐに抜けてくる事が出来るはずだ。だが、通行許可は絞らせてもらう」
「それで構わない」
「ほうほう」
俺はたまにちょこっと口出しして、無理なものを無理と言う仕事。
で、基本はローザと長老が物事を決めていく。
一応、決定する際に、ローザはちょっと俺のほうを見て判断を求める。
よく分からないので一任する時は、一度頷く。
完全に同意で一任する時は、二度頷く。
よく分からないがなんか嫌な時は、首を横に振る。すると、ローザが勝手に判断してくれる。
有能……!!
ローザが来てくれて本当に良かった!
うちの巫女たち、野生児のリュカと、常識的なようで最近脳みそがピンク色のサマラと、色々なあなあで基本面倒ごと嫌いなアンブロシアの三名だ。
政治能力を持った巫女は大変貴重である。
「……何を目をキラキラさせて私を見ているのだ」
「いやあ、頼りになるなあと思って」
「何を言う。戦場において、貴様ほど頼りになる男はいないのだぞ? そもそもこれ程多くの種族を惹き付けて一つにしているのは、貴様が他に比べられぬほどの力と、世界の道理に縛られぬ志を持っているためだ。誇るがいい」
「お、おう」
凄く褒められた気がする。
「だが、こう言った政における戦いは私の領分だ。貴様は私に、そうせよと命じて任せていれば良い」
うーん、なんと頼もしい。
伊達に二十年以上、政治の世界でやって来てないという訳だ。
よし、全て任せて俺は弁当を食っていよう。
「それで、土の妖精たちとの連絡は取れたのかね?」
不意に長老が尋ねてきた。
そう言えば……そういうのがいる事をすっかり忘れていたような気がする。
「土の妖精トロルは、高度な知性を持つが、同時に蛮性を尊ぶ種族だ。まさに、我らの王の力が必要になると思うがね」
なるほど。
では、俺の出番なのであろう。
エルフの里を後にし、俺たちは一路、エルフェンバインの山地へと向かう。
俺は、火と水と風、三つの精霊界を行き来して、妖精たちとの交渉を繰り返すことになった。
何故、俺なのか。
俺が下手に、あの火竜ワイルドファイアに認められてしまったのが問題だった。
あいつ、どうやら精霊界では大変有名な怪物らしく、強さランキング的なもので言えば論議は多々あれど、必ず頂点に君臨するという話だった。
そんな訳で、火竜のお墨付きを貰った俺は、自身が妖精たちにとって印籠のような役割を果たすことになっている。
「ユーマ、次はエルフの森。荒ぶる風氏との会談となろう。時刻も押し迫ってきているから、亜竜を準備しておいたぞ」
隣で羊皮紙に書かれたスケジュール表を管理しているのは、なんと俺の秘書みたいな地位になっている元辺境伯……ローザリンデである。
ほっそりとした体を、それなりに上質な黒のドレスに包んでいる。材質は革を混ぜているそうで、見た目よりも頑丈らしい。
ドワーフどもの自信作である。
で、俺はと言うと。
「ローザは気が回るな……。俺、この鎧嵩張って動きにくいんだけど」
「貴様が我々の代表である以上、いつもの身軽な格好でいられては権威と言うものが追いつかんのだ。慣れよ」
大変厳しい肩アーマー。ブレストアーマー、腰アーマーに具足と篭手。
そして超イカス角がついた兜。
そこから靡くマントまで、全てが濃淡のあるグレーでまとめられた俺の衣装である。
素材はケラミス。
細かな細工はドワーフが担当している。
「なんじゃこのケラミスとか言うもんは」
「戦場で拾ったもんと精度が違うのう」
「気合の入り方っちゅうかのう」
「わしらも負けちゃおれんわい」
「こりゃ愛が入っとるからなあ」
「何を言っているのか貴様ら!」
「うひゃーっ」
勝手なことを抜かしたドワーフどもが、ローザに一喝されて逃げて行った。
「あれがドワーフという者たちか。どうも、腕はいいのだが性格に難有りだな」
「俺は割りと気が合うんだが」
「ユーマも変わり者だものな」
フッと笑われた。
な、なんか悔しい。
「ユーマ、行ってらっしゃい! これお弁当」
「おおー、済まんなリュカ! これで元気百倍だぞ」
「うふふ、行ってらっしゃい」
亜竜に跨った俺に、駆けつけたリュカが包みを渡した後、ジャンプして抱きついてくる。
何というか、出勤する新婚夫婦のやりとりのようで胸が熱くなる。
「あ、アタシも用意してきました! これデザートです! それから行ってらっしゃいのハグ!」
「なにっ、サマラ、お前まで来るとなると流石に重量がぐわーっ!!」
俺は押しつぶされた。
「随分と仲が進展したようだな。まさか、共に寝てはおるまいな?」
「直接的な表現やめてください!」
空の上である。
さて、ローザと他愛も無い話を……と思ったところ、この核心に切り込んでくる一撃必殺ぶり。
ローザ、君はもっと会話の機微とかを学んだほうがいい……。
「まだお互い清い体だ」
「そうか。なら良し。だが……貴様がいれば風の妖精たちの信を得られる以上、別にリュカを娶ってしまっても良いのだぞ? それは、他の巫女たちにも言えよう。火の巫女も貴様のことをあからさまに好いているではないか」
「いや、それはそうなんだが。最初にリュカと約束をしたんだ。東に向かう旅に付き合うと」
「それが、東に行く事も無くこうして各国をうろうろしている、と」
「その通りなんだけどな。ローザ、物言いが大変厳しい」
「むっ……すまない。ローザリンデとしての人生よりも、辺境伯として生きた時間が長いものでな。なかなか、こう、この物言いが抜けぬ」
背格好は、小柄で儚げな黒髪の少女。
声色だって澄んだハイトーンボイスなのだが、とにかく中身が鬼の将校みたいなきっつい性格なのである。
大変残念な美少女と言えよう。
実年齢四十三歳だし。
「ローザは、最初からそういう喋り?」
「いや、きちんと年齢相応の娘であったと記憶している。だが、課せられた役割が、私に娘であり続ける事を許さなかったのだ」
「ロールプレイしてたらその役割が染み付いてしまった訳だな」
「? よく分からない単語があるが、役割に馴染みすぎてしまった、という言い方は正しいな。既に私は貴様の補助をする立場であるし、もっと柔らかな話し方をせねばとは思うのだが」
うーむ、と考え込むローザ。
そのまま空を見上げて、うーむむむ、と唸っていたら、ポロッと亜竜から落ちそうになった。
彼女、運動神経はさほどよろしくない。
辺境伯時代も、戦場では戦っていなかったしな。
俺は咄嗟に手を差し伸べて支えた。
「お、おお、すまない。ありがとう」
支えられて初めて、自分の状況に気付いたらしい。
彼女はちょっと恥ずかしそうに礼を言うと、ふむ、と唸った。
「これは、貴様にしがみついていた方が良いようだな。前を向け」
「ほうほう」
言われるままに前を向くと、背中にむぎゅっとしがみつく気配がある。
だが、悲しいかな。
重厚なるケラミスの鎧と、豪奢な灰色のマントが邪魔をして、彼女の感触は全く分からない。
やはり鎧は良くない……!
鎧に対する俺の憤懣を生み出しつつ、空の旅はすぐに終了した。
飛行型亜竜の速度は速い。
恐らく、高速道路で自動車が普通に走るくらいの勢いで空を飛ぶ。
これを、障害物も何も無い空で行なうのだから、旅程の消化速度は他の移動手段の追随を許さない。
マーメイドたちに支えられ、俺とリュカが辿った海路が一昼夜ほどだったが、その距離を一時間ほどで駆け抜けた。
「空を飛ぶというのは、凄まじいものだな……! む、見えてきたぞ。あれがエルフの森か」
ローザが俺の肩越しに手を伸ばして指し示す。
そこには、ディアマンテの一角を覆いつくす、鬱蒼たる森があった。
この間は地上から行ったから、そのサイズ感はよく分からなかった。
だがこうして上空から見ると、とんでもなく広い森なのである。
ちょっと飛んで行くと、ヘリポートのような場所があった。
なんだあれ。
ぽっかり空いた空間にエルフが立って、両手に旗を持ってこちらに振っている。
「よし、あそこに着地な」
俺の指示に従う亜竜。
高度を下げ、ゆっくりと着地点へ降りていく。
「待っていたよ、戦士ユーマ。いや、最早、我らの王ユーマと呼んだほうが良いかな」
出迎えは、エルフの長老じきじきである。
しかし、俺も出世したものである。
自分で組織を作ってしまったようなものだから、俺がトップなのは仕方ないのだが。
「そちらが土の巫女かね? 君がこの戦いを始める切欠になったという。さあ、付いて来たまえ」
長老に案内されて、森へ一歩踏み出す。
ローザは改めて言われて、むむむ、と唸った。
「そ、そうか。この大仰な事態は、貴様が私を助ける為だったな……」
「まあ成り行き成り行き」
そんな会話をしつつ、長老の後に続いた。
森は、エルフたちにとって、行きたい場所へ転移するショートカットのような力を持っている。
長老が一歩進むと、既にそこはエルフの里だった。
「こ……これはどういう原理なのだ? なに、魔法? そうか、魔法か……」
一々気にする娘さんである。
生真面目なのだなローザは。
さて、エルフたちとは特に面白い話をしたわけでもない。
基本、秘書であるローザが長老とやり取りをし、今後のうちの軍勢とエルフの関係を決定した。
エルフはうちの軍勢に戦力を提供する。
その代わりに、うちは他勢力との調停を受け持つ。
ラグナ教の総本山であるディアマンテでは、いかなエルフといえど、一種族だけでやっていけるものではない。
常に他の種族が、ディアマンテや他の国々に手出しをすることで、定期的に人間側の戦力を疲弊させる。
これによって、数的には劣勢であるうちの軍勢と、そこに所属する妖精たちを守るわけだ。
「俺は見ての通り、政治とか出来ないから、代わりにやってくれる組織が欲しいな。元老院みたいな」
「なるほど、確かに道理だ。我ら四属性に所属する妖精たちの意見を纏めるには、人間一人では荷が重かろう」
「うむ。ただし、議長はユーマの代弁者としてこの私にやらせてもらおう。各陣営から代表者を選出し、彼らによる合議でこの集団を運営する」
「議場は森を提供しよう。各地の森に我が森へと通じるパスを通す。こうすれば、他の種族が存在する地域からこちらへ、すぐに抜けてくる事が出来るはずだ。だが、通行許可は絞らせてもらう」
「それで構わない」
「ほうほう」
俺はたまにちょこっと口出しして、無理なものを無理と言う仕事。
で、基本はローザと長老が物事を決めていく。
一応、決定する際に、ローザはちょっと俺のほうを見て判断を求める。
よく分からないので一任する時は、一度頷く。
完全に同意で一任する時は、二度頷く。
よく分からないがなんか嫌な時は、首を横に振る。すると、ローザが勝手に判断してくれる。
有能……!!
ローザが来てくれて本当に良かった!
うちの巫女たち、野生児のリュカと、常識的なようで最近脳みそがピンク色のサマラと、色々なあなあで基本面倒ごと嫌いなアンブロシアの三名だ。
政治能力を持った巫女は大変貴重である。
「……何を目をキラキラさせて私を見ているのだ」
「いやあ、頼りになるなあと思って」
「何を言う。戦場において、貴様ほど頼りになる男はいないのだぞ? そもそもこれ程多くの種族を惹き付けて一つにしているのは、貴様が他に比べられぬほどの力と、世界の道理に縛られぬ志を持っているためだ。誇るがいい」
「お、おう」
凄く褒められた気がする。
「だが、こう言った政における戦いは私の領分だ。貴様は私に、そうせよと命じて任せていれば良い」
うーん、なんと頼もしい。
伊達に二十年以上、政治の世界でやって来てないという訳だ。
よし、全て任せて俺は弁当を食っていよう。
「それで、土の妖精たちとの連絡は取れたのかね?」
不意に長老が尋ねてきた。
そう言えば……そういうのがいる事をすっかり忘れていたような気がする。
「土の妖精トロルは、高度な知性を持つが、同時に蛮性を尊ぶ種族だ。まさに、我らの王の力が必要になると思うがね」
なるほど。
では、俺の出番なのであろう。
エルフの里を後にし、俺たちは一路、エルフェンバインの山地へと向かう。
1
お気に入りに追加
937
あなたにおすすめの小説
俺は善人にはなれない
気衒い
ファンタジー
とある過去を持つ青年が異世界へ。しかし、神様が転生させてくれた訳でも誰かが王城に召喚した訳でもない。気が付いたら、森の中にいたという状況だった。その後、青年は優秀なステータスと珍しい固有スキルを武器に異世界を渡り歩いていく。そして、道中で沢山の者と出会い、様々な経験をした青年の周りにはいつしか多くの仲間達が集っていた。これはそんな青年が異世界で誰も成し得なかった偉業を達成する物語。
クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。
家ごと異世界ライフ
ねむたん
ファンタジー
突然、自宅ごと異世界の森へと転移してしまった高校生・紬。電気や水道が使える不思議な家を拠点に、自給自足の生活を始める彼女は、個性豊かな住人たちや妖精たちと出会い、少しずつ村を発展させていく。温泉の発見や宿屋の建築、そして寡黙なドワーフとのほのかな絆――未知の世界で織りなす、笑いと癒しのスローライフファンタジー!
レベルを上げて通販で殴る~囮にされて落とし穴に落とされたが大幅レベルアップしてざまぁする。危険な封印ダンジョンも俺にかかればちょろいもんさ~
喰寝丸太
ファンタジー
異世界に転移した山田(やまだ) 無二(むに)はポーターの仕事をして早6年。
おっさんになってからも、冒険者になれずくすぶっていた。
ある日、モンスター無限増殖装置を誤って作動させたパーティは無二を囮にして逃げ出す。
落とし穴にも落とされ絶体絶命の無二。
機転を利かせ助かるも、そこはダンジョンボスの扉の前。
覚悟を決めてボスに挑む無二。
通販能力でからくも勝利する。
そして、ダンジョンコアの魔力を吸出し大幅レベルアップ。
アンデッドには聖水代わりに殺菌剤、光魔法代わりに紫外線ライト。
霧のモンスターには掃除機が大活躍。
異世界モンスターを現代製品の通販で殴る快進撃が始まった。
カクヨム、小説家になろう、アルファポリスに掲載しております。
大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです
飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。
だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。
勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し!
そんなお話です。
『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?
釈 余白(しやく)
ファンタジー
HOT 1位!ファンタジー 3位! ありがとうございます!
父親が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。
その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。
最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。
その他、多数投稿しています!
https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394
異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?
お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。
飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい?
自重して目立たないようにする?
無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ!
お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は?
主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。
(実践出来るかどうかは別だけど)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる