ELYSIUM

久保 ちはろ

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Part 8-2

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寝室の真ん中に置かれた、一人用にはやたら大きなベッド。それでも部屋は全く狭く感じない。
 奥の壁は一面のクローゼット。天窓から注ぐ青白い月の光が、床の一部分を四角く象っていた。
 鳳乱はまどかをそっとベッドに下ろすと、服を脱がせ始めた。
 そして、あっという間に下着以外は全て手際よく脱がせてしまう。
「どうして下着はそのままなの?」
 まどかは、隣で、シャツのボタンを外している鳳乱に聞いた。
「最後の砦。全部脱がしたら、もう僕、押さえられないから」
 口角に笑みを刻んで、目を眇める。
 彼は全裸になると、柔らかい毛布の間に滑り込んだ。
「鳳乱、なんだか楽しそう」
「うん。嬉しくて仕様がない」
 彼はまどかを広い胸に抱き寄せる。
「でも、鳳乱にだって恋人がいたでしょ?」
 意外にも、彼の顔に困惑が浮かんだ。そのまま、まどかの髪に顔を埋めて囁いた。
「恋人……こんなに満ち足りたことはなかった。不思議なことに」
 その言葉に、心の奥がじんとしてしまう。
「あ、そう言えば、ちょっと気になることがあるんだけど……」
「何?」
 鳳乱は不安げにまどかを覗き込む。
「えーと……私と始めてした時、鳳乱、避妊しなかった、よね……? 大丈夫かなって」
「ああ……?」
 彼は思案するように一瞬天井を見上げたが、すぐに悪戯な笑みを見せた。
「出来たら産んでよ」
「え! それは……」
「年齢的にもちょうど良いし。僕とまどかの子、絶対に可愛いって」
「でも……」
 本気なのだろうか?
 鳳乱は微笑みながら、何も言えないまどかの鼻を軽く指でつまんだ。
「大丈夫だよ。事前に避妊薬、ピル飲んでるから。あの夜は絶対にまどかを抱くって決めてたから、ちゃんと飲んでたよ」
 まどかの、鳳乱を見上げる目が点になる。
(確信犯……じゃなくて!)
「えええっ! 男の人用にピルなんてあるんだ!!」
「まどかのところ、無いの?」
「男性には無い、無い! 女の人が使うものだと!」
「まあ、でもこれで安心だろ。いつでもどこでも何度でも可能だ」
 動揺しているまどかを楽しそうに見ていた鳳乱は、急に真顔になった。おもむろに、まどかの髪を手で梳き始める。
「ごめん。綺麗な髪だったのに。僕の言葉が髪を切らせたんじゃないか?」
 彼は低く呟いた。
「まあ……。そうかな。あの時は売り言葉に買い言葉みたいな気分だったけど。鳳乱の関心をこっちに向かせたいっていうのはあったかも。正直」
 彼は突然、まどかをぎゅっと抱きしめ、首筋に吸い付いた。ちりっと小さな痛みが走る。
「んっ……鳳乱?」
「そんなこと言うなよ……最後の砦が崩れる……これでもギリギリのところで押さえているんだ……」
 彼は体を起こして、ふっくらした枕を重ねると、そこに身を沈めた。
「おいで、まどか。早いとこ僕の話をしないと身が持たないからな」
 まどかは彼の肩に頭を預けて、その裸の胸に手を添えた。鳳乱はその上に自分の手を重ね指を絡めると、静かに口を開いた。
「僕は、実はユランで産まれたんだ。僕の母は当時、バーシスで働く一人だった。彼女はもともと地学や植物学を学んでいたから、研究に集中したくてバーシスに志願したんだ。そして研究員として働くようになり、彼女はフィールドワークでほとんどの時間をユランで過ごした。そしてフェニックスの血を引く者たちの村、エギニスで僕の父と出会い、結ばれた。そして僕が生まれた。ああ、最初にフェニックスの血を引く者の使命を話しておこうか」
 鳳乱は少し顔を傾けて、「眠い?」 と聞いた。
 まどかは微かに頭を動かしたが、正直、彼の体温、彼の胸から規則正しく伝わる鼓動と、その低い声の響きは眠気を誘っていた。
「ううん……すごく気持ちがよくて……。でも、続けて?」
「ユランでまどか達も見ただろう。巨大な火山『マンチャ・カタルヤ』。この火山の持つエネルギーは凄まじい。ユランの心臓とも言えるその火山は、噴火すればユランに大打撃を与えると言われていて、バーシスの計算ではユランの三分の一は何らかの形で破壊されると。それが八百年ほど前に噴火した時、すごい勢いで吹き上げるマグマの火柱の上を、一羽のフェニックスが舞い、一瞬にしてその火柱を自分の体に取り込んで、噴火を鎮めた。そしてその後に、拳大の真っ赤に光る、まさにマグマがそのまま石に凝縮されたような、一つの石が、火口の真ん中に残った。つまり、その石が火山のエネルギーを絶えず吸収し、噴火を抑えていると言われている。この石が壊されたり、しかるべき場所に常に無いと火山は再び活動を起こす。この石を守り続けるのがフェニックスの使命。そして、守ると言う意味は、その石も寿命があり、七十年に一度、フェニックス一族の誰かがその石に姿を変えなくてはならないという」
 まどかは頭を持ち上げて鳳乱を見る。もう眠くはなかった。
「でも、きっとバーシスの技術なら、噴火のエネルギーを抑えるものを何かで代用して、吸収させるとか考えられそうだけど……」
 彼は優しくまどかの頭を撫でた。
「それがダメだったんだ。というか、エギニスの者達が断固拒否したんだ。なぜって、それが伝統だから。伝統は何かに替わる物ではなく、それは言い伝え通り、そのままの形で受け継がれるべきものなんだ、って。伝統が受け継がれない星では、火山の噴火は止められたとしても、やがて文化が、星自体が衰退していくだろうって。たとえその伝統によって誰かの命が犠牲になろうとも。まあ、それでも『石の義』はフェニックスの種族が受け継いで、その石を守るのはバーシスの仕事なんだけどな。石の周りには目に見えないけどバリアーが張られてるし。石にはかなりの利用価値があって、他の星の奴らが盗もうとしたことが何度もある」
「でも……そんな、伝統なんか……」
 まどかは、不意に不安に駆られ、目を伏せた。
「いや、ここまで並ならぬ技術の発展を遂げたのは、人が少し賢くなっただけではない。伝統が根付いていたから……伝統と発展、表裏一体だからこそ、ここまで発達したんだ。伝統の知恵を、誰にでも使いやすくしたものが技術だ。この二つは決して切っても切れない」
 大丈夫。と彼はまどかの肩を抱き寄せた。
「それに何も僕たちは若くて健康な者を火口に送ったりはしない。老衰して死期の近い者や、僕の父のような病を持った者が選ばれる。それは皆、宿命だと覚悟しているよ」
「……鳳乱のお父様って病気だったの?」
「父は火口に送られるにはまだ若かったんだけど、癌だったんだ。……フェニックスの癌は今もまだ完全な治療法が見つかっていない。その上、フェニックスは生命力が強い分、癌細胞の生命力も強く、進行が著しく早い。だから、次の『石の義』は父に白羽の矢が当たっていた。どうせ死ぬなら、ユランの一部になるって言う『名誉』を担えと。そして、結末はこの前話した通り。父は直前で逃げ、火山は活動し始めた。そして急遽、代わりの者が火山を鎮めた後には、激しい地震による地割れや、他の被害なんかで、村が潰れたり、多くの命が失われたりしたらしい」
 まどかは、彼の白磁器のような胸が、呼吸にあわせてゆっくり上下するのを見ていた。
「それから母は、僕を連れてユランを出た。そしてバーシスで研究を続けた。僕が十二歳になった時、バーシスがフェニックスの研究のために僕を預かりたいと言った。前にも話しただろう、フェニックスの血や肉や体液は強い治癒力を持つって。それを研究する一方で、フェニックスに特有な病気なんかを調べるためになるべくデータを集めるのが目的だった。母は、まだ僕が彼女の元を離れるのは早いと思ったらしい。でも、ぼくがバーシスに籍を置けば、今まで行っていた学校よりももっと質のいい教育を受けることもできたし、興味があれば、生物であれ、情報処理であれ、語学であれ、様々な専門分野で研究出来る場と、それらの指導にエキスパートを与えてくれるのが条件だった。そして、その年齢の子供には十分すぎる程の『給料』も出すと。僕も母と離れるのは淋しかったけど、週末には家に帰れるし、不満はなかった。それよりも、僕は早く自立したかった。とにかく知識を蓄えられるだけ蓄え、早く一人前になりたかった。母を安心させたかった。そして僕はバーシスに入った……もう十八年も経つのか。相当、古株だな」
 鳳乱はふっと笑う。
 そしてまどかの頭の天辺にキスをした。そして額に、目尻に……彼は体をぐっと傾け、キスの雨を降らせる。
 唇の端が吸われた時、まどかはそっと相手の胸を押し返した。
「そ、それでお母様は……?」
 鳳乱は、納得いかない、と抗議するように眉をひそめた。
「母? 母は病気で他界した。僕はきちんと最期を看取ったよ。そりゃ、悲しかったけど、もう最期の方はお互いに覚悟は出来てたし。母は僕にいつも誠実で、正直で、忍耐強かったし、何よりも愛してくれた。僕には父がいないし、母と過ごした時間も短かったから、いろいろ欠けているかもしれないけれど、愛が何か、ということは僕なりに十分わかっているつもりだ」
「うん……。鳳乱はちょっと不器用なところもあるけど、ちゃんと気持ちを受け止めて、丸ごと包んでくれる余裕があるよね……」
「余裕なんか無いって言ってるだろ」
 そう言うと、彼は下着にグッと手を差し入れ、乳房を強く揉んだ。そのまま下着をたくし上げて、乳房に吸い付く。
 彼らしくない、その性急な動きにまどかは驚き、身を固くした。
「ほ、鳳乱?」
 相手は答えずに、乳首を口に含んで舌で乱暴に転がし、もう片方の乳房も形が歪む程に揉んでいる。
 まどかはその傲慢な愛撫に情欲を掻き立てられつつも、彼の肩を強く押し返して抵抗を試みた。
「あっ……鳳乱、もう……明日もあるから、今夜は……休も……んっ」
 彼は乳房をぺろりと舐め上げ、肩に掛かっている両手を掴むと、体を組み敷いた。まどかの体をまたぎ、静かに見下ろす。
「男はそんなに都合良くいかないよ」
 その瞳は、妖艶な光できらきらと輝いていた。
 何が彼の心に、体に火をつけたのは確かだ。
 その愛撫は、少なくとも始めて肌を合わせたときと比べると、尋常ではなかった。
 それでも、まどかには不思議と彼の気持ちが、手に取るようにわかった。
 きっと、彼の思い出が、ずっと抑えていた感情の水門を無意識のうちに開いてしまったのだろう。父の裏切り、失望、母の愛、ユランの焼けるような赤い日差し、バーシスの規律正しい生活、母との死別……様々なものが激しく渦を巻いて、怒濤のごとく全て溢れ出した。今、彼はその波に煽られている。
 彼は、この瞬間、それをコントロールすることを放棄した。
 だって、彼はもう知っているから。
 私という器が、その感情を受け入れられると。彼のすべてを、受け止めると。
 そして……私はそれを受け入れ、溺れたい。
 恐ろしいほど冷静な立ち居振る舞い、理論整然とした語り口、隙のない背中、一見穏やかに見えても威厳の宿る眼差し。
 時間をかけて彼が作り出したそれらが全て、今や感情の波にことごとく飲み込まれている。
 そして、その波が引いた後には、ただの男としての……本能のままに肉と血を求める鳳乱が、姿を現した。
「もう、話は終わりだ」
 彼はかすれ声で呟くと、荒々しい手つきで、両の乳房を強く捏ねた。身を屈めて、噛み付かんばかりの勢いでそれに吸い付き、舌を這わす。胸にかかる彼の息は荒く、何よりも熱い。
 そして、素早くショーツも剥ぎ取った。
「はぁん……んっ……」
 彼が唾液を肌に塗り付ける度に、声がこぼれる。まどかは、激しい愛撫に溺れそうな恐怖から、彼の体にしっかりと足を絡ませ、その柔らかな髪の間に指を差し入れる。
 ざらついた舌が乳首を何度も擦り、押し込むが、その度にそれはますます硬さを増し、挑むように勃(た)ち上がる。そのうちに唯一の下着はあっけなく外され、彼は挑発するように、胸の上からまどかを見上げた。
 乱れた前髪から覗く、欲望のちらつく瞳に、背筋がぞくぞくした。
 これから味わう快楽と、落ちて行く恐怖。
 その恐怖を送り込んだ男が、自分の知る鳳乱なのか確かめたい……。
「鳳乱……キス、して……」
 気持ちが高ぶり、つい舌足らずな声に、恥ずかしくなる。
「なんだ、ちゃんと甘えられるんじゃないか」
 満足げに微笑し、彼は身を起こして二、三度、啄ばむようなキスをした。そして、隣に体をずらすと、まどかを自分の胸の上に引き上げた。
「今夜は、まどかを余すところ無く食べ尽くすぞ。……いいか?」
 まどかは、欲望の深みを増した瞳を真っすぐに見据えて、こくんと頷いた。
 まどかの頬に両手が添えられ、そっと下唇を食(は)まれる。まどかも同様に相手の上唇を味わう。
 そうしてキスはだんだんエスカレートしていった。深く、深く。
「うふぅ……」
 いつもより激しいそれに、呼吸が苦しい。
 彼の左手は後頭部をぐっと引き寄せ、逃げる隙を与えない。口内を犯す彼の柔らかい舌。大胆にそれを奥まで捩(ね)じ込み、ゆっくりと掻き回す。
 歯茎をなぞり、舌ごと唾液を啜り上げる。
 もう一方の手は、連なる背骨の起伏を滑(なめ)らかに往復していた。ぞわぞわと体の奥から甘美な波紋が広がる。キスの生み出す刺激と背中の愛撫で、閉じている瞼の裏で官能がうねり、消え、また現れた。
 まどかは誘われるように、彼の甘く、濡れた舌を吸った。背中を撫でていた手がするりと下に移動し、緩やかな丘陵を超えると、その終点の窪地にたどり着いた。なんの前触れもなく、指が茂みを分け、亀裂をなぞった。
「やあ……っ」
 鳳乱の胸の上で、びくっと上体が跳ねる。指はくちゅっと水音を立て、泉に沈んだ。
「はんっ」
 鳳乱は指をゆっくり、ぬちぬちとわざと音を立てて出し入れしながら、なめらかに奥に潜り込ませていく。
「んふっ……」
 声を出したいのに、口は彼の唇に塞がれた。舌が我が物顔で口内を這い回る。ぴちゃぴちゃといういやらしい水音は、キスからか、それとも脚の間から響くものか、まどかは羞恥に体を火照らせながら、それでも相手のキスに必死で応えた。
 中を掻き混ぜられながら、ひたすらキスを交わしていると、濃厚な官能に頭がぼうっとしてくる。
 まどかの身体中の感覚は愛撫されている場所に集中し、他はあやふやになってしまう。くらくらし、ただ、彼の上から落ちないように、しっとりと汗ばむ体にしがみついていた。
 鳳乱の手が頭から離れ、緩急をつけて尻を揉み始める。中を掻き回していた指も抜かれて、両手で尻を鷲掴み、まどかの腰を少し持ち上げた。ぐっと開かれる感覚の直後、硬く、熱い屹立が体を貫いた。
「ああっ!」
 まどかの体は、弓なりに反った。
 鳳乱は目の前に差し出された胸に顔を埋め、新たな愛撫に勤(いそ)しむ。乳房を頬張り、先端を舌先で転がす。
「まどかの中、もう、とろとろだよ……」
「や……そんな……」
「感じてるんだろ……これも……」
 乳首を口に含み、強く吸い上げる。
「ああっ」
 峻烈な刺激が走り抜け、まどかは身を震わせた。
「あぁ……きゅって締まった。そうじゃなくてもきついのに……」
 感触を隅々まで堪能するように、鳳乱ゆるゆると大きく腰を動かす。そのまま手を太股に沿って這わせ、膝の裏に手をかけると、グッと自分の方へ引き寄せ、同時に腰を勢い良く突き上げた。
「あああっ!」
 突然の、最奥への衝撃に意識が揺さぶられる。彼の首に腕を巻き付ける。彼の腰は小刻みに動き、奥の、まどかの感じるところを集中して攻め続ける。ゾクゾクと妖しい快感が連続して波紋を広げ、まどかは高みに駆り立てられていく。
(墜ちたくない、墜ちたくないの……ひとりで墜ちるのは……いや……)
 まどかの腕に無意識に力がこもる。
「大丈夫……僕はここにいる……一緒にいるよ……」
 鳳乱の言葉に、まどかは無意識に言葉を発していたことに気がつく。
 彼はそっとまどかの背中を抱き、執拗に中を擦り続ける。彼の炎が燃え移ったのか、まどかの体もますます火照り、しっとりと汗がにじむ。
「まどかの香り……せるようだ……」
「んっ……はぁあ……ンっ……」
 今や両膝を合わせられ、ほとんど彼の下腹に座るような格好だ。そして、何度も何度も突き上げられる動きに合わせて、まどかも腰を踊らせていた。結合部でくちゅくちゅと水音が、いっそう大きくなる。
「これ……すごく締まる…………やばい、本当に……ね、まどかは、どこが気持ちがいいの……もっと気持ちよくしたい」
「はあ……そんなこと……んンッ……言えないよ…………ばかぁ……」
「余裕だね、バカなんて言って……そんな子は、お仕置きかな。……これは、どう?」
 彼の手が膝を割り、指がその中心の充血した肉芽を擦った。
「ひゃああん!」
 目の奥でぱちぱちと光が明滅した。
「やめて……それ、壊れちゃう……ぅ……」
「そんな物欲しそうな顔して、止めろって、ムリ……。気持ちいいんだろ?」
 彼の張り詰めたペニスがずんずんと奥に刺激を与え、蕾にくるくると蜜を塗る指の愛撫が共鳴して、快感が体をがんじがらめにする。
「いいっ……すごく……鳳乱が……いっぱいで……」
「見てみろよ……繋がってるところ……。見やすいように少し、体ずらして」
 彼も、今は呼吸が乱れ、声も掠れている。
 まどかは動きを止め、言われるままに体を後ろに引いてその中心に恐る恐る視線を移す。黒い茂みの中に、彼の太いペニスが食い込んでいる。たっぷりと二人の体液に塗されたそれは、月の光にぬらりと光っている。あまりにも生々しいので、逆に現実味がない。不思議な感じがしたが、同時に嬉しさがこみ上げた。
「繋がってる……」
 ふと零すと、鳳乱もまどかの下で顔を綻ばせた。
「僕がまどかの一部になってるだろ……。じゃあ、続きだ。ちゃんと掴まっておけよ……」
「え……?」
 鳳乱はまどかの両手を自分の首に導くと、背を抱き寄せ、繋がったままゆっくりと上体を起こした。そして、今度はまどかを下にし、体を上下入れ替えた。背を支えていた手が腿を滑り降り、膝を撫でたあと、ふくらはぎに添えられた。と、思うと腰がいきなり浮き、まどかは慌てた。
「やっ!」
 掴まれたふくらはぎから、両脚を大きくV字に開かされた。尻は宙に浮き、肩と頭が唯一体を支えている。
「いやあっ! これっ……」
 しかし、彼はその姿勢で容赦なく抽送を始めた。入り口ぎりぎりまでペニスを抜くと、再び、秘部の奥へ捩じ込む。激しく、リズミカルな抽送は執拗に繰り返される。完全に体を開かれ、全てを支配されている。恥ずかしくてたまらない。それなのに、もっと奪って欲しいと思う。
 深々と穿たれ、その度に凄まじい快感が全身を駆け巡る。
「あぁあああン!」
「まどかの全てが見えるよ……僕のものが飲み込まれているところ……溢れる体液と絡み合って、汗で光って暴れる乳房……もっと欲しそうに潤んだ瞳……」
「はあぅっ……いじわる………言わないで……ンっ……」
「そう? 本当のことだけど……あぁ、そういえばさ……」
 先端が子宮の近い位置でに小刻みに擦られる。息の詰まるような狂おしいほどの快感に、まどかは喘いだ。
「はぅン……ん、なっ………に……?」
「さっき、シャムのこと……素敵とか言ってなかったっけ……まどかは、実はああいう奴がタイプなの……?」
 彼を見上げると、見下ろすオリーブグリーンの瞳に、青い炎が揺れている。まどかに埋まった屹立は熱いのに、その眼差しはぞっとするほど冷ややかだ。
「答えてよ……」
 彼は腰をゆっくりとグラインドさせた。ぬちゃ、と耳に音が響く。
「はあン……ち、ちが……う……」
 もう限界だった。彼のものがいっぱいに圧迫する。じんじんと下半身が疼き、官能の渦はまどかの何もかもをぐちゃぐちゃに掻き回していた。全てが鳳乱で満たされて、まどかには他のことを考える余裕は微塵もなかった。
「もう…………ゆるして……ハッ……んっ、いっちゃうよぉ……」
 彼は脚をそっと下ろすと、腰をしっかり抱えて、なおも動きを止めずに耳元で囁く。
「まどかは……誰が好きなの……?」
 溺れる者が藁をつかむように、まどかは彼の肩に手をかける。しなやかに動く筋肉が、手の平をも刺激しているように感じてしまう。
「ほ……鳳乱が……すき………あああッ」
 彼は一層激しく腰を打ち付けた。彼の肩に指が食い込んだ。肌と肌のぶつかる音、二人の混ざり合う水音が一層際立つ。
「いいのっ……んっ……いっ……ちゃう」
「もう……僕も、あぁ……まどか……」
 愛してる……
「わたしも……!!」
 彼のため息まじりのその言葉で……まどかは昇りつめた。
 絶頂を迎えた後も、鳳乱はまどかを抱きしめたまま離さなかった。朦朧とした意識の中、乱れた息の合間に低い声を聞いた。
「他の男に目がいかないように、まだ体に教え込まないとな……」
 その後も一晩中、鳳乱はまどかの溢れる蜜を啜り、体中に舌を這わせ、そして思い切り体を開いて前から、後ろから何度も何度も貫いた。まどかはただ彼の体にしがみつき、爪をたて、熱い吐息に全身を揉まれながら嬌声をあげ続ける術しかなかった。

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