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Part 4-2
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宵になり、火が焚かれた。
村の人々が円陣になって火を囲み、手作りの楽器を奏で、太鼓を叩き、酒を飲んでいる。
女達は一角で鍋から皿に食べ物を盛って人々に配り、大皿に盛られた菓子をつまんでいた。
子供達がしょっちゅう火に小枝や石を投げ込んだり、近づきすぎて、その度に大人たちから叱られている。
まどかと有吉は、酒の入った小さな器を手に柵の横木に寄りかかって、空を焦がす炎を見ていた。
ぱちぱちと木が弾け、火の粉が飛んだ。
火から距離があったが、じんわりと熱が顔まで伝わってくる。
陽が沈むと、空気はぐっと冷えた。
ライトジャケットを羽織った二人は、言葉も交わさず、祭りの様子を眺めていた。
まどかの頭には、少し前に行われた儀礼の回想が再生されていた。
夕方、広場の中心に火が入れられてから、その前で、儀式の正装らしい色の濃い布を体にまとった長が、五人を呼び出した。
そして感謝の辞を長々と陳べ、一人一人をその胸に抱きしめた。村人達は歓声を上げ、手を叩いた。
ワミの言った通り儀式は短く、それが全てだった。
「一人一人に蛇を贈られたらどうしよう」と吉野は心配していたが、記念品の一つもなかった。
儀礼の場に獅子王はいたが、なぜか隣に鳳乱の姿はなかった。
ワミのところで髪を切った後、まどかは直接自分の部屋に戻ったので、夕食の時間まで誰にも会わなかった。
正直、会いたくなかった、というのもある。
夕食に誘いに来たみちるは、部屋から出て来たまどかを見て目を皿の様に丸くした。
「き、切ったのぉ!?」
「うん。ワミさん、ほら、一番最初に話かけてきた女の人。あの人、美容師さんだったって。彼女にね、さくさくっと」
「なんか……若くなった……」
みちるはまだ何か言いたそうに、でもそれ以上何も言わなかった。
吉野も山口も驚き、「似合う」だの「思いきったね」だの、それぞれ感想を述べたが、有吉は一瞬何かをいいかけて、すぐに口を結んでしまった。
その後ずっと言葉を交わさず、今、同じように隣で火を見ている。その彼が、小さく身じろぎした。
「あのさー、おまえ、前に言ったじゃん。『有吉の趣味に合わせるほど気が利いていませんから』って」
有吉の視線は炎に向いたままだ。
まどかは話の先が読めず、彼の、オレンジ色に染まる横顔を伺ったが、すぐに、ここに来た夜のことだと思いだした。
「よくそんな事覚えてるねぇ」
「覚えてるよ。おまえが言ったことは。ほぼほぼ全部」
彼らしくない、そっけない口調だ。
「でも、あいつの好みには合わせるんだな」
そう言って、手にしていた杯から酒を煽った。
昔から、有吉には全て筒抜けなのが不思議だ。
「そ、そうじゃないよ。本当に邪魔だったから。この暑さだし、ジャングルに入ったり、なんかアウトドアばっかりで。洗ったり乾かしたりするのも時間がかかるし」
もちろん、言い訳だ。それもバレているだろう。
「でも、オレたちすぐに帰るんだし」
有吉はまどかを見た。その顔は、どこか不安げにも、怒っている様にも見える。
まどかは返す言葉が見つからず、有吉の目をじっと見ていた。瞳に炎が揺れている。
しかし、刹那、有吉は顔をほころばせた。
「まあ似合っているから、いっか」
まどかはホッと肩の力を抜き、ふと疑問を口にした。
「ねえ、有吉。何も私たち五人、まとめて呼び出されること無かったんじゃないかな。結果、あなた一人が解決したわけだし」
「な、金目、おまえ東洋医学やったんだろ。じゃあ、五行の意味、わかるよな。木、土、火、水、金の関係」
「まぁ、人間の体の組織が全てそれに当てはまるね」
「持論だけど。俺たちは『五人で一人』なんだと思う。五人、ひと組か。長が俺たちに五行のそれぞれを当てはめたのは偶然じゃないと思うんだ。五人で一つの世界。吉野が欠けても、みちるが、山口が欠けても機能しないんだ。五人。それ以上必要ない。でも、欠けてはいけない。五人いなければここに来ることも無かったし、五人いるから……帰れると思うんだ」
まどかは頷いた。
「私たち一人一人が集まり、一つの完全な世界が存在する」
楽団に弦楽器が加わって、音楽が一段と華やかになる。炎が揺れ、踊る人たちの影も大きく揺れた。
「オレは、オレがおまえの一部だと思うと嬉しいよ」
有吉は少しまどかに体を預けた。
「重い? そういうの」
まどかも、有吉に寄りかかった。まどかの左側に、彼のぬくもりが伝わった。
「ううん、嬉しい」
本当に心からそう思った。ここでは、仲間は五人だけ。信頼できるのは五人だけ。
そう思うとなおさらだった。
「ちょっとーー、二人とも本当に仲良しよねーーっ!」
声のする方に顔を向けると、みちると山口が肩を組んで近づいて来た。どうやら既に出来上がっているらしい。
「みちる、かなり飲んでる?」
「そんなこと、いいんだけど! ねえ、なんで二人はそんなに仲良しなのに、付き合わないの?」
みちるの言葉にどう反応すればいいのか困惑し、助けを求めて山口を見ると、彼も「そうだそうだ」と頷いている。
「え……だって……」
仲良しでいたいからこそ付き合わないのだ、と言っても、きっと通用しないだろう。
「だって、いつも決めるのは結局、女だから」
有吉はきっぱりと言った。
「おまえたちだってさあ、結局、みちるが覚を選んだんだろ?」
「えー、そうかなあ、そうかなあ……そうかも……覚に決定権は無いもんね……確かに……うん」
ふんふん、と腕を胸の前で組んで、みちるが納得する。
「なんだよ! オレ、決定権無いのか!」
山口の声が高くなる。
「あると思ってるなんて百万年早いわぁ!」
マイルドに話題を逸らせた有吉は、してやったり顔で二人の小競り合いを見ている。そしてまどかにウィンクした。
「な、金目。もう少しこれに酒貰って来てくれるか?」
「あ、うん。待っててね」
まどかは有吉が差し出した杯を受け取り、小走りにたき火の方へ向かった。
(取りあえず、これって私を逃がしてくれたのよね……)
まどかは酒の瓶のある、反対側行くためにぐるりと迂回し、そこでふと、歩みを弛めた。
少し先に、数人の村人たちと話している鳳乱の姿があった。向こうはまどかに気づいていない。
まどかは下を向き、そこを足早に通り過ぎようとした。
もう少し彼から離れたかったが、火を囲む人々が道を塞いでいて無理だった。
鳳乱の近くまで来た。彼の声が耳に届く。土地の言葉なのか、その内容はわからない。そのまま彼のすぐ横を通る。ずっと下を向いたまま、一歩、二歩。急ぎ足で。
ーーよかった。やり過ごせた。
そう思った刹那、強く手首を掴まれる。同時に「まどか?」と頭上で声がした。
思わず相手を見上げたまどかは、息をのんだ。
鳳乱の額には普段同様、縦皺が健全だったが、その顔には明らかに動揺が表れていた。
村人は、突然声を上げた鳳乱とまどかを交互に見ている。ハッと我に返った鳳乱は、手首を掴んでいた手を離して、
「え……と、獅子、見かけなかったか?」
と訊ねた。
「見てないけど……」
まどかはそれだけ言うと、二、三歩じりじりと退き、すぐにその場から逃げた。
(あの人、私の名前、呼んだ……まどか、って。信じられない)
耳にまだその響きが残っている。胸の疼きが止まらない。
たった一言、名前を呼ばれただけなのに。
酒の瓶の周りには男達四、五人が列を作り、空の杯を持って順番を待っていた。
まどかはその列に獅子を見つけ、鳳乱が探していた旨を伝えた。
「あれー? オレ、酒貰いに行くって言っておいたんだけどな」
おかしいな、と首をひねる獅子を後に、酒の入った杯を持って、今度は鳳乱を避けて反対側から仲間の元へ戻った。
翌日、皆が集まったのは結局、昼過ぎだった。
まどかと吉野以外は二日酔いで全滅。ソファに伸びて、こめかみを揉んでいた。
まどかは下戸で、飲むとすぐに頭が痛くなるので控えていたし、吉野は草食系な見かけに反して、実は酒豪だった。
吉野とまどかは、元気一杯、鶏肉と刻んだ野菜の入った焼き飯をもりもり食べ、食後のコーヒーを飲んでくつろいでいた。
外からかすかな足音が聞こえたかと思うと、ドアが開いた。もちろん、鳳乱と獅子王だ。
「なんだお前ら、そのざまは」
鳳乱は開口一番そう言って、有吉たちを批難した。
「ご覧の通り、二日酔いです」
吉野が答えた。
「だらしない奴らだ」
「そうは言っても昨日は俺たちのための祭りだったんだし。感、謝、祭。勧められた酒は断るのは失礼だしな」
山口は胸を張った。
「だからといって、そんなになるまで飲むバカが何処にいる」
鳳乱と獅子王はテーブルに着いた。
まどかがシンクに空のカップを置きに行くと、ふと、何か背中に感じた。振り返ると、鳳乱の視線と交わる。だが、それは気のせいかと思うほど、一瞬だった。
ソファで伸びていた有吉と山口も自分の席に着く。
彼らがここに来たときは、話があるときだけだ。
まどかは緑茶があったらいいのに、と思いながら、全員のグラスを水で満たした。
鳳乱は五人を見回し、口を開いた。
「きみ達の帰る日程だが……全く見通しがつかない」
誰も何も言わなかった。
空耳か、そうでなければ、「……と言うのは冗談だ」そんな言葉を全員が待っていたに違いない。
落ちた沈黙は長かった。
「冗談だろ……」
有吉が呟いた。
「僕が冗談を言うと思うか?」
「思わない」
皆うなずいて激しく同意した。
可哀想に、獅子王は下を向いて肩を震わせ、笑いをこらえるのに必死だ。
鳳乱はそんな獅子王を横目で見、眉間の皺をさらに深めて長いため息をついた。
「残念ながら本当だ。その件についてはバーシスの専門家から説明が聞けるだろう。僕の専門ではないんだ。きみ達をどうせ一度、バーシスに連れて行かなきゃならんし、その時だな。それまでのきみ達の責任と管理は僕に委ねられている。これからは僕の指示に従ってもらいたい」
(これからも、でしょ)と、まどかは胸内でツッこんだ。
山口は改めてこめかみに、ぐりぐりと拳を当てていた。それはもう二日酔いだけが原因ではないだろう。
「納得いかねーな」
「そうよ、約束が違うじゃない」
みちるが鳳乱に噛み付く。
「帰れる、と約束した覚えは無い」
鳳乱がきっぱりと言い切る。
その開き直った態度はどうかとおもうが、思い返すと確かに約束を交わした事実は無かった。
「でも、見通しがつかないってことは、可能性はゼロではないのよね?」
まどかは上目で鳳乱を見る。
「その通りだ」
鳳乱は、話が進みそうな気配にほっとしたようだ。
「それがいつかはわからないが、その日までここで待ってろと」
吉野が腕組みをしたまま、語気を強めた。
「最高司令官の言葉だが『君たちが元の世界へ帰れるための努力はできるだけする。それまではバーシスの元で動いて欲しい。その方が、慣れない環境で生活する上で何かと便利だし、衣食住も提供する。希望があれば、こちらの文化や技術を学ぶ機会も作る』とのことだ」
「バーシスで、ってことは、イリア・テリオに住むってこと?」
みちるも、今の状況を少しずつ受け入れようとしていた。
「ユランにいたい、と言う希望があればそれでも良いとは思うが、最初はバーシスにいた方が何かと便利だろうな」
「オレはいい条件だと思うけど」
鳳乱の後に獅子王も付け足す。
「イリア・テリオがどんな所かもわからないのに、オレたちが良いも悪いも判断できないだろう」
有吉は吐き捨てた。
「とにかく、今、きみ達は動けない。バーシスから迎えが来るまでもう少し待ってくれ」
そして鳳乱は「同情する……」と小さく言った。本当に少し参っているふうだった。
「待つって、どれくらい?」
有吉は鳳乱の言葉などまるで聞かなかった様に、たたみかける。
「今、あっちは連邦会議でゴタゴタしているからなぁ。ちょっとわからないな」
獅子王が鳳乱の代わりに答えた。
「それすらもわからないのかよ!」
山口は相当ピリピリしている。それを感じ取り、さすがの獅子王も困惑気味だ。
「そ、それでも二週間以内には、な、なあ、鳳乱」
「僕もなるべく早く迎えが来るように再度要請する。以上」
五人も、彼らも本当にそれ以上話は無かった。
彼らが引き上げた後、まどかはこの状況を自分なりに考えために、一人、部屋に帰った。
ベッドに横になって天井を見る。そこから下がっているファンが、音も無くくるくる回り、生温い空気をかき混ぜている。
ユランに来てからまだ数日しか立っていないのに、次から次へ事が起こり過ぎている。
見えない力に流されるまま、それでもなんとか進んでいたが、立ち止まり、一人ゆっくり考える時間が今まで取れなかった。
取れたとしてもいざ、何かを考えようとすると、いつも鳳乱が脳裏に浮かび、集中して考えられなかった。
(私は彼が好き)
こうして一人になり自分の心を客観的に覗けば、その気持ちは揺るぎないと、改めて思う。
初めはもちろん、外見に惹かれた。
彼の、みちると自分に対する態度は全く感心するものではないけれど、それでも、常に守られている気がした。
事実、枝に髪が絡んだ時も、ジャングルで転びそうになった時も、すぐに助けてくれた。
もしかしたら、それは自分たち五人の監督としての、彼の義務なのかもしれないけれど……。
そうかもしれないし、そうじゃないかもしれない。
(そうじゃないといいな……)
まどかが目を瞑ると、たちまち鳳乱の端正な顔が浮かぶ。途端に脈がとくとくと速くなる。
このタイミングで日本に帰れればどんなに良かったか。
彼から完全に離れられれば。
どうしてまだここにいるんだろう。それも、帰れるのはいつになるのかわからない……。
「はあ」
ため息がでる。解決策は一つ、今ある現実を受け入れること。
有吉も前に言っていた。
周りで起こること、全て受け入れる。目を逸らさず、一つずつ丁寧にそれらを処理して行けば、いつの間にか自分の望む所に行ける。
(でも、自分の望む所って?)
コンコン、と誰かが外のドアを叩いている。部屋を出てドアを開けると有吉だった。
「あれ? どうしたの?」
「ちょっと、頼みがあって。入っていいかな」
少し疲れた様に笑う。
「どうぞどうぞ。何もお構い出来ませんが」
「女の子の部屋に来るのはどうかと思ったんだけどね」そう言いながら、靴を脱ぐ。
「そんなの、気にしなくてもいいのに」
まどかは彼を部屋に招き入れた。
「うわ、何、俺たちの部屋より全然広いじゃん。ずりぃー!」家具まで多い。と言いながらライティングデスクの前に座った。
まどかはベッドに腰掛ける。
「レイキを、やってもらいたくてさ。なんか飲み過ぎか、この気候に合わないのか、胃がキリキリする」
そうだった。いつも有吉は人より一歩先を考えて行動し、そしてよく気がつく。
ここ数日の精神的な緊張が胃にきたに違いない。
「いいよ。じゃあ、ここに横になって」
私は手早くベッドを整えた。有吉は大人しく言われるままに横たわった。
「目を閉じて、リラックスして」
すう、と彼は息を吸う。まどかは、村の人から譲ってもらった小さな木の腰掛けをベッドの脇に持って来て座った。静かに呼吸をする。深く。彼の体の上に手をかざし、頭から足の先まで体にそって、手を動かす。
小さく言霊を唱え、まず、彼の目の上に触れるか触れないかのフェザータッチで両手をかざした。そして順々に決まった位置に手を移動させて行くだけだ。
じん、とまどかの手が熱くなり、エネルギーが体の中を流れて行くのがわかる。
(気持ちがいい。眠くなっちゃう)
レイキをすると、自分もとてもリラックスできる。
自分が、すべてと繋がっているのだと実感する。
施術が終わっても有吉は気持ち良さそうに目を閉じていたので、毛布を軽く掛けて部屋を出た。簡易キッチンで水を飲んでいると、また誰かがドアをノックするのが聞こえた。
(今度は誰だろう)
ドアを開けると、まさかの鳳乱が立っていた。無表情は通常営業だ。
「な、何?」
さっきまで考えていた相手の出現に、まどかの胸が早鐘を打つ。
「ちょっと、この辺りで大きなエネルギーの動きを感じたから調べに来た」
鳳乱は探る様に周りを見回した。
「あ、もしかして、レイキかも」
「レイキ?」
始めて聞く言葉なのだろう。訝しげにまどかを見る。
そのとき、奥から有吉が出て来た。鳳乱は一瞬息をのみ、だがすぐに素の表情に戻って有吉を正面から見た。
靴を履いた有吉は、挑発を露わに鳳乱を一瞥し、そしてまどかの頭に軽く手を置いた。
「ありがとな、すっげえ気持ち良かった」
ニヤリと笑い、じゃあまた後で。と、帰って行った。
「あ、いつでも言ってね」
まどかはその背中に声をかけた。
それから、すぐに鳳乱に向き直り、レイキの話をしようと口を開きかけた。が、相手が先手を打った。
「こんな状況でもお楽しみってわけか」
(え?)
まどかの口がぽかんと開く。そして、すぐに気がついた。
(あ、有吉のあの意味深な言葉ーー!)
顔に一気に血が上った。
どうやって誤解を解けば……。
慌てたまどかは、すぐに答えられない。
そんなまどかを見下ろす鳳乱の眼差しに、軽蔑がはっきりと浮かぶ。
「ち、ちがうの」
「神経が太いと言うか、無神経と言うか……」
「ちょ……、だからそれは誤解だって」
「髪を切って少しは骨があると思っていたが」
彼はそれだけ言うと、まどかの話に耳を傾けようともせず、背を向け、行ってしまった。
(な、何でこうなるのよ)
まどかは唇を噛んだ。
村の人々が円陣になって火を囲み、手作りの楽器を奏で、太鼓を叩き、酒を飲んでいる。
女達は一角で鍋から皿に食べ物を盛って人々に配り、大皿に盛られた菓子をつまんでいた。
子供達がしょっちゅう火に小枝や石を投げ込んだり、近づきすぎて、その度に大人たちから叱られている。
まどかと有吉は、酒の入った小さな器を手に柵の横木に寄りかかって、空を焦がす炎を見ていた。
ぱちぱちと木が弾け、火の粉が飛んだ。
火から距離があったが、じんわりと熱が顔まで伝わってくる。
陽が沈むと、空気はぐっと冷えた。
ライトジャケットを羽織った二人は、言葉も交わさず、祭りの様子を眺めていた。
まどかの頭には、少し前に行われた儀礼の回想が再生されていた。
夕方、広場の中心に火が入れられてから、その前で、儀式の正装らしい色の濃い布を体にまとった長が、五人を呼び出した。
そして感謝の辞を長々と陳べ、一人一人をその胸に抱きしめた。村人達は歓声を上げ、手を叩いた。
ワミの言った通り儀式は短く、それが全てだった。
「一人一人に蛇を贈られたらどうしよう」と吉野は心配していたが、記念品の一つもなかった。
儀礼の場に獅子王はいたが、なぜか隣に鳳乱の姿はなかった。
ワミのところで髪を切った後、まどかは直接自分の部屋に戻ったので、夕食の時間まで誰にも会わなかった。
正直、会いたくなかった、というのもある。
夕食に誘いに来たみちるは、部屋から出て来たまどかを見て目を皿の様に丸くした。
「き、切ったのぉ!?」
「うん。ワミさん、ほら、一番最初に話かけてきた女の人。あの人、美容師さんだったって。彼女にね、さくさくっと」
「なんか……若くなった……」
みちるはまだ何か言いたそうに、でもそれ以上何も言わなかった。
吉野も山口も驚き、「似合う」だの「思いきったね」だの、それぞれ感想を述べたが、有吉は一瞬何かをいいかけて、すぐに口を結んでしまった。
その後ずっと言葉を交わさず、今、同じように隣で火を見ている。その彼が、小さく身じろぎした。
「あのさー、おまえ、前に言ったじゃん。『有吉の趣味に合わせるほど気が利いていませんから』って」
有吉の視線は炎に向いたままだ。
まどかは話の先が読めず、彼の、オレンジ色に染まる横顔を伺ったが、すぐに、ここに来た夜のことだと思いだした。
「よくそんな事覚えてるねぇ」
「覚えてるよ。おまえが言ったことは。ほぼほぼ全部」
彼らしくない、そっけない口調だ。
「でも、あいつの好みには合わせるんだな」
そう言って、手にしていた杯から酒を煽った。
昔から、有吉には全て筒抜けなのが不思議だ。
「そ、そうじゃないよ。本当に邪魔だったから。この暑さだし、ジャングルに入ったり、なんかアウトドアばっかりで。洗ったり乾かしたりするのも時間がかかるし」
もちろん、言い訳だ。それもバレているだろう。
「でも、オレたちすぐに帰るんだし」
有吉はまどかを見た。その顔は、どこか不安げにも、怒っている様にも見える。
まどかは返す言葉が見つからず、有吉の目をじっと見ていた。瞳に炎が揺れている。
しかし、刹那、有吉は顔をほころばせた。
「まあ似合っているから、いっか」
まどかはホッと肩の力を抜き、ふと疑問を口にした。
「ねえ、有吉。何も私たち五人、まとめて呼び出されること無かったんじゃないかな。結果、あなた一人が解決したわけだし」
「な、金目、おまえ東洋医学やったんだろ。じゃあ、五行の意味、わかるよな。木、土、火、水、金の関係」
「まぁ、人間の体の組織が全てそれに当てはまるね」
「持論だけど。俺たちは『五人で一人』なんだと思う。五人、ひと組か。長が俺たちに五行のそれぞれを当てはめたのは偶然じゃないと思うんだ。五人で一つの世界。吉野が欠けても、みちるが、山口が欠けても機能しないんだ。五人。それ以上必要ない。でも、欠けてはいけない。五人いなければここに来ることも無かったし、五人いるから……帰れると思うんだ」
まどかは頷いた。
「私たち一人一人が集まり、一つの完全な世界が存在する」
楽団に弦楽器が加わって、音楽が一段と華やかになる。炎が揺れ、踊る人たちの影も大きく揺れた。
「オレは、オレがおまえの一部だと思うと嬉しいよ」
有吉は少しまどかに体を預けた。
「重い? そういうの」
まどかも、有吉に寄りかかった。まどかの左側に、彼のぬくもりが伝わった。
「ううん、嬉しい」
本当に心からそう思った。ここでは、仲間は五人だけ。信頼できるのは五人だけ。
そう思うとなおさらだった。
「ちょっとーー、二人とも本当に仲良しよねーーっ!」
声のする方に顔を向けると、みちると山口が肩を組んで近づいて来た。どうやら既に出来上がっているらしい。
「みちる、かなり飲んでる?」
「そんなこと、いいんだけど! ねえ、なんで二人はそんなに仲良しなのに、付き合わないの?」
みちるの言葉にどう反応すればいいのか困惑し、助けを求めて山口を見ると、彼も「そうだそうだ」と頷いている。
「え……だって……」
仲良しでいたいからこそ付き合わないのだ、と言っても、きっと通用しないだろう。
「だって、いつも決めるのは結局、女だから」
有吉はきっぱりと言った。
「おまえたちだってさあ、結局、みちるが覚を選んだんだろ?」
「えー、そうかなあ、そうかなあ……そうかも……覚に決定権は無いもんね……確かに……うん」
ふんふん、と腕を胸の前で組んで、みちるが納得する。
「なんだよ! オレ、決定権無いのか!」
山口の声が高くなる。
「あると思ってるなんて百万年早いわぁ!」
マイルドに話題を逸らせた有吉は、してやったり顔で二人の小競り合いを見ている。そしてまどかにウィンクした。
「な、金目。もう少しこれに酒貰って来てくれるか?」
「あ、うん。待っててね」
まどかは有吉が差し出した杯を受け取り、小走りにたき火の方へ向かった。
(取りあえず、これって私を逃がしてくれたのよね……)
まどかは酒の瓶のある、反対側行くためにぐるりと迂回し、そこでふと、歩みを弛めた。
少し先に、数人の村人たちと話している鳳乱の姿があった。向こうはまどかに気づいていない。
まどかは下を向き、そこを足早に通り過ぎようとした。
もう少し彼から離れたかったが、火を囲む人々が道を塞いでいて無理だった。
鳳乱の近くまで来た。彼の声が耳に届く。土地の言葉なのか、その内容はわからない。そのまま彼のすぐ横を通る。ずっと下を向いたまま、一歩、二歩。急ぎ足で。
ーーよかった。やり過ごせた。
そう思った刹那、強く手首を掴まれる。同時に「まどか?」と頭上で声がした。
思わず相手を見上げたまどかは、息をのんだ。
鳳乱の額には普段同様、縦皺が健全だったが、その顔には明らかに動揺が表れていた。
村人は、突然声を上げた鳳乱とまどかを交互に見ている。ハッと我に返った鳳乱は、手首を掴んでいた手を離して、
「え……と、獅子、見かけなかったか?」
と訊ねた。
「見てないけど……」
まどかはそれだけ言うと、二、三歩じりじりと退き、すぐにその場から逃げた。
(あの人、私の名前、呼んだ……まどか、って。信じられない)
耳にまだその響きが残っている。胸の疼きが止まらない。
たった一言、名前を呼ばれただけなのに。
酒の瓶の周りには男達四、五人が列を作り、空の杯を持って順番を待っていた。
まどかはその列に獅子を見つけ、鳳乱が探していた旨を伝えた。
「あれー? オレ、酒貰いに行くって言っておいたんだけどな」
おかしいな、と首をひねる獅子を後に、酒の入った杯を持って、今度は鳳乱を避けて反対側から仲間の元へ戻った。
翌日、皆が集まったのは結局、昼過ぎだった。
まどかと吉野以外は二日酔いで全滅。ソファに伸びて、こめかみを揉んでいた。
まどかは下戸で、飲むとすぐに頭が痛くなるので控えていたし、吉野は草食系な見かけに反して、実は酒豪だった。
吉野とまどかは、元気一杯、鶏肉と刻んだ野菜の入った焼き飯をもりもり食べ、食後のコーヒーを飲んでくつろいでいた。
外からかすかな足音が聞こえたかと思うと、ドアが開いた。もちろん、鳳乱と獅子王だ。
「なんだお前ら、そのざまは」
鳳乱は開口一番そう言って、有吉たちを批難した。
「ご覧の通り、二日酔いです」
吉野が答えた。
「だらしない奴らだ」
「そうは言っても昨日は俺たちのための祭りだったんだし。感、謝、祭。勧められた酒は断るのは失礼だしな」
山口は胸を張った。
「だからといって、そんなになるまで飲むバカが何処にいる」
鳳乱と獅子王はテーブルに着いた。
まどかがシンクに空のカップを置きに行くと、ふと、何か背中に感じた。振り返ると、鳳乱の視線と交わる。だが、それは気のせいかと思うほど、一瞬だった。
ソファで伸びていた有吉と山口も自分の席に着く。
彼らがここに来たときは、話があるときだけだ。
まどかは緑茶があったらいいのに、と思いながら、全員のグラスを水で満たした。
鳳乱は五人を見回し、口を開いた。
「きみ達の帰る日程だが……全く見通しがつかない」
誰も何も言わなかった。
空耳か、そうでなければ、「……と言うのは冗談だ」そんな言葉を全員が待っていたに違いない。
落ちた沈黙は長かった。
「冗談だろ……」
有吉が呟いた。
「僕が冗談を言うと思うか?」
「思わない」
皆うなずいて激しく同意した。
可哀想に、獅子王は下を向いて肩を震わせ、笑いをこらえるのに必死だ。
鳳乱はそんな獅子王を横目で見、眉間の皺をさらに深めて長いため息をついた。
「残念ながら本当だ。その件についてはバーシスの専門家から説明が聞けるだろう。僕の専門ではないんだ。きみ達をどうせ一度、バーシスに連れて行かなきゃならんし、その時だな。それまでのきみ達の責任と管理は僕に委ねられている。これからは僕の指示に従ってもらいたい」
(これからも、でしょ)と、まどかは胸内でツッこんだ。
山口は改めてこめかみに、ぐりぐりと拳を当てていた。それはもう二日酔いだけが原因ではないだろう。
「納得いかねーな」
「そうよ、約束が違うじゃない」
みちるが鳳乱に噛み付く。
「帰れる、と約束した覚えは無い」
鳳乱がきっぱりと言い切る。
その開き直った態度はどうかとおもうが、思い返すと確かに約束を交わした事実は無かった。
「でも、見通しがつかないってことは、可能性はゼロではないのよね?」
まどかは上目で鳳乱を見る。
「その通りだ」
鳳乱は、話が進みそうな気配にほっとしたようだ。
「それがいつかはわからないが、その日までここで待ってろと」
吉野が腕組みをしたまま、語気を強めた。
「最高司令官の言葉だが『君たちが元の世界へ帰れるための努力はできるだけする。それまではバーシスの元で動いて欲しい。その方が、慣れない環境で生活する上で何かと便利だし、衣食住も提供する。希望があれば、こちらの文化や技術を学ぶ機会も作る』とのことだ」
「バーシスで、ってことは、イリア・テリオに住むってこと?」
みちるも、今の状況を少しずつ受け入れようとしていた。
「ユランにいたい、と言う希望があればそれでも良いとは思うが、最初はバーシスにいた方が何かと便利だろうな」
「オレはいい条件だと思うけど」
鳳乱の後に獅子王も付け足す。
「イリア・テリオがどんな所かもわからないのに、オレたちが良いも悪いも判断できないだろう」
有吉は吐き捨てた。
「とにかく、今、きみ達は動けない。バーシスから迎えが来るまでもう少し待ってくれ」
そして鳳乱は「同情する……」と小さく言った。本当に少し参っているふうだった。
「待つって、どれくらい?」
有吉は鳳乱の言葉などまるで聞かなかった様に、たたみかける。
「今、あっちは連邦会議でゴタゴタしているからなぁ。ちょっとわからないな」
獅子王が鳳乱の代わりに答えた。
「それすらもわからないのかよ!」
山口は相当ピリピリしている。それを感じ取り、さすがの獅子王も困惑気味だ。
「そ、それでも二週間以内には、な、なあ、鳳乱」
「僕もなるべく早く迎えが来るように再度要請する。以上」
五人も、彼らも本当にそれ以上話は無かった。
彼らが引き上げた後、まどかはこの状況を自分なりに考えために、一人、部屋に帰った。
ベッドに横になって天井を見る。そこから下がっているファンが、音も無くくるくる回り、生温い空気をかき混ぜている。
ユランに来てからまだ数日しか立っていないのに、次から次へ事が起こり過ぎている。
見えない力に流されるまま、それでもなんとか進んでいたが、立ち止まり、一人ゆっくり考える時間が今まで取れなかった。
取れたとしてもいざ、何かを考えようとすると、いつも鳳乱が脳裏に浮かび、集中して考えられなかった。
(私は彼が好き)
こうして一人になり自分の心を客観的に覗けば、その気持ちは揺るぎないと、改めて思う。
初めはもちろん、外見に惹かれた。
彼の、みちると自分に対する態度は全く感心するものではないけれど、それでも、常に守られている気がした。
事実、枝に髪が絡んだ時も、ジャングルで転びそうになった時も、すぐに助けてくれた。
もしかしたら、それは自分たち五人の監督としての、彼の義務なのかもしれないけれど……。
そうかもしれないし、そうじゃないかもしれない。
(そうじゃないといいな……)
まどかが目を瞑ると、たちまち鳳乱の端正な顔が浮かぶ。途端に脈がとくとくと速くなる。
このタイミングで日本に帰れればどんなに良かったか。
彼から完全に離れられれば。
どうしてまだここにいるんだろう。それも、帰れるのはいつになるのかわからない……。
「はあ」
ため息がでる。解決策は一つ、今ある現実を受け入れること。
有吉も前に言っていた。
周りで起こること、全て受け入れる。目を逸らさず、一つずつ丁寧にそれらを処理して行けば、いつの間にか自分の望む所に行ける。
(でも、自分の望む所って?)
コンコン、と誰かが外のドアを叩いている。部屋を出てドアを開けると有吉だった。
「あれ? どうしたの?」
「ちょっと、頼みがあって。入っていいかな」
少し疲れた様に笑う。
「どうぞどうぞ。何もお構い出来ませんが」
「女の子の部屋に来るのはどうかと思ったんだけどね」そう言いながら、靴を脱ぐ。
「そんなの、気にしなくてもいいのに」
まどかは彼を部屋に招き入れた。
「うわ、何、俺たちの部屋より全然広いじゃん。ずりぃー!」家具まで多い。と言いながらライティングデスクの前に座った。
まどかはベッドに腰掛ける。
「レイキを、やってもらいたくてさ。なんか飲み過ぎか、この気候に合わないのか、胃がキリキリする」
そうだった。いつも有吉は人より一歩先を考えて行動し、そしてよく気がつく。
ここ数日の精神的な緊張が胃にきたに違いない。
「いいよ。じゃあ、ここに横になって」
私は手早くベッドを整えた。有吉は大人しく言われるままに横たわった。
「目を閉じて、リラックスして」
すう、と彼は息を吸う。まどかは、村の人から譲ってもらった小さな木の腰掛けをベッドの脇に持って来て座った。静かに呼吸をする。深く。彼の体の上に手をかざし、頭から足の先まで体にそって、手を動かす。
小さく言霊を唱え、まず、彼の目の上に触れるか触れないかのフェザータッチで両手をかざした。そして順々に決まった位置に手を移動させて行くだけだ。
じん、とまどかの手が熱くなり、エネルギーが体の中を流れて行くのがわかる。
(気持ちがいい。眠くなっちゃう)
レイキをすると、自分もとてもリラックスできる。
自分が、すべてと繋がっているのだと実感する。
施術が終わっても有吉は気持ち良さそうに目を閉じていたので、毛布を軽く掛けて部屋を出た。簡易キッチンで水を飲んでいると、また誰かがドアをノックするのが聞こえた。
(今度は誰だろう)
ドアを開けると、まさかの鳳乱が立っていた。無表情は通常営業だ。
「な、何?」
さっきまで考えていた相手の出現に、まどかの胸が早鐘を打つ。
「ちょっと、この辺りで大きなエネルギーの動きを感じたから調べに来た」
鳳乱は探る様に周りを見回した。
「あ、もしかして、レイキかも」
「レイキ?」
始めて聞く言葉なのだろう。訝しげにまどかを見る。
そのとき、奥から有吉が出て来た。鳳乱は一瞬息をのみ、だがすぐに素の表情に戻って有吉を正面から見た。
靴を履いた有吉は、挑発を露わに鳳乱を一瞥し、そしてまどかの頭に軽く手を置いた。
「ありがとな、すっげえ気持ち良かった」
ニヤリと笑い、じゃあまた後で。と、帰って行った。
「あ、いつでも言ってね」
まどかはその背中に声をかけた。
それから、すぐに鳳乱に向き直り、レイキの話をしようと口を開きかけた。が、相手が先手を打った。
「こんな状況でもお楽しみってわけか」
(え?)
まどかの口がぽかんと開く。そして、すぐに気がついた。
(あ、有吉のあの意味深な言葉ーー!)
顔に一気に血が上った。
どうやって誤解を解けば……。
慌てたまどかは、すぐに答えられない。
そんなまどかを見下ろす鳳乱の眼差しに、軽蔑がはっきりと浮かぶ。
「ち、ちがうの」
「神経が太いと言うか、無神経と言うか……」
「ちょ……、だからそれは誤解だって」
「髪を切って少しは骨があると思っていたが」
彼はそれだけ言うと、まどかの話に耳を傾けようともせず、背を向け、行ってしまった。
(な、何でこうなるのよ)
まどかは唇を噛んだ。
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