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第121話

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 戦場への潜入、普段ならドラゴンモードで突撃からの広範囲焼却、殲滅、蹂躙と一方的に終わらせてきたがこういうこそこそ物陰に隠れながらの偵察も新鮮というものだ。平原ではあったが幸い倒れた大型生物の遺骸、壊れて放棄された馬などの生物に引いてもらう系統の戦車などなどがこれでもかと散乱しているので全く困らなかった。ちなみにミラージュハイドは自信の周囲に干渉して姿を隠す魔法なのでこの結界の中だと強制解除を喰らい再発動はできない、そのためいつものらくらく移動が封じられているのだ。とりあえずまとめるとこの結界は、外からなら魔法の行使が可能であり、あくまで封じているのではなくマナへの干渉阻害。マナを使い発動させること、マナに作用して効果を維持させている魔法の維持ができなくなるということらしい。個人的な認識だが魔法の発動とオーラのような身に纏う強化系能力、マナを吸収して体を変化させる変身系が使用不能となっている。しかしだ、それでも使える魔法はあるのだ、それは体内完結型の魔法。自分自身の魔力で発動し、外の状況に影響されない系列、身体能力をあげるパンプアップ系魔法だけは使用できるがゲームっぽく言うと常にMPがごりごり削れていく状態なため現実的ではないしMPが尽きた時の疲労感は正直ヤバイ、マジで動けなくなるから現実的ではないのだ。ほんと、ファンタジー世界の天敵みたいな結界だよまったく。
「何と言いますか、帝国の被害が少ないですね」
「魔王軍もどうにか持ちこたえているけど、やっぱ状況はきつそうだなぁ」
 やはり見慣れない武器への対応が追い付いていないという感じだと思う。軽装高機動部隊はアサルトライフルの餌食、ならばと弾丸をものともしないトロールなどのの頑強な体や高い再生能力を持つ種族種族を前線に出しても火炎放射機やグレネードランチャーで大ダメージを受けてしまう。てか、なんであんな武器作れるんだよ……ミリオタの知識エグイって。
「あ、主様。帝国の陣形が崩れましたよ?」
「え、なにがあったの?」
 イリオの指差す方を見たらめちゃくちゃガタイの良いフル装備のゴリラ……男性がすごい勢いで突撃して帝国兵を怒号と共に薙ぎ倒していく。
「すげぇ、現代兵器をガン無視して暴れまわってる……」
 弾丸を弾き爆風をものともせず火炎放射すら正面から叩きやぶ、めちゃくちゃつぇぇ。そして何より印象的なのが武器である、彼は両手に巨大な盾を構え相手を殴り倒しているのだ。ゲーム的に言うダブルシールドスタイルというやつだ。
「彼は三獣将の一人、怒涛のガルガスですね。魔王軍最高の一人で守りの要です」
 凄い人だった。しかし逆に言うとそのレベルの強者でなければ対抗できない状態になってしまっているということでもある。
「でも変ですね、彼は一番大きい戦線に派遣される存在。ここは端も端、三獣将が出てくるような戦域ではないはずなんですけど……」
 俺はその時、何かに巻き込まれたフラグを感じた! まぁもうどうしようもないので流れに任せちゃうけどね。
「とにかく俺達は調査を優先しよう、帝国陣地も見ておきたいしね」
「わかりました。あ、主様、ガルガスが派手な装備の人達に囲まれてますよ」
「え?」
 見るとガルガスは派手な装飾、しかし異様に軽い動きやすさを優先したような……何と言うか最近のSFスマホゲーに居そうな雰囲気やセーラー服を改造したような服を着たたぶん高校生位の男女数人、五人くらいかな? に囲まれてい居る。
「あいつ等は剣や槍なんだな」
 おそらく転移勇者君達であろう彼らはせっかくの現代兵器を装備していなかった。いや、装備はしてるが使っていない。剣や槍、弓などオーソドックスなファンタジー系武器を使っているようだ。
「あれは魔剣ですね、何らかの強力な能力を持っているんだと思いますよ」
 魔剣など魔力を流すだけで発動する物は機能するということらしいし、斬撃を飛ばすなど空間に干渉しなければ問題ないのだろう。こういう時はだいたい身体能力強化系かな?
「ガルガスだっけ? すごいね、数人からの連撃を受け切って味方の突破口も維持してる」
 余裕は全くないという感じではあるがそれでも持ちこたえている。とんでもないタフネスだ。味方も鼓舞されているのか徐々に距離が縮まり拮抗し始めた、あれだけ近づいた至近距離戦なら身体能力の高い魔王軍も張り合えるのだろう。
「乱戦になってきましたね」
「チャンスだしこの隙に紛れて探索といこうか」
「わかりました」
 俺達はこそこそと移動を開始した。ぱっと見ドラゴニュートとゴブリンのコンビ、この戦場なら間違いなく魔王軍に勘違いされると思うけどしょうがないかな。
「おい! そこの奴ら!!」
 あ、見つかった……声の方を見ると帝国兵三人が銃をこっちに構えている。
「抵抗しなければ女の命は助けるしお前にも苦痛の無い死をくれてやる」
 そう言いながらゆっくりと近づいてくる。てかさ、中世の甲冑でアサルトライフル構えてるって違和感半端なくて笑えてくる。
「テメェ、何笑ってやがる!!」
 あ、顔に出てたみたい。とりあえず対応は戦争に介入するのもあれだし脳震盪で気絶させるだけの方がいいかな?
「どうせ殺すんだから気にすんな、連れの女は亜種だが悪くない。楽しませてもらおうぜ?」
「は?」
「トカゲ野郎の癖にいい娘連れやがって、生意気なんだよ」
「お前ら、人間以外興味ねぇんだろ? 何言ってやがる?」
「あ……」
 イリオは何かを察してくれたらしくスッと物陰に隠れた。
「てめぇらは人間様の出来損ないだろ? だからありがたぁく俺達人間が支配して有効活用してやるって言ってるんだよ」
「そうだな、その女を渡せばお前も殺さないで奴隷として使ってやるよ。ほら、抵抗しないでこっち来な? この武器はやばいぜ? お前らなんか敵にすらならねぇぞ?」
 早い話がイリオを犯すと言っているこいつらを許すわけねぇよな?
「!?」
 俺は一瞬で距離を詰め、飛び掛かる。正面から勢いを乗せたパンチを顔面目掛けて叩きつけた!! メキメキと金属がめり込み頭部にクレーターができあがった。甲冑の割れ目や視野確保用の隙間から赤黒い液体がドロドロと流れ出ていく。
「へ?」
 兵士達は一瞬過ぎて理解ができてないらしい、もちろん慈悲はない。俺は次の奴に向かい甲冑の首元を鷲掴みにした、ドラゴンの怪力は馬鹿にならないらしく鋼鉄であろう鎧がぐしゃりと音を立てて紙のようにぐしゃりと潰れていく。
「くっそ!?」
 残りの兵士が銃を構え、引き金を引いた。よく見ると銃は鉄と木でできているようで、俗に言うAK、カラシニコフと呼ばれるゲームなどでは定番のアレである。確かあれは安価で劣悪な環境でも故障が少ないんだったかな? こういう技術の無い中世くらいの世界で量産を考えるとあれが一番現実的なアサルトライフルなんだろうな、ミリオタも好きそうだし。
「ばっ、ばかっ!? やめっ……」
 俺は掴んでいた兵士をそのまま盾にした。甲冑に弾丸が当たりバチバチと金属が弾く音、そして盾が時折呻く声が聞こえてきたがしばらくしてその音が止んだ。
「くそっ、弾切れ!? 早く次のっ」
「次があるわけないだろっ!」
 俺は盾を銃を構える最後の一人目掛けて思い切り投げつけた、すると鈍いを音と共にそのまま倒れ込んだ。
「くっそ、なんでこんなことにっ……せっかく捕まえた女どもで遊べると思ったら哨戒任務に出されるし、出たら出たでこんな化け物居るなんて聞いてねぇぞ!! くそっくそがぁ!!」
「次があったら相手は選ぶくらいするといい」
 俺はゆっくりと起き上がれない兵士の元へ歩みより、一言掛けながら頭を冑ごと踏み潰したのだった。
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