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第82話

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「残念ですがそちらの要望にはお応えできません!」
「リョウゾウ殿、なぜですか!」
「こちらの書状には睦で使役した黒竜を本国へ献上せよとのことですが。わが領では黒竜の使役などしておりません! 何度も行ってるじゃないですか!」
 リョウゾウは声を荒げている。そもそも俺が長期で滞在してしまったのが少し不味かった感じだ。
「だが貴殿はドラゴンを使い危険な海賊を始末して回ったと聞いているぞ!」
「あれは取引により一時的に手を貸していただいただけであり。あの者を配下に加えたり使役するなど無謀にも程がある、逆に怒りに触れて滅ぼされますぞ!」
「しかしなぁ、あれを我が国に引き込めればどれだけの利益が……」
「あのドラゴンの本当に恐ろしいところは人の下心を見抜くところです。知能も高く確かに話せばわかってくださります……ですがドラゴンなのです! 自分を利用しようと近づいて来たと知れば王都は滅びます。あのドラゴンの噂は知っておるでしょうが!」
「考えてみろ、その力が我らの為に使われることを。大陸支配すら目じゃない、真の天下統一が狙えるのですぞ?」
「この目でその力を見たからこそ断言します。あれを操るなど人には荷が重すぎる! 逆鱗に触れた時点で皆殺しなんですよ!」
「それを魔術や拘束具などで制御してだな……」
「ワイバーン程度なら可能でしょう、しかしドラゴンなのですよ! あの知識を持つ大魔竜を使役しようとした時点で帝諸共国が焦土と化します!」
 今日、リョウゾウは本国の特使と朝からずっと言い合っている。早い話が俺を国の兵器として使いたいからよこせということらしい、おっちゃんはそんなことできないしやろうとしたらどうなるかを知っているから必死に拒絶しているがわからずやはなかなか折れないようだ。無駄にしつこい奴なことで……
「仕方ない……リョウゾウよ、ここの領主の任を解き。別の者にここを統治させ黒竜を本国へと連れ帰る……帝は黒竜を手に入れるために手段を選ぶつもりは無いのだ。すまんな……」
 あ~あ、言っちゃった。正直雰囲気的にこうなることはなんとなく予想してたんだよね……
「っく、貴様! 最初からそのつもりで!」
 部屋に侍が突入してくる。おっちゃんを囲み刀を抜刀した。
「すまんな。国家反逆罪だ、捕えろ……」
「おっちゃん、ここまでだ。後は俺がケリをつけてやるよ」
 二人の話していた部屋の一部が鏡が割れるように砕けソファーに座っていた俺が姿を現した。はい、お話は全部最初から聞いておりました。
「おっちゃんはいい領主だ、部下の信頼も厚い。こんないい人間をこんなとこで殺させるわけにはいかないんだよね、まだ貸しも返してもらってないし」
「無礼者! ここをどこだと思っている!!」
 侍の隊長みたいな奴が刀をこっちに向けながら吠える。
「お前こそ、誰に剣を向けている?」
 低く鋭い女性の声が響いた次の瞬間俺に刀を向けていた侍の首が吹き飛んでいた。
「な、何が起きた!?」
「き、貴様ぁ!」
 おぉ、ビビらないで斬りかかってくるんだ、すごいな。
「ぐぎゃ!?」
「主様に何してるんですか?」
 次の瞬間背後よりホロンに踏みつけられた侍の一人が鎧ごと床にめり込んで赤い泡を吹いている。変な音聞こえたしたぶん骨が完全に行っちゃったんだろうなぁ。
「なんだ!? お前達はいったいっ!? リョウゾウ、謀ったな!?」
「俺は何もしてねぇよ、ただヴリトラ殿の気に障ったんだよ」
「……」
 おっちゃんと話してた偉そうな奴は一瞬で固まってしまった。
「ご主人様、片付きました」
 そんなことしていると部屋に入ってきた侍はバラバラに切り裂かれているか壁や床にめり込んでぐちゃぐちゃになっていた。甲冑もめちゃめちゃだ、ホントすごいパワーだ……
「主様、外に居たのも終わりましたよ~」
 窓からサラがひょこっと顔を覗かせてそう知らせてきた。外で待機してた兵も丸ごと始末してしまったらしい、まったく誰の影響を受けてしまったのだか……
「じゃあ話の続きをしようか、偉そうなおっさん」
 顔面蒼白の使者に座りなと促してあげた。まぁ、話すにはちょっと散らかり過ぎだけどね。
「そもそもさ、俺に話があるならその帝だっけ? 一番偉い奴が直接挨拶に来て協力をお願いするもんじゃないの?」
「……」
「何様か知らねぇけど、ドラゴンがテメェらの犬になったなんてどんだけ頭の中お花畑なんだよ? ちょっと舐めすぎじゃない?」
「……」
「ヴリトラ殿、それくらいにしてやってくれませんか? 完全に心がいっちまってます」
 まぁ、人の姿だけどドラゴンのオーラ全開の張本人に自分の部下をひき殺した堕天使とミノタウロスが囲んでいるのだ。普通の人間ならこうなるよなぁ。
「おっちゃん、今後は大丈夫そう?」
「ん~わかんねぇ、大きな港はここしかねぇから下手な真似はしないと思うが……」
「納税を高くされたりとか無茶言われる可能性がありますね」
「ん~可能性はあるなぁ……」
「その本国って近いの?」
「あ? ここから更に東に山を一つ越えた先だが……まさか?」
「ちょっと挨拶してくるかなぁ」
「また詩が増えてしまいますね」
「そもそも、話があるなら自分が直接来るのが筋ってもんでしょ? それとも俺はそんな必要もない格下に思われてた?」
「さっきの話を聞く感じ所有物、兵器扱いですね。勇者と同じような物かと?」
「じゃあちょっと挨拶しなきゃねぇ」
 俺は立ち上がりただ茫然としてる使者のおっさんを掴みあげた。
「じゃあおっちゃん、ちょっと話つけてくるから片付けお願いしていい?」
「あ、あぁ。でも、どうする気なんだ?」
「最悪ここを独立させる、相手次第だけどね。おっちゃんには悪いけど頑張ってね!」
「まったく……おっかねぇぜ」
 頭を掻きながら敵わねぇという仕草をおっちゃんはしていた。
「信じますぜ? ヴリトラ殿。ここには都で生活できなかった半端者やここでしか生きていけねぇ奴らだって居るんだ」
「任せな。ルーフェいくぞ」
「はい、ご主人様」
「ホロン、サラこっちは任せるね」
「は~い」
「はい!」
 そして俺とルーフェは翼を広げて空へと飛び立つのであった。
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