79 / 147
第79話
しおりを挟む
「なんか、上手く利用された気がしますね」
港に到着してからの問答を聞いていたルーフェが不満そうに呟いた。
「まぁ、それも駆け引きの札の一枚だったし。それを分かった上でおっちゃんはああ言ったんだと思うよ?」
「ガテン系の脳みそ筋肉だと思っていましたが、そこは仮にも領主ということなんでしょうね」
あの人だかりの中での取引、あれはリョウゾウ、ここの領主は世界を騒がす魔竜ヴリトラと友好を結び取引のできる存在であると交易に来ていた様々な国に見せつける意図が大きくあったんだと思う。俺はそれを承知の上で取引に応じた、おっちゃんにとっては少し痛い出費があったとしてもとてつもない後ろ盾を味方につけれる。これは領地を守るという意味でも計り知れないアドバンテージなんだろうね。俺が国相手に殴り込みしちゃってるから猶更ね。
「でも今回の目的は達成できるし、ここと仲良くしておけば海産物が入手できる。これは大事だよ」
「確かに港町は交易品が集まりやすいですから、珍しい物が見つかるかもしれませんけど~……」
「いや、海の食べ物が手に入るというのが大事なの!」
「あ、そっちですか」
「そっちです!」
皆あんま意識してないみたいだけど、海の魚にエビ、カニ、イカ、タコ、カイそれに海藻。これだけでも食が大きく広がるのだ、今までの比ではないぞ! これを定期的に入手できる環境が作れたのだ、少しくらい利用されてあげても全然かまわないのだ。
「二人はほっといてもいろいろやってるだろうし、俺達も見て回ろうか。せっかく交易品が来てるみたいだしね」
「はい!」
俺は人間の姿に戻り、出店を楽しむことにした。やっぱ視線はあるけど……
「うちは漁業が主な収入だがここら辺では唯一の港町、自然と貿易の窓口にもなるのです」
「それでこんなに露店が多いんだな」
俺達が露店を見て回ると言ったらリョウゾウのおっちゃんがついて来てくれて、いろいろと案内や融通を利かせてくれている。おかげで大助かり!
「面白い本ですね。帝国ではなかなか見れなかった種類です」
ルーフェって以外と博学なんだよなぁ、実は暇な時結構読書していたりしている。普段があれなのであまり目立たないけど……
「アズハさんこれに合うんじゃないですか?」
「これなんかアイナちゃんに良さそうだよ?」
こっちの二人は女の子という感じで微笑ましい。アクセサリーなどいろいろ見て楽しそうだ。
「欲しかったら買っていいよ。おっちゃんが全部立て替えてくれるから!」
「はっはっは、まぁいい物貰ったしな。任せてくれ!」
さすがおっちゃん、太っ腹だ。
「それならアズハさん、他の物も見てみましょうよ! お土産もいっぱい買わなきゃ!」
「そうだね! ちょっと見てくる~」
「気を付けてね」
「ところで、ヴリトラ殿」
「ん?」
おっちゃんの雰囲気は急に真剣になった気がする空気間が気のいいおっちゃんから領主、責任者の顔に変わったのだ。
「よければなのですが。剣や弓、防具などを買うことはできますかな?」
「できなくはない、と答えましょう」
実際今回は漁具などをメインにわざと武具は持ってこなかった。世間では俺達が普段使ってる素材や道具は希少品ということもあるが、なにより加工が難しいのだ。帝国屈指と言われたガンプでさえいまだに毎日研究を続けている段階で俺の鱗を使った武具はとてもじゃないが量産できる状態ではないらしい。
「実は交易と漁業が盛んな海、ということは悪いことを考える輩も当然いるわけでして」
「そいつらと戦うために強い武器が欲しいと?」
「はい、正直今回頂いた品物も漁具兼用にしようと思うほどで」
実は今日提供した道具は鱗の濃度を下げて加工しやすくした完全量産型を想定した品物で一般の鉄製品よりも遥かに丈夫ではあるがそれでもミスリルやアダマンタイトなど上級鉱物には劣るとのことだった。正直詳しくはわかんないから十分だと思う。ガンプ達は納得してないんだけど……
「あのぐらいの品であれば数を用意できます。ですがあれ以上となると話は別ですね、あと防具の方は盾はありますけど防具は完全なオーダーメイド量産は無理かと」
「十分です、こっちとしても優秀な兵士達を失いたくない。できることは何でもしてやりたいのです」
おっちゃん、いい領主なんだろうな。ちゃんと民を見ている、権力を振り回す馬鹿ではないらしい。
「次ここに来る時、用意いたしましょう」
「ありがとうございます! この恩は必ずお返しいたします」
「いいさ、おっちゃんはいい人みたいだし。長生きして欲しいからね」
そう言って二人で笑いあった。こういう関係が築ける場所が増えたらいいな、ちょっとめんどくさいけど価値はあると思う。
港に到着してからの問答を聞いていたルーフェが不満そうに呟いた。
「まぁ、それも駆け引きの札の一枚だったし。それを分かった上でおっちゃんはああ言ったんだと思うよ?」
「ガテン系の脳みそ筋肉だと思っていましたが、そこは仮にも領主ということなんでしょうね」
あの人だかりの中での取引、あれはリョウゾウ、ここの領主は世界を騒がす魔竜ヴリトラと友好を結び取引のできる存在であると交易に来ていた様々な国に見せつける意図が大きくあったんだと思う。俺はそれを承知の上で取引に応じた、おっちゃんにとっては少し痛い出費があったとしてもとてつもない後ろ盾を味方につけれる。これは領地を守るという意味でも計り知れないアドバンテージなんだろうね。俺が国相手に殴り込みしちゃってるから猶更ね。
「でも今回の目的は達成できるし、ここと仲良くしておけば海産物が入手できる。これは大事だよ」
「確かに港町は交易品が集まりやすいですから、珍しい物が見つかるかもしれませんけど~……」
「いや、海の食べ物が手に入るというのが大事なの!」
「あ、そっちですか」
「そっちです!」
皆あんま意識してないみたいだけど、海の魚にエビ、カニ、イカ、タコ、カイそれに海藻。これだけでも食が大きく広がるのだ、今までの比ではないぞ! これを定期的に入手できる環境が作れたのだ、少しくらい利用されてあげても全然かまわないのだ。
「二人はほっといてもいろいろやってるだろうし、俺達も見て回ろうか。せっかく交易品が来てるみたいだしね」
「はい!」
俺は人間の姿に戻り、出店を楽しむことにした。やっぱ視線はあるけど……
「うちは漁業が主な収入だがここら辺では唯一の港町、自然と貿易の窓口にもなるのです」
「それでこんなに露店が多いんだな」
俺達が露店を見て回ると言ったらリョウゾウのおっちゃんがついて来てくれて、いろいろと案内や融通を利かせてくれている。おかげで大助かり!
「面白い本ですね。帝国ではなかなか見れなかった種類です」
ルーフェって以外と博学なんだよなぁ、実は暇な時結構読書していたりしている。普段があれなのであまり目立たないけど……
「アズハさんこれに合うんじゃないですか?」
「これなんかアイナちゃんに良さそうだよ?」
こっちの二人は女の子という感じで微笑ましい。アクセサリーなどいろいろ見て楽しそうだ。
「欲しかったら買っていいよ。おっちゃんが全部立て替えてくれるから!」
「はっはっは、まぁいい物貰ったしな。任せてくれ!」
さすがおっちゃん、太っ腹だ。
「それならアズハさん、他の物も見てみましょうよ! お土産もいっぱい買わなきゃ!」
「そうだね! ちょっと見てくる~」
「気を付けてね」
「ところで、ヴリトラ殿」
「ん?」
おっちゃんの雰囲気は急に真剣になった気がする空気間が気のいいおっちゃんから領主、責任者の顔に変わったのだ。
「よければなのですが。剣や弓、防具などを買うことはできますかな?」
「できなくはない、と答えましょう」
実際今回は漁具などをメインにわざと武具は持ってこなかった。世間では俺達が普段使ってる素材や道具は希少品ということもあるが、なにより加工が難しいのだ。帝国屈指と言われたガンプでさえいまだに毎日研究を続けている段階で俺の鱗を使った武具はとてもじゃないが量産できる状態ではないらしい。
「実は交易と漁業が盛んな海、ということは悪いことを考える輩も当然いるわけでして」
「そいつらと戦うために強い武器が欲しいと?」
「はい、正直今回頂いた品物も漁具兼用にしようと思うほどで」
実は今日提供した道具は鱗の濃度を下げて加工しやすくした完全量産型を想定した品物で一般の鉄製品よりも遥かに丈夫ではあるがそれでもミスリルやアダマンタイトなど上級鉱物には劣るとのことだった。正直詳しくはわかんないから十分だと思う。ガンプ達は納得してないんだけど……
「あのぐらいの品であれば数を用意できます。ですがあれ以上となると話は別ですね、あと防具の方は盾はありますけど防具は完全なオーダーメイド量産は無理かと」
「十分です、こっちとしても優秀な兵士達を失いたくない。できることは何でもしてやりたいのです」
おっちゃん、いい領主なんだろうな。ちゃんと民を見ている、権力を振り回す馬鹿ではないらしい。
「次ここに来る時、用意いたしましょう」
「ありがとうございます! この恩は必ずお返しいたします」
「いいさ、おっちゃんはいい人みたいだし。長生きして欲しいからね」
そう言って二人で笑いあった。こういう関係が築ける場所が増えたらいいな、ちょっとめんどくさいけど価値はあると思う。
12
お気に入りに追加
912
あなたにおすすめの小説
創造眼〜異世界転移で神の目を授かり無双する。勇者は神眼、魔王は魔眼だと?強くなる為に努力は必須のようだ〜
雅
ファンタジー
【HOTランキング入り!】【ファンタジーランキング入り!】
【次世代ファンタジーカップ参加】応援よろしくお願いします。
異世界転移し創造神様から【創造眼】の力を授かる主人公あさひ!
そして、あさひの精神世界には女神のような謎の美女ユヅキが現れる!
転移した先には絶世の美女ステラ!
ステラとの共同生活が始まり、ステラに惹かれながらも、強くなる為に努力するあさひ!
勇者は神眼、魔王は魔眼を持っているだと?
いずれあさひが無双するお話です。
二章後半からちょっとエッチな展開が増えます。
あさひはこれから少しずつ強くなっていきます!お楽しみください。
ざまぁはかなり後半になります。
小説家になろう様、カクヨム様にも投稿しています。
~僕の異世界冒険記~異世界冒険始めました。
破滅の女神
ファンタジー
18歳の誕生日…先月死んだ、おじぃちゃんから1冊の本が届いた。
小さい頃の思い出で1ページ目に『この本は異世界冒険記、あなたの物語です。』と書かれてるだけで後は真っ白だった本だと思い出す。
本の表紙にはドラゴンが描かれており、指輪が付属されていた。
お遊び気分で指輪をはめて本を開くと、そこには2ページ目に短い文章が書き加えられていた。
その文章とは『さぁ、あなたの物語の始まりです。』と…。
次の瞬間、僕は気を失い、異世界冒険の旅が始まったのだった…。
本作品は『カクヨム』で掲載している物を『アルファポリス』用に少しだけ修正した物となります。
巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する
高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。
手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。
二度目の異世界に来たのは最強の騎士〜吸血鬼の俺はこの世界で眷族(ハーレム)を増やす〜
北条氏成
ファンタジー
一度目の世界を救って、二度目の異世界にやってきた主人公は全能力を引き継いで吸血鬼へと転生した。
この物語は魔王によって人間との混血のハーフと呼ばれる者達が能力を失った世界で、最強種の吸血鬼が眷族を増やす少しエッチな小説です。
※物語上、日常で消費する魔力の補給が必要になる為、『魔力の補給(少しエッチな)』話を挟みます。嫌な方は飛ばしても問題はないかと思いますので更新をお待ち下さい。※
カクヨムで3日で修正という無理難題を突き付けられたので、今後は切り替えてこちらで投稿していきます!カクヨムで読んで頂いてくれていた読者の方々には大変申し訳ありません!!
*毎日投稿実施中!投稿時間は夜11時~12時頃です。*
※本作は眷族の儀式と魔力の補給というストーリー上で不可欠な要素が発生します。性描写が苦手な方は注意(魔力の補給が含まれます)を読まないで下さい。また、ギリギリを攻めている為、BAN対策で必然的に同じ描写が多くなります。描写が単調だよ? 足りないよ?という場合は想像力で補って下さい。できる限り毎日更新する為、話数を切って千文字程度で更新します。※
表紙はAIで作成しました。ヒロインのリアラのイメージです。ちょっと過激な感じなので、運営から言われたら消します!
称号チートで異世界ハッピーライフ!~お願いしたスキルよりも女神様からもらった称号がチートすぎて無双状態です~
しらかめこう
ファンタジー
「これ、スキルよりも称号の方がチートじゃね?」
病により急死した主人公、突然現れた女神によって異世界へと転生することに?!
女神から様々なスキルを授かったが、それよりも想像以上の効果があったチート称号によって超ハイスピードで強くなっていく。
そして気づいた時にはすでに世界最強になっていた!?
そんな主人公の新しい人生が平穏であるはずもなく、行く先々で様々な面倒ごとに巻き込まれてしまう...?!
しかし、この世界で出会った友や愛するヒロインたちとの幸せで平穏な生活を手に入れるためにどんな無理難題がやってこようと最強の力で無双する!主人公たちが平穏なハッピーエンドに辿り着くまでの壮大な物語。
異世界転生の王道を行く最強無双劇!!!
ときにのんびり!そしてシリアス。楽しい異世界ライフのスタートだ!!
小説家になろう、カクヨム等、各種投稿サイトにて連載中。毎週金・土・日の18時ごろに最新話を投稿予定!!
異世界でいきなり経験値2億ポイント手に入れました
雪華慧太
ファンタジー
会社が倒産し無職になった俺は再就職が決まりかけたその日、あっけなく昇天した。
女神の手違いで死亡した俺は、無理やり異世界に飛ばされる。
強引な女神の加護に包まれて凄まじい勢いで異世界に飛ばされた結果、俺はとある王国を滅ぼしかけていた凶悪な邪竜に激突しそれを倒した。
くっころ系姫騎士、少し天然な聖女、ツンデレ魔法使い! アニメ顔負けの世界の中で、無職のままカンストした俺は思わぬ最強スキルを手にすることになったのだが……。
転移した場所が【ふしぎな果実】で溢れていた件
月風レイ
ファンタジー
普通の高校2年生の竹中春人は突如、異世界転移を果たした。
そして、異世界転移をした先は、入ることが禁断とされている場所、神の園というところだった。
そんな慣習も知りもしない、春人は神の園を生活圏として、必死に生きていく。
そこでしか成らない『ふしぎな果実』を空腹のあまり口にしてしまう。
そして、それは世界では幻と言われている祝福の果実であった。
食料がない春人はそんなことは知らず、ふしぎな果実を米のように常食として喰らう。
不思議な果実の恩恵によって、規格外に強くなっていくハルトの、異世界冒険大ファンタジー。
大修正中!今週中に修正終え更新していきます!
勇者になんかなりたくないけど異世界では勇者だった!
オレオ
ファンタジー
ファタジーゲームが大好きな主人公
西木 十夜(にしき じゅうや 高校二年生)だがファタジーゲームで使うキャラはいつも勇者以外。小学生時代好きだったファタジーゲームで勇者を使っていたが友達に馬鹿にされそれ以来自分には合わない自分は使ってはいけないと思い込んで高校二年生を迎えた。
学校帰り十夜が家に帰ろうと横断歩道を渡ろうとした時事故に巻き込まれてそのまま
異世界転生してしまった!
そこで魔王と出会い魔王からこの異世界で生きる意味をもらい
自分の世界に帰るため魔王を倒すため勇者になることを誓った
異世界転生物語です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる