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第47話

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 桃を収穫した数日、熟して柔らかくなった桃で実験をしてみる。と言ってもほぼ成功が予想できてるから大量に作ってみる!
「主様お願いします!」
 呼ばれた先には大きな石のすり鉢が用意されている。カエルミンチ用とは別の新品である、さすがに同じのは使いたくない!
「あいよ~」
 俺は木を削って作ったすりこぎ棒を担いですり鉢の前にやって来る。中には昨日収穫した桃がたくさん入っている。
「じゃあ始めるね」
 俺は雑にその中へ棒を突っ込み粗くかき混ぜる。完全にすり潰すのではなく雑にゴロゴロ、ぐちゃぐちゃとかき回すのだ。理論的にはワインと同じやり方で作れると思う、早い話が桃でお酒、果実酒を作ろうという実験である。
「いい匂いですね」
「そろそろいいかな? 樽に流し込んでいくから持ってきて」
「はい!」
 ぐちゃぐちゃにした桃を樽に流し込んでいく、こういう作業はすり鉢を傾けて流し込んだりできるドラゴンの巨体が役に立つ。この力は戦闘以外の方が使いみちが多い気がする。
「これで最後です!」
「丁度こっちも終わりだ、いい配分だったね」
 桃ペーストを樽に移し終わった、全部で十個くらいかな?
「多いのか少ないのかわからないね」
「どうでしょうね」
 正直ブドウと同じやり方で同じようにできるかはわからない、しかし! ファウが発酵を促進するキノコを作り出したようなのでそれを一緒に混ぜ込んで促進する。ついでに甘いといいと調べたから妖精達から蜜を少し分けてもらって混ぜ込んだ。あとは神のみぞ知る! お酒を寝かす酒蔵も既に建築済み! てか洞窟掘って作った。お酒があれば生活が更に豊かに楽しくなる、上手くできてくれますように!
「リンゴでも作れるんですかね?」
「あぁ……もっと木貰って来ればよかった」
 リンゴはドワーフの村から貰ってきたもの、森中飛び回っても見つからないだろう。だけど樽一つくらいなら試せるかなぁ? ちなみにすり鉢に残った桃はヘラクスとタラドゥス達が綺麗に食べてしまった。
「精霊の実は小さいし量が足りないだろうし、次はやっぱブドウかなぁ」
 発酵などはマリーとファウが実験でいろいろ生み出し、キノコとして定着量産させてくれている。その中から最適な物選び使うことでチーズ、ヨーグルト、パン、そして今回のお酒と様々な物を作れるようになった、キノコを混ぜるという地球ではなかった工程があるが味もいいし問題ないと思う。どうやってあんなに種類を増やしているかは専門的すぎて理解できなかった、てかファウの説明じゃ子供の遊びみたいで誰も理解できないともう。なんとなくわかったのはキノコとして成長するもの、キノコを触媒に増えていく菌類が居るとのことだった。今回使ったりチーズなどで使っているのは後者の菌たちである。
「じゃあ樽を運んで寝かせようか」
「はい!」
 俺達は樽を蔵へと運び、上手くできるように祈りながら並べていった。リリネラがブドウもそろそろ大丈夫と言っていたのでついでに収穫を始めようと思う。
「このままブドウ狩りも始めるよ!」
「手の空いてる人達を集めてきますね!」
 桃ワインの準備が終わり、続いて本命ワインのためのブドウ狩り。今回は蜘蛛さんズの手助けは無し、全部人力でやらなければいけない。と思ったんだが今回は妖精族がヘルプに参加してくれた、ブドウ一房くらいなら抱えて飛べるとのことで切る担当、運んで籠に入れる担当に別れて手伝ってくれた。こういう作業はドラゴンじゃできないし大いに助かる。
「黒くなった実のやつを集めてね」
「まかせてあるじ様!」
「まかせてー!」
 普段の妖精族だが、基本的には畑を飛び回り蜜を集めたり花粉を運び受粉させたりするほかに魔法で害虫駆除をおこなってくれている。遊んでることも多いが畑関係では大変お世話になってるしここに移住して来てからそうとう楽になった。
「このブドウは普通に食べれるんですか?」
「食べれるけど、皮は渋いし種あるしで微妙じゃないかなぁ」
「ホントだ……甘いんですけどちょっと食べにくいです」
 手伝っていたセオがつまみ食いしていた。地球にあった食用品種、あれはこっちの世界にもあるのかな? そもそも品種改良とか考える段階の文明じゃないよなぁ……そんなことする技術も知識も持ち合わせてないしね、専門家でもないのにいろんなものを作ったり生み出すのは無理です! 現代知識で無双とか一般凡人ができるわけないでしょ無理無理、動画見てカンニングしても難しいわ!
「主様、とりあえず一通り収穫終わりました」
 ブドウが大量に入った籠をいくつも並べていく、これだけあれば結構な量のワインが作れそうだ。
「皆おつかれ~」
「がんばった!」
「つかれた~」
 妖精達もふらふら飛んで疲れたアピールをしている。なんというかリュクスやシンシアは女性的で大人っぽいんだけど、他の小さい妖精達はアーシラと同じくらいの子供な印象が強い。まぁイメージ通りと言えばそうなんだけど。
「ありがとね」
 すっかり日が暮れてしまった、とりあえず第一陣の収穫は完了したしワインにするのは明日でもいいかなぁ……
「そういえば皆はお酒飲めるの?」
「大好きです!」
 即答だった。やっぱ皆お酒好きなんだなぁ、地球だといろんな飲み物あってお酒飲めなくてもどうにでもなるけど、こっちじゃジュースかお酒ってなるんだろうなぁ。
「放浪生活を始めてからしばらく飲んでないんですっごく楽しみです!」
 こんなに楽しみにされたら失敗できないじゃん……とにかく、皆で宴会できるように頑張ろう、発酵がんばって!
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