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第37話
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「ピャルルー」
夫が来てからシラユキの朝の咆哮は無くなった、ブラックナイトも立派なお父さんらしい。朝から子供たちに飛び方を教えているようで賑やかなのはあまり変わらなかった。
「ヴリトラ様、おはよー」
「ヴリトラ様、朝だよー」
などなど妖精達が元気に飛び回っている環境も慣れてきた。正確な数はわからないがリュクスティスについてきた十数人が飛び回っている。
「なんか賑やかだね」
「そうだね」
妖精にもフェアリーとピクシーの二種類が居て基本的には羽で見分けるらしい。フェアリーが蝶のような羽でピクシーがトンボやカゲロウのような虫の羽らしい。ちなみに個体によって色がピンクや水色、黄色に黄緑とまちまちであるが特に差は無いらしい。
「主様、おはようございます」
「王女様、生活は慣れそうですか?」
「お部屋で人のように過ごすのは新鮮で楽しいです」
そういうと微笑んで見せた。今は逃亡生活の疲れを癒してもらっている段階だがチビッ子妖精たちは既にここの暮らしに貢献してくれている。受粉だ、去年はセッカ達に畑を走り回ってもらうというゴリ押しで進めたが今年は妖精たちが飛び回って受粉を手助けしてくれているためすごく助かっている。ついでに蜜も集めてくれているらしく何処かに妖精用の家が欲しいと打診を受けているところだ。
「そう言えばブラックナイトには名前って付けていました?」
「いえ、彼は一頭しかいませんし名前を付ける必要が無かったので」
「もしよかったら子供達と一緒に名前つけてもいいですか? シラユキだけ名前あるのもあれなんで」
「そうですね、是非お願いします! シラユキ本人も嬉しそうでしたし!」
許可も貰ったし名前を考えておこう、チビッ子達もたくさん産まれたしね。
「主様~早くいきましょ~!」
マリーが手を振ってせかしてくる、今日はこの前倒したマンティコアの素材回収に行く予定なのだ。なんでも結構な高級素材らしく部位的に薬にも使える物もあるとかでマリーがすごく欲しがっている。ちなみに、解体助っ人でミツボシさんとナナホシさんが来てくれる。
「じゃあ出発~」
「行ってらっしゃいませ~」
ドラゴンモードになりマリー達を乗せたらこの前の戦闘跡地へと向かって飛び立った。
「うわぁ……」
到着早々この一言である。まぁ一方的にボコボコにしてしまったし可哀想な結末ではあるかもしれない……ちなみに肉などだが一部獣に食い荒らされたらしくボロボロになっていた。
「まぁいいわ、採取を始めるわよ!」
マリーはテキパキと無事なマンティコアの体を切りだしていく。てかここ切りだしてとか折ってとか取り出してとかとってもドラゴン使いが荒い……ナナホシさん達は状態のいいヘルハウンドとマンティコアの皮や毛をするすると綺麗に剥いで回収していく。蜘蛛ってすごく器用なんだなって感心する。
「目、毒針も毒素も綺麗な状態、角や爪は武器素材に……あ、首持ってくんだっけ?」
「一応ね、殺したって証拠が欲しいだけだから素材は全部取っちゃっていいよ」
「は~い! 内臓も無事なの結構あるわね、薬の材料になるから嬉しいわ~!」
俺から見るとただの肉塊なのだが、マリーからすると宝の山のようだ。ちなみにこいつらの肉はとてもじゃないが喰えたものじゃないらしい、野生生物は普通に喰ってたみたいだけど。
「後は帰ってから加工するわ!」
採取は満足したらしい。ナナホシさん達ももう素材回収を終わらせてまとめていた、こっちは皮や毛側、骨がメインのようだ。
「じゃあ帰ろうか、残骸はこのまま放置でいいの?」
「この感じなら野生生物が食べてくれると思うけど、心配なら焼き払ってもいいわよ?」
「森が無駄に燃えちゃうし自然の力に任せますよ!」
そして山盛りの素材とマリー達を乗せて帰るために俺は飛び立った。
「おかえり~」
「ただいま」
しばらくして家に帰ってきた。山のような素材を見て早速品定めにアリッサとクーネリアが飛んできた。
「ミツボシさん、ここに網張ってくれない?肝を乾燥させたいの」
ミツボシさんは指定された木の杭が打たれた範囲に器用に糸の網を張ってみせた。
「ありがとー!」
マリーは樽に突っ込んでいた内臓を次々と出して並べていく。結構な大きさだし量もある、いったい何を作る気なんだあの娘……
「角の強度は……爪、牙、骨もう~ん……」
アリッサのお眼鏡にはかなわなそうだ、俺の鱗が基準になってるここだと素材のレベルがなかなかにバグっている気がする。
「たてがみはいい感じ、皮は損傷が多めですね……」
クーネリアもなかなかという雰囲気だ、ごめんね、今回は実験も兼ねていろいろやっちゃったから敵がボロボロなの……
「ヴリトラ様……」
宿屋の方からアズハに支えられながら誰かが歩いてきた。
「君は確か、シンシアだったよね? 怪我はもういいの?」
レフィに治療してもらっていたが、まだ安静だと聞いていた。もう歩いて平気なのかな?
「はい、この度は女王様だけじゃなく、我々まで助けていただき本当に感謝しております」
「気にしないでいいよ、もう聞いてると思うけど。君らもここに住むことになるみたいだからこれからよろしくね」
「ありがとうございます、そして差し出がましいようで申し訳ないのですがお願いがございます」
お願い、なんだろ? とりあえずこのままじゃ辛そうだし彼女を寝かせてあげてからゆっくりと聞くことにいたしましょうかね。
夫が来てからシラユキの朝の咆哮は無くなった、ブラックナイトも立派なお父さんらしい。朝から子供たちに飛び方を教えているようで賑やかなのはあまり変わらなかった。
「ヴリトラ様、おはよー」
「ヴリトラ様、朝だよー」
などなど妖精達が元気に飛び回っている環境も慣れてきた。正確な数はわからないがリュクスティスについてきた十数人が飛び回っている。
「なんか賑やかだね」
「そうだね」
妖精にもフェアリーとピクシーの二種類が居て基本的には羽で見分けるらしい。フェアリーが蝶のような羽でピクシーがトンボやカゲロウのような虫の羽らしい。ちなみに個体によって色がピンクや水色、黄色に黄緑とまちまちであるが特に差は無いらしい。
「主様、おはようございます」
「王女様、生活は慣れそうですか?」
「お部屋で人のように過ごすのは新鮮で楽しいです」
そういうと微笑んで見せた。今は逃亡生活の疲れを癒してもらっている段階だがチビッ子妖精たちは既にここの暮らしに貢献してくれている。受粉だ、去年はセッカ達に畑を走り回ってもらうというゴリ押しで進めたが今年は妖精たちが飛び回って受粉を手助けしてくれているためすごく助かっている。ついでに蜜も集めてくれているらしく何処かに妖精用の家が欲しいと打診を受けているところだ。
「そう言えばブラックナイトには名前って付けていました?」
「いえ、彼は一頭しかいませんし名前を付ける必要が無かったので」
「もしよかったら子供達と一緒に名前つけてもいいですか? シラユキだけ名前あるのもあれなんで」
「そうですね、是非お願いします! シラユキ本人も嬉しそうでしたし!」
許可も貰ったし名前を考えておこう、チビッ子達もたくさん産まれたしね。
「主様~早くいきましょ~!」
マリーが手を振ってせかしてくる、今日はこの前倒したマンティコアの素材回収に行く予定なのだ。なんでも結構な高級素材らしく部位的に薬にも使える物もあるとかでマリーがすごく欲しがっている。ちなみに、解体助っ人でミツボシさんとナナホシさんが来てくれる。
「じゃあ出発~」
「行ってらっしゃいませ~」
ドラゴンモードになりマリー達を乗せたらこの前の戦闘跡地へと向かって飛び立った。
「うわぁ……」
到着早々この一言である。まぁ一方的にボコボコにしてしまったし可哀想な結末ではあるかもしれない……ちなみに肉などだが一部獣に食い荒らされたらしくボロボロになっていた。
「まぁいいわ、採取を始めるわよ!」
マリーはテキパキと無事なマンティコアの体を切りだしていく。てかここ切りだしてとか折ってとか取り出してとかとってもドラゴン使いが荒い……ナナホシさん達は状態のいいヘルハウンドとマンティコアの皮や毛をするすると綺麗に剥いで回収していく。蜘蛛ってすごく器用なんだなって感心する。
「目、毒針も毒素も綺麗な状態、角や爪は武器素材に……あ、首持ってくんだっけ?」
「一応ね、殺したって証拠が欲しいだけだから素材は全部取っちゃっていいよ」
「は~い! 内臓も無事なの結構あるわね、薬の材料になるから嬉しいわ~!」
俺から見るとただの肉塊なのだが、マリーからすると宝の山のようだ。ちなみにこいつらの肉はとてもじゃないが喰えたものじゃないらしい、野生生物は普通に喰ってたみたいだけど。
「後は帰ってから加工するわ!」
採取は満足したらしい。ナナホシさん達ももう素材回収を終わらせてまとめていた、こっちは皮や毛側、骨がメインのようだ。
「じゃあ帰ろうか、残骸はこのまま放置でいいの?」
「この感じなら野生生物が食べてくれると思うけど、心配なら焼き払ってもいいわよ?」
「森が無駄に燃えちゃうし自然の力に任せますよ!」
そして山盛りの素材とマリー達を乗せて帰るために俺は飛び立った。
「おかえり~」
「ただいま」
しばらくして家に帰ってきた。山のような素材を見て早速品定めにアリッサとクーネリアが飛んできた。
「ミツボシさん、ここに網張ってくれない?肝を乾燥させたいの」
ミツボシさんは指定された木の杭が打たれた範囲に器用に糸の網を張ってみせた。
「ありがとー!」
マリーは樽に突っ込んでいた内臓を次々と出して並べていく。結構な大きさだし量もある、いったい何を作る気なんだあの娘……
「角の強度は……爪、牙、骨もう~ん……」
アリッサのお眼鏡にはかなわなそうだ、俺の鱗が基準になってるここだと素材のレベルがなかなかにバグっている気がする。
「たてがみはいい感じ、皮は損傷が多めですね……」
クーネリアもなかなかという雰囲気だ、ごめんね、今回は実験も兼ねていろいろやっちゃったから敵がボロボロなの……
「ヴリトラ様……」
宿屋の方からアズハに支えられながら誰かが歩いてきた。
「君は確か、シンシアだったよね? 怪我はもういいの?」
レフィに治療してもらっていたが、まだ安静だと聞いていた。もう歩いて平気なのかな?
「はい、この度は女王様だけじゃなく、我々まで助けていただき本当に感謝しております」
「気にしないでいいよ、もう聞いてると思うけど。君らもここに住むことになるみたいだからこれからよろしくね」
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