上 下
10 / 147

第10話

しおりを挟む
「よ、よろしくお願いしますっ」
 翌日、改めて連れてきたエルフ達を紹介した。もちろん今まで通りセッカ達を見て唖然、蜘蛛さんズを見て崩れ落ちてと展開がお約束になってきた。そして奴隷扱いでボロボロだった服はクーネリアが新作を一晩で仕上げて着替えさせていた。
「細かい事はセナに任せちゃっていい?」
「はい、お任せください!」
 新しく連れてきたエルフ達は三姉妹とのことで全員ピンクっぽい赤系の髪色をしていた。長女がポニーテールのリサ、次女がショートのリコ、三女がストレートのリリとの事で木工系と畑をお願いすることになった。
「今日のやることは、とりあえず、畑を拡張します」
 昨日もらった小麦と大豆を植えて量産したい。今回は冬までに間に合わないのでとりあえず土地として用意しておこうというだけだ、しかしパンや豆製品を考えるとそれなりの範囲が欲しかった。あとは放牧場の打診も受けた(別に馬の存在は忘れていないしちゃんとお世話しております)
「……」
「リサちゃんどうかしました?」
「いえ、ヴリトラ様、昨日はホントに怖い方なのかなって思ったんですけど……」
 どうやら俺が木を引っこ抜き、炎で草を焼き払い、土を爪で耕している姿を見て昨日とのギャップで混乱しているようだった。
「主様は普段あんな感じですよ、ただ敵対する者に容赦が無いだけで」
「そうなんですね……」
「じゃあ来て早速で悪いんだけど、主様の引き抜いた木材を加工していきますよ!」
「はい!」
 三姉妹も働き者ですごく助かっているし、ここで使われている鱗道具の性能に喜んでいた。そして、セッカの子供達だが牙が生え、最近ではお肉など普通の餌を食べるようになり結構大きくなってきた。と言ってもセッカやフブキの三分の一あるかないかくらいだ。
「ワン!」
 シローが俺を呼びに来た、このパターンは新たな住人な気がする。
「シローどうしたの?」
 ついて行くとセッカがお座りして待っていた。何かを咥えている……大きなキノコ? いや、キノコのカサから幼女が生えている。足がなんだか根っこみたいになっていたりと普通の人では無いのはわかった。しかも白目向いて気絶している、アニメとかなら口から魂が抜けてる演出が見えそうな感じだ。
「シロー、クーネリア呼んできて」
「ワン!」
 クーネリアを呼んだ理由、それはキノコ幼女が裸だったからだ。とにかくいろんな意味で幼女の裸は危険だし俺はロリコンじゃない! 早急にワンピースを作ってもらい着せてから気が付くのを待った。
「ぴぎゃっ!?」
 キノコ幼女は突然目覚めた。そして俺を見てフリーズした。これもいつものお約束になってきてる気がする、俺は悪いドラゴンじゃないよ!
「この子、ファンガスクィーンじゃないですか?」
「ワン!」
 セッカが正解! と言うように答える。
「ファンガスクィーンって?」
「キノコ系亜人マタンゴ族の最高位種族です。まだ幼い感じですが間違いないと思います」
「た、食べないで……」
 めっちゃ怯えられてます。まぁ、ドラゴン、狼、アラクネに囲まれたらこうなるよな……
「食べないよ、敵じゃない。安心して、なんでこの森にいたの?」
 できるだけ優しく、敵意はないよと伝えてみる。
「お母さんの住む場所から巣分けの為に旅だったら、この狼様に出会って、突然咥えられて……」
 連れてこられたということらしい。セッカが連れてくる種族は今のところ優秀だ、引き入れられたら利益があるのだと思う。
「あなたは、良菌種ですか?」
「なんか種類があるの?」
「マタンゴ族は大きく分けて他種族と共存し安全な繁殖地を提供してもらう代わりに有益な菌を提供する良菌種と、毒により住処を拡張、殺した死骸を苗床に増えていく悪菌種の二種類に分類されるのです」
「私、悪いキノコじゃないよ……住ませてくれるならたくさんお手伝いするよ?」
 どうやら良菌種のようだ。そもそもセッカが咥えてた時点で問題ないとは思った。
「住処が欲しいんだよね? ちょっといい場所があるんだけど一緒に来ない?」
 俺は人間モードになり、はてなマークを出しているキノコ幼女を連れていく。もちろん行く場所はコボルト達が掘ってくれたキノコの養殖室だ。
「すごい! すごいすごい!!!」
 部屋に入った瞬間ものすごく目をキラキラさせて興奮しているのが伝わってきた。
「気に入ったならここに住んでくれていいよ、ついでにキノコの面倒見たりしてくれると嬉しいかな」
「ほんと!? 住みたい!! ここ、すごくいい!!」
 正直キノコの繁殖が放置してても順調だったのでなんとなくそんな気はしていた。
「君はお名前ある?」
「?」
 あ、無いみたいだ。
「じゃあ、今から君はファウだ。よろしくね」
「ファウ! 私の名前! よろしくお願いします!!」
 後で聞いたのだが、知能の高い亜人種は歴代の家族に誰かしら言葉を理解したものが居れば継承して覚えていくとのことだった。ファウやアル達が普通に会話できたのはそういうことらしい。
「ヴリトラ様、アルちゃん達の作った窯で木炭を作ってみようと思うのですがいいですか?」
 ファウを案内して外に出てくるとリリがウルと話しているところに出くわした。
「あ、いいよ! やりたいことあるならどんどんやっちゃって。ウル、悪いんだけど要望に合わせた窯の作成お願いしてもいい?」
「お任せください!」
 二人は早速話し合い、作成を開始した。俺達は冬に向けて着実に準備を進めていくのだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ゆったりおじさんの魔導具作り~召喚に巻き込んどいて王国を救え? 勇者に言えよ!~

ぬこまる
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれ異世界の食堂と道具屋で働くおじさん・ヤマザキは、武装したお姫様ハニィとともに、腐敗する王国の統治をすることとなる。 ゆったり魔導具作り! 悪者をざまぁ!! 可愛い女の子たちとのラブコメ♡ でおくる痛快感動ファンタジー爆誕!! ※表紙・挿絵の画像はAI生成ツールを使用して作成したものです。

創造眼〜異世界転移で神の目を授かり無双する。勇者は神眼、魔王は魔眼だと?強くなる為に努力は必須のようだ〜

ファンタジー
【HOTランキング入り!】【ファンタジーランキング入り!】 【次世代ファンタジーカップ参加】応援よろしくお願いします。 異世界転移し創造神様から【創造眼】の力を授かる主人公あさひ! そして、あさひの精神世界には女神のような謎の美女ユヅキが現れる! 転移した先には絶世の美女ステラ! ステラとの共同生活が始まり、ステラに惹かれながらも、強くなる為に努力するあさひ! 勇者は神眼、魔王は魔眼を持っているだと? いずれあさひが無双するお話です。 二章後半からちょっとエッチな展開が増えます。 あさひはこれから少しずつ強くなっていきます!お楽しみください。 ざまぁはかなり後半になります。 小説家になろう様、カクヨム様にも投稿しています。

~僕の異世界冒険記~異世界冒険始めました。

破滅の女神
ファンタジー
18歳の誕生日…先月死んだ、おじぃちゃんから1冊の本が届いた。 小さい頃の思い出で1ページ目に『この本は異世界冒険記、あなたの物語です。』と書かれてるだけで後は真っ白だった本だと思い出す。 本の表紙にはドラゴンが描かれており、指輪が付属されていた。 お遊び気分で指輪をはめて本を開くと、そこには2ページ目に短い文章が書き加えられていた。 その文章とは『さぁ、あなたの物語の始まりです。』と…。 次の瞬間、僕は気を失い、異世界冒険の旅が始まったのだった…。 本作品は『カクヨム』で掲載している物を『アルファポリス』用に少しだけ修正した物となります。

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

二度目の異世界に来たのは最強の騎士〜吸血鬼の俺はこの世界で眷族(ハーレム)を増やす〜

北条氏成
ファンタジー
一度目の世界を救って、二度目の異世界にやってきた主人公は全能力を引き継いで吸血鬼へと転生した。 この物語は魔王によって人間との混血のハーフと呼ばれる者達が能力を失った世界で、最強種の吸血鬼が眷族を増やす少しエッチな小説です。 ※物語上、日常で消費する魔力の補給が必要になる為、『魔力の補給(少しエッチな)』話を挟みます。嫌な方は飛ばしても問題はないかと思いますので更新をお待ち下さい。※    カクヨムで3日で修正という無理難題を突き付けられたので、今後は切り替えてこちらで投稿していきます!カクヨムで読んで頂いてくれていた読者の方々には大変申し訳ありません!! *毎日投稿実施中!投稿時間は夜11時~12時頃です。* ※本作は眷族の儀式と魔力の補給というストーリー上で不可欠な要素が発生します。性描写が苦手な方は注意(魔力の補給が含まれます)を読まないで下さい。また、ギリギリを攻めている為、BAN対策で必然的に同じ描写が多くなります。描写が単調だよ? 足りないよ?という場合は想像力で補って下さい。できる限り毎日更新する為、話数を切って千文字程度で更新します。※ 表紙はAIで作成しました。ヒロインのリアラのイメージです。ちょっと過激な感じなので、運営から言われたら消します!

称号チートで異世界ハッピーライフ!~お願いしたスキルよりも女神様からもらった称号がチートすぎて無双状態です~

しらかめこう
ファンタジー
「これ、スキルよりも称号の方がチートじゃね?」 病により急死した主人公、突然現れた女神によって異世界へと転生することに?! 女神から様々なスキルを授かったが、それよりも想像以上の効果があったチート称号によって超ハイスピードで強くなっていく。 そして気づいた時にはすでに世界最強になっていた!? そんな主人公の新しい人生が平穏であるはずもなく、行く先々で様々な面倒ごとに巻き込まれてしまう...?! しかし、この世界で出会った友や愛するヒロインたちとの幸せで平穏な生活を手に入れるためにどんな無理難題がやってこようと最強の力で無双する!主人公たちが平穏なハッピーエンドに辿り着くまでの壮大な物語。 異世界転生の王道を行く最強無双劇!!! ときにのんびり!そしてシリアス。楽しい異世界ライフのスタートだ!! 小説家になろう、カクヨム等、各種投稿サイトにて連載中。毎週金・土・日の18時ごろに最新話を投稿予定!!

異世界でいきなり経験値2億ポイント手に入れました

雪華慧太
ファンタジー
会社が倒産し無職になった俺は再就職が決まりかけたその日、あっけなく昇天した。 女神の手違いで死亡した俺は、無理やり異世界に飛ばされる。 強引な女神の加護に包まれて凄まじい勢いで異世界に飛ばされた結果、俺はとある王国を滅ぼしかけていた凶悪な邪竜に激突しそれを倒した。 くっころ系姫騎士、少し天然な聖女、ツンデレ魔法使い! アニメ顔負けの世界の中で、無職のままカンストした俺は思わぬ最強スキルを手にすることになったのだが……。

転移した場所が【ふしぎな果実】で溢れていた件

月風レイ
ファンタジー
 普通の高校2年生の竹中春人は突如、異世界転移を果たした。    そして、異世界転移をした先は、入ることが禁断とされている場所、神の園というところだった。  そんな慣習も知りもしない、春人は神の園を生活圏として、必死に生きていく。  そこでしか成らない『ふしぎな果実』を空腹のあまり口にしてしまう。  そして、それは世界では幻と言われている祝福の果実であった。  食料がない春人はそんなことは知らず、ふしぎな果実を米のように常食として喰らう。  不思議な果実の恩恵によって、規格外に強くなっていくハルトの、異世界冒険大ファンタジー。  大修正中!今週中に修正終え更新していきます!

処理中です...