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4章
16話 期待と不安
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馬の蹄の音が一定のリズムを刻む。
窓の外に流れる景色は活気に満ち溢れ、普段王城で過ごしていると見ることの出来ないそれに、物珍しさを感じる。過ぎ行く人々の顔は皆笑顔で、国の豊かさを象徴しているようだ。
国境へと向かう馬車の中、セレナは期待と不安を胸に抱えながら窓の外を眺めていた。
この路を通るのは二度目だ。
一度目は自分のこれからのことを想像して、不安しかなかったものだが、今回は違う。
「何か気になるものでもあった?」
「ひゃっ」
前回のことを思い出してぼんやりと外を眺めていたセレナは、自分に覆いかぶさるようにして同じ窓を覗き込んできた人物に驚き、変な声を出してしまった。
ふわりとコロンの良い香りがする。間近で感じた彼の香りに、自然と鼓動が早くなる。
「殿下……近いです」
「二人きりだし、気にしない」
そう言って耳朶にキスをしてくるシュニー。先程から、ずっとこの調子だ。
以前この路を馬車で通った時、シュニーは向かいの座席に座っていたが、今はセレナの隣にいる。二人で肩を寄せ合い、常に身体が触れるほど密着していた。あの時からだいぶ近くなった距離に、嬉しさと恥ずかしさを感じる。
「でも、本当によかったの?」
シュニーが心配そうな顔つきで聞いてきた。その問いに小さく頷いて答える。
「はい。シュニー様がいるので、大丈夫です」
そう言うと、彼は少し困ったような笑顔でセレナの頭を撫でてくれた。
時は少し遡る。
その日、セレナはシュニーの執務室にて昼食を済ますと、彼から話があると言われた。
どうしたのかと首をかしげると、一通の招待状を渡される。その内容は、二カ月後にハスールで開かれる夜会への出席を問うものだった。
ハスールでは毎年、国王の誕生日に王宮で夜会が開かれる。他国の要人なども招いて、それはそれは盛大な催しになるらしい。らしい、と言うのは、もちろんセレナはそれに参加したことがないからだ。
そう言えば、もうすぐそんな時期だな、とどこか遠い国のことのように思った。
「セレナが行きたくないのであれば、断りを入れるけれど」
どうする?と希望を聞いてくるシュニー。
招待状を片手にセレナは思い悩んだ。
正直に言うと行きたくはない。しかし、何もかもを中途半端にして出てきてしまったセレナにとって、気がかりなことがあった。それは自分の育ての親と言ってもいい、乳母のケーラのことだ。彼女は今どうしているだろうか。セレナが居なくなった王宮で、まだ働いているのだろうか。
シュニーはセレナの希望通りに計らってくれるらしい。
セレナは自分がどうしたいのかを考え、そして答えを出した。
「私、行きます」
真っすぐシュニーを見て言った。その菫色の瞳に、何かを覚悟したような思いを宿して。
「……分かった。それじゃあ、出席の返事を出しておくよ」
セレナの決意を含んだその表情に、シュニーは頷いてくれた。
彼はセレナがハスールで置かれていた状況を知っている。アレストリアに来て少しした頃に、彼に全て話したのだ。シュニーは感じるものがあったようで、『つらかったね、でももう大丈夫だから』と言って、泣いてしまったセレナが落ち着くまで背中を撫でてくれた。
そんなこともあり、今回のハスール行きに反対されるかとも思ったのだが、シュニーはセレナの意思を尊重してくれた。
「ありがとうございます。ところで……その、殿下のご予定は大丈夫だったのですか?」
「問題ないよ、今からならある程度調整がきくから」
それに、と付け加えて、彼は一通の書状を出してきた。それはシュニー宛ではなく、アレストリアの外交担当に向けてのものだった。
ハスールはどうやら食料事情が芳しくないようで、それに関する支援と、近隣のヴェータ国への軍事同盟を取り付けたいらしい。急に擦り寄ってくるとは、セレナを嫁がせたことで強気になっているのか。
アレストリアの第三王子がハスールより嫁いだ王女を溺愛している、という噂は各方面に広がっていた。それはハスール国内も然り。
その影響もあり、ハスールのメルセド王はこの書状を送ってきたのだろう。
書状には、これについて話し合いの場を設けるからハスールまで来てほしいと書かれていた。そして、そのついでに夜会への出席を勧めるような流れになっている。
本来ならば支援を要請するのであれば向こうから出向くべきではあるが、今回は夜会のこともあり、歓迎するから観光も含め来てみてはどうかと言う文言になっていた。
「私が言うのもなんですが、随分と図々しいですね」
「本当だよ」
苦笑するしかないと言った表情で、彼は肩を竦めた。
「もし君が行かないのあれば、兄上に行ってもらう予定でいたんだ」
「……王太子殿下にですか?」
「そう」
兄、というとシュニーには二人いる。第二王子は騎士団所属で、国政にはほとんど関わっていないらしいので、考えられるのは第一王子のみであった。
「これからハスールとの関わりも増えてくるだろうから、自分の目で見てくるのも良いだろうって」
なるほど、とセレナは頷いた。
セレナが嫁いだことによって、今回のようにハスールと関わることは増えるだろうと予想がつく。王太子自らハスールの内情を確認する、という目的があるのなら納得できた。
「まあ、今回は君が出席するから、僕が特別大使として出向くことになるけど」
「宜しかったのですか?」
「君を一人で行かせるわけがないでしょう?」
それだけは絶対に許可できない、というシュニー。
付き合わせてしまうことを謝ると、彼は当然だよと言って笑ってくれた。
窓から見える景色は夕暮れに変わっていた。
もうすぐ本日の宿に到着する頃だろうか。
あの後彼は、楽しそうに言ってきた。
『夜会に出席するのなら、とびきりのドレスと宝石を用意しないと』
『程々にしてください!』
『好きな人を着飾る楽しみを奪うものじゃないよ』
急に張り切りだしたシュニーに慌てるセレナだったが、逆に彼に諭されてしまった。
そのため、当日の衣装については全て彼に任せることになったのだ。セレナ自身も特に希望はなかったので、よろしくお願いしますと彼に託した。
他にはダンスの練習もした。
セレナはアレストリアでは夜会に出席したことがない。正式に結婚するまで参加は許可できないと言って、なぜかシュニーが許してくれなかったのだ。
ハスールにて初めて出席した夜会はすぐに退出してしまったので、結局セレナは夜会で踊った経験は一度もなかった。
ダンスのレッスンはハスールでもアレストリアでも受けていたので、問題ないとは思う。だが、経験から来る心の余裕についてはそうも行かないので、不安があったのだ。
シュニーはまだ二カ月あるから二人で練習しようと言って、わざわざ時間を作ってセレナに付き合ってくれた。おかげで、他人に見せても恥ずかしくないものには仕上がったと思う。
そんな準備期間を経て、二人はハスールへの旅路についたのだった。
馬車が止まる。
どうやら宿に着いたようだ。
御者が開いてくれたドアからシュニーが先に降りる。それから、セレナの手を取ってエスコートしてくれた。
これから部屋で食事をとって、湯浴みを済ませたら今日はもう就寝する。もちろん部屋はシュニーと同じだ。彼は外で呪いが発動しないように、宿ではしっかり睡眠を取るらしい。
夕日が沈みかける空を見上げる。
明日には国境に着くそうだ。国境を越えたら、そこはもう祖国ハスールである。
思い出したくない記憶の残るその地に、胸の奥が騒つくのを感じた。
窓の外に流れる景色は活気に満ち溢れ、普段王城で過ごしていると見ることの出来ないそれに、物珍しさを感じる。過ぎ行く人々の顔は皆笑顔で、国の豊かさを象徴しているようだ。
国境へと向かう馬車の中、セレナは期待と不安を胸に抱えながら窓の外を眺めていた。
この路を通るのは二度目だ。
一度目は自分のこれからのことを想像して、不安しかなかったものだが、今回は違う。
「何か気になるものでもあった?」
「ひゃっ」
前回のことを思い出してぼんやりと外を眺めていたセレナは、自分に覆いかぶさるようにして同じ窓を覗き込んできた人物に驚き、変な声を出してしまった。
ふわりとコロンの良い香りがする。間近で感じた彼の香りに、自然と鼓動が早くなる。
「殿下……近いです」
「二人きりだし、気にしない」
そう言って耳朶にキスをしてくるシュニー。先程から、ずっとこの調子だ。
以前この路を馬車で通った時、シュニーは向かいの座席に座っていたが、今はセレナの隣にいる。二人で肩を寄せ合い、常に身体が触れるほど密着していた。あの時からだいぶ近くなった距離に、嬉しさと恥ずかしさを感じる。
「でも、本当によかったの?」
シュニーが心配そうな顔つきで聞いてきた。その問いに小さく頷いて答える。
「はい。シュニー様がいるので、大丈夫です」
そう言うと、彼は少し困ったような笑顔でセレナの頭を撫でてくれた。
時は少し遡る。
その日、セレナはシュニーの執務室にて昼食を済ますと、彼から話があると言われた。
どうしたのかと首をかしげると、一通の招待状を渡される。その内容は、二カ月後にハスールで開かれる夜会への出席を問うものだった。
ハスールでは毎年、国王の誕生日に王宮で夜会が開かれる。他国の要人なども招いて、それはそれは盛大な催しになるらしい。らしい、と言うのは、もちろんセレナはそれに参加したことがないからだ。
そう言えば、もうすぐそんな時期だな、とどこか遠い国のことのように思った。
「セレナが行きたくないのであれば、断りを入れるけれど」
どうする?と希望を聞いてくるシュニー。
招待状を片手にセレナは思い悩んだ。
正直に言うと行きたくはない。しかし、何もかもを中途半端にして出てきてしまったセレナにとって、気がかりなことがあった。それは自分の育ての親と言ってもいい、乳母のケーラのことだ。彼女は今どうしているだろうか。セレナが居なくなった王宮で、まだ働いているのだろうか。
シュニーはセレナの希望通りに計らってくれるらしい。
セレナは自分がどうしたいのかを考え、そして答えを出した。
「私、行きます」
真っすぐシュニーを見て言った。その菫色の瞳に、何かを覚悟したような思いを宿して。
「……分かった。それじゃあ、出席の返事を出しておくよ」
セレナの決意を含んだその表情に、シュニーは頷いてくれた。
彼はセレナがハスールで置かれていた状況を知っている。アレストリアに来て少しした頃に、彼に全て話したのだ。シュニーは感じるものがあったようで、『つらかったね、でももう大丈夫だから』と言って、泣いてしまったセレナが落ち着くまで背中を撫でてくれた。
そんなこともあり、今回のハスール行きに反対されるかとも思ったのだが、シュニーはセレナの意思を尊重してくれた。
「ありがとうございます。ところで……その、殿下のご予定は大丈夫だったのですか?」
「問題ないよ、今からならある程度調整がきくから」
それに、と付け加えて、彼は一通の書状を出してきた。それはシュニー宛ではなく、アレストリアの外交担当に向けてのものだった。
ハスールはどうやら食料事情が芳しくないようで、それに関する支援と、近隣のヴェータ国への軍事同盟を取り付けたいらしい。急に擦り寄ってくるとは、セレナを嫁がせたことで強気になっているのか。
アレストリアの第三王子がハスールより嫁いだ王女を溺愛している、という噂は各方面に広がっていた。それはハスール国内も然り。
その影響もあり、ハスールのメルセド王はこの書状を送ってきたのだろう。
書状には、これについて話し合いの場を設けるからハスールまで来てほしいと書かれていた。そして、そのついでに夜会への出席を勧めるような流れになっている。
本来ならば支援を要請するのであれば向こうから出向くべきではあるが、今回は夜会のこともあり、歓迎するから観光も含め来てみてはどうかと言う文言になっていた。
「私が言うのもなんですが、随分と図々しいですね」
「本当だよ」
苦笑するしかないと言った表情で、彼は肩を竦めた。
「もし君が行かないのあれば、兄上に行ってもらう予定でいたんだ」
「……王太子殿下にですか?」
「そう」
兄、というとシュニーには二人いる。第二王子は騎士団所属で、国政にはほとんど関わっていないらしいので、考えられるのは第一王子のみであった。
「これからハスールとの関わりも増えてくるだろうから、自分の目で見てくるのも良いだろうって」
なるほど、とセレナは頷いた。
セレナが嫁いだことによって、今回のようにハスールと関わることは増えるだろうと予想がつく。王太子自らハスールの内情を確認する、という目的があるのなら納得できた。
「まあ、今回は君が出席するから、僕が特別大使として出向くことになるけど」
「宜しかったのですか?」
「君を一人で行かせるわけがないでしょう?」
それだけは絶対に許可できない、というシュニー。
付き合わせてしまうことを謝ると、彼は当然だよと言って笑ってくれた。
窓から見える景色は夕暮れに変わっていた。
もうすぐ本日の宿に到着する頃だろうか。
あの後彼は、楽しそうに言ってきた。
『夜会に出席するのなら、とびきりのドレスと宝石を用意しないと』
『程々にしてください!』
『好きな人を着飾る楽しみを奪うものじゃないよ』
急に張り切りだしたシュニーに慌てるセレナだったが、逆に彼に諭されてしまった。
そのため、当日の衣装については全て彼に任せることになったのだ。セレナ自身も特に希望はなかったので、よろしくお願いしますと彼に託した。
他にはダンスの練習もした。
セレナはアレストリアでは夜会に出席したことがない。正式に結婚するまで参加は許可できないと言って、なぜかシュニーが許してくれなかったのだ。
ハスールにて初めて出席した夜会はすぐに退出してしまったので、結局セレナは夜会で踊った経験は一度もなかった。
ダンスのレッスンはハスールでもアレストリアでも受けていたので、問題ないとは思う。だが、経験から来る心の余裕についてはそうも行かないので、不安があったのだ。
シュニーはまだ二カ月あるから二人で練習しようと言って、わざわざ時間を作ってセレナに付き合ってくれた。おかげで、他人に見せても恥ずかしくないものには仕上がったと思う。
そんな準備期間を経て、二人はハスールへの旅路についたのだった。
馬車が止まる。
どうやら宿に着いたようだ。
御者が開いてくれたドアからシュニーが先に降りる。それから、セレナの手を取ってエスコートしてくれた。
これから部屋で食事をとって、湯浴みを済ませたら今日はもう就寝する。もちろん部屋はシュニーと同じだ。彼は外で呪いが発動しないように、宿ではしっかり睡眠を取るらしい。
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