10 / 15
紫陽花の花言葉とともに
しおりを挟む
今日は六月の何日、何曜日だろうか。
何日も同じような激しい雨が続き、今日も雨が降っていた。
そんな日に私は、一人でカフェに来ていた。
紅茶を飲みながら、思い耽って外を眺めると、店のガラス張り越しに、カフェの花壇に綺麗に咲いている紫陽花の花が見えた。 赤、青、紫と鮮やかに彩られた三色の紫陽花に私は、見入っていた。率直に綺麗だと思った。でも私は紫陽花という花を到底、好きにはなれなかった。
というのも、紫陽花を綺麗だが、怖い花であると認識してしまったからである。
私は、幼い頃、自由研究で色々な花の花言葉とその特徴について調べていた。
紫陽花を調べると、食中毒になる麻痺毒があるとされ、花言葉は「移り気」、「浮気」、「無常」というネガティブな意味があった。
それを私はずっと覚えていて、ある時、紫陽花が嫌いになった。そのある時は、今から二週間ほど前のことだった。
私はいつもの様に彼とデートをしていた。街を歩き、買い物をして、休憩にカフェでくつろぐ。いつもの様にとは、こんなルーティーンだ。
でも彼は、いつもの様子では無かった。どこかソワソワとして、時計や携帯を何度も見ていた。
あの時も、今私がいるカフェに、2人で入っていた。
飲み物を注文して、少し経った後に、事件は起こった。
「佑太くん」
彼氏の名前が綺麗な声で呼ばれ、彼が後ろを振り向いた。
私もその方向を見ると、背の高いスラッとしたモデルのような美しい女性が立っていた。背が低く地味な私とは正反対の見た目をしていた。
「どういうこと?」
私が自然と口に出た言葉だった。
彼は困惑し、相手の女も困惑していた。
私は2人に目もくれず、彼がなにか言い訳をして私にしがみつこうとしたが、それを振り払ってその場を去った。
飲みかけのアイスティーだけがその場に残っていた。
私は、その後正式に彼氏と別れた。
彼の言い分としては、私と冷めていた時にあの美人な女性に言い寄られ、目移りしてしまい、まんまとハニートラップにかかったらしかった。
私は、それを聞いてひとつも同情しようとは思わなかった。目移りしてしまったのは仕方ない。だが、私にそれを隠し通して、今までずっと嘘をついていたのが許せなかった。
私はその浮気を引きづっていたから、今こうして綺麗な紫陽花を見て、一人、憂いているのである。
紫陽花の花言葉を知らなければ、良かったのにと思う。そうすればこの綺麗な花を嫌いにならず、私は好きになっていただろう。
紫陽花を見ながら、花言葉を改めて思い返す。移り気、浮気、無常。なぜ、人は浮気をしてしまうのだろう。私は到底理解が出来なかった。私の浮気の知識はトレンディドラマでしかない。そこでの浮気は、人生の巡り合わせでたまたま運命的にそうなってしまうような描かれ方をする。でも、現実の浮気はそうでは無いと思っている。結局、浮気をする人は、恋人に冷め、恋人を捨てようとするが捨てる勇気も無く、逃げで浮気をするのだと私は解釈した。それが一番相手を傷つけるとも知らず、人の思いを考えられない最低人間のすることである。何度も会っていたなら尚更、浮気された方の気持ちを考えて何処かで踏みとどまるべきである。例え、トレンディドラマのような運命的な出会いをしたとしてもだ。
一途な、私が馬鹿みたいだ。確かにあの美女とは真逆で、地味で背も低く、オシャレでも無いかもしれない。でも、私は、誰よりも彼を思っていたのだ。
そこで、私はある事を思い出した。
紫陽花には色別の花言葉があるということを。
花壇には植えられていなかった、緑の紫陽花の花言葉にはひたむきな愛、白の紫陽花の花言葉には一途な愛がある。
まさに私に相応しい花言葉だと思った。
紫陽花を一括りにして、嫌いになっていた私が馬鹿らしくなった。
私は、カフェを後にして、緑と白の紫陽花を探しに行くことにした。
私が後にしたカフェにはあの時のアイスティーとは違い、まだほんのりと暖かい飲みかけの紅茶が残されていた。
何日も同じような激しい雨が続き、今日も雨が降っていた。
そんな日に私は、一人でカフェに来ていた。
紅茶を飲みながら、思い耽って外を眺めると、店のガラス張り越しに、カフェの花壇に綺麗に咲いている紫陽花の花が見えた。 赤、青、紫と鮮やかに彩られた三色の紫陽花に私は、見入っていた。率直に綺麗だと思った。でも私は紫陽花という花を到底、好きにはなれなかった。
というのも、紫陽花を綺麗だが、怖い花であると認識してしまったからである。
私は、幼い頃、自由研究で色々な花の花言葉とその特徴について調べていた。
紫陽花を調べると、食中毒になる麻痺毒があるとされ、花言葉は「移り気」、「浮気」、「無常」というネガティブな意味があった。
それを私はずっと覚えていて、ある時、紫陽花が嫌いになった。そのある時は、今から二週間ほど前のことだった。
私はいつもの様に彼とデートをしていた。街を歩き、買い物をして、休憩にカフェでくつろぐ。いつもの様にとは、こんなルーティーンだ。
でも彼は、いつもの様子では無かった。どこかソワソワとして、時計や携帯を何度も見ていた。
あの時も、今私がいるカフェに、2人で入っていた。
飲み物を注文して、少し経った後に、事件は起こった。
「佑太くん」
彼氏の名前が綺麗な声で呼ばれ、彼が後ろを振り向いた。
私もその方向を見ると、背の高いスラッとしたモデルのような美しい女性が立っていた。背が低く地味な私とは正反対の見た目をしていた。
「どういうこと?」
私が自然と口に出た言葉だった。
彼は困惑し、相手の女も困惑していた。
私は2人に目もくれず、彼がなにか言い訳をして私にしがみつこうとしたが、それを振り払ってその場を去った。
飲みかけのアイスティーだけがその場に残っていた。
私は、その後正式に彼氏と別れた。
彼の言い分としては、私と冷めていた時にあの美人な女性に言い寄られ、目移りしてしまい、まんまとハニートラップにかかったらしかった。
私は、それを聞いてひとつも同情しようとは思わなかった。目移りしてしまったのは仕方ない。だが、私にそれを隠し通して、今までずっと嘘をついていたのが許せなかった。
私はその浮気を引きづっていたから、今こうして綺麗な紫陽花を見て、一人、憂いているのである。
紫陽花の花言葉を知らなければ、良かったのにと思う。そうすればこの綺麗な花を嫌いにならず、私は好きになっていただろう。
紫陽花を見ながら、花言葉を改めて思い返す。移り気、浮気、無常。なぜ、人は浮気をしてしまうのだろう。私は到底理解が出来なかった。私の浮気の知識はトレンディドラマでしかない。そこでの浮気は、人生の巡り合わせでたまたま運命的にそうなってしまうような描かれ方をする。でも、現実の浮気はそうでは無いと思っている。結局、浮気をする人は、恋人に冷め、恋人を捨てようとするが捨てる勇気も無く、逃げで浮気をするのだと私は解釈した。それが一番相手を傷つけるとも知らず、人の思いを考えられない最低人間のすることである。何度も会っていたなら尚更、浮気された方の気持ちを考えて何処かで踏みとどまるべきである。例え、トレンディドラマのような運命的な出会いをしたとしてもだ。
一途な、私が馬鹿みたいだ。確かにあの美女とは真逆で、地味で背も低く、オシャレでも無いかもしれない。でも、私は、誰よりも彼を思っていたのだ。
そこで、私はある事を思い出した。
紫陽花には色別の花言葉があるということを。
花壇には植えられていなかった、緑の紫陽花の花言葉にはひたむきな愛、白の紫陽花の花言葉には一途な愛がある。
まさに私に相応しい花言葉だと思った。
紫陽花を一括りにして、嫌いになっていた私が馬鹿らしくなった。
私は、カフェを後にして、緑と白の紫陽花を探しに行くことにした。
私が後にしたカフェにはあの時のアイスティーとは違い、まだほんのりと暖かい飲みかけの紅茶が残されていた。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
女子高生は卒業間近の先輩に告白する。全裸で。
矢木羽研
恋愛
図書委員の女子高生(小柄ちっぱい眼鏡)が、卒業間近の先輩男子に告白します。全裸で。
女の子が裸になるだけの話。それ以上の行為はありません。
取って付けたようなバレンタインネタあり。
カクヨムでも同内容で公開しています。
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子
ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。
Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。
校外学習の帰りに渋滞に巻き込まれた女子高生たちが小さな公園のトイレをみんなで使う話
赤髪命
大衆娯楽
少し田舎の土地にある女子校、華水黄杏女学園の1年生のあるクラスの乗ったバスが校外学習の帰りに渋滞に巻き込まれてしまい、急遽トイレ休憩のために立ち寄った小さな公園のトイレでクラスの女子がトイレを済ませる話です(分かりにくくてすみません。詳しくは本文を読んで下さい)
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
就職面接の感ドコロ!?
フルーツパフェ
大衆娯楽
今や十年前とは真逆の、売り手市場の就職活動。
学生達は賃金と休暇を貪欲に追い求め、いつ送られてくるかわからない採用辞退メールに怯えながら、それでも優秀な人材を発掘しようとしていた。
その業務ストレスのせいだろうか。
ある面接官は、女子学生達のリクルートスーツに興奮する性癖を備え、仕事のストレスから面接の現場を愉しむことに決めたのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる