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第24話
しおりを挟む誓約書が有効ならば、ギルさんはチャーリーさんに手出しできない。
私を魔力値0の無能だと思っているチャーリーさんにとって、これは形勢逆転とも言えた。チャーリーさんは団長の首を刎ねた刀を片手に、魔法陣を取り出した。
攻撃してくるつもりだ‥。私の腕の中にはレックスがいるのに。
私はレックスを左腕に抱きながらも右手に魔法陣を用意した。レックスに怪我をさせるわけにはいかない。
そういえば‥他人が魔法を使うところを見るのは、ギルさんに続いて2人目だわ。
この国に住う全員が魔力を宿しているというのに‥底辺の底辺では、魔法の使い方さえ教育されてない。それなら魔力0と何ら変わらないのにね。
私が魔力0だと馬鹿にし続けていたサーカスの人たちも、結局魔法を唱えられないんだから笑えてしまう。
奴隷のような扱いを受けていた下っ端の人たちは、魔法が使えない方が上の人たちにとって都合がいいのかもしれない。
「ただ殺すだけじゃ済まないからなぁ!!
生きたまま内臓を引き抜いてやるっ!!その無様な姿をサーカスの見世物にしてやろう!!!」
怒り狂うチャーリーさんは、狂気じみていた。
ただ私は一切怯まない。今日は待ちに待った復讐の日だもの。
「雷の精霊よ、我に力を授けよ!
この小娘を引き裂く刃に雷を!!」
チャーリーさんが大きな声でそう叫ぶと、チャーリーさんの刀はバチッと音を立て、青白い光がパチパチと瞬いていた。
ーーえ?
雷‥ショボくない?あー、そもそも‥普通は天候を左右する魔法を使えないから、こんなもんが普通なのかな?
「どうだ!!これが魔法の力!!
無力なお前には一生使えない力だ!!!」
私は小さく溜め息を吐いて、右手の魔法陣を顔の高さまで持ち上げた。
「‥?!何故お前が魔法陣を持っている?!
笑わせるなよアイナァ!」
耳に嫌に残るような、汚くて大きな笑い声。下品なのよね、すべてが。
詠唱しなくても魔法は使えるけど、ギルさんじゃなくて私が魔法を使ったんだと分らせてやりたい。私はこの時、初めて詠唱を口にした。
「‥雷の精霊よ、我に力を授けよ。
この男の近くに、我の力を知らしめる雷を」
ーーピカッ!!ゴロゴロゴロォォ!ドドッドォオオオン!!!
地が裂け、鼓膜が破れそうな程の爆音と衝撃。
驚いたレックスが泣き叫んでしまった。驚かせてごめんなさい、レックス。
大きな雷はチャーリーさんの近くの巨木に落ち、巨木は内部から轟々と炎をあげ始めた。
目玉が飛び出る程に目を丸くしたまま、チャーリーさんは腰を抜かして小便を漏らしている。
私はこの隙にレックスをギルさんに預けた。
「危ないかもしれないので少し離れたところにいてください」
「大丈夫か?」
「大丈夫に決まってるでしょう」
ギルさんも私の魔力を理解しているから、そうだなと笑ってレックスをあやしながら歩き始めた。魔法で花を出したり、周りをキラキラさせたりしている。復讐劇には相応しくない光景で、私は思わずクスッと笑ってしまった。
そして、ガクガクと震えているチャーリーさんの前にしゃがみ込んだ。
「チャーリーさん、雷って知ってます?
チャーリーさんの雷って、ただの静電気ですよね。
なんならもう一度見ますか?ホンモノ」
にっこり微笑みながら首を傾げると、チャーリーさんは声にならない声をあげながら、ブンブンと激しく横に首を振った。
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