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第2章 旅立ち~9つの珠を探して~
第26話 南都の猫又
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肥前を目指し、京を出て西へ進んでいたまゆ一行。しかしそこへチュン太郎が現れ、あることを知らせる。
雪乃「あああ!チュン太郎!チュン太郎である!おーい!ここである!ここであるぅぅ!」
チュン太郎「雪乃!雪乃が長年探していた”あいつ”をついに見つけたぞ!場所は南都!そいつは一晩で数人の人間を食い殺したらしい!」
雪乃「なんと!お友達になるにふさわしい器と見た!長年探し求めた甲斐があったというもの!チュン太郎!でかしたにゃ!
二人とも!方向転換にゃ!今から引き返し、南都へ向かうにゃ!」
まゆ「えーっ!引き返すの?」
雪乃「ゆってもまだ都を出て数時間しか歩いてにゃいにゃ?別にそこまでのロスでもないにゃ!それにこの機会を逃せば、やつは、次いつ出没するか分らないと見た!
これは行くしかないというもの!」
熊吉「そもそも”あいつ”とは何なのだ?」
雪乃「一言で言えば、まぁ、猫。」
雪乃「補足するとすれば、まぁ、猫の妖怪。」
雪乃「もぉーすこぉーし補足するとすれば、巨大な猫。」
雪乃「結論としては、まぁ、猫。」
熊吉「おお、今回はよくわかったぞ。して、その猫又をなぜ探していたんだ?」
雪乃「あたしは、日本全国の色んな猫ちゃんとお友達になりたいと考えている。
そして以前、父上から猫又という猫の妖怪がいるという話を聞き、一度会ってみたいと思ってチュン太郎に頼んで猫又の情報を集めていたところである。そしてついに!たった今!その猫又ちゃんが現れたという知らせを聞いたので、その猫又ちゃんをお友達にしたく、南都へ行こうと言っている次第。」
熊吉「なるほどな。でもそんな人食い猫と友達になんてなれるのか?そもそもそんな妖怪と会うなんて危険では?」
雪乃「にゃーにを行ってるのか!あたしが分かり合えない猫なんてこの世にいにゃーいというもの!ほら!こうしている間にどこかへ行ってしまうかもしれないにゃ!急ぐにゃあ!」
まゆ「まぁ、そもそもあたしの旅に付き合ってくれてる訳だし、ちょっとくらい言うこと聞いてあげなきゃね。付き合うわよ、雪ちゃん。」
熊吉「まゆがいいなら俺も付き合うぜ。」
雪乃「二人とも、ありがとにゃ!じゃあ、レッツラゴーである!」
3人は進行方向を変え、南都へ向かった。南都は京の都からそんなに距離は離れていないのですぐについた。
南都到着。
すると、雪乃のカバンの中にいた唯ちゃんが急にカバンから飛び出した!
唯「にゃあああああ。」
雪乃「あ!唯ちゃん!勝手に出てきたらダメだにゃあ!」
熊吉「え!この猫連れてきてたの!?」
まゆ「あらあら笑」
雪乃「んー。唯ちゃんは一体なにを言ってるのか、、、あ!そうだ!ペン吉!ペン吉!今起きてるかにゃ?」
ペン吉「んー?こんな真昼間からどうした?何か用?」
熊吉「な、な、なんだこいつ!?と、鳥!?雪乃の懐から急に出てきた?そして、人間の言葉をしゃべったぁぁ!??雪乃、その子は一体何者なんだ!?」
雪乃「ブヨはいちいちリアクションがデカすぎなのである。まぁいいか。教えてあげるー!」
雪乃「一言で言えば、まぁ、鳥。」
雪乃「補足するとすれば、まぁ、小さな鳥。」
雪乃「もぉーすこぉーし補足するとすれば、あたしのお友達。」
雪乃「結論としては、まぁ、鳥。」
熊吉「いや、今回はさすがに情報が足りない、、、」
まゆ「ペン吉君はね、ペンギンの子供で、普段は雪ちゃんの懐に住んでいるの。この子は不思議なことに人間の言葉を理解できるの。
だから、雪ちゃんが動物と話すとき、いつも通訳してくれるのよ。」
雪乃「えっへん!まぁ、そんなところである!」
熊吉「ちょっと理解が追い付かない、、、」
まゆ「まぁ、雪ちゃんは個性的なお友達が多いからね笑ちょっとずつ慣れていけばいいと思う!」
熊吉「ああ、がんばるよ。」
雪乃「ペン吉、さっそくだけれども、唯ちゃんを通訳してくれにゃ。」
ペン吉「あーはいはい、いつものことね。唯、話してごらん?」
唯「この町、何かいる。まがまがしい妖気を感じる。この町から早く出た方がいい。」
雪乃「それはきっと猫又の妖気だにゃ。」
唯「猫又!?それなら一層はやくここから立ち去るべき。いくら雪乃でも猫又と分かり合うのは至難の業。」
雪乃「そんなことは、やってみなければわからないというもの!」
唯「雪乃らしい。わかった、でも無理だけはしないで。」
雪乃「ご心配ありがとにゃ!」
唯「それともう一つ。この町からは、嗅いだことのある懐かしい匂いがする。でも何の匂いだったか思い出せない。」
雪乃「んー?一体何の匂いかにゃ?人の匂いかにゃ?」
唯「わからない、でもとにかくすごく懐かしい匂いがする。」
雪乃「なら、また何かわかったら教えてにゃ!」
唯「うん。」
雪乃「ペン吉、ご苦労にゃ!」
ペン吉「はーい、じゃあな!」
ペン吉はまた雪乃の懐へと戻っていった。
熊吉「この町にその猫又ってやつがいるのは間違いなさそうですね。それに、その嗅いだことのある匂いっていうの、私もちょっと共感するところがある。
このなんともいえない独特な匂い。どこで嗅いだ匂いだったかなぁ。誰か、人の匂いだったと思うんだが。」
雪乃「なら、また何かわかったら教えてにゃ!」
熊吉「うん。」
その頃、三条邸では、、、
公房「はあ、雪乃大丈夫かなぁ、やっぱり心配だなぁ、あんな小さな子に旅なんて危険すぎないかなぁ。はああああ。落ち着かないなぁ。」
雪乃を心配する公房。そこへ、、、
???「ゴンゴンゴン。ごめんくださーい。」
公房「ん?誰じゃ?」
頼経「公房殿、私です。」
公房「おお!頼経様!ささ、おあがりください。」
頼経「かたじけない。ところで、まゆたちは無事に旅立ったか?」
公房「ええ、明朝旅立ちました。」
頼経「そうか、それはよかった。ところで、公房殿、二つお聞きしたいのだが。」
公房「ええ、なんなりとどうぞ。」
頼経「では一つ目。あなたは霊感強いですか?」
公房「れ、霊感?い、いえ、そのように思ったことはございません。」
頼経「そうか、実は私は生まれつき霊感がかなり強くてな。もはや霊がはっきりと目視できるレベルなんだ。」
公房「そりゃあ、お気の毒に。」
頼経「ああ、まぁ、仕方ないさ。では二つ目。雪乃さんを鎌倉に連れて行ったことはありますか?」
公房「ええ、ありますよ。関東で嘉禄の乱が起こる少し前、雪乃を含めた一族何人かと鎌倉へ行き、北条泰時様にご挨拶をしに参ったことがございます。」
頼経「その時、雪乃さんは何か変わった行動を取っていませんでしたか?」
公房「いえ、特に。まぁ、四六時中変わった行動を取っている子ですから、そういう行動があったとしても、印象に残らないかと笑」
頼経「そ、そうですか笑」
公房「ああ!そういえば!」
頼経「なんです?」
公房「あの子、とにかく頼朝公のお墓に行きたいといって聞かなくて、家来の者を引き連れて勝手にお墓参りに行ってしまったんですよ。
なんでも、夏祭りで琵琶のお姉ちゃんに平家物語を聞かせてもらって頼朝公のことを知り、興味を持ったとか。
平治の乱で平家に敗れ、弱者に成り下がったけれども、その圧倒的な人望で多くの武士を味方につけて平家を倒したところに惚れたと言ってましたね。
多分、頼朝公の、”自分自身は何の力もない弱者だが、仲間を頼ることで小が大を凌駕した”という点に憧れてるんじゃないんでしょうか?
雪乃は、自分が弱者であるということを自覚してるんです。なので友達をたくさん作り、その力に素直に頼ることで一人前になろうとしているのですよ、あの子は。
そんな自分のポリシーと頼朝公の生き様が重なって、惚れ込んだのではないか?と私は考察していますがね。それで鎌倉滞在中、頼朝公のお墓によくお参りに行っていたんだと思います。」
頼経「なるほど、だからか、、、」
公房「と、いいますと?」
頼経「先ほど、私は霊が見えると言いましたが、これは、意識せずとも無意識的に常に発動し続けているものなんですよ。
そして先日、雪乃さんを初めて見た時、見えてしまったんですよ。もちろん意識的にそういう目で見たわけではなく、無意識的に見えたんですが。」
公房「で、何が見えたんです?」
頼経「いいですか?落ち着いて聞いてくださいよ?雪乃さんにはある人物の霊が取り付いてしまっています。その人物とは、源頼朝公の霊でした。」
公房「えええええっ!!ゆ、ゆ、雪乃は!あの子は大丈夫なんでしょうか?」
頼経「恐らく鎌倉滞在中に取り付かれたと思われます。あまりにも頼朝公のお墓参りに行きすぎて、頼朝公の目に留まり、頼朝公に気に入られてしまったんですかね?
彼が雪乃さんに取り付いた理由はよくわかりませんが、彼が雪乃さんに取り付いているのは事実です。ひょっとしたら、雪乃さんが彼の生き様に共感したように、
彼もまた、雪乃さんのポリシーに共感した為、付いて来てしまった、とかですかね?雪乃さんは動物に好かれる不思議な力があるようですが、霊にも好かれてしまったようで。」
公房「そ、そんなぁぁ」
頼経「私は、公房殿がこのことを知っているかどうか聞きに来たんですよ。ついでになぜ頼朝公が雪乃さんに付いて来てしまっているのかも知りたくて。」
公房「な、なるほど、、、。」
頼経「嘉禄の乱の少し前に鎌倉に行ったということは、頼朝公が雪乃さんに取り付いたのもその時期のはず。
となれば、取り付かれてからかなり経っていますが、鎌倉へ行く前と比べてこれまで何か変わった様子はありませんでしたか?」
公房「ま、まぁ、先ほども申しましたが、元から変わったことばかりする子なのでなかなか変化に気づきにくく、、、特にそういう印象はないですね。」
頼経「そうですか、、、。まぁ、取り付かれてからもうかなり経っていますし、その間特に何もなければ大丈夫でしょう。」
公房「そうだといいんですが、、、」
頼経(あれはあくまで取り付いているだけであり、源義平を憑依して平重盛と互角に渡り合ったあの娘のように魂を憑依したわけではない。
いわば、その前段階ということか?珠と魂の憑依が関係しているのであれば、珠を持つあの娘が源義平の魂を憑依できたのなら、いずれ雪乃も頼朝公の魂を、、、)
一方、南都では、、、
雪乃「へっくしゅんっ!んー、誰かがあたしの噂話でもしているのかにゃ?」
熊吉「どうした?寒いのならおれの上着でも切るか?」
雪乃「そんなもの!ノーセンキューである!あたしには、特性の猫ちゃんコートがあるので!これは猫の毛皮で作ったただの布である!
言っておくけれどもー、これは特注品なのでー、世の中にたったひとつしかない貴重なものである!」
熊吉「あ、あら、そう。」
雪乃「さぁ!猫又ちゃんがいると分かれば!さっそく事情聴取を始めるにゃ!レッツラゴーである!」
無事南都へ辿り着いたまゆ一行は、猫又を探すために事情聴取を開始する。
果たして猫又に遭うことは出来るのか?そして雪乃は猫又と友達になれるのか?(続く)
雪乃「あああ!チュン太郎!チュン太郎である!おーい!ここである!ここであるぅぅ!」
チュン太郎「雪乃!雪乃が長年探していた”あいつ”をついに見つけたぞ!場所は南都!そいつは一晩で数人の人間を食い殺したらしい!」
雪乃「なんと!お友達になるにふさわしい器と見た!長年探し求めた甲斐があったというもの!チュン太郎!でかしたにゃ!
二人とも!方向転換にゃ!今から引き返し、南都へ向かうにゃ!」
まゆ「えーっ!引き返すの?」
雪乃「ゆってもまだ都を出て数時間しか歩いてにゃいにゃ?別にそこまでのロスでもないにゃ!それにこの機会を逃せば、やつは、次いつ出没するか分らないと見た!
これは行くしかないというもの!」
熊吉「そもそも”あいつ”とは何なのだ?」
雪乃「一言で言えば、まぁ、猫。」
雪乃「補足するとすれば、まぁ、猫の妖怪。」
雪乃「もぉーすこぉーし補足するとすれば、巨大な猫。」
雪乃「結論としては、まぁ、猫。」
熊吉「おお、今回はよくわかったぞ。して、その猫又をなぜ探していたんだ?」
雪乃「あたしは、日本全国の色んな猫ちゃんとお友達になりたいと考えている。
そして以前、父上から猫又という猫の妖怪がいるという話を聞き、一度会ってみたいと思ってチュン太郎に頼んで猫又の情報を集めていたところである。そしてついに!たった今!その猫又ちゃんが現れたという知らせを聞いたので、その猫又ちゃんをお友達にしたく、南都へ行こうと言っている次第。」
熊吉「なるほどな。でもそんな人食い猫と友達になんてなれるのか?そもそもそんな妖怪と会うなんて危険では?」
雪乃「にゃーにを行ってるのか!あたしが分かり合えない猫なんてこの世にいにゃーいというもの!ほら!こうしている間にどこかへ行ってしまうかもしれないにゃ!急ぐにゃあ!」
まゆ「まぁ、そもそもあたしの旅に付き合ってくれてる訳だし、ちょっとくらい言うこと聞いてあげなきゃね。付き合うわよ、雪ちゃん。」
熊吉「まゆがいいなら俺も付き合うぜ。」
雪乃「二人とも、ありがとにゃ!じゃあ、レッツラゴーである!」
3人は進行方向を変え、南都へ向かった。南都は京の都からそんなに距離は離れていないのですぐについた。
南都到着。
すると、雪乃のカバンの中にいた唯ちゃんが急にカバンから飛び出した!
唯「にゃあああああ。」
雪乃「あ!唯ちゃん!勝手に出てきたらダメだにゃあ!」
熊吉「え!この猫連れてきてたの!?」
まゆ「あらあら笑」
雪乃「んー。唯ちゃんは一体なにを言ってるのか、、、あ!そうだ!ペン吉!ペン吉!今起きてるかにゃ?」
ペン吉「んー?こんな真昼間からどうした?何か用?」
熊吉「な、な、なんだこいつ!?と、鳥!?雪乃の懐から急に出てきた?そして、人間の言葉をしゃべったぁぁ!??雪乃、その子は一体何者なんだ!?」
雪乃「ブヨはいちいちリアクションがデカすぎなのである。まぁいいか。教えてあげるー!」
雪乃「一言で言えば、まぁ、鳥。」
雪乃「補足するとすれば、まぁ、小さな鳥。」
雪乃「もぉーすこぉーし補足するとすれば、あたしのお友達。」
雪乃「結論としては、まぁ、鳥。」
熊吉「いや、今回はさすがに情報が足りない、、、」
まゆ「ペン吉君はね、ペンギンの子供で、普段は雪ちゃんの懐に住んでいるの。この子は不思議なことに人間の言葉を理解できるの。
だから、雪ちゃんが動物と話すとき、いつも通訳してくれるのよ。」
雪乃「えっへん!まぁ、そんなところである!」
熊吉「ちょっと理解が追い付かない、、、」
まゆ「まぁ、雪ちゃんは個性的なお友達が多いからね笑ちょっとずつ慣れていけばいいと思う!」
熊吉「ああ、がんばるよ。」
雪乃「ペン吉、さっそくだけれども、唯ちゃんを通訳してくれにゃ。」
ペン吉「あーはいはい、いつものことね。唯、話してごらん?」
唯「この町、何かいる。まがまがしい妖気を感じる。この町から早く出た方がいい。」
雪乃「それはきっと猫又の妖気だにゃ。」
唯「猫又!?それなら一層はやくここから立ち去るべき。いくら雪乃でも猫又と分かり合うのは至難の業。」
雪乃「そんなことは、やってみなければわからないというもの!」
唯「雪乃らしい。わかった、でも無理だけはしないで。」
雪乃「ご心配ありがとにゃ!」
唯「それともう一つ。この町からは、嗅いだことのある懐かしい匂いがする。でも何の匂いだったか思い出せない。」
雪乃「んー?一体何の匂いかにゃ?人の匂いかにゃ?」
唯「わからない、でもとにかくすごく懐かしい匂いがする。」
雪乃「なら、また何かわかったら教えてにゃ!」
唯「うん。」
雪乃「ペン吉、ご苦労にゃ!」
ペン吉「はーい、じゃあな!」
ペン吉はまた雪乃の懐へと戻っていった。
熊吉「この町にその猫又ってやつがいるのは間違いなさそうですね。それに、その嗅いだことのある匂いっていうの、私もちょっと共感するところがある。
このなんともいえない独特な匂い。どこで嗅いだ匂いだったかなぁ。誰か、人の匂いだったと思うんだが。」
雪乃「なら、また何かわかったら教えてにゃ!」
熊吉「うん。」
その頃、三条邸では、、、
公房「はあ、雪乃大丈夫かなぁ、やっぱり心配だなぁ、あんな小さな子に旅なんて危険すぎないかなぁ。はああああ。落ち着かないなぁ。」
雪乃を心配する公房。そこへ、、、
???「ゴンゴンゴン。ごめんくださーい。」
公房「ん?誰じゃ?」
頼経「公房殿、私です。」
公房「おお!頼経様!ささ、おあがりください。」
頼経「かたじけない。ところで、まゆたちは無事に旅立ったか?」
公房「ええ、明朝旅立ちました。」
頼経「そうか、それはよかった。ところで、公房殿、二つお聞きしたいのだが。」
公房「ええ、なんなりとどうぞ。」
頼経「では一つ目。あなたは霊感強いですか?」
公房「れ、霊感?い、いえ、そのように思ったことはございません。」
頼経「そうか、実は私は生まれつき霊感がかなり強くてな。もはや霊がはっきりと目視できるレベルなんだ。」
公房「そりゃあ、お気の毒に。」
頼経「ああ、まぁ、仕方ないさ。では二つ目。雪乃さんを鎌倉に連れて行ったことはありますか?」
公房「ええ、ありますよ。関東で嘉禄の乱が起こる少し前、雪乃を含めた一族何人かと鎌倉へ行き、北条泰時様にご挨拶をしに参ったことがございます。」
頼経「その時、雪乃さんは何か変わった行動を取っていませんでしたか?」
公房「いえ、特に。まぁ、四六時中変わった行動を取っている子ですから、そういう行動があったとしても、印象に残らないかと笑」
頼経「そ、そうですか笑」
公房「ああ!そういえば!」
頼経「なんです?」
公房「あの子、とにかく頼朝公のお墓に行きたいといって聞かなくて、家来の者を引き連れて勝手にお墓参りに行ってしまったんですよ。
なんでも、夏祭りで琵琶のお姉ちゃんに平家物語を聞かせてもらって頼朝公のことを知り、興味を持ったとか。
平治の乱で平家に敗れ、弱者に成り下がったけれども、その圧倒的な人望で多くの武士を味方につけて平家を倒したところに惚れたと言ってましたね。
多分、頼朝公の、”自分自身は何の力もない弱者だが、仲間を頼ることで小が大を凌駕した”という点に憧れてるんじゃないんでしょうか?
雪乃は、自分が弱者であるということを自覚してるんです。なので友達をたくさん作り、その力に素直に頼ることで一人前になろうとしているのですよ、あの子は。
そんな自分のポリシーと頼朝公の生き様が重なって、惚れ込んだのではないか?と私は考察していますがね。それで鎌倉滞在中、頼朝公のお墓によくお参りに行っていたんだと思います。」
頼経「なるほど、だからか、、、」
公房「と、いいますと?」
頼経「先ほど、私は霊が見えると言いましたが、これは、意識せずとも無意識的に常に発動し続けているものなんですよ。
そして先日、雪乃さんを初めて見た時、見えてしまったんですよ。もちろん意識的にそういう目で見たわけではなく、無意識的に見えたんですが。」
公房「で、何が見えたんです?」
頼経「いいですか?落ち着いて聞いてくださいよ?雪乃さんにはある人物の霊が取り付いてしまっています。その人物とは、源頼朝公の霊でした。」
公房「えええええっ!!ゆ、ゆ、雪乃は!あの子は大丈夫なんでしょうか?」
頼経「恐らく鎌倉滞在中に取り付かれたと思われます。あまりにも頼朝公のお墓参りに行きすぎて、頼朝公の目に留まり、頼朝公に気に入られてしまったんですかね?
彼が雪乃さんに取り付いた理由はよくわかりませんが、彼が雪乃さんに取り付いているのは事実です。ひょっとしたら、雪乃さんが彼の生き様に共感したように、
彼もまた、雪乃さんのポリシーに共感した為、付いて来てしまった、とかですかね?雪乃さんは動物に好かれる不思議な力があるようですが、霊にも好かれてしまったようで。」
公房「そ、そんなぁぁ」
頼経「私は、公房殿がこのことを知っているかどうか聞きに来たんですよ。ついでになぜ頼朝公が雪乃さんに付いて来てしまっているのかも知りたくて。」
公房「な、なるほど、、、。」
頼経「嘉禄の乱の少し前に鎌倉に行ったということは、頼朝公が雪乃さんに取り付いたのもその時期のはず。
となれば、取り付かれてからかなり経っていますが、鎌倉へ行く前と比べてこれまで何か変わった様子はありませんでしたか?」
公房「ま、まぁ、先ほども申しましたが、元から変わったことばかりする子なのでなかなか変化に気づきにくく、、、特にそういう印象はないですね。」
頼経「そうですか、、、。まぁ、取り付かれてからもうかなり経っていますし、その間特に何もなければ大丈夫でしょう。」
公房「そうだといいんですが、、、」
頼経(あれはあくまで取り付いているだけであり、源義平を憑依して平重盛と互角に渡り合ったあの娘のように魂を憑依したわけではない。
いわば、その前段階ということか?珠と魂の憑依が関係しているのであれば、珠を持つあの娘が源義平の魂を憑依できたのなら、いずれ雪乃も頼朝公の魂を、、、)
一方、南都では、、、
雪乃「へっくしゅんっ!んー、誰かがあたしの噂話でもしているのかにゃ?」
熊吉「どうした?寒いのならおれの上着でも切るか?」
雪乃「そんなもの!ノーセンキューである!あたしには、特性の猫ちゃんコートがあるので!これは猫の毛皮で作ったただの布である!
言っておくけれどもー、これは特注品なのでー、世の中にたったひとつしかない貴重なものである!」
熊吉「あ、あら、そう。」
雪乃「さぁ!猫又ちゃんがいると分かれば!さっそく事情聴取を始めるにゃ!レッツラゴーである!」
無事南都へ辿り着いたまゆ一行は、猫又を探すために事情聴取を開始する。
果たして猫又に遭うことは出来るのか?そして雪乃は猫又と友達になれるのか?(続く)
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