一条物語

いしぽよ

文字の大きさ
上 下
6 / 29
第1章 序章

第6話 勃発、嘉禄の乱

しおりを挟む
頼経が将軍に就任したのを皮切りに、鎌倉では物騒な話題が飛び交い始める。
それは、頼経が源氏でもなく、そもそも武家ですらないことへの不満からだった。
頼経は、公家の頂点である五摂家の家柄であるので、これを機に、公家に幕府が乗っ取られるのではないか、
もう既に北条家に幕府が乗っ取られようとしているというのに、そこに公家まで首を突っ込まれては敵わない、
元服しているとはいえ、頼経はまだ9歳であるので、まだ大丈夫だが、頼経が成長し、自我を持ち始めたら厄介なので今の内に手を打つべきでは?といった話題が御家人、特に幕府の中核である有力御家人達の間で頻繁に飛び交った。彼らの不満は形容できない程大きかった。我々は、頼朝公の為に力を尽くしてきたというのに、今や元・伊豆の一、豪族に過ぎなかった北条家の家来に成り下がってしまい、元々不満を募らせていた。
そこへ今回の、頼経将軍就任の件だ。元々幕府を実行支配していた北条家の力がますます大きくなり、北条家の家来化がより一層進み、その上今後は、公家の家来にならねばならないなど言語道断、こんな屈辱、到底受け入れられない、許すまじ、といったところである。ただ、厳密には、彼らの不満は、頼経というよりやはり北条家への不満であった。そもそも頼経を都から鎌倉へ呼び、将軍職に任命したのは北条家であるので、諸悪の根源は北条家であり、頼経は被害者である。頼経は表面上の不満対象にすぎない。やはり有力御家人なだけあって賢く、本質、諸悪の根源を見抜き、叩くべき相手を正確に見抜いていた。とはいえ、頼経も成長し、真に大人になった暁には、どんな男になるかわからない。どんな経緯であれ、自身が将軍であることは事実なのだから、その立場に胡坐をかき、我々武家を一丁前に支配し始めるかもしれないし、へたをすれば北条家をも手名付けて、北条家以上に力を付け、我々武家を支配し、せっかく頼朝公が築き上げ、先の承久の乱にて確立したこの武家の世が再び公家の世に戻り、平安の頃のように、武家は、所詮、公家の犬といった存在に逆戻りしてしまうかもしれない。そう考えると、北条家は今すぐ叩くべき諸悪の根源であり、頼経は次世代の不安の種である。というのが、有力御家人達の見解であった。
現状は、頼経がまだ幼いことを理由に北条家が執権政治を行い、幕府を私物化している。頼経はまだ幼いので現状脅威ではない。その為、今の内に北条家を叩いて起き、頼経が大人になる前に、将軍の独裁政権にならないような意思決定の仕組みを確立させておくことが現状を打開する解決策であると結論付けた有力御家人達は、結託し、打倒北条家を掲げた反乱を企てる。と言いつつも、やはり彼らも人間。表立ってはこのようなことをいい、結託しつつも、実は、隙を見て己が北条家の代わりに幕府を実行支配し、ついでに五摂家も手名付けて武家と公家の双方の頂点に君臨しようと企んでいた為、この結託は形上のものであった。やはり人間、そう理屈通りに動けないものである。

ある日、ある晴れた日のこと。北条泰時と幼い頼経が蹴鞠をして遊んでいるところに衝撃的な知らせが次々と入る。
「和田義盛、謀反に御座います!」
泰時「!?」
「続いて比企能員、謀反に御座います!」
泰時「な、何ぃ!?」
「同じく、梶原景時!」
泰時「にゃ、にゃんだってぇ!?」
あまりの衝撃に、言葉がおかしくなる泰時。
「同じく、三浦義澄!」
「同じく、.........」
次々と絶え間なく届く、有力御家人達の謀反の知らせ。北条家以外の有力御家人全員が謀反を起こしたと知る。
泰時「な、なんということじゃ......こ、これは、とても偶然とは思えぬ、や、奴ら、う、裏で繋がっておるな?全員で結託して我が北条家を叩くつもりなんじゃろう…」
泰時「こ、こんなのどうすれば…」
あまりの衝撃と絶望的な事態に呆然と立ち尽くす泰時。その時、一つの鞠が飛んできて、泰時の腹に直撃する!
あまりの衝撃に、泰時は数メートル先まで吹っ飛ばされる!
泰時「こ、これはどういうことにゃ?」
あまりの衝撃に、言葉がおかしくなる泰時。
鞠を蹴って泰時を吹っ飛ばしたのは、なんと頼経であった。
頼経「しゃんとせい泰時!そなた、幕府の執権じゃろうが!!」
泰時「わ、わかっておるわ。う、く、、、。」
頼経に喝を入れられ、我に返る泰時。しかし、かなり効いたようだ。
その様子を見ていた北条一族は、頼経の貫禄に言葉を失う。わずか9歳にしてこの貫禄、この振る舞い、間違いなく、将来大物になる。そうなれば我が北条家の執権政治もいつまで持つか、頼経を将軍にしたのは我が北条家にとって、吉と出るか凶と出るか。こやつの今後の成長には目を光らせておく必要があるな。

重い腰を上げた泰時率いる北条家は有力御家人討伐の為、兵を集める。
今回は、しくじると北条家が滅亡し兼ねない事態なので、九州から鎮西奉行、京都から六波羅探題に就いていた北条家戦力をも鎌倉へ終結させる。
これにより、鎮西奉行・六波羅探題の力が一時的に弱体化した。これを見て、ある組織が動き出す。(続く)
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

生意気な女の子久しぶりのお仕置き

恩知らずなわんこ
現代文学
久しくお仕置きを受けていなかった女の子彩花はすっかり調子に乗っていた。そんな彩花はある事から久しぶりに厳しいお仕置きを受けてしまう。

お鍋の方【11月末まで公開】

国香
歴史・時代
織田信長の妻・濃姫が恋敵? 茜さす紫野ゆき標野ゆき 野守は見ずや君が袖振る 紫草の匂へる妹を憎くあらば 人妻ゆゑにわれ恋ひめやも 出会いは永禄2(1559)年初春。 古歌で知られる蒲生野の。 桜の川のほとり、桜の城。 そこに、一人の少女が住んでいた。 ──小倉鍋── 少女のお鍋が出会ったのは、上洛する織田信長。 ───────────── 織田信長の側室・お鍋の方の物語。 ヒロインの出自等、諸説あり、考えれば考えるほど、調べれば調べるほど謎なので、作者の妄想で書いて行きます。 通説とは違っていますので、あらかじめご了承頂きたく、お願い申し上げます。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

たれやも通ふ萩の下道(したみち)

鈴木 了馬
歴史・時代
 平和憲法のもと、象徴天皇として即位された今上天皇(明仁)の御代、平成の世は終わろうとしている。  歴史を紐解けば、日本という国は、天皇とともに歩んで来た、と言っていい。  しかし、その天皇も、順風だけで続いてきたわけではない。  幾度となく、天皇家は苦難の時代を経験してきた。  あるいは、今の時代こそ、まさにその時かもしれない。  順徳天皇の生涯を追っていくと、そのことを考えずにはいられなかった。  いや、そう思わないでも、なんと不遇な生涯であったことか。  筆者は、第八十四代天皇、順徳院に捧げる哀悼の物語として、これを書き上げた。

ティー・クリッパーの女王

SHOTARO
歴史・時代
時は19世紀半ばから後半のヨーロッパ。 アジアから運ばれる茶が、巨万の富を生んでいた頃。 最も早く、今年の新茶をロンドンまで、運んだ船に"世界最速"の称号を与えて、しかも、最速の船には茶葉1トン当たり10シリングの賞金まで課す賭けの対象となっていた。 そんな頃、ロッテルダムのアインス商会では、商船が私掠船に襲われ、積荷も船員も奪われ存亡の危機に。 その時、インドから「茶葉500トンを確保した。輸送を頼む」と知らせが来る。 「新茶500トンを運べば、身代金も完済できる!」と皆を喜ばせた。 それを聞きつけた、イギリス商人から“世界最速レース”である今年の"ティーレース"の参加要請が届く。 このレースに参加するには、快速帆船こと“ティークリッパー”を用意しないといけない。 会社の危機を救うため、愛する船長を助けるため、そして、世界最速の称号を得るため、快速帆船"Sleutels tot de toekomst"号が、今、テムズ川のドックから出港する。

本当にあった怖い話

邪神 白猫
ホラー
リスナーさんや読者の方から聞いた体験談【本当にあった怖い話】を基にして書いたオムニバスになります。 完結としますが、体験談が追加され次第更新します。 LINEオプチャにて、体験談募集中✨ あなたの体験談、投稿してみませんか? 投稿された体験談は、YouTubeにて朗読させて頂く場合があります。 【邪神白猫】で検索してみてね🐱 ↓YouTubeにて、朗読中(コピペで飛んでください) https://youtube.com/@yuachanRio ※登場する施設名や人物名などは全て架空です。

虐殺者の称号を持つ戦士が元公爵令嬢に雇われました

オオノギ
ファンタジー
【虐殺者《スレイヤー》】の汚名を着せられた王国戦士エリクと、 【才姫《プリンセス》】と帝国内で謳われる公爵令嬢アリア。 互いに理由は違いながらも国から追われた先で出会い、 戦士エリクはアリアの護衛として雇われる事となった。 そして安寧の地を求めて二人で旅を繰り広げる。 暴走気味の前向き美少女アリアに振り回される戦士エリクと、 不器用で愚直なエリクに呆れながらも付き合う元公爵令嬢アリア。 凸凹コンビが織り成し紡ぐ異世界を巡るファンタジー作品です。

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

処理中です...