魔法探偵の助手。

雪月海桜

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第五章【夏と月夜の別れ】

姫乃の願い。

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「朝霞さんの鏡は、彼女がもとから所持していたものだった。当局の許可なく魔力を宿したなら、それは違法だ。鉛筆やメガネの入手経路もあとから調べるとして……ひとまず、動機は理解したよ」
「ああ、取り調べでもなんでも、好きにしてくれ。全部ちゃんと話すさ」

 きっと姫乃ちゃんのことも、五年生の頃から全部一人で抱え込んでいたのだろう。すべて終わり、残念なような、肩の荷が下りたような、そんな複雑な顔だ。

「ねえトーヤ……未承認の魔法道具が危険なことは、知っていたよね?」
「ああ、でも、あんなに酷いとは思わなかった……危なくなれば、ちゃんと止めようと思ってた。……けど、朝霞の代償を知ったのは……記憶を削って、写真や鏡に映らない状態だなんて知ったのは、六年になってからだ……。それまで俺は、気付けなかった……」
「朝霞さんの不安定な姿は『存在』を優先するための省エネではあったけれど、結果的には随分効率的だったよ。円川ヒナのファンの夕崎くんには彼女に似て見えたように、それぞれの一番印象に残る女の子の姿をしていたんだ」
「なるほど……あいつらしいな」

 そう言いながらも、先生は手錠のかけられた手を、悔しそうに拳にして強く握り締める。

「……俺は教師だ。そんな不安定な状態でも、どうしたって生徒一人一人に付きっきりにはなれない。だから、クラスに溶け込めるシオンに、何かあれば守るのを手伝って貰おうと思ったんだ……」
「なるほど、それでその要望を受けて、魔法管理部は最年少の僕をこの現場に派遣したのか……」

 シオンくんは納得したように頷いてから、すぐに首を傾げた。

「でも、危険と判断したなら通報なんかせず、回収して全部なかったことにすればいいのに。すぐに回収しなかったのは、何故?」
「……朝霞の願いが、『みんなと一緒に卒業すること』だったからだ。俺から与えておいて、犠牲を承知で自分で求めた希望を奪うのは、酷だろ。出来れば三月までは、見守ってやりたかった。……まあ、小日向の説得で本人も納得したみたいだし、結果オーライだけどな」
「そう……トーヤは大人なのに、優柔不断だね。最後まで、生徒を守るか、生徒の願いを守るか、自分では決められなかったんだ」
「ああ、情けないよなぁ……それでも、後悔はしてない。……俺の大事な生徒を守ってくれて、ありがとうな」

 泣き笑いのような表情で、とーや先生は告げる。それは心の底からの本音なのだろう。シオンくんはヘッドフォンを外して、溜め息混じりに先生の隣に腰掛けた。
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