魔法探偵の助手。

雪月海桜

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第四章【朝霧の残像】

バラバラ。

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 あの日、若菜ちゃんに聞いた未承認の魔法道具であるメガネの入手経路。
 学校に危険物を持ち込んだ犯人さえわかれば、残り一つを見付ける手懸かりにもなるはずだった。なのに。

「一件落着、と言いたいところだけど……真昼さん、最後にメガネの入手経路、教えてくれるかな」
「あ、うん……それは……『泣き黒子に長い黒髪の、綺麗な女の子』がくれたの……」
「……え?」
「普通だったら怪しんじゃうんだけど、どうしてか……ずっと知ってる子みたいに話しやすくて、つい」

 若菜ちゃんの告げた特徴に、わたしは思わず、瞬きをする。だって、それってどう考えても姫乃ちゃんだ。

「えっと、それ、姫乃ちゃんじゃなくて……?」

 思わずそのまま口に出してしまってから、後悔した。
 もし姫乃ちゃんが犯人だとして、若菜ちゃんが直接告げないことで友達を売らないよう配慮したのなら、それを無下にしてしまうのだ。

 けれど若菜ちゃんはそんなつもりはないようで、不思議そうに首を傾げる。

「姫乃ちゃんって、同じクラスの朝霞姫乃ちゃん? えーと、確かに黒髪だけど、ツインテールの可愛い感じの子だよね?」
「……え?」
「あの子、同じアイドルだったら人気出そうだなぁっていつも思ってるんだけど……ユニットとか組んでくれないかなぁ」
「え??」
「あっ、ごめんね! もちろんみゆりちゃんも可愛いよ!」
「フォローありがとうね!? えっと、そうじゃなくて……」

 わたしは思わず混乱する。姫乃ちゃんは可愛いより綺麗なタイプだし、ツインテールなんてしてるのは見たことがない。
 けれどそんなツッコミをする前に、シオンくんが言葉を続けた。

「朝霞さんって、そんな感じの子だった……?」
「シオンくん……! そうだよね、姫乃ちゃんはもっと……」
「朝霞さんはショートカットだし、ボーイッシュな印象の子だよね」
「は……?」
「最初はあんまりみゆりさんと仲良しだから、恋人同士なのかと……」
「は!?」

 いろいろな衝撃に、わたしは呆然とするしか出来ない。
 わたしととても仲良しだというからには、別の子を姫乃ちゃんと認識している訳ではなさそうだ。

 けれど、そもそも男の子にも見えるほどボーイッシュでショートカットの女の子は、うちのクラスにはいない。

「とーや先生! 姫乃ちゃんて、先生にはどう見えてます!?」

 頼みの綱は、五年生からの担任であるとーや先生だ。わたしは運転席に身を乗り出す勢いで問いかける。

「朝霞? ああ、美人だよな。どっちかというと可愛いより綺麗系だと思うが」
「ですよね!?」
「背も高いしスタイルもいいし、とても小学生とは思えない……」
「と、透夜先生は、大人っぽい子がタイプなんですか!?」

 若菜ちゃんまでもが身を乗り出してきたから、わたしは引っ込む。

 途中までは調子がよかった。わたしの知ってる姫乃ちゃん像だった。でも、姫乃ちゃんは、わたしとあまり背丈は変わらない。

「あれぇ……?」

 一人の人物について語っているはずなのに、みんなバラバラだ。

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