魔法探偵の助手。

雪月海桜

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第三章【昼下がりの恋歌】

兄弟設定。

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「おはよう、みゆり、月宮くん。今日は一緒に登校?」
「おはよー……って、ち、ちがうよ!? 下駄箱の前でたまたま一緒になっただけ!」
「おはよう、朝霞さん。そういえば僕、朝はトーヤ……兄さんに車で送って貰ってるから、誰かと一緒に通学ってしたことないな」
「お兄さんが先生だと、送迎付きなんてメリットもあるのね」

 シオンくんは、とーや先生とは兄弟設定。実際には遠い血縁と聞いていたけれど、毎朝送迎ということは一緒に住んではいるのだろうか。
 わたしはまだ、シオンくんのことを何も知らないのだと改めて感じる。

「ところで、お兄さんがこの学校で教師をしているのに、六年生の夏前なんて半端な時期に転校してきたのは何故なの?」

 姫乃ちゃんが『情報通』と呼ばれるのは、独自の情報網はもとより、こういう性格もあってのことだ。普通なら『複雑な家庭の事情かな』とか何となく聞きにくいことも、はっきり本人に聞いてしまう。

「ああ……僕と兄さんは、実は腹違いの兄弟で、いろいろと。元々住んでいた場所が違うのも、年が離れているのもそのせい」
「えっ」
「そうだったの……変なことを聞いてごめんなさいね」
「ううん。寧ろ、みんなも気になってるだろうに誰も聞いてこないから、気を遣わせてしまったかと。兄弟仲は良いし、あまり気にしないで接してくれると嬉しいよ」
「ええ、ありがとう。そうするわ」

 少し気まずそうにしていた姫乃ちゃんが、シオンくんのフォローに安心したように頷く。
 わたしもシオンくんの話に少しばかり動揺してしまったけれど、姫乃ちゃんには気づかれないようこっそりと、シオンくんはウィンクをして微笑んだ。

「!?」

 一瞬何のファンサかと別の意味で動揺しときめいてしまったけれど、すぐに今の話があらかじめ作り込まれた設定であることを察した。さすがはシオンくんだ。抜かりない。

「ほら、そろそろ席につけー」

 少しして話題に出ていたとーや先生が来て、わたしたちは慌てて席につく。そして朝のホームルームが始まり、いつも通り出席を取った。

「……真昼若菜は休み、と」
「えっ、何でですか?」
「あー、昨日体育で足を痛めたからな、念のため病院だそうだ」

 昨日の腫れていた足を思い出す。放課後には立って歩けるまでには回復していたものの、右足を引きずりがちで痛そうだった。
 そしてその光景を回想してふと、今朝テレビで見たアイドルを思い出した。

 テレビの中の円川ヒナも、今朝の生放送で披露したダンスで、右足を庇ってはいなかっただろうか。


*******

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