魔法探偵の助手。

雪月海桜

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第三章【昼下がりの恋歌】

どっち派?

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 午後の授業は、体育だった。食後すぐの運動はお腹に来るものがある。調子に乗っておかわりをするんじゃなかった。
 いやでも、せっかく残ったわかめごはんをおかわりしないことがあるだろうか。いや、ない。

「今日は体育館でよかったわね。グラウンドでシャトルランとかだったら、みゆりお腹痛くて倒れてたでしょう」
「そうかもしれない……全力で仕事してくれた雨雲さんに圧倒的感謝……」
「雨雲もまさか、雨を降らせて食いしん坊小学生に感謝されるとは思わなかったでしょうね……」

 夏場は屋外での授業も多いものの、今日はあいにくの雨だ。けれど今のわたしにとっては恵みの雨である。
 体育館で行われることになった授業は、女子と男子で分かれてバスケットボールをすることになった。

 まずは女子が応援兼見学で、男子の試合からだった。
 当然のようにバスケ部のエースである夕崎くんが本領発揮して得点王になっていたけれど、対戦チームのシオンくんも司令塔として指示を飛ばしているようで、両チーム接戦していた。

 姫乃ちゃんは得点係に任命されてお手伝い。審判をしているとーや先生は、珍しく熱くなってどちらの応援もしている。バスケが好きなのかもしれない。

「ねえねえ、やっぱり夕崎くんって、背高いし運動できるしかっこいいよねぇ」
「ね~。ちょっとおばかだけど、そこも可愛い。楓くんしか勝たん!」
「えー、シオンくんもかっこいいよ、顔も綺麗だし、頭もいいし!」
「シオンくんって、月宮先生とあんまり似てないけど、イケメン兄弟ってずるいよねー」

 壁際で試合を眺める女子たちの楽しげな声を聞きながら、案外夕崎くんもモテるのだと知った。
 勉強苦手仲間として勝手に仲良くなった気でいたけれど、知らぬ間に彼を慕う女子を敵に回していたかもしれない。
 でも安心して欲しい。わたしは断然シオンくん派だ。

 そう弁解して回りたかったけれどその前に、わたしにはすることがあった。

「若菜ちゃんは、シオンくんと夕崎くんどっち派?」
「……へ?」
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