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第三章【昼下がりの恋歌】
解決後のテスト。
しおりを挟む「……夕崎くん、またテスト駄目だったみたいね。あれはまぐれだったのかしら」
「あはは……勉強より、バスケの方が大事なんじゃないかな」
鉛筆に宿っていた魔力の回収後、夕崎くんの成績は以前と変わらないものに落ち着いた。テスト用紙純白同盟の復活である。
テスト返却時に落ち込む様子は少し可哀想だったけれど、あのまま脳内知識を絞り出されての廃人コースより全然良かったと、わたしは一息吐く。
あの魔力を失った鉛筆も、誰に貰ったかは忘れてしまったようだったけれど、大切にしているようだ。
「そういう姫乃ちゃんは、今回のテストどうだった?」
「今回は満点。前回一問落としたのが悔しかったから、よかったわ」
「相変わらず高次元だった」
このクラスの成績トップといえば、わたしの親友である彼女、朝霞姫乃ちゃんと、真面目なクラス委員長の真昼若菜ちゃん。
それから、二週間ほど前に転校してきたわたしの好きな人、月宮紫音くんの三人だ。
三人とも、基本的に小テストは満点組である。今度の期末テストは誰がトップになるのかと、クラスでは密かな賭けにまで発展していた。
「……あら? 真昼さん、あんまりいい成績じゃなかったのかしらね」
「えっ?」
姫乃ちゃんの声に思わず列の後ろの席を見ると、返却された小テストを握りしめ、メガネに影を落とす若菜ちゃんの姿がそこにあった。
確かにいい点数なら、あんな様子にはならないだろう。
「珍しいこともあるんだね……」
「他人事みたいに言うけど、みゆりはどうだったの?」
「わたし? わたしは……いつも通りかな!」
あまり自慢にならない答えを返すと、姫乃ちゃんはやれやれといった様子で肩を竦めた。
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■目次
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