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【第五章】エメラルドの森の異変。
④
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「なっ……殿下!? 何故ここに!?」
「よっ、モルガナイト公爵。何か面白そうなことするんだろ? 俺達も混ぜてくれ!」
「申し訳ありません、一応止めたのですが……兄上がどうしてもステラ嬢のご活躍を一目見たいと」
「なっ! リオだって、ミアに会いたいーってしょっちゅう言ってただろ!?」
わたし達が殿下達の突然の参戦に戸惑い、驚きから抜けきらない内に、マイペースなお二方はそれぞれわたしとステラの前へとにこやかな笑顔でやって来る。
「ステラが父上……皇帝陛下から無茶振りされてるの見てさ、俺も何か役に立てないかなって……」
「……」
「あっ、勿論、邪魔にはならないし迷惑もかけない! だから……今回の件、同行させてくれないか?」
「……レオ様。皇帝陛下に許可は頂いていますか?」
「ん? おう、聖女と懇意にするのは良いことだって言ってたぜ!」
「……そうですか」
ステラはどこまでも無邪気に慕ってくれている様子のレオンハルト殿下に、それ以上は何も言えない様子だった。
皇帝の意図はわからないながら、ここまでついて来た依頼主の息子を追い返せる訳もない。
「お久し振りですね、ミア嬢」
「ご機嫌よう、オリオン殿下。殿下のお誕生日ぶり、ですね……?」
「ふふ。手紙ではやり取りさせて頂いていますが……やはり直接顔を見て言葉を交わすのとは違いますね。……こうしてお会い出来る日を、心待ちにしておりました」
外だというのも気にせず、オリオン殿下はわたしの目の前に跪き、恭しくわたしの片手を取る。
そして優しく手の甲へと口付けるその仕草に、思わず少女漫画のようだと照れてしまう。
レオンハルト殿下もわたし達のやり取りを見て少し照れたようにした後、跪くまではせずにステラの手の甲へと口付けていた。
いつもなら止めに入るであろう親馬鹿の父も、さすがに皇子殿下との間に入ることはせず、一人百面相をしていた。
「あの、お二方はどうやってここまで? 私も両親も時折外を眺めていましたけど、皇室の黒馬車は見掛けなかったのですが……?」
「わたしも、全然気付かなかった……」
ステラと一緒に来ていたヘリオドール伯爵夫妻は、皇子達の登場に頭を垂れたまま動けずに居た。同じく各家の使用人や騎士達も深く頭を下げたまま。
彼等と平然と話しているのはわたしとステラ、辛うじてお父様のみという、何とも落ち着かない状態だ。
「ああ、皇室の御者に風魔法と光魔法を扱える者が居りまして。……勿論光魔法と言えどステラ嬢よりも力は劣りますが、光の屈折を利用して、外部から馬車を見えにくくしていたんですよ」
「皇室の馬車は目立つからなぁ、リオとお忍びで出掛ける時には良くやるんだ。原理はよくわかんないけどな!」
「簡単に言うと、風魔法で暖かい空気と冷たい空気を生み出して、そこに光をぶつけて……まあ、蜃気楼と反射を組み合わせたようなものですかね」
確かに、移動中常時馬車全体に目隠しの結界なり魔法なりを付与し続けるよりも、科学の応用をした方が御者の魔力消費も少なくて済む。
しかし科学の発展していない魔法特化のこの世界において、理屈や原理を説明することの難しさは異常だ。
正直『蜃気楼』だとか、オリオン殿下の紡ぐ言葉を聞いたことのある人の方が少ないだろう。この世界で科学的に解明されていない蜃気楼は、きっとただの幻か、誰かの魔法によるものなのだから。
それを御者に説明し、実際に実用化しているのだから、オリオン殿下はやはり頭が回る人なのだろう。
……そんな頭のいい彼の前世がわたしの飼い猫だなんて、いったい誰が信じるだろうか。
「よっ、モルガナイト公爵。何か面白そうなことするんだろ? 俺達も混ぜてくれ!」
「申し訳ありません、一応止めたのですが……兄上がどうしてもステラ嬢のご活躍を一目見たいと」
「なっ! リオだって、ミアに会いたいーってしょっちゅう言ってただろ!?」
わたし達が殿下達の突然の参戦に戸惑い、驚きから抜けきらない内に、マイペースなお二方はそれぞれわたしとステラの前へとにこやかな笑顔でやって来る。
「ステラが父上……皇帝陛下から無茶振りされてるの見てさ、俺も何か役に立てないかなって……」
「……」
「あっ、勿論、邪魔にはならないし迷惑もかけない! だから……今回の件、同行させてくれないか?」
「……レオ様。皇帝陛下に許可は頂いていますか?」
「ん? おう、聖女と懇意にするのは良いことだって言ってたぜ!」
「……そうですか」
ステラはどこまでも無邪気に慕ってくれている様子のレオンハルト殿下に、それ以上は何も言えない様子だった。
皇帝の意図はわからないながら、ここまでついて来た依頼主の息子を追い返せる訳もない。
「お久し振りですね、ミア嬢」
「ご機嫌よう、オリオン殿下。殿下のお誕生日ぶり、ですね……?」
「ふふ。手紙ではやり取りさせて頂いていますが……やはり直接顔を見て言葉を交わすのとは違いますね。……こうしてお会い出来る日を、心待ちにしておりました」
外だというのも気にせず、オリオン殿下はわたしの目の前に跪き、恭しくわたしの片手を取る。
そして優しく手の甲へと口付けるその仕草に、思わず少女漫画のようだと照れてしまう。
レオンハルト殿下もわたし達のやり取りを見て少し照れたようにした後、跪くまではせずにステラの手の甲へと口付けていた。
いつもなら止めに入るであろう親馬鹿の父も、さすがに皇子殿下との間に入ることはせず、一人百面相をしていた。
「あの、お二方はどうやってここまで? 私も両親も時折外を眺めていましたけど、皇室の黒馬車は見掛けなかったのですが……?」
「わたしも、全然気付かなかった……」
ステラと一緒に来ていたヘリオドール伯爵夫妻は、皇子達の登場に頭を垂れたまま動けずに居た。同じく各家の使用人や騎士達も深く頭を下げたまま。
彼等と平然と話しているのはわたしとステラ、辛うじてお父様のみという、何とも落ち着かない状態だ。
「ああ、皇室の御者に風魔法と光魔法を扱える者が居りまして。……勿論光魔法と言えどステラ嬢よりも力は劣りますが、光の屈折を利用して、外部から馬車を見えにくくしていたんですよ」
「皇室の馬車は目立つからなぁ、リオとお忍びで出掛ける時には良くやるんだ。原理はよくわかんないけどな!」
「簡単に言うと、風魔法で暖かい空気と冷たい空気を生み出して、そこに光をぶつけて……まあ、蜃気楼と反射を組み合わせたようなものですかね」
確かに、移動中常時馬車全体に目隠しの結界なり魔法なりを付与し続けるよりも、科学の応用をした方が御者の魔力消費も少なくて済む。
しかし科学の発展していない魔法特化のこの世界において、理屈や原理を説明することの難しさは異常だ。
正直『蜃気楼』だとか、オリオン殿下の紡ぐ言葉を聞いたことのある人の方が少ないだろう。この世界で科学的に解明されていない蜃気楼は、きっとただの幻か、誰かの魔法によるものなのだから。
それを御者に説明し、実際に実用化しているのだから、オリオン殿下はやはり頭が回る人なのだろう。
……そんな頭のいい彼の前世がわたしの飼い猫だなんて、いったい誰が信じるだろうか。
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