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【第五章】エメラルドの森の異変。
③
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領土の大半を森林に覆われた、自然豊かな西部『エメラルド侯爵領』。
その森の木々は緑が美しく、領民からは『エメラルドの森』と呼ばれ愛されているらしい。
「……確か、エメラルド侯爵領も戦争で被害を受けたんだよね?」
「ああ……そうだね。僕の部隊はこちらの地区担当では無かったけれど……皆が大切にしている森の一部が焼けたと聞いているよ」
わたしとお父様と護衛のリヒト、三人で乗った馬車に揺られながら、窓の外の舗装されていない砂利と土が剥き出しの自然な道を眺める。
わたしが生まれる十年くらい前。ようやく終戦を迎えた先の大戦は、勝国であるこの『アレキサンドライト帝国』にも甚大な被害を与えた。
南部のダイヤモンド侯爵領方面から国境を越え攻め入られ、中央に位置する首都は皇室の守りが強固だったが、一部北のサファイア侯爵領まで戦火は及んだらしい。
「でも……魔法の助けがあったとしても、たった十数年でここまで回復できたんだ。やっぱり、自然は強いね」
「うん、そうだね……」
戦争の勝国となったこの国は、敵味方関係なく魔法使い総出となり復興にあたり、現在の姿を取り戻した。
生き残った魔法使いのほとんどを、復興のための労力として捕虜とされたその敵国がどうなったのかまでは、まだペリドット先生の授業では習っていない。
「さて、着いたみたいだな」
「やっと着いたぁ……!」
「お疲れ様です、旦那様、お嬢様」
御者による風魔法を駆使しても、舗装されていない道路はさすがに揺れた。座りっぱなしで数時間はさすがにお尻が痛い。
先に馬車を降りたリヒトに手を差し伸べられ、ようやく地面を踏み締める。
外に出ると、首都とも北部の潮風の匂いとも違う、緑の匂いがした。
「あれが、エメラルドの森……?」
「そうよ、あの森は秋でも冬でも、その名の通りずっと緑なの」
別の馬車で並走していたステラが、隣に降り立つ。彼女にとっては約一年ぶりの故郷を懐かしむように、すぐ近くの森林へと視線を向けていた。
秋と言えば紅葉という認識が前世からある分、夏と変わらず緑の生い茂る森というのは何とも不思議な感覚だ。
「あー……こんな遠出久しぶりだぜ」
「さすがに疲れましたね」
不意に聞き覚えのある声がして、わたし達は一斉に振り向く。
そこには、猫のように大きく伸びをしたレオンハルト皇太子殿下とオリオン皇子殿下が居た。
その森の木々は緑が美しく、領民からは『エメラルドの森』と呼ばれ愛されているらしい。
「……確か、エメラルド侯爵領も戦争で被害を受けたんだよね?」
「ああ……そうだね。僕の部隊はこちらの地区担当では無かったけれど……皆が大切にしている森の一部が焼けたと聞いているよ」
わたしとお父様と護衛のリヒト、三人で乗った馬車に揺られながら、窓の外の舗装されていない砂利と土が剥き出しの自然な道を眺める。
わたしが生まれる十年くらい前。ようやく終戦を迎えた先の大戦は、勝国であるこの『アレキサンドライト帝国』にも甚大な被害を与えた。
南部のダイヤモンド侯爵領方面から国境を越え攻め入られ、中央に位置する首都は皇室の守りが強固だったが、一部北のサファイア侯爵領まで戦火は及んだらしい。
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「うん、そうだね……」
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生き残った魔法使いのほとんどを、復興のための労力として捕虜とされたその敵国がどうなったのかまでは、まだペリドット先生の授業では習っていない。
「さて、着いたみたいだな」
「やっと着いたぁ……!」
「お疲れ様です、旦那様、お嬢様」
御者による風魔法を駆使しても、舗装されていない道路はさすがに揺れた。座りっぱなしで数時間はさすがにお尻が痛い。
先に馬車を降りたリヒトに手を差し伸べられ、ようやく地面を踏み締める。
外に出ると、首都とも北部の潮風の匂いとも違う、緑の匂いがした。
「あれが、エメラルドの森……?」
「そうよ、あの森は秋でも冬でも、その名の通りずっと緑なの」
別の馬車で並走していたステラが、隣に降り立つ。彼女にとっては約一年ぶりの故郷を懐かしむように、すぐ近くの森林へと視線を向けていた。
秋と言えば紅葉という認識が前世からある分、夏と変わらず緑の生い茂る森というのは何とも不思議な感覚だ。
「あー……こんな遠出久しぶりだぜ」
「さすがに疲れましたね」
不意に聞き覚えのある声がして、わたし達は一斉に振り向く。
そこには、猫のように大きく伸びをしたレオンハルト皇太子殿下とオリオン皇子殿下が居た。
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