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【第二章】悪役令嬢の先輩と、専属護衛騎士。
⑥
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「いやあ、お騒がせしました~」
「本当だよ……びっくりした」
「申し訳ありません、お嬢様。ルビー侯爵令嬢と会われる前に、色々と説明しておくべきでした」
寝支度を終える頃、ようやく一段落して、シャーロットは相変わらずマイペースに笑い、事情を知っていたアメリアは申し訳なさそうに頭を下げる。
「ううん、アメリアは悪くないよ。わたしのメイドのことなのに、何にも知らなかったのはちょっとショックだったけど……」
「お嬢様……」
ルビー侯爵令嬢はあの後泣き疲れて眠ってしまい、コーラルと呼ばれた赤毛の騎士に運ばれてそのまま帰っていった。
彼から後日改めて挨拶に伺うと言われたものの、次にまた彼女が来た時には、もしかするとシャーロットが連れていかれるのではないかと不安だった。
「……大きくなったリーゼに、久しぶりに会えたのは嬉しかったですけど……」
「うん……」
「今のわたしは侯爵令嬢『シャルロッテ・ルビー』じゃなく、モルガナイト公爵家のメイド『シャーロット・ローズクォーツ』なので……お嬢様から離れたりしませんよ?」
「……っ、シャーロット……!」
わたしの憂鬱な気持ちに気付いたのか、シャーロットはいつものように見ていて安心する穏やかな笑みを浮かべて断言してくれる。
姉を恋しがって泣きじゃくるルビー侯爵令嬢を思い出し胸が痛んだものの、シャーロットが自分で選んでくれた道ならば、それを肯定するのが主の務めだ。
『悪役令嬢の元に仕えるメイド』か、『先輩悪役令嬢の姉』。
どちらにしろ最悪の環境になりそうなものの、わたしの傍を選んでくれたからには出来る限り幸せになって欲しいと心から思う。
「あ、でも……ルビー家に居た頃よりお小遣いは少ないんで、お給料が増えると嬉しいかも……?」
「あはは……お父様に伝えておくね……」
感動的なはずのシーンも、彼女の独特なペースに崩されてしまう。けれど、それも嫌いじゃない。
シャーロットは、今のわたしにとって大切な家族だ。
お父様や、今は亡きミアのお母様、前世のお母さんであるステラだけじゃない。
アメリアも、エミリー達わたし専属メイドも、リヒトも、料理長も、屋敷に居る他の使用人や騎士もみんな、今のわたしの家族なのだ。
大切な家族を幸せにするために、わたしが不幸になる訳にはいかない。
こうしてわたしは、悪役令嬢ルート脱却を改めて誓ったのだった。
*******
「本当だよ……びっくりした」
「申し訳ありません、お嬢様。ルビー侯爵令嬢と会われる前に、色々と説明しておくべきでした」
寝支度を終える頃、ようやく一段落して、シャーロットは相変わらずマイペースに笑い、事情を知っていたアメリアは申し訳なさそうに頭を下げる。
「ううん、アメリアは悪くないよ。わたしのメイドのことなのに、何にも知らなかったのはちょっとショックだったけど……」
「お嬢様……」
ルビー侯爵令嬢はあの後泣き疲れて眠ってしまい、コーラルと呼ばれた赤毛の騎士に運ばれてそのまま帰っていった。
彼から後日改めて挨拶に伺うと言われたものの、次にまた彼女が来た時には、もしかするとシャーロットが連れていかれるのではないかと不安だった。
「……大きくなったリーゼに、久しぶりに会えたのは嬉しかったですけど……」
「うん……」
「今のわたしは侯爵令嬢『シャルロッテ・ルビー』じゃなく、モルガナイト公爵家のメイド『シャーロット・ローズクォーツ』なので……お嬢様から離れたりしませんよ?」
「……っ、シャーロット……!」
わたしの憂鬱な気持ちに気付いたのか、シャーロットはいつものように見ていて安心する穏やかな笑みを浮かべて断言してくれる。
姉を恋しがって泣きじゃくるルビー侯爵令嬢を思い出し胸が痛んだものの、シャーロットが自分で選んでくれた道ならば、それを肯定するのが主の務めだ。
『悪役令嬢の元に仕えるメイド』か、『先輩悪役令嬢の姉』。
どちらにしろ最悪の環境になりそうなものの、わたしの傍を選んでくれたからには出来る限り幸せになって欲しいと心から思う。
「あ、でも……ルビー家に居た頃よりお小遣いは少ないんで、お給料が増えると嬉しいかも……?」
「あはは……お父様に伝えておくね……」
感動的なはずのシーンも、彼女の独特なペースに崩されてしまう。けれど、それも嫌いじゃない。
シャーロットは、今のわたしにとって大切な家族だ。
お父様や、今は亡きミアのお母様、前世のお母さんであるステラだけじゃない。
アメリアも、エミリー達わたし専属メイドも、リヒトも、料理長も、屋敷に居る他の使用人や騎士もみんな、今のわたしの家族なのだ。
大切な家族を幸せにするために、わたしが不幸になる訳にはいかない。
こうしてわたしは、悪役令嬢ルート脱却を改めて誓ったのだった。
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