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第一章  回想

2  美琴Side Ⅱ

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 私が物心つく前……ううん、きっと生まれるまえからパパはお仕事が忙し過ぎて余り家にいない。
 
 忙しい私のパパのお仕事はお医者さんだったりする。
 
 パパの病院とはほんの目と鼻の先に我が家がある。
 因みに玄関からでも十分見る事が出来るくらいにその距離は近い。
 そしてママも看護部長としてパパの病院で勤務し、パパを公私共に支えている仲良し夫婦である。

 年中仕事が忙しく中々自由は利かないパパとママだけれども、それでも家族がめっちゃ大切で、やっとの事で家族揃って時間を過ごせるんだ―って時に限って必ずと言っていい程私は柾兄と一緒にいた。

 だってパパよりもママよりも何時も私の傍にいて、私の相手をしてくれているのは柾兄なんだもん。
 懐かない方が可笑しいでしょ。
 
 でもパパはそんな私達を見て子供みたいに焼きもちをぷくぅ~っと膨らませるのはわからないでもないけれど、私の中では何時の頃からか柾兄はめっちゃ大切な人。
 それにね、普通3歳くらいの女の子達は『大きくなったらパパのお嫁さんになるぅー』って言うのが定番だけれど、私の場合は『』って誰彼なしに言っていた……らしい。

 あはは、今思えばめっちゃ恥ずかしい事してるやんって、自分自身で穴があったら入りたいくらいやわ。

 だけどめっちゃお子様でおませな私へ柾兄は何時も『いいよ』って、優しげに笑って答えてくれたの。

 こう言う所は流石に英国人のお祖母ちゃんの血を引いているなぁって思ってしまう。
 それに周りもと言うか私の両親や柾兄のお母さんの美咲みさき伯母さん共に、パパの経営する病院を何時か柾兄が継いでくれるだろうと、何と言うか暗黙の了解的な結婚OKオーラが自然と漂っていたのかもしれない。


 そうして時は流れ私が6歳になった頃柾兄は国立の医大へ見事現役合格した。
 国内トップクラスのK大合格だけれど6歳の子供に言ってもね、ただ周りが喜んでいたし柾兄もれ嬉しそうにしていたから私も当然嬉しかった。

 ただこの頃から柾兄はお勉強も忙しいくなり、また将来の跡取りとしてパパと一緒にいる時間が多かったけれども、それでも時間が出来ると『美琴の事は忘れてはいないよ』って言う言う様に、私が寂しくないよう時間を作っては相手をしてくれていた。
 家にはちゃんとママもいるって言うのにおまけに隣には柾兄のお家だし、しかも奥では往き来できる様に繋がっているんだから美咲伯母さんとも何時も一緒。

 ただし皆が家にいれば……ね。

 美咲伯母さんもママと同じ看護師だもん。
 でも6歳にもなればそんな忙しい環境にも慣れてくる訳で、そんな忙しい日々の中でも家族皆が常に幼い私へ気を遣ってはくれているんだよ。
 だから少し寂しいと感じても私は何時も笑って『大丈夫、寂しくないよ』と言ってお気に入りの大きなクマのぬいぐるみを抱き締めて寂しさを紛らわせていたよ。

 だってこの子は柾兄が4歳の誕生日にプレゼントしてくれた、青い大きなリボンをしたくまさんのぬいぐるみなんだよ。

 きいちゃんと命名したぬいぐるみと一緒ならば何も寂しいとは感じない。
 夕方遅くにはママか美咲伯母さんが必ず保育園へ迎えに来てくれるもん。
 ごく偶にパパのお迎えだってあるんだもんね。
 だからそれまでの辛抱。
 でもね、パパやママそれに美咲伯母さんが傍にいてくれてても、私にとって柾兄がいるのといないのとでは月とスッポン程に違うのだっっ。


 小学生になって変わった事はそれまで家と保育園と柾兄が全てだった私に、眞凛まりんという親友が出来た事。

 そして保育園とは違い学校では沢山のお友達も出来た。
 更には数えきれないくらいめっちゃ新しい発見をしていく中で私の身体も幼児から小児、そして女性としての身体が、そして心も少しずつ変わっていくお年頃。
 それと同時に柾兄も大学生から卒業してとうとうパパと一緒のになっていた。
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