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第一章 転生先は物語と酷似している世界の中二人の転生者は……。
10 ヒロイン エラ エラSide Ⅳ
しおりを挟むもうなんだって言うのっ、ちっともお義姉様に近づけないじゃないっっ。
まあ正確にはまだお義姉様じゃあないんだけれどさ、でも細かい事なんてこの際どうでもいいでしょ。
実際今日お義姉様に会うまで四人のおばさんと会ったんだけれどさ、うん確かに四人揃いも揃ってあざとそうな女狐ばかりだったよ。
まあね幾ら私のお父様がイケメンでお金を持っているからと言ってもさ、ちょっとばかし小声でお父様の再婚相手を探していると濁しただけで途端に身分も年齢もすっ飛ばして娘の私へ擦り寄り、キモい猫撫で声で『エラ様も本当にお父様が心配なのね。でもお父様の事は大丈夫よ、貴女の分も私がしっかりとお慰めしますからね、是非これから先の彼のご予定等を教えてくれないかしら』だって。
冗談じゃあないっっ!!
何考えてって言うか、小娘相手に何科を作って寄り掛かってくんのよっっ。
キモいったらない!!
おばさん幾つだよって、まあおばさん達の情報はちゃーんとしっかり調べ上げているけれどねっっ。
だって当たり前でしょ。
短い間とは言え、義理でも親子になるんだもん。
それに相手の情報をしっかり掴んでおかなきゃ私の思う通りに進められないじゃん。
後相手の弱みもね。
ふふん、弱みさえ握れば後はどうとでもなるもの。
でもどれもこれもさ、なーんか今一つなんだわ。
確かにまあまあ小奇麗で(私の美しさと比べれば断然劣るけれど!!)見るからに意地の悪そうなキャラで、万が一私を予定通り虐めても私が確実にそして優位に立てる相手。
条件は確かに合う。
だから私は面接と言う名の詰まらないお茶会へも何度となく出向いた。
でもねぇ決定的な何かが、あのおばさん達には欠けているそれは――――。
お父様がおばさん達を好きにならないって事。
まあ実の父親だからわかる事もある。
お父様は確かに商売はかなりやり手で、そこに一切の妥協なんてものを認めない冷酷な部分もある。
でも基本的にお父様は夢見る少年なのよ。
お母様とはとある舞踏会で偶然に出逢い、そしてあっという間に恋へと堕ちたらしい。
今でも……はっきり言ってほぼほぼ毎日お母様そっくりな私の手を取り夢見る様な眼差しで、『お母様とは運命の出逢いだったんだ。私はお母様と出逢って本当の幸せと言うモノを知ったんだよ。だからエラ、お前も今に運命の相手と出逢う筈だよ。何と言ってもお前はお父様とお母様の愛の結晶なのだからね』な~んて聞いているこっちが思わず赤面する様な事を平気な顔でお父様は言うんだよ。
まあ確かに私は運命の相手ともう直ぐ出逢うわよ。
何と言っても王子様ですもん。
きっと夢の様な恋をする筈。
でもその前にやる事をしなければいけない。
今の、お母様を未だ好きなままでいるお父様に何としても恋をさせなければいけない。
でも悲しいかな、お父様が恋をするだろう相手はあの中にはいない。
うーんやっぱり物語の強制力と言うモノが有るのだろうか。
向こうにいる私の未来のお義姉様、そしてそのお義姉様の母親、アンナ・トレメイン子爵夫人。
シンデレラの舞台に上がるのはやはりトレメイン親子――――か。
そうして私はあの手この手を上手く使いつつ立ち回り、何とかトレメイン親子との接触を試みる。
けれど実際は私が動かなくても物語は粛々と進んで行った。
そう、お父様とアンナ・トレメインは本当に自然な形で出逢ったのだ。
然も出逢いの場所は何を隠そう墓地――――だったのよ。
まさか私のお母様とアンナ・トレメインの夫のお墓が同じ場所で、それもほんの数mしか離れていないなんて誰が思う?
それに命日も同じなんてね。
だから偶々同じ命日だったからお墓参りの時に二人は運命の出逢いをした。
そして二人はただ今結婚をして脳内お花畑ただ状態です。
あほくさっ、私の今迄の苦労はなんだったのって思いっきり叫びたいっっ。
でも駄目、今の私は美しくて優しく、それでいて大人しい娘なのよ。
悪態なんて絶対に吐いちゃ駄目っっ。
だって計画は順調に進んでいるのだから……。
でも最近ふと思う。
本当に彼女達はあの意地悪な親子なの?
ううん、私は絶対に間違えてはいないわっっ。
名前もそうだし、ちゃんと時間を掛けて念入りに色々調べたもの。
でも――――と何か一抹の不安が、鎌首をゆっくりと擡げてくる。
確かに凍える様な冬の寒い夜に一際光り輝く月を思わせる美しさを持つアンナ・トレメイン。
一見心までも冷たい女だと誰もが思うんだけれど、でも思っていた感じとは随分と違う印象を持ってしまう。
そして同じ年の意地悪お義姉様として有名なアナスタシア・トレメイン。
彼女もよっ、確かに体型は物語と合っているけれど性格は至って大人しいし、美味しい食べ物さえあれば十分彼女は幸せそうだ。
そうして最後に最も訳のわからないのはあの女!!
ドリゼラ・トレメイン!!
あの女だけは本当に何を考えているのか全く分からないっっ。
初めて会った時はそれこそ自分より私の身分が低いとわかった瞬間――――本当に目も合わさなかった。
お父様が結婚すると決まった時もそうっっ。
本当に格下の身分になる事を心底嫌っていたのを私はちゃんと知っている。
なのにそれがうん確かに結婚を機に同居する当日だったわね。
あははっ、あの女、馬鹿みたいに澄ましているから足を思いっ切り踏み外して、そのままみっともなく馬車から転げ落ちちゃって、くくっ、本当にあれは無様だったよねー。
うん、アレはめっちゃ笑い転げたいのを必死に我慢したわっっ。
でもあれから……よね。
一週間後あの女が目覚めたら、まるで別人みたいになっていた。
今迄は声を掛けるのも鬱陶しそうだったのに、それが今度はこっちが鬱陶しいくらいに構ってくるんだもん。
本当に何処か打ち所が悪かったんじゃない。
ともあれ今は一番要注意なのはあのドリゼラよ。
後はきっと何とかなる……多分ね。
次はお父様の番。
そう、お父様にどうやって死んでもらうかよね。
出来れば自然に物語通り死んで欲しいのだけれど……。
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