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第一話  もしかしなくてもここはとある異世界と言うものなのでしょうか???  前篇

カルロスの呟き  カルロスside

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 私は当家の執事カルロスと申します。
 今より1ヶ月前のあの日、あの御方は愛美まなみ様を……聖女様をお連れになられました。
 当初の愛美様は酷く動揺され、こちらが心をほぐそうと致しましても、何処かおびえたウサギのようで御座いました。
 当然と言えばそうに御座いますよね。
 行き成り愛美様のいた世界より有無を言わせずこの世界へ召還された様なのですから……。

 一応事情をと愛美様のいらした世界の事等を、お伺い致しましたが初めて会う人間にも係わらず愛美様はそれを隠そうともされず正直に、そしてじきに元の世界へ帰るからと何度も御自分へ言い聞かせる様に、おっしゃってましたのが印象的でした。

 しかしやはりお若い女性に御座いますね。
 あの御方のご指示で愛美様が暫くの間当館にて過ごされるからという事で、用意させて頂きました女性らしい部屋をご覧になられた時の、あの嬉しそうなお顔は大変好ましいものに御座いました。
 ですが日中はとても緊張されていたのでしょうね、湯浴みを済まされるとお食事も軽食のみで、直ぐお休みになられました。
 その後様子をエイミーより報告を受けました執事長の私としても、少々心配で御座いましたよ。
 それからこの1ヶ月の間、あの御方のご指示にて愛美様の警護と、何処に出しても通用する淑女レディーとなられる様にするべく、慣れないこの世界で大変な愛美様には大変申し訳なかったのですがこれも全ては愛美様の御為、国中でも優秀な講師達を呼び寄せ、早速レッスンが開始されました。
 これに対しても愛美様は一言の文句も仰られず、黙々と……そう、きっと元々努力家の様な性格の御方でしょうか、出来ない所は講師が帰っても1人でレッスンされておられました。

 ただ……心配なのは、お食事ですね。
 普通一般的な貴族の子女は、皆様お1人でお傍で仕えている給仕や侍女侍従の見守る中で、ごく普通にお食事をなされますが、愛美様よりお聞きしましたら愛美様の世界ではお食事と言うモノは、ご家族で一緒に楽しい時間であったと仰られておられました。
 そうかんがみますと、今のお食事は愛美様にとってとても寂しいモノではないでしょうか?
 愛美様がお寂しくない様にと色々配慮させて頂いても、肝心の愛美様は返ってお気を使われ、レッスン以外は1人で静かにお過ごしになられております。

 だからこそ私はあの御方に御相談致しました。
 今のままでは愛美様のお心が何時か折れてしまう様な気がしてならない……と、それは愛美様のお傍で仕えているエイミーも同じ事を申しておりました。
 愛美様は元の世界へお帰りになる事を決して諦めてはおられません。
 私共に知られていないとお思いになられている様ですが、図書室等で元の世界へ帰る方法等を一生懸命探されている御姿がとても心を打たれてしまうのです。

 あの様にひたむきでお優しい愛美様へ、1日も早く真実を告げて頂けたら……と私は思います。

 本当は言えるモノならば私がとうにお話ししたい所で御座いますが、これは、このお話に関しましてはあの御方の口よりお話にならなければいけない事なのです。
 しかしあの御方も幾らお忙しいとは申せ、まぁ本当にお忙しい御方なので仕方のない事ですが、なにも毎夜態態わざわざ愛美様がお眠りになっているお時間に、そっとお顔を確かめるように見つめるだけでお言葉を交わす事もなく、直ぐにお戻りにられるのは如何いかがな事でしょうね。
 これでは愛美様が益々孤独にさいなまれても仕方のない事だと思います。

 私はこんな風にあの御方をお育てしたつもりはなかったがのですが……。
 ですが今日も1日愛美様が少しでも不安に思われない様に、皆と力を合わせて工夫をすると致しましょう。
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