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おはようなのじゃー。

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「んっー」
「外、起きてたもれ、起きてたもれ」
俺は鈴のような可憐な声で目を覚ました。
目の前には4歳児の顔が。
「外殿」
ほわわわーと擬音が聞こえてきそうな麗しいその笑顔に、俺はダッシュで正座する。
「おは、おはようじょー!」
「?」
まるは小首をかしげた。(可愛い)
「あ、今日はまるが先に起きたのか。まるは早起きですね。えらいえらい」
俺はまるの頭を撫でる。
「うにゅ」
まるは顔を赤らめて頭を抑える。
何だ、この生き物!?
破壊力ありすぎる!!
可愛いテロだ!可愛いテロ!!
俺はまるをトイレに行かせた。
「こわいからいてくれよのう」
「わかったよ」
かわいい。
将来大人になったまると一緒にトイレでうんちしたよねとか話すんだろうか……。
俺は朝ごはんにうさぎさんパンとくだものを用意。
「うさぎさん、可哀想じゃのー」
と言いつつ、はむはむするまる。
「おいしい?」
「うん」
俺は皿を片付けた。
「まる、散歩に行こっか」
俺は言った。
「うむ」
まるは頷く。
俺はまると手を繋いで、はじめてふたりで外に出た。
「は、はじめてのデートだね」
俺は緊張する。
「そうじゃのう」
まるは朗らかに言った。
今日ははじめてのデート記念日だ。
あとでカレンダーに花丸しておこう。
俺はまると歩く。
「あ、ちょうちょ」
まるがちょうちょを目で追いかけた。
「かわいいね」
「うん」
まるは笑う。
まるの歩幅はほんとにちっちゃくて、大人の俺が普段どんなに早くせわしなく歩いているかがわかる。
きゅきゅ。
まるが歩く度に、まるの草履から音がなる。
くわっ。
これ俺が小さい時にもあったやつだ。
こんなに可愛いとは!?
「あ、クレープ屋じゃ」
まるがクレープ屋をみつける。
「はじめてみるのう」
「まる、クレープたべたことないの?」
俺は聞く。
「ないのじゃ」
「じゃ、食べよう」
俺は財布を出す。
生クリームいちご味を頼んだ。
「おいちーのう」
まるが言う。
あ、あ、あ、あ、あ、
生クリームが顔中に!
顔中に
ベタベタついてる!!
あかん!!
これはだめだ!!
無邪気えろかわいい!!
「………」
俺は黙ってそれをみていた。
「どうしたのじゃ、外殿?」
まるが言う。
「………」
俺はまるの頬に顔を寄せた。
「なんじゃ?」
ぺろり。
思わず頬を舐めた。
「くすぐったいのう」
笑うまる。
「…おいしい」
俺は言った。
はっきりいってお金に余裕があったら毎日クレープ屋に連れて行きたい。
俺はハンカチでまるのぷにぷにほっぺのグリー厶をふきふきしたあと、まると公園に行った。
「わー高いのじゃー」
まるとブランコで遊ぶ。
「落ちるなよー」
俺は言った。
「のじゃ」
まる。
いかん。 
涙が溢れてきそうだ。
まるとシーソーで遊ぶ。まるの方が、当然、軽い。
「あはは」
笑うまる。
まると砂場で絵を書いたあと、ファミリーレストランで、お子様セットのハンバーグを頼んであげた。
「おいち」
ケチャップまみれで笑うまる。
俺は悶絶した。
「まる、はいジュース」
俺はまるにりんごジュースを飲ませた。
「ちゅー」
頬を凹ませて飲むまるの姿に俺は幼女の希少性を感じた。
俺はまるを肩車して、家に帰った。
「高いのじゃー」
まるは喜んでいる。
俺は幸せってこういう意味なんだなぁ、としみじみ思った。
まるを下ろし、玄関の新聞をとり、家に入る。
「ただいま、おうちさん」
まるのかわいい「ただいま」に俺は彼女の優しさを見出した。
おお。
この家がまると俺の新婚生活を応援してくれている!!
ひとりの時はただ無意味にだだっ広く感じるだけだった一軒家が妙に神聖に感じられた。
まると(ささやかな)お昼寝をする。
まるの背中を優しくたたく。
脆く、おさなげな、ちいさな背中。
「外殿……」
黒髪ポニーテールをおろして、流れるような黒の川になった毛束。
添い寝していると、いかん気持ちがでてくる。
は。
駄目だ駄目だ。
ああ、しかし……。
四歳ー!!!
「すう」
まるは寝た。
俺はいつまでもまるの寝顔をみていた。



その日。
俺はまると子供服店に行った。
そこで、やることといえば、買うことしかないー!!!
まるの、おぱんちゅをだーーーー!!!
「かわいいのがいいな」
俺はまるの純粋さを強調する為に、色は白無垢がいいと思った。
いや、意外と黒もコケティッシュで合うかもしれないが……。
いや、特に黒のスパッツは……。
とりあえず悩んでもあれなのでまると服を選ぶ。
「まる、パンツはなにがいい?」
俺は極めて真剣な表情で答えた。
やはり嫁には相応の下着を履いてもらわないと困る。嫁の下着を選ぶ。それは良い旦那の務めだ。
「くまさんー」
狐がくまをはくのか……。
「うむ。いいな」
俺は言った。
カゴに気に入ったパンツ(白無垢)を次々入れていく。
「あ、これながいのうー」
まるがかぼちゃパンツを掴んだ。
「はっーー!!」
そうか。
それをわすれていた!!
「まる、これも買おう」
俺は言った。
「うむ」
まるは頷く。
そして、靴下も買った。
ブルマも買った。
勿論、黒のスパッツもだ。
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