106 / 322
強くなります! の巻
第99話 大涌谷ダンジョン攻略
しおりを挟む5層と6層はプチサラマンダーに囲まれる前に、進行方向にいる奴だけを倒してささっと進んだ。
7層に入ったら森林エリアで、ダンジョン内なのに思わず深呼吸してしまった。
「あー、フィトンチッドー! 溶岩エリアの後だから凄く清々しい!」
「確かにね。敵さえ出なければここで寝っ転がりたい」
「敵が出なきゃな……」
『森にはヘビが出るぞ』
『あと化けキノコとツノウサくらいか』
『初級だから毒のない、でかいだけのヘビな』
ダンジョン情報が流れてくる。見てる人も多いから、こういう情報も貰えて助かるね。
「サザンビーチダンジョンの4層からも森林ですよ。あんまり敵と戦ったことはないけど」
『確かに、前も駆け抜けてたような』
うんうん、多分それは蓮たちと初めて会った日のことだね。あの時は帰りは戦ったけど、行きは確かに駆け抜けた。
あとはMV撮影したときにも行ったけど、その時も駆け抜けてる。
「ヘビ、嫌だな」
「蓮は前にヘビに絡まれてるから」
心底嫌そうな顔の蓮と、やっぱりため息をつく聖弥くん。SE-REN、いろいろされてるなあ……。
「えっ、サザンビーチダンジョンで?」
「そうそう、行きに確か5層辺りで、木の上から落ちてきたヘビにビビってたら、ツノウサに突撃されて、ひるんでるところでヘビに巻き付かれてた」
「聖弥が剣で切ってくれなかったらヤバかった」
「ええええ……確かに、全くステータスあげてなくて装備も付けてない一般人だとダンジョンは危ないけど、仮にも一応冒険者なのに初級ダンジョンでそんなにピンチに陥るもんなの?」
「陥るもんなんだよ!」
『ゆ~かと一緒にしてはいけない』
『あの時は見てて叫びそうになったよー』
蓮の叫びに同調するようにコメントが入る。ううむ……そうなのか。
サザンビーチダンジョンの森林エリアは4層からで、大涌谷ダンジョンの森林エリアは7層からだから、こっちの方がちょっと敵が強いんだよね。
確かに、ヘビとか割とどこから出るかわからないからなあ。
……とか思ってた時期が私にもありました。
ヘビことグリーンスネークは出たけど、ヤマトに首を噛まれて一撃だったし、化けキノコは私の棒手裏剣2発で倒せた。
あとは、ツノウサことミニアルミラージ。これは割と人気のあるモンスターで、角の生えたウサギだね。黒い角が特徴で、ミニが付かないアルミラージはそこそこ強いモンスターなんだけど、いかんせん「ミニ」なんだよね。
動物関係の仕事に就くためにテイマーを取ってる人たちは、これをテイムすることが多い。弱いからテイムしやすいし、小さいし、家で飼えるからね。
ツノウサは突進してきたんだけど、聖弥くんが盾で弾いたら結構いい音がした。
これは……角で思いっきり盾にぶつかったな?
見てみたら、脳震盪起こしたらしいツノウサがひっくり返ってる。そして、サクッとヤマトにとどめを刺されてた。
『強さがインフレ起こしてる』
『初級に潜る強さじゃないんよ』
『でも経験不足なんだよなあ』
『装備品の強さだからねえ』
それなんですよね……。だから、今日は配信のためにダンジョン潜ってるけど、強くなることに関しては合宿の方が期待大なのだ。
この辺りの敵も相手にならないので、サクサク進む。そして私たちはあっさりと10層に辿り着いた。
運がよければボスが……いたー!
「うわ、ここも溶岩か……」
「ボスもいるね」
相変わらずSE-RENは嫌そうに言うなあ! そこは喜ぼうよ!
「ふたりとも、配信してるって意識をもっと持とうよ! わーい、ボスがいた! って喜ぶところでしょ!」
「わーい、ボスがいた! 頑張るよ! 蓮が!」
「俺様ぁ!?」
わざとらしく喜んで見せた聖弥くんが、蓮にさらっと押しつけてる。
まあ、わかるけども。
ここのボスは、レッサーサラマンダー。
サラマンダーの、下位種って奴だね。本物のサラマンダーはもっと強い。四元素の精霊ってくらいだし。
プチサラマンダーはトカゲ型でサラマンダーを小さく弱くした奴だけど、レッサーサラマンダーは赤いサンショウウオみたいな奴だ。
でかくて、のたのたしてて、火を吐く。ほらぁ!
「うおっと!」
プチサラマンダーの吐くブレスとは全然大きさが違う! それがこっちに飛んできたけど、私たちは軽々避けた。
「私たちが叩いても良いけど、ここは蓮でしょ」
「僕もそう思う。今日はいいとこがなかったし」
「聖弥までそんな事を言うんだ……」
『あれだけでかければ的も外さないし』
『蓮くん頑張れ~』
『頑張れ魔法少女』
「魔法少女じゃねえから!」
コメントに叫び返しつつ、蓮はロータスロッドを構えた。
「アクアフロウ!」
レッサーサラマンダーの吐いたファイアーブレスよりも、蓮が打つアクアフロウの方が大きいなあ……。
水の塊がどかっとレッサーサラマンダーにぶちあたり、オアアアア……って悲鳴だけがこだまして、ボスは倒れた。
一撃か……。
強くなったなあ~。
「あっけなかったね……」
「火属性に水魔法をぶつけるのは常道だよね」
「おおおおおおおお俺が、ボスを一撃で?」
蓮は狼狽してるけど、補正込みでMAG250越えだよ?
魔力「だけ」なら日本屈指だよ、君は……。
「いや、多分あれ、オーバーキルだった」
私が呟くと、コメント欄も同意の渦!
『アクアフロウの水球は、普通あんなにでかくない』
『もしかするとゆ~かか聖弥でも一撃だったかもしれない』
『遅くてでかい相手だと、遠距離でぶつかられる魔法は安定するね』
『でもレッサーサラマンダーは魔法系だから、RSTはそれなりにあったはずなんだが』
RST100越えてる私でも、さっき一撃でHPが150以上削られましたけどね……。
初級ダンジョンのボスだから、多分ヤマトでも一撃なんだよね。シーサーペントがそうだったし。
残念ながらボスドロはなし。そして赤い魔石が出たけど、さっそくヤマトが前脚の間に挟んでボリボリしております。骨ガムの如く。
うーん、さっきひとつだけ拾えたツノウサの角と、プチサラマンダーの魔石だけが収穫かあ。
「なんか、あっけなかった。SE-REN火祭り事件みたいな撮れ高を期待してたのに」
「いや……蓮がゆ~かちゃんに魔法ぶつけたから、もうそれで十分じゃないかな」
「ああ、そうだよね!? そういえばさっき蓮、『俺』って言わなかった!?」
『言った!』
『言ってた』
『LVどうなった?』
「そうだ、LV!」
聖弥くんが慌ててアプリをチェックしてる。そして、スン……って顔になった。
うわ、嫌な予感!
由井聖弥 LV10
HP 58/58(+310)
MP 17/17(+300)
STR 12(+198)
VIT 11(+204)
MAG 11(+197)
RST 13(+204)
DEX 12(+199)
AGI 11(+198)
装備 【エクスカリバー】【プリトウェン】【アポイタカラ・セットアップ】
「平たい……」
一番低いステータスが11で、一番高いのが13ってどういうことよ。
しかもRSTが高いのは、さっきのプチサラマンダーの集中砲火のおかげだよね?
AGIが伸びないのはなんとなくわかるよ。AGIが上がりそうな動きしてないもん。盾持ちファイターだし。
解せぬのは、MAGの上がり方だね! なんでLV2上がって、何もしてないはずなのにMAGも2上がってるの!
「聖弥くん、MAG上がってるのなんで!? 私なんかLV9上がってやっと2上がったのに!」
「それは、蓮から聞いて金沢さんから教わった魔力の訓練法をしたからだと思う」
さらっと答える器用貧乏。それだよ……。
「というか、それはわかった。納得できた。だけど、同じ事をしてるはずなのに私のMAGが上がらないのはなんでかなあ!」
「才能がないからだろ」
いつも私に「STRの才能がない」って言われてる蓮が、「へっw」と言わんばかりの顔で言う。
「気にしてるのに! 気にしてるのに! デリカシーがない!」
「俺……俺様だって気にしてるんだぞ!?」
蓮の首を絞めようとする私と、必死に私の腕を掴んで阻止しようとする蓮。
くっ、何故かこういうときだけ「日常生活ではこのくらい」の修正が入るんだなあ! 圧倒的にステータスでは私の方が強いのに、止められる!
『ぐだぐだしてんなあ』
『こいつらはこれでいいんだよ……』
『男ふたり女ひとりなのに色恋の気配が全く感じられない件』
『だがそれがいい』
結局、「蓮が死ぬから」って聖弥くんに引き剥がされたけど、私的にスッキリしないなあ、いろいろと!
13
お気に入りに追加
73
あなたにおすすめの小説
玲子さんは自重しない~これもある種の異世界転生~
やみのよからす
ファンタジー
病院で病死したはずの月島玲子二十五歳大学研究職。目を覚ますと、そこに広がるは広大な森林原野、後ろに控えるは赤いドラゴン(ニヤニヤ)、そんな自分は十歳の体に(材料が足りませんでした?!)。
時は、自分が死んでからなんと三千万年。舞台は太陽系から離れて二百二十五光年の一惑星。新しく作られた超科学なミラクルボディーに生前の記憶を再生され、地球で言うところの中世後半くらいの王国で生きていくことになりました。
べつに、言ってはいけないこと、やってはいけないことは決まっていません。ドラゴンからは、好きに生きて良いよとお墨付き。実現するのは、はたは理想の社会かデストピアか?。
月島玲子、自重はしません!。…とは思いつつ、小市民な私では、そんな世界でも暮らしていく内に周囲にいろいろ絆されていくわけで。スーパー玲子の明日はどっちだ?
カクヨムにて一週間ほど先行投稿しています。
書き溜めは100話越えてます…
幼い公女様は愛されたいと願うのやめました。~態度を変えた途端、家族が溺愛してくるのはなぜですか?~
朱色の谷
ファンタジー
公爵家の末娘として生まれた6歳のティアナ
お屋敷で働いている使用人に虐げられ『公爵家の汚点』と呼ばれる始末。
お父様やお兄様は私に関心がないみたい。愛されたいと願い、愛想よく振る舞っていたが一向に興味を示してくれない…
そんな中、夢の中の本を読むと、、、
またね。次ね。今度ね。聞き飽きました。お断りです。
朝山みどり
ファンタジー
ミシガン伯爵家のリリーは、いつも後回しにされていた。転んで怪我をしても、熱を出しても誰もなにもしてくれない。わたしは家族じゃないんだとリリーは思っていた。
婚約者こそいるけど、相手も自分と同じ境遇の侯爵家の二男。だから、リリーは彼と家族を作りたいと願っていた。
だけど、彼は妹のアナベルとの結婚を望み、婚約は解消された。
リリーは失望に負けずに自身の才能を武器に道を切り開いて行った。
「なろう」「カクヨム」に投稿しています。
俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる
十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。
異世界から日本に帰ってきたら魔法学院に入学 パーティーメンバーが順調に強くなっていくのは嬉しいんだが、妹の暴走だけがどうにも止まらない!
枕崎 削節
ファンタジー
〔小説家になろうローファンタジーランキング日間ベストテン入り作品〕
タイトルを変更しました。旧タイトル【異世界から帰ったらなぜか魔法学院に入学。この際遠慮なく能力を発揮したろ】
3年間の異世界生活を経て日本に戻ってきた楢崎聡史と桜の兄妹。二人は生活の一部分に組み込まれてしまった冒険が忘れられなくてここ数年日本にも発生したダンジョンアタックを目論むが、年齢制限に壁に撥ね返されて入場を断られてしまう。ガックリと項垂れる二人に救いの手を差し伸べたのは魔法学院の学院長と名乗る人物。喜び勇んで入学したはいいものの、この学院長はとにかく無茶振りが過ぎる。異世界でも経験したことがないとんでもないミッションに次々と駆り出される兄妹。さらに二人を取り巻く周囲にも奇妙な縁で繋がった生徒がどんどん現れては学院での日常と冒険という非日常が繰り返されていく。大勢の学院生との交流の中ではぐくまれていく人間模様とバトルアクションをどうぞお楽しみください!
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない
亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。
不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。
そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。
帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。
そして邂逅する謎の組織。
萌の物語が始まる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる