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ゆ~か、いろいろダメなアイドルを助けるの巻
第20話 アイドルの実態に迫る
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「うわっ、マジだ」
私が教えたチャンネルからアーカイブを見て、その再生数を見て蓮くんがビビっている。そして、チャンネル概要とかいろいろチェックし始めた。
「おい、X’sのアカウント名書いてないぞ。まさか今まで予告無し配信してたのか」
「そうだよ。でもアーカイブから時間割り出して待機してたって人が今日いた」
「配信用のアカウント作って告知とかしろよ、あと、ヤマトの写真もそこに上げろ。犬の写真はいくらあってもいい」
「あ、それいい! よし、すぐ作ろう」
私がアカウントを作っている間に、蓮くんは倍速で動画を飛ばし飛ばし見ていた。何がバズったのかチェックしてるっぽい。
「配信中はヤマトが走るのに振り回されててコメント拾えないことも多いだろ、雑談配信とかして質問コーナーやった方がいいんじゃないのか?」
おおお、しかも配信の問題点に気づいてアドバイスしてくれるとは! これはママでも気づかなかったのに。
「すごーい! さすがDアイドル、詳しい! 蓮くんたちのチャンネルって登録者何人くらいいるの?」
「……38人」
おお……「ヒロシです……」って悲しげな自己紹介をするソロキャンで有名な芸人さんよりも切ない声。私は聞いてはいけないことを聞いてしまったのか。
「……あ、ごめんね、センシティブな話題振って」
「おまえのその反応の方がよほど傷つくんだよ! くそっ、LIMEやってんだろ、友達登録させろ」
「言ってることが矛盾してる……」
「アドバイスする用にだよ! 他に意味はねえよ!」
ぷんすこしてる蓮くんとスマホを取り出して友達登録をしながら、私はずっと疑問だったことを彼にぶつけてみた。
「ねえ」
「なんだよ」
「アイドルってそんなに口が悪くてもやってられるの?」
蓮くんが凄い顔で固まってるし、いつの間にか仮面を外したママがハンドルを握ったまま「ブフォッ!」って吹き出した。交差点に入るところだったよ? 危なっ。
「俺はそれで売ってんの! 口が悪くてアウトローっぽい俺と、品行方正の正統派王子様みたいな聖弥って組み合わせがギャップあるだろ」
「そうよ! 2.5次元俳優で有名なリュウくんも『やろうや』が口癖の元ヤンキャラで売ってるけど、実際は凄く礼儀正しくて気配りのできる良い子だっていうし、そういうキャラ付けって必要なのよ!」
「アウトローって何? 外角低め?」
「おまえ馬鹿なのか!? ローは低いって意味じゃなくて法律って意味の方だ! つまり法律の外にいる奴、無法者のことだよ!」
「ヤバい~、うちの子面白い~」
ママが運転しながら爆笑してますが。
いや、面白いのは我が家の一般常識教育が足りてない証拠でもあるからね!? 笑ってる場合じゃないよ?
しかし、アウトローって外角低めのことじゃなかったのか……。
「俺さあ……俺と聖弥はさ、アイドルじゃなくて俳優になりたいんだ。でも社長が人気俳優になるにはライダーか戦隊か2.5次元やるのが近道だって持論でさ」
「うん、それは間違ってないと思うわよ。若俳の登竜門ね」
蓮くんの突然の自分語りに、若俳沼にハマってるママの同意が入りました。
「特に今は2.5がはやってるから、ミュージカルも舞台も戦闘シーンが売りなの多いし、戦闘の訓練とステータス上げして体力付けるために配信冒険者やれって言われて」
「ボイトレとかしてるの?」
「ボイトレはしたことないです」
「ううーん、舞台の殺陣とダンジョンの戦闘は違うわよー? 逆に武器によっては変な癖が付いて後で苦労するかも。
体力はあった方がいいのは間違いないし、配信で人気でればプラスなのも間違いないんだけど、方向性がずれてる気がするわね」
「俺もちょっとそれは思ってて。でもうちの事務所、社長と俺たちふたりだけしかいなくて金ないし、社長がなかなか仕事取ってこられないからやらないよりマシって思ってダンジョン配信してたんだけど、聖弥があんな怪我して……あいつ、ステータスが戦士向きじゃないのに、俺の方が更に酷いからって無理して前衛やってて」
「なにそれ!? 酷いじゃないの! そんな事務所辞めちゃいなさいよ。ジューノンのボーイズコンテスト狙った方がまだいいわよ!! いっそフリーってのもありよ。オーディション情報とか集めるの大変だろうけど」
「ママ、詳しいね」
「あったり前よ。伊達にユズが幼稚園の時からペンラ振ってないんだから」
凄く偉そうにオタク歴を自慢する母よ……。
それにしても、蓮くんたちは本当はアイドルじゃなくて俳優になりたいのかあ。
「そっかー、そういう動機の人もいるんだね。
私は動物園の飼育員になりたくて、それにはテイマーになれてるといろんな事に凄く有利で……動物と心を通じやすかったり、こっちの指示を聞いてくれやすくなったりとか」
「おまえ、既にテイマーだろ? ヤマトに全然指示聞いてもらえてねえじゃん」
「ぐっ! そ、それは言わないで! それ以外にも、ステータスが上がることでゾウを自力で押さえられたりカバの突進を止められたり、メリットがあるんだよ!」
「カバの突進を……止める?」
なんだこいつ、って珍獣を見る目で私を見てくる蓮くん。いや、全然おかしくないよ! 実際冒険者やってテイマージョブ取って動物園で働いてる人もいるんだし、イルカトレーナーなんかテイマー必須とも言われてるんだから。
「カバって凄く強いんだよ!? 知らないの?」
眠っちゃったヤマトを起こさないくらいの勢いで、私は蓮くんの方を向いて力説した。蓮くんは目を見開いて、それからちょっと私から目を逸らす。
「おまえ……気安いよな。他の男にもそんななの?」
「人見知りしないのが一番の長所って言われてるもん。あと、クラスの男子とはいつもこんなんだよ」
「野生の陽キャ怖ぇ……」
「陰キャアイドルよりマシかと」
「サカバンバスピスみたいに腹立つなー」
「ああ、あれ腹立つ顔してるよねー」
私たちの斜め方向に飛んでいく言い合いに、ママが笑った。
「あなたたち、すっごい同レベル。見てて面白いわ」
私が教えたチャンネルからアーカイブを見て、その再生数を見て蓮くんがビビっている。そして、チャンネル概要とかいろいろチェックし始めた。
「おい、X’sのアカウント名書いてないぞ。まさか今まで予告無し配信してたのか」
「そうだよ。でもアーカイブから時間割り出して待機してたって人が今日いた」
「配信用のアカウント作って告知とかしろよ、あと、ヤマトの写真もそこに上げろ。犬の写真はいくらあってもいい」
「あ、それいい! よし、すぐ作ろう」
私がアカウントを作っている間に、蓮くんは倍速で動画を飛ばし飛ばし見ていた。何がバズったのかチェックしてるっぽい。
「配信中はヤマトが走るのに振り回されててコメント拾えないことも多いだろ、雑談配信とかして質問コーナーやった方がいいんじゃないのか?」
おおお、しかも配信の問題点に気づいてアドバイスしてくれるとは! これはママでも気づかなかったのに。
「すごーい! さすがDアイドル、詳しい! 蓮くんたちのチャンネルって登録者何人くらいいるの?」
「……38人」
おお……「ヒロシです……」って悲しげな自己紹介をするソロキャンで有名な芸人さんよりも切ない声。私は聞いてはいけないことを聞いてしまったのか。
「……あ、ごめんね、センシティブな話題振って」
「おまえのその反応の方がよほど傷つくんだよ! くそっ、LIMEやってんだろ、友達登録させろ」
「言ってることが矛盾してる……」
「アドバイスする用にだよ! 他に意味はねえよ!」
ぷんすこしてる蓮くんとスマホを取り出して友達登録をしながら、私はずっと疑問だったことを彼にぶつけてみた。
「ねえ」
「なんだよ」
「アイドルってそんなに口が悪くてもやってられるの?」
蓮くんが凄い顔で固まってるし、いつの間にか仮面を外したママがハンドルを握ったまま「ブフォッ!」って吹き出した。交差点に入るところだったよ? 危なっ。
「俺はそれで売ってんの! 口が悪くてアウトローっぽい俺と、品行方正の正統派王子様みたいな聖弥って組み合わせがギャップあるだろ」
「そうよ! 2.5次元俳優で有名なリュウくんも『やろうや』が口癖の元ヤンキャラで売ってるけど、実際は凄く礼儀正しくて気配りのできる良い子だっていうし、そういうキャラ付けって必要なのよ!」
「アウトローって何? 外角低め?」
「おまえ馬鹿なのか!? ローは低いって意味じゃなくて法律って意味の方だ! つまり法律の外にいる奴、無法者のことだよ!」
「ヤバい~、うちの子面白い~」
ママが運転しながら爆笑してますが。
いや、面白いのは我が家の一般常識教育が足りてない証拠でもあるからね!? 笑ってる場合じゃないよ?
しかし、アウトローって外角低めのことじゃなかったのか……。
「俺さあ……俺と聖弥はさ、アイドルじゃなくて俳優になりたいんだ。でも社長が人気俳優になるにはライダーか戦隊か2.5次元やるのが近道だって持論でさ」
「うん、それは間違ってないと思うわよ。若俳の登竜門ね」
蓮くんの突然の自分語りに、若俳沼にハマってるママの同意が入りました。
「特に今は2.5がはやってるから、ミュージカルも舞台も戦闘シーンが売りなの多いし、戦闘の訓練とステータス上げして体力付けるために配信冒険者やれって言われて」
「ボイトレとかしてるの?」
「ボイトレはしたことないです」
「ううーん、舞台の殺陣とダンジョンの戦闘は違うわよー? 逆に武器によっては変な癖が付いて後で苦労するかも。
体力はあった方がいいのは間違いないし、配信で人気でればプラスなのも間違いないんだけど、方向性がずれてる気がするわね」
「俺もちょっとそれは思ってて。でもうちの事務所、社長と俺たちふたりだけしかいなくて金ないし、社長がなかなか仕事取ってこられないからやらないよりマシって思ってダンジョン配信してたんだけど、聖弥があんな怪我して……あいつ、ステータスが戦士向きじゃないのに、俺の方が更に酷いからって無理して前衛やってて」
「なにそれ!? 酷いじゃないの! そんな事務所辞めちゃいなさいよ。ジューノンのボーイズコンテスト狙った方がまだいいわよ!! いっそフリーってのもありよ。オーディション情報とか集めるの大変だろうけど」
「ママ、詳しいね」
「あったり前よ。伊達にユズが幼稚園の時からペンラ振ってないんだから」
凄く偉そうにオタク歴を自慢する母よ……。
それにしても、蓮くんたちは本当はアイドルじゃなくて俳優になりたいのかあ。
「そっかー、そういう動機の人もいるんだね。
私は動物園の飼育員になりたくて、それにはテイマーになれてるといろんな事に凄く有利で……動物と心を通じやすかったり、こっちの指示を聞いてくれやすくなったりとか」
「おまえ、既にテイマーだろ? ヤマトに全然指示聞いてもらえてねえじゃん」
「ぐっ! そ、それは言わないで! それ以外にも、ステータスが上がることでゾウを自力で押さえられたりカバの突進を止められたり、メリットがあるんだよ!」
「カバの突進を……止める?」
なんだこいつ、って珍獣を見る目で私を見てくる蓮くん。いや、全然おかしくないよ! 実際冒険者やってテイマージョブ取って動物園で働いてる人もいるんだし、イルカトレーナーなんかテイマー必須とも言われてるんだから。
「カバって凄く強いんだよ!? 知らないの?」
眠っちゃったヤマトを起こさないくらいの勢いで、私は蓮くんの方を向いて力説した。蓮くんは目を見開いて、それからちょっと私から目を逸らす。
「おまえ……気安いよな。他の男にもそんななの?」
「人見知りしないのが一番の長所って言われてるもん。あと、クラスの男子とはいつもこんなんだよ」
「野生の陽キャ怖ぇ……」
「陰キャアイドルよりマシかと」
「サカバンバスピスみたいに腹立つなー」
「ああ、あれ腹立つ顔してるよねー」
私たちの斜め方向に飛んでいく言い合いに、ママが笑った。
「あなたたち、すっごい同レベル。見てて面白いわ」
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