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3 それぞれの思い

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「造形がうまくいかない時や、絵柄のアイデアに詰まった時なんかに、和奏の顔を見ると癒されるんだ……いつの間にか時間が過ぎてて、仕事にならない時もあるけどな……」

 父は少し恥ずかしそうに私から目を逸らし、コルクボードに私の写真が貼ってある理由を教えてくれた。

「これって……親バカか?」

 照れくさそうな様子に、私まで恥ずかしくなる。

「親バカ……だね」

 父は、はははと笑って、西瓜の皮と種が乗ったお盆を隣のテーブルへ移す。
 机の代わりに使っているテーブルに紙を置き、すらすらと色鉛筆を走らせた。

「これ……なんだかわかるか?」

 訊ねられるので、父の横から顔を出して、描かれたものを確かめる。

「わかる! わかるよ!」

 私は急いで、いつも首から提げているペンダントを服の中から引っ張り出した。
 小学校初めての授業参観で、父と一緒に作ったペンダントだった。
 そこに描かれた私の絵と、よく似た花の絵を、父は紙に描いていた。

「なんだ? いつも提げてるのか?」

 いつになく大きな声で驚く父に、私は笑いながら答える。

「違うよ。でもここに来てからは提げてるかな……やっぱり気づいてなかったんだ」

 父は照れたように頬を指で掻いた。

「高校生の娘の胸もとなんて、じろじろ見るわけにはいかないだろ……『セクハラ親父』って言われたら悲しいし……」
「言わないよ!」

 十年近く離れて暮らしていた娘が、突然一緒に暮らすことになり、父も思うことがあったのだろう。
 私の知らないところで、いろいろと気を遣ってくれていたのだ。
 どこで仕入れたのか怪しい知識ではあるが――。
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