9 / 135
第8話 一稼ぎいこうぜ!
しおりを挟むはじめての街、そこでこれからの旅に備えた準備をする事になったのだが。
連れてこられたのは地下闘技場だった。
「稼ぐってギャンブルかよ」
「堕落の極みね」
「誰が落伍者界の底辺だッ!!ちげぇよ、ギャンブルじゃあねえよ。確実に稼げるいい方法があるんだ」
ニヤついた顔でネラは話す。
「トーナメントがあってな、それに参加して優勝景品と賭けの儲けそうどりよ!更に男女でトーナメントが分かれてるから、2重どり!どうだ?!」
ネラはここでの稼ぎ方を説明した。
「どうだって、それ私も参加するの?」
「いや、それだと両方が決勝前でぶつかるし、わざとらしさが出るからな。私が出る。その代わりなんかあった時に備えて控えておいてくれ」
ネラはユイに待機しておいてもらうよう頼んだ。
「じゃあ私は何か食べて待ってるよー、すいませーん注文良いですか」
ユイはてきとうに見つけた席に座る。
受付に向かうネラ。
「おう!ネラじゃねえか、誰に賭けるんだ?今日はキングとクイーンが出るんだ、優勝はその二人に確定だから皆準優勝は誰かって予想で盛り上がってるぜ」
「いや、私とこいつに賭ける」
ネラはそう言って自分と後ろにいるタケミに指を差す。
「ほぉお前が出るのか!そいつぁ面白れぇ!」
受付の男はそう言ってネラから袋を受け取った。
「よく来るんだな」
周りの人間がネラに接する様子をみるとかなり彼女はここに馴染んでいるようにタケミは思った。
「まあ時折な、この街で娯楽つったらここで賭けるか酒場で酒飲むかしかねぇからな。ここの連中は色んな所から流れてきたから情報も結構集まるんだ」
「とか言って、本当はただ賭け事楽しんでるだけじゃねえのか?」
タケミにそう言われるとネラは鼻をならす。
「ふん!失礼な。ここには週6しか来てねぇよ」
「中毒者め、残りの1日は何してんだ」
「勝った分、酒場で使って一日中飲んでる。おい、なんだその目は?人をクズをみるような目で見るんじゃありません」
そんなクズのネラとタケミはトーナメントに出場登録をした。
しばらくすると出場者の登録が締め切られ、いよいよ開始の時間を迎える。
『さあ!!始まりましたキング&クイーントーナメント!!』
場を盛り上げる為に男が声を張る。どうやら実況をする役のようだ。
『果たして新たな王と女王は誕生するのでしょうかッ!!』
ツギハギスーツの男はそう言ってステッキをマイク代わりにして話す。
男の煽りによって観客は怒号とも言えるような歓声を上げる。集まった観客でごった返す地下闘技場は熱気に包まれていた。
『さあ、では早速参りましょう!!キングトーナメント!第一回戦ッッ!!』
金網で囲われた闘技場が眩しく照らされる。
『青―コーナーッ!!本トーナメント初参戦、カヅチ・タケミッ!!実力は未知数だがその巨体刻まれた無数の傷が生み出すインパクトは絶大!』
青いペンキで雑に塗られた金網側からタケミがリングに上がる。
『赤―コーナーッ!!その鍛え上げられた鋼の手で数多の相手を貫いてきた男ッ!!現キングが現れる以前はトーナメント優勝回数最多を誇っていたレジェンド!!今回でキングの座を奪還する事が出来るのかッ!!マスターランスの登場だッ!!』
赤いペンキで塗られたサイドからは拳法家の格好をした男が入場してきた。
突きを放つパフォーマンスで観客を沸かせる。
『では闘技開始ッ!!!』
実況がゴングを鳴らす。
「よろしく、おじさん強そうだな」
タケミは構えた。
(無骨ながらも力強い構え、それにこの威圧感。ただものではないなこの男、油断せずに行くか)
相手の男は先手をうってきた。
「ハッッ!!」
いきなり相手は全力で突きをタケミのみぞおち目掛けて放つ。
指を伸ばした状態で放つ突き、空手でいう所の貫手と言われる技である。
「直撃だッ!!」
「終わっちまったか?!」
観客はそう声を上げる。
しかし、クリーンヒットした際に相手の脳内はパニックを起こしていた。
(なんだ?俺は人に向けて突きを放った筈だ。それも急所を突いた筈だ。それなのに……なぜ、鉄の塊に向かって突きを放ったような感覚が?!)
彼が自分の放った手に目を向ける。
するとその手先にあった指が折れ曲がっている事に気付く。
「っ!!?ぐッ!!」
「そんじゃあ次はおれから」
タケミは左手で相手を横から殴った。
「ぼはっ!!」
相手は回転しながら金網に激突し、白目をむいて気絶する。
『け、け、決着ぅぅぅぅッ!!勝者、カヅチ・ユキチカッ!!これは最初から大番狂わせだッ!!』
実況がゴングを何度も鳴らす、会場がどよめく。
「指を伸ばしたまま突きか、なるほどなぁ。でも鍛えないと突き指しそう」
指先を伸ばした手で自分の胸を突くタケミ。
「つよっ、もぐもぐ」
鶏の丸焼きをフォークとナイフで頬張りながら、ユイはタケミの圧倒的なフィジカルに関心していた。
『さあ、お次はクイーントーナメントの第一回戦ッ!!』
『青コーナーッ!!ネラッ!!この地下闘技場にはよく現れていましたが、参戦は今回が初!果たしてその実力は如何に?!』
次はネラの番だ、リングに上がって軽くその場で跳んでステップを踏む。
『そして赤コーナーッ!!こちらは地下闘技の常連!その実直な戦い方が観客を沸かせるッ!頭の傷は戦士の証!!ワイルドホッグの登場だッ!!』
額にいくつもの傷を持った女がリングに上がった。
『ではぁ!闘技開始ッ!!』
ゴングがなってもネラは観客に向かって手を振っていた。
「いえーい」
「こんの!よそみしてんじゃねぇッ!!」
ワイルドホッグが上体を大きく前に倒した状態で駆け出す。
『おおっ!!!出たッ!!ワイルドホッグの突進だッ!!!』
勢いよく彼女はネラの背中目掛け突撃。
「ふんっ、そんなもんか」
「え?」
背を向けたままネラはそう言い放つ。
するとネラは即座に振り向き、鋭い回し蹴りを突っ込んで来たワイルドホッグのこめかみに打ち込んだ。
そのまま相手は大きな音をたて、地面に叩きつけられる。
『な、なんという蹴りッ!!まるで死神の鎌のような蹴りが炸裂ッ!!ワイルドホッグ選手地面に倒れたまま動きません!!勝者ネラッ!!こちらも大波乱の予感だァァッ!!!』
ゴングを勢いよく鳴らす実況。
「よーし、一勝ッ!」
ガッツポーズをとるネラ。
路銀に向けて快調なスタートを切る2人だった。
0
お気に入りに追加
14
あなたにおすすめの小説
女神様から同情された結果こうなった
回復師
ファンタジー
どうやら女神の大ミスで学園ごと異世界に召喚されたらしい。本来は勇者になる人物を一人召喚するはずだったのを女神がミスったのだ。しかも召喚した場所がオークの巣の近く、年頃の少女が目の前にいきなり大量に現れ色めき立つオーク達。俺は妹を守る為に、女神様から貰ったスキルで生き残るべく思考した。
ギルドから追放された実は究極の治癒魔法使い。それに気付いたギルドが崩壊仕掛かってるが、もう知らん。僕は美少女エルフと旅することにしたから。
yonechanish
ファンタジー
僕は治癒魔法使い。
子供の頃、僕は奴隷として売られていた。
そんな僕をギルドマスターが拾ってくれた。
だから、僕は自分に誓ったんだ。
ギルドのメンバーのために、生きるんだって。
でも、僕は皆の役に立てなかったみたい。
「クビ」
その言葉で、僕はギルドから追放された。
一人。
その日からギルドの崩壊が始まった。
僕の治癒魔法は地味だから、皆、僕がどれだけ役に立ったか知らなかったみたい。
だけど、もう遅いよ。
僕は僕なりの旅を始めたから。
幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話
妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』
『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』
『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』
大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。
転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
悪役貴族の四男に転生した俺は、怠惰で自由な生活がしたいので、自由気ままな冒険者生活(スローライフ)を始めたかった。
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
俺は何もしてないのに兄達のせいで悪役貴族扱いされているんだが……
アーノルドは名門貴族クローリー家の四男に転生した。家の掲げる独立独行の家訓のため、剣技に魔術果ては鍛冶師の技術を身に着けた。
そして15歳となった現在。アーノルドは、魔剣士を育成する教育機関に入学するのだが、親戚や上の兄達のせいで悪役扱いをされ、付いた渾名は【悪役公子】。
実家ではやりたくもない【付与魔術】をやらされ、学園に通っていても心の無い言葉を投げかけられる日々に嫌気がさした俺は、自由を求めて冒険者になる事にした。
剣術ではなく刀を打ち刀を使う彼は、憧れの自由と、美味いメシとスローライフを求めて、時に戦い。時にメシを食らい、時に剣を打つ。
アーノルドの第二の人生が幕を開ける。しかし、同級生で仲の悪いメイザース家の娘ミナに学園での態度が演技だと知られてしまい。アーノルドの理想の生活は、ハチャメチャなものになって行く。
転移した場所が【ふしぎな果実】で溢れていた件
月風レイ
ファンタジー
普通の高校2年生の竹中春人は突如、異世界転移を果たした。
そして、異世界転移をした先は、入ることが禁断とされている場所、神の園というところだった。
そんな慣習も知りもしない、春人は神の園を生活圏として、必死に生きていく。
そこでしか成らない『ふしぎな果実』を空腹のあまり口にしてしまう。
そして、それは世界では幻と言われている祝福の果実であった。
食料がない春人はそんなことは知らず、ふしぎな果実を米のように常食として喰らう。
不思議な果実の恩恵によって、規格外に強くなっていくハルトの、異世界冒険大ファンタジー。
大修正中!今週中に修正終え更新していきます!
【R18】童貞のまま転生し悪魔になったけど、エロ女騎士を救ったら筆下ろしを手伝ってくれる契約をしてくれた。
飼猫タマ
ファンタジー
訳あって、冒険者をしている没落騎士の娘、アナ·アナシア。
ダンジョン探索中、フロアーボスの付き人悪魔Bに捕まり、恥辱を受けていた。
そんな折、そのダンジョンのフロアーボスである、残虐で鬼畜だと巷で噂の悪魔Aが復活してしまい、アナ·アナシアは死を覚悟する。
しかし、その悪魔は違う意味で悪魔らしくなかった。
自分の前世は人間だったと言い張り、自分は童貞で、SEXさせてくれたらアナ·アナシアを殺さないと言う。
アナ·アナシアは殺さない為に、童貞チェリーボーイの悪魔Aの筆下ろしをする契約をしたのだった!
神様との賭けに勝ったので、スキルを沢山貰えた件。
猫丸
ファンタジー
ある日の放課後。突然足元に魔法陣が現れると、気付けば目の前には神を名乗る存在が居た。
そこで神は異世界に送るからスキルを1つ選べと言ってくる。
あれ?これもしかして頑張ったらもっと貰えるパターンでは?
そこで彼は思った――もっと欲しい!
欲をかいた少年は神様に賭けをしないかと提案した。
神様とゲームをすることになった悠斗はその結果――
※過去に投稿していたものを大きく加筆修正したものになります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる