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5th フェーズ 決

No.115 どこもかしこも

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 銃声と斬撃が響く通路、そこではキリサメとヒメヅカが押し寄せるアンドロイド兵と戦っていた。

「こうも簡単に倒されるとはな」
 その光景をみてヴァーリは呟く。

「全く、数だけは多いですね」
「問題ない」
 キリサメとヒメヅカはまだ余裕を残していた。

「では私が加わればどうかな」
 増援のアンドロイド兵と共にヴァーリが彼女たちに向かって歩き始める。

「おやおや、大将はもっと後ろでふんぞり返ってて欲しいのですが」

「私が大将?君は太鼓持ちするタイプだったのか。私は審判者のお膳立てを指揮しているだけだ。大将の付き人程度だよ私は」
 ヒメヅカの言葉にそう言い返すヴァーリ。

(本気で言っているのか……、それとも皮肉かどっちにも取れるのが気持ち悪いところですね)

「さて、君たちを処理し、逃げたリリィくんも始末しないとな」
 二人の前に立つヴァーリ。

「今更煽っても無駄ですよ、もうこれ以上あなたへの不快感を募らせる事はできませんから」
 ヒメヅカにそう言われて鼻で笑うヴァーリ。

「ほう、珍しく意見が合うじゃないか」
 
「行きますよキリサメさん!」
「いつでも」
 ヒメヅカとキリサメは構えた。


一方その頃、ネットワークを乗っ取る為に走るシャーロット達。

 周囲からは激しい戦闘を物語る音が絶え間なく響いていた。

「どこもかしこも騒がしくなってきたな」
 そう言って先頭を走るキビ。

「ネットワークの乗っ取り、早く終わらせないと」
 キビの後ろをシャーロットが走る。

「まだまだ追手は来ますね」
 ウルルが後ろに目を向けるとアンドロイドの集団が彼女たちに向かって走ってきていた。

「しつこい!」
「ああまったくだな、チザキ」
 追手を迎撃しようと構えるチザキとキビ。
 
 するとキビはあることに気づいた。

「ん?ウルルちゃん!あのアンドロイド変じゃないか?」

 敵集団の中から突出してくる者がいた、今までのアンドロイドは隊列を組んで一斉に襲いかかって来ていた。1体だけ隊列を離れるのは初めてのパターンだ。

 その違和感にいち早く気づいたキビはウルルに呼びかけた。

「スキャンします……ッ!高エネルギ反応!皆さん下がって!」
 突撃してきた相手は光を放ち、爆発を引き起こした。


「……自爆って本当にやることなす事ムカつくな」
 爆風に飛ばされたキビが起き上がる。

「おい!そっちは大丈夫か!」
 先程までいたところは瓦礫で塞がれていた。キビは瓦礫の向こう側に向かって話しかける。

「うん、なんとかね!」
「シャロ様と私は大丈夫です!キビ様とチザキ様はご無事ですか?」
 瓦礫の向こう側からシャーロットとウルルの返事が返ってくる。

「私は大丈夫だ、チザキ!生きてるか!」
「生きてる!」
 キビの呼びかけに応じるチザキ、彼女達の間にも瓦礫があり直接互いを見ることは出来ない。

「瓦礫が邪魔だな……シャーロットちゃんとウルルちゃんは先に進んでてくれ!私達は別の道を探す!」

「畏まりました、参りましょうシャロ様」
「2人共すぐ来てね!」
 キビの案に賛成しウルルとシャーロットは先へと進む。

「チザキ!お前も別の道を探して二人の元に向かってくれ!」
「……」
 キビは呼びかけるがチザキからの返事がない。

「おいチザキ!聞えてんのか?ん?なんだアイツ、どこに向かってるんだ」

 手元の端末でチザキの位置を確認するキビ。
 どうやら彼女が猛スピードでその場を離れているようだ。

「シャーロット!シャーロット!」
 チザキはある一室に入る。

「ほお、やはりこの血の匂いにつられて来たか」
「それはシャーロットの?」

 チザキが嗅ぎつけた血の匂いとは別の者がそこには立っていた。

 バベッジだ。

「これは以前、シャーロット・バベッジがウルティメイトの研究をしていた際に採血したものを参考に作った人工血液だ。それを少しいじって死臭のような物を出させた。人間の鼻では判別できない程のものだが、君なら飛びつくと予想してね」

 バベッジは手元にある試験管をみてそういった。

「君は実に優秀な実験サンプルだ、なるべく傷をつけずに捕獲したい」

「おまえ、嫌な感じがする」
「ひどく心外だな」
 姿勢を低くし戦闘態勢に入るチザキ。

「しょうがない、先に戦闘記録を取るとするか」



 元軍人の二人が斬り合う。

 互いに元軍人、そして同じ戦争を経験した、だがそのうちに持つ考えは全くもって違う。

 シドーの冷静な眼差しとガンマの狂気に満ちた笑みが交錯する戦場。

「こんなくだらねぇ戦い、さっさと終わらせてやるよ!」
 シドーが言った。

「馬鹿げたことを言うな、日本兵!兵士の誇りは戦いにあるんだ!戦いにくだらいものなどはない!」
 ガンマは強化外骨格アーマーと剣、その両方を使い攻撃を繰り出す。



 ガンマの鋭い一撃、シドーはそれを潜り込むような動きで躱す。
 回避の際、シドーは刀を振り抜いた、抜き胴と呼ばれる剣道の動きに近いものだ。

「っフゥ―ッ」
 息を吐くシドー。

 彼の眼前には胴体を両断されたガンマが転がっていた。

「まだ生きてんだろ?」
 シドーは刀を構えたままだ。

「流石……日本兵。そして、バベッジ殿!」

 両断されたガンマの肉体に外骨格アーマーが取り付く、アーマーが彼の身体に無数の管を突き刺す。

 アーマーは彼を取り込み、融合していく。

「素晴らしい!私こそが究極の兵士!俺は武器になれたんだァッ!」

 ガンマが狂気に満ちた笑いを上げる、彼の肉体は今や機械と人間のパーツが入り乱れた姿となっており、極めて異質で不気味なものへと変貌していた。

「心ゆくまでッ殺し合おうじゃないか!」
「何度でも殺してやるよ」

 ガンマの強化外骨格アーマーはさらなる力を解き放ち、彼の剣術は驚異的な速さでシドーを追い詰めていく。

「どうだ!これが本当の戦いだ!」
 ガンマの声が轟く中、シドーは冷静に立ち回る。

「俺こそが戦いなんだァッ!」

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