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2nd フェーズ 集

No.57 最後の一発

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射的勝負をしていたシャーロット、前半こそ順調だったが途中で相手が変わる。
その相手はブルズアイという女性だった。

彼女はシャーロットの放った弾丸を自らが放った弾丸で弾き自分の的に両方命中させるという常人離れした技を見せる。

これによりシャーロットは一気に窮地に立たされる事になった。


「さあ、どうぞ、お先に撃って」
そう言ってシャーロットに撃つように促すブルズアイ。

「……」
シャーロットは黙ったまま構える。

(撃てる訳ない、そもそもこの点差どうするの?まさか弾丸を弾くなんて、完璧に弾道を計算してるの?どうしよう)

「ま、撃てないよね。でも先攻は君だ、君が撃たないと私は撃てない」
相手がそう言った瞬間にシャーロットが発砲した。

しかし、シャーロットの目の前に複数の火花が散る。

「ッ!」
今回は相手の的の真ん中に両方命中した。

「不意をついたつもりかな?無駄だよ、君の息遣い、筋肉の動き、それらを観てればいつ撃つかなんてすぐに分かるよ。えーっと点数は、お!今回は10点かーやったね。今は18点差かな?だいぶ開いたがまだ弾は3発もある、逆転の目はあるかもよ」

(何とかしないと!このままじゃ負けちゃう!でも何が出来るの!?相手は私が撃った弾を超正確に弾いて来る。撃つタイミングもバレてる)

シャーロットは俯く。

(私やっぱりこういう戦いごと向いてないよ……。こんな時ユキチカならどうするんだろ、ジーナならどうするんだろ……)
既にシャーロットは心が折れかけていた。

(おや、もう今にも崩れそうだな。話では色々と危険な事件を解決してきたと聞いていたが、期待外れかな?)

この時シャーロットは以前の【光のシャボン玉事件】を思い出していた。
なぜかこの頃の事が頭に浮かんだのだ。

(あの時ジーナはどう戦ってた?ユキチカは?)

「おや、君の友達も頑張ってるみたいだね」
ブルズアイは射撃訓練場にあるモニターを見上げる。

モニターにはジーナが映っていた。
「え?ジーナ!?」



「はぁ、はぁ」
ジーナは肩で息をしている。

「どうした?もっと来い、さぁ!私の的はもう2つ壊れてる、あと三つだ」
ショットシェルは腹、額、そして背中の的を指さす。

ジーナは一気に距離を詰める。
それに対しショットシェルは拳を繰り出すが空振り。

「おっ!?」
「黒鉄ッッ!!」
ジーナは黒鉄を相手の腹部に打ち込み腹部の的を破壊。

「ガァ……!!?」
ショットシェルの動きが止まり無防備になった額の的に向かって、ジーナは素早い蹴りを放ちこれも破壊する。

よろめくショットシェル。

「へぇやるねぇ。はっはっは!愉しくなって来たじゃないか!」
笑ったショットシェルはそのまま攻撃を仕掛けて来た。

(さっきよりも早い!!?)
ジーナは避けきれず横から薙ぎ払われた。


その様子を所長室でみているユキチカ達。

「おお、ショットシェルが本気になったな」
ヤスシがそう呟く。

「シェルの変身だ!ジーナがんばれー!」
ユキチカがクッキーを食べながらそう言った。

「変身?どういうことでしょうか?」
ウルルはヤスシに尋ねた。

「ショットシェルは自分の意思でアドレナリン及びノルアドレナリンを大量に分泌することができる。それにより奴は身体能力と集中力を向上させる事ができるんだ、滅多に使わないがな。彼女が放った腹部への一撃はそれだけ効いたって事だ」



「グッ……!!」
ジーナは激しく金網に衝突する。この時に両肩両太腿つけていた的が破壊される。

「おっと、これで並んだな。楽しくなってきたぜ」
「全く、とんでもない破壊力」

すぐに構えるジーナ。

「手足の骨が砕けてないだけ素晴らしいぞ。一瞬だけ飛んで全身を脱力させたな?さっきのクロガネって一撃の逆だ。驚異的なマッスルコントロールだ」

「はぁ、なんか最近技を一目で見破られるのが多くて嫌になってくるな。この技ってそんなに分かり易いかな?」

軽くステップを踏みながらジーナはため息をつく。

「いや、食らったからわかるんだ。こんな体格から出して良い一撃じゃないってな。まるででっかい鋼鉄のハンマーでぶっ叩かれた気分だ」

「でっかい鋼鉄のハンマーでぶっ叩かれたんなら倒れといてよね。なんで反撃してくるかな、それもパワーアップしてさ」

息を整えながらジーナは内心驚いていた。

(凄いな、完全に受け身には成功したのに受け止めた腕がまだ痺れてる)

驚きはするものの、闘争心は全く薄まっていないジーナ。


「ジーナ……」
それをみたシャーロットは自分を恥ずかしく思った。

(そうだ、私は何してんだ!あんな怖い人に殴られてもジーナは立ち向かってるのに!ビビってどうする!私にできることを考えるんだ)

シャーロットは銃を発砲。
すかさずブルズアイも発砲した。

「おっと?」
するとブルズアイが関心する。

予定なら自分の的の中心に2発命中してるはずだった。しかし今回は違ったのだ。
一発も命中していない、シャーロットの弾丸を弾く事に失敗したのだ。

「流石に一発成功にならなかったな」
「私の弾丸を弾いたか!やるねぇ。だが残念、私も0点だが君も0点、でもナイストライだよ」

ブルズアイが拍手をする。

「私は必ず後出しで撃たないといけない。そうなれば君の撃つ動作を見て弾道を予測しなければならない。発砲された弾丸を目で追うなんて無理だからね。つまり君が同じ場所を狙えば私のが狙う弾道も同じようになるだろうって思ったんだろ?」

「あなたと同じことをしただけ」
シャーロットはそう答える。

「すごいね、分かったとしてもそうすぐにできることじゃない」


「じゃあ次だね!」
シャーロットはすぐさま発砲する。

「そう来たか!」
ブルズアイが発砲。

しかしすぐに異変に気付くブルズアイ。

(ん?なんだ、弾の軌道が全然違う。このままでは両方とも的に当たらないぞ)

弾丸は目で追えないという発言、これは嘘だった。彼女は常人離れしたその動体視力で、弾丸の動きを目で追えるのだ。

「コロちゃん!」

シャーロットの言葉に合わせて球体型ロボットのコロちゃんが現れてその2つの弾丸を球体ボディーで弾いた。

弾かれた弾丸はシャーロットの的に飛んでいき中心の一つ外に二つ命中する。点数は8点だ。

「なんだ……あのちっこいのは」
「あれはコロちゃん、これで10点差」



「ファイナルラウンドだな、この弾君はどう使う?さっきと同じことをする?君の事だ次は真ん中に命中させる、それで同点だ。もしかしたら延長戦があるかもね」

「違うよ、次の一発で私は勝つ」
シャーロットがそういうとブルズアイは興味深そうに頷く。

「へぇ、どうやって?」
そう言われると、シャーロットは銃をブルズアイに向けた。

「そう来たか。面白い、私を殺せば点数差なんて関係ないということかな?ふうん、ルールには特に相手選手が死んだ際の対応に関して記載されてなかったが、その理屈が通るかな?」

「余裕ぶっても無駄だよ。この距離なら外さないし、先攻は私、私が撃ってからしかアナタは撃てない。アナタがどれほど早撃ちの名手でも私が絶対に先手を取れる。それとも順番を破って先に撃つ?」

ブルズアイはゆっくりとシャーロットに銃を向けた。

「ふっふっふ、何を言い出すかと思いきや。天才の君が忘れているようなので再度教えてあげよう。ここは刑務所で、私は犯罪者だ。世界のルールを破ったからここにいる。そんな私がルールに従うという前提はあまりにも危ういんじゃないかな?」

シャーロットは首を横に振る。

「そうだね、普通の囚人ならそうかも。でもアナタは違う、もしルールを気にしない人なら既に私を撃ってるでしょ?自分の弾丸を弾くのを真似された時点で」

「それは少しだけゲームとして面白そうだから付き合っただけかもしれないよ。しかし今は君に銃を向けられている、自分の命が惜しくて順番を守るなんて馬鹿馬鹿しい事するかな」

ブルズアイは揺さぶりをかけようとするが、シャーロットにはそれが通じていないのがすぐに分かる。

「確かに、でもここまで話に付き合ってくれた。そのとてつもない集中力を私に向けてくれてありがとう」

シャーロットは自身の的に銃を向ける。

「これが私の最後の一発!」
彼女が発砲すると同時にコロちゃんが的の前に現れる。

ブルズアイはコロちゃんが何かを抱えている事に気付く。
「あれはなんだ?もしかして!」

コロちゃんが抱えているのは幾つもの使用された弾丸だった。
それを的の前で放り投げるコロちゃん。

シャーロットが発砲した弾がその弾の集団に衝突、弾かれた弾たちはバラバラの方向に飛びながらも全て的に命中した。

計10発の弾丸、5点に1発、4点に3発、3点に3発、2点に2発、1点に1発、計31点がシャーロットに入った。

「あなた教えてくれたでしょ?お互いに10発撃ち終わった時点で自分の的に多くの弾を当てた方の勝ち、ここには一言も相手の弾を拾って再利用しちゃダメって言われてない」
シャーロットはブルズアイに向かって言い放つ。

「ズルいな」
「ふん、何とでも言いなよ、こっちは勝ちに来てるんだから」

こう言われたブルズアイは小さく笑う。

「そうだな、これは命がけの勝負だ。ルールの隙があるなら突かないとな」

ブルズアイは銃から弾を取り出しテーブルの上に置いた。

「ギブアップ、私は無駄弾は撃たない主義でね。弾一発も結構値段がするし、借りものだし。流石の私も弾丸を増やすなんて芸当は出来ないからね」

そう言って訓練場の外にいるパラベラムに銃と弾丸を渡した。

「というわけだ。契約内容終了、じゃあねシャーロットちゃん」
シャーロットにウィンクをしてブルズアイはその場を去っていった。

「はあー、怖かったー」
緊張の糸が切れたのかシャーロットはその場に座り込んだ。

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