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10話 食事会の始まり

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 馬車にしばらく乗り、優雅な町の景色が見せる移り変わりに興奮しているわたし。
 ゆったりと腰を掛けて眺める情景はいつしか制止し、先へ進まなくなる。

 夢のような時間は、わたしの意思無くして終わりを告げる。

「目的地に着いたのね」

 特に見覚えのあるレストランが視界に入り、そこにはローウェンがわたしの到着を待ち侘びていた。

「やあやあ、リエナ、待っていたよ」

 ローウェンは軽快な足取りでわたしに絡んでくる。
 実に分かりやすい態度を示す男で、わたしのご機嫌を取ろうと必死なのがうかがえる。

「やけに元気ね」

 落ち着きが無い、彼らしからぬ振る舞いにわたしは即効でうんざりさせられている。
 謝罪の気持ちは内面で示すべきだ。外見で取り繕うとするなんて、いかにも胡散臭い。

「君を酷い目に遭わせたことに関して反省しているんだ。分かってくれるわよね」

 ローウェンがやたらと張り切って動き回るのに、わたしはおろかシエルさえも呆れる。
 彼はわたしに誠意を示すどころか、見事に空回りをしていた。

 偶然、周囲を歩いている人たちが彼の奇行を見つけるやいなや、陰で笑っているのが散見される。

「もうやめて。嗤われているじゃない」

 ローウェンはわたしに謝罪の気持ちを伝えるのに必死らしく、視野が著しく狭まっているようだった。
 わたしの注意を聞いてようやく自分のしでかしていることに気付き、急に慌てふためく。

 わたしは彼の滑稽な姿に、口に手を当てて笑ってしまった。

「ふふ、こんなの反則よ」
「あははは、ようやく笑ってくれたね」

 わたしの反応に手応えを覚えたと見られるローウェンは、弾んだ声色を伴ってわたしの手を握る。

「見事にしてやられたわ」
「どうやら、それなりには反省しているようですね」

 シエルは訝しんでいるものの、彼の辿々しさから嘘は無いとして、多少は態度を軟化させていた。

「警備は任せてください」

 わたしの側近シエルはメイドの仕事だけに留まらず、戦闘能力も高い。
 国を代表する令嬢ともなれば、身代金目当てで誘拐の標的にされることもしばしばある。
 シエルはそうした敵にわたしが対抗するための最強のカードである。

「信頼しているわよ」
「あなたの期待に応えてみせましょう」

 深い信頼を築いているわたしは、長々と語るまでも無く周辺警護を彼女に託せる。
 想定外のアクシデントに関してはもはや心配は要らない。

 わたしとローウェンは周囲をそれぞれが雇っている兵たちに囲ませ、デートを兼ねた食事会に赴いた。
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