10 / 17
10話 食事会の始まり
しおりを挟む
馬車にしばらく乗り、優雅な町の景色が見せる移り変わりに興奮しているわたし。
ゆったりと腰を掛けて眺める情景はいつしか制止し、先へ進まなくなる。
夢のような時間は、わたしの意思無くして終わりを告げる。
「目的地に着いたのね」
特に見覚えのあるレストランが視界に入り、そこにはローウェンがわたしの到着を待ち侘びていた。
「やあやあ、リエナ、待っていたよ」
ローウェンは軽快な足取りでわたしに絡んでくる。
実に分かりやすい態度を示す男で、わたしのご機嫌を取ろうと必死なのがうかがえる。
「やけに元気ね」
落ち着きが無い、彼らしからぬ振る舞いにわたしは即効でうんざりさせられている。
謝罪の気持ちは内面で示すべきだ。外見で取り繕うとするなんて、いかにも胡散臭い。
「君を酷い目に遭わせたことに関して反省しているんだ。分かってくれるわよね」
ローウェンがやたらと張り切って動き回るのに、わたしはおろかシエルさえも呆れる。
彼はわたしに誠意を示すどころか、見事に空回りをしていた。
偶然、周囲を歩いている人たちが彼の奇行を見つけるやいなや、陰で笑っているのが散見される。
「もうやめて。嗤われているじゃない」
ローウェンはわたしに謝罪の気持ちを伝えるのに必死らしく、視野が著しく狭まっているようだった。
わたしの注意を聞いてようやく自分のしでかしていることに気付き、急に慌てふためく。
わたしは彼の滑稽な姿に、口に手を当てて笑ってしまった。
「ふふ、こんなの反則よ」
「あははは、ようやく笑ってくれたね」
わたしの反応に手応えを覚えたと見られるローウェンは、弾んだ声色を伴ってわたしの手を握る。
「見事にしてやられたわ」
「どうやら、それなりには反省しているようですね」
シエルは訝しんでいるものの、彼の辿々しさから嘘は無いとして、多少は態度を軟化させていた。
「警備は任せてください」
わたしの側近シエルはメイドの仕事だけに留まらず、戦闘能力も高い。
国を代表する令嬢ともなれば、身代金目当てで誘拐の標的にされることもしばしばある。
シエルはそうした敵にわたしが対抗するための最強のカードである。
「信頼しているわよ」
「あなたの期待に応えてみせましょう」
深い信頼を築いているわたしは、長々と語るまでも無く周辺警護を彼女に託せる。
想定外のアクシデントに関してはもはや心配は要らない。
わたしとローウェンは周囲をそれぞれが雇っている兵たちに囲ませ、デートを兼ねた食事会に赴いた。
ゆったりと腰を掛けて眺める情景はいつしか制止し、先へ進まなくなる。
夢のような時間は、わたしの意思無くして終わりを告げる。
「目的地に着いたのね」
特に見覚えのあるレストランが視界に入り、そこにはローウェンがわたしの到着を待ち侘びていた。
「やあやあ、リエナ、待っていたよ」
ローウェンは軽快な足取りでわたしに絡んでくる。
実に分かりやすい態度を示す男で、わたしのご機嫌を取ろうと必死なのがうかがえる。
「やけに元気ね」
落ち着きが無い、彼らしからぬ振る舞いにわたしは即効でうんざりさせられている。
謝罪の気持ちは内面で示すべきだ。外見で取り繕うとするなんて、いかにも胡散臭い。
「君を酷い目に遭わせたことに関して反省しているんだ。分かってくれるわよね」
ローウェンがやたらと張り切って動き回るのに、わたしはおろかシエルさえも呆れる。
彼はわたしに誠意を示すどころか、見事に空回りをしていた。
偶然、周囲を歩いている人たちが彼の奇行を見つけるやいなや、陰で笑っているのが散見される。
「もうやめて。嗤われているじゃない」
ローウェンはわたしに謝罪の気持ちを伝えるのに必死らしく、視野が著しく狭まっているようだった。
わたしの注意を聞いてようやく自分のしでかしていることに気付き、急に慌てふためく。
わたしは彼の滑稽な姿に、口に手を当てて笑ってしまった。
「ふふ、こんなの反則よ」
「あははは、ようやく笑ってくれたね」
わたしの反応に手応えを覚えたと見られるローウェンは、弾んだ声色を伴ってわたしの手を握る。
「見事にしてやられたわ」
「どうやら、それなりには反省しているようですね」
シエルは訝しんでいるものの、彼の辿々しさから嘘は無いとして、多少は態度を軟化させていた。
「警備は任せてください」
わたしの側近シエルはメイドの仕事だけに留まらず、戦闘能力も高い。
国を代表する令嬢ともなれば、身代金目当てで誘拐の標的にされることもしばしばある。
シエルはそうした敵にわたしが対抗するための最強のカードである。
「信頼しているわよ」
「あなたの期待に応えてみせましょう」
深い信頼を築いているわたしは、長々と語るまでも無く周辺警護を彼女に託せる。
想定外のアクシデントに関してはもはや心配は要らない。
わたしとローウェンは周囲をそれぞれが雇っている兵たちに囲ませ、デートを兼ねた食事会に赴いた。
31
お気に入りに追加
2,911
あなたにおすすめの小説
(完結)妹に病にかかった婚約者をおしつけられました。
青空一夏
恋愛
フランソワーズは母親から理不尽な扱いを受けていた。それは美しいのに醜いと言われ続けられたこと。学園にも通わせてもらえなかったこと。妹ベッツィーを常に優先され、差別されたことだ。
父親はそれを黙認し、兄は人懐っこいベッツィーを可愛がる。フランソワーズは完全に、自分には価値がないと思い込んだ。
妹に婚約者ができた。それは公爵家の嫡男マクシミリアンで、ダイヤモンド鉱山を所有する大金持ちだった。彼は美しい少年だったが、病の為に目はくぼみガリガリに痩せ見る影もない。
そんなマクシミリアンを疎んじたベッツィーはフランソワーズに提案した。
「ねぇ、お姉様! お姉様にはちょうど婚約者がいないわね? マクシミリアン様を譲ってあげるわよ。ね、妹からのプレゼントよ。受け取ってちょうだい」
これはすっかり自信をなくした、実はとても綺麗なヒロインが幸せを掴む物語。異世界。現代的表現ありの現代的商品や機器などでてくる場合あり。貴族世界。全く史実に沿った物語ではありません。
6/23 5:56時点でhot1位になりました。お読みくださった方々のお陰です。ありがとうございます。✨
義妹に婚約者を寝取られた病弱令嬢、幼馴染の公爵様に溺愛される
つくも
恋愛
病弱な令嬢アリスは伯爵家の子息カルロスと婚約していた。
しかし、アリスが病弱な事を理由ににカルロスに婚約破棄され、義妹アリシアに寝取られてしまう。
途方に暮れていたアリスを救ったのは幼馴染である公爵様だった。二人は婚約する事に。
一方その頃、カルロスは義妹アリシアの我儘っぷりに辟易するようになっていた。
頭を抱えるカルロスはアリスの方がマシだったと嘆き、復縁を迫るが……。
これは病弱な令嬢アリスが幼馴染の公爵様と婚約し、幸せになるお話です。
悪役公爵の養女になったけど、可哀想なパパの闇墜ちを回避して幸せになってみせる! ~原作で断罪されなかった真の悪役は絶対にゆるさない!
朱音ゆうひ
恋愛
孤児のリリーは公爵家に引き取られる日、前世の記憶を思い出した。
「私を引き取ったのは、愛娘ロザリットを亡くした可哀想な悪役公爵パパ。このままだとパパと私、二人そろって闇墜ちしちゃう!」
パパはリリーに「ロザリットとして生きるように」「ロザリットらしく振る舞うように」と要求してくる。
破滅はやだ! 死にたくない!
悪役令嬢ロザリットは、悲劇回避のためにがんばります!
別サイトにも投稿しています(https://ncode.syosetu.com/n0209ip/)
お姉様は嘘つきです! ~信じてくれない毒親に期待するのをやめて、私は新しい場所で生きていく! と思ったら、黒の王太子様がお呼びです?
朱音ゆうひ
恋愛
男爵家の令嬢アリシアは、姉ルーミアに「悪魔憑き」のレッテルをはられて家を追い出されようとしていた。
何を言っても信じてくれない毒親には、もう期待しない。私は家族のいない新しい場所で生きていく!
と思ったら、黒の王太子様からの招待状が届いたのだけど?
別サイトにも投稿してます(https://ncode.syosetu.com/n0606ip/)
婚約者の浮気現場に踏み込んでみたら、大変なことになった。
和泉鷹央
恋愛
アイリスは国母候補として長年にわたる教育を受けてきた、王太子アズライルの許嫁。
自分を正室として考えてくれるなら、十歳年上の殿下の浮気にも目を瞑ろう。
だって、殿下にはすでに非公式ながら側妃ダイアナがいるのだし。
しかし、素知らぬふりをして見逃せるのも、結婚式前夜までだった。
結婚式前夜には互いに床を共にするという習慣があるのに――彼は深夜になっても戻ってこない。
炎の女神の司祭という側面を持つアイリスの怒りが、静かに爆発する‥‥‥
2021年9月2日。
完結しました。
応援、ありがとうございます。
他の投稿サイトにも掲載しています。
(完結)妹の為に薬草を採りに行ったら、婚約者を奪われていましたーーでも、そんな男で本当にいいの?
青空一夏
恋愛
妹を溺愛する薬師である姉は、病弱な妹の為によく効くという薬草を遠方まで探す旅に出た。だが半年後に戻ってくると、自分の婚約者が妹と・・・・・・
心優しい姉と、心が醜い妹のお話し。妹が大好きな天然系ポジティブ姉。コメディ。もう一回言います。コメディです。
※ご注意
これは一切史実に基づいていない異世界のお話しです。現代的言葉遣いや、食べ物や商品、機器など、唐突に現れる可能性もありますのでご了承くださいませ。ファンタジー要素多め。コメディ。
この異世界では薬師は貴族令嬢がなるものではない、という設定です。
溺愛されている妹がお父様の子ではないと密告したら立場が逆転しました。ただお父様の溺愛なんて私には必要ありません。
木山楽斗
恋愛
伯爵令嬢であるレフティアの日常は、父親の再婚によって大きく変わることになった。
妾だった継母やその娘である妹は、レフティアのことを疎んでおり、父親はそんな二人を贔屓していた。故にレフティアは、苦しい生活を送ることになったのである。
しかし彼女は、ある時とある事実を知ることになった。
父親が溺愛している妹が、彼と血が繋がっていなかったのである。
レフティアは、その事実を父親に密告した。すると調査が行われて、それが事実であることが判明したのである。
その結果、父親は継母と妹を排斥して、レフティアに愛情を注ぐようになった。
だが、レフティアにとってそんなものは必要なかった。継母や妹ともに自分を虐げていた父親も、彼女にとっては排除するべき対象だったのである。
【完結】堅物な婚約者には子どもがいました……人は見かけによらないらしいです。
大森 樹
恋愛
【短編】
公爵家の一人娘、アメリアはある日誘拐された。
「アメリア様、ご無事ですか!」
真面目で堅物な騎士フィンに助けられ、アメリアは彼に恋をした。
助けたお礼として『結婚』することになった二人。フィンにとっては公爵家の爵位目当ての愛のない結婚だったはずだが……真面目で誠実な彼は、アメリアと不器用ながらも徐々に距離を縮めていく。
穏やかで幸せな結婚ができると思っていたのに、フィンの前の彼女が現れて『あの人の子どもがいます』と言ってきた。嘘だと思いきや、その子は本当に彼そっくりで……
あの堅物婚約者に、まさか子どもがいるなんて。人は見かけによらないらしい。
★アメリアとフィンは結婚するのか、しないのか……二人の恋の行方をお楽しみください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる