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大学生編

2016.02 某日 信号待ち

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【未来の話:信号待ち】

 [2016年2月某日]



 ブブ、とポケットが震えて、ほとんど条件反射的にスマホを手に取る。
 それ自体は大した通知では無かったが、ついでに信号待ちで退屈だったので、何を見るでもなくネットを開いたりしていると視界の右端に写っていた足が歩き出したので、つられて足を踏み出した。
「ストップ!」
「ぅ、ぐっ」
 何か考えるより先に声が出て、その後に苦しいという感覚が襲ってきた。首を絞められた、いや、襟首を遠慮なく引かれたのだ。
 そしてその瞬間、トラックがクラクションを鳴らしながら目と鼻の先を猛スピードで走り抜けた。歩行者信号は赤だった。
「気をつけてよ、まじで」
「…は…っ…」
 しばらく何も言えなかった。まだ心臓がバクバクとおさまらない。
「…助かった」
 震えながらようやく振り返って、自分を救ってくれた人物に礼を伝える。
「ほんと怖がりなくせに鈍感だよな。アンタの横で待ってた足、最初から下半身しか無かったんだけど?」
 変だと思って声かけに来て良かった。そう言って呆れたようにため息をつくのは案の定というか、央弥だった。
「周りも見えないほど何見てんの?インスタ?俺の周りの奴らも目の色変えて何でもかんでも写真ばっか撮りやがって」
「…写真は嫌いだって言ってんだろ」
「え、いまだに?」
「放っとけ」
 俺は今度こそ信号が青になった横断歩道を歩き出した。


【信号待ち 完】
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