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境界線の向こう
コウノトリからの贈り物 3/3 ※R18
しおりを挟む【コウノトリからの贈り物 3】
「とと!」
シドニーは、ショットをとと、と呼ぶことにしたらしい。で、俺のことは「とーちゃん!」と。あえて家族らしくしないといけないのか、と何度か尋ねたけど、モチロンだとしか答えない。
――ま、悪い気もしないな。
「ちゃたのこども?」
「ちがうわ!!」
馬鹿の頭を叩くとシドニーはあっけらかんと答える。
「ジェニファーの息子だよ」
「ジェニーって聞いてたけど」
「ヘレンの時もあるし、アスランの時もある。時には女王様、時には生娘、俺の母さんはお客の好みに合わせて怪盗百面相なんだ」
「下品な話だ」
それに下世話だ。もうその事は口にするなと頭を撫でてやるとショットも真似をしてシドニーを撫でた。
「おれたちの子供?」
「いろいろすっ飛ばしてこんなでかいガキが現れるのは困るなあ」
子供ができてセックスレスになる夫婦はいるけど、セックスレスから子供ができる夫婦なんてねえだろ。いや待て、我ながらどっから突っ込めばいいものやら。
「ばかばかばか……」
「子供はね、男と女の間にしか産まれないんだよ!俺は二人に育ててもらう養子だけど、実の子じゃないよ!」
「ようし」
「ま、不自由はさせねえよ。この街なりに」
「ちゃた、こどもどこから来る?」
「あとでな」
教育に悪い。なんて思ってるとシドニーがカラカラと笑い声を上げた。
「そんなことも知らないの!"ガキ"だなぁとと」
「ガキ」
少し傷付いてるショットに思わず噴き出して笑うと首に巻きつかれた。
「なに」
「うぐっ、離せ離せ」
「あのねー、子供は男と女がいーっぱい触りあったら産まれるんだよ!」
「ちゃたいっぱいちゅーしたからうまれた?」
「いっぱいちゅーしたの?」
「したかも」
ああ、本当に馬鹿。
***
俺、この街で暮らし始めてから一日に20回は馬鹿って口にしてる気がする。もはや口癖だ。
「な……もう離せってば」
「んー」
シドニーはショットのベッドに寝かせた。だから今夜は俺の部屋のベッドで寝てる。二人で。暑いし狭いけど、最近はちょっと慣れてきた。
いろいろあって疲れたから早く寝たいのに後ろから腰に手を回して執拗にひっついてくるショットの息が首にかかってゾクゾクした。
「おい……ショット」
離れろと言い聞かせるように名を呼ぶ。そうすれば甘えたように額を肩に押し付けてくるからつい絆されちまう。こいつの子供みたいな仕草が俺は割と好きだった。
「……ったく……」
「教えて、ちゃた」
「また今度な」
すぐ隣の部屋でシドニーが寝てるのに、そんな事できるかっつーの。
――はあ。うまくいかねえなぁ。
せっかくこいつが"ソノ気"になれば、俺が嫌な状況で。きっと明日になったら忘れてるんだろう。新しいおもちゃに夢中で、シドニー連れてピクニックに行こうなんて目を輝かせるに決まってる。俺の欲求不満はまだまだ続くんだな……。
「……って、うわっ、こら……ショット!」
「"あのとき"この辺さわられてた。なに?」
「な……な、何って」
"あの時"ってのはリドルに襲われた時の事だろう。スルスルと足の付け根を撫でられて思わず吐く息が緊張に震えた。
「言ってた、むりやりセックスしようとしたって」
「おまっ……それ直接聞いたのか!?いつ!?」
「セックスは子作りだって。じゃこどもほしかった?」
「わかったからそれ以上頭の悪い発言をするな……」
あのクズ警官、いらねえことばっか吹き込みやがって……。もしシドニーに聞かれたら。
「おれ、ちゃたさわりたい」
「っは……あ、こら、もう離せって……!」
やばい。あんまり触るから勃ってきてる。手を掴んで止めさせようとしたけど、ショットが急に乗り上げてきて口を塞がれた。
「んっ、ん……ふ」
「ちゃたとちゅーするの、きもちい」
両手で顔を押さえられて、熱い舌が入ってくる。柔らかい金髪が額や目に触れてくすぐったい。
「う、んん、んぁ……はっ」
もうそれ以上は抵抗する気になれなくて、ショットの首に抱きついて応えた。
「はぁ……シュート」
離れた唇が寂しくて思わず舌を伸ばして追うと、ぢゅ、とその舌先に吸い付かれる。
「ん、んん……」
「ちゃた」
「……へ?」
ボーッとしてたから気付くのが遅れたが、いつの間にかショットの手が俺の下半身にあった。
「あっ、こら馬鹿」
「なにこれ、ちゃたの」
「うるせえ!」
空っぽの頭を叩いても何のダメージにもならない。というかデカイ声を出してしまった。ここ壁薄いんだ、ああ、シドニーのやつ、絶対起きちまってるだろ……!
「どうなってる見せて」
「ちょっ、おいこら、ショット!」
小声で怒鳴って膝を蹴り上げてみたけど容易く止められて、むしろそのまま足を開かされた。
「うわっストップストップ!わかったから!」
必死で訴えるとさすがのパーにも伝わったみたいで、ようやく動きを止めてくれた。
「わかったよ……毛布持ってついて来い。別の場所で教えてやるから……」
言うとショットはウキウキしながらついて来た。
***
ここは廃アパートだから部屋ならいくつもある。1番離れてる部屋の扉を開けて、俺は床に座り込んだ。
「……じゃあ、保健体育の授業を始めます」
「わー」
パチパチパチ……と静かな部屋に虚しい拍手が響く。
「いいか?まず、人間には性別があります。男と男じゃ何回キスしても子供はできません……」
真夜中に何やってんだ、俺は。
「ちゃたココどうなってる」
「ええいわかった!俺もこんな話には何の意味もないことはわかってた!」
勝手に俺のズボンの前を開けようとしてくるショットを引きずり倒して上に跨った。
「寝てろ。お前はただ、大人しく寝てろ」
風呂入ってねえなあ……とか思いながらショットの首に吸い付いた。服を脱がせながら胸元や腰周りを撫でても笑うばっか。
「へへ、へへへ」
「笑うな、ムードがねえ」
「だってちゃた」
ショットが膝を立てて俺のモノを押して来た。
「なに。それ、へんなの」
「……るせー」
悪いかよ。ショットに触れてるだけで興奮しちまってんだ。こんなんでも一応、好きな相手なんだからな……。
「腰浮かせろ」
ズボンとパンツを合わせて脱がせるとふにゃちんが現れた。おい、ちょっとくらい反応しろよ。
「それ、おもしろい?」
「全然」
いい加減テメーは黙ってろ。と言って覚悟を決め、ソレに舌を這わすとショットの足がピクリと反応した。
「う……え、ちゃた、きたない」
「知ってる」
「なんでそんなのなめる」
「まじでうるせえ」
チラ、と視線を上げると目が合った。その瞬間体に火がついたみたいに熱くなった。俺、見られながらショットのモン咥えてる。……変態じゃねーか。
「……ん、ん……ふ……」
口の中のモンはなんとなく反応してるかしてないか。なのに俺は咥えてるだけでイッちまいそう。我慢できなくてショットの足に腰を擦り付けながらしばらく夢中でフェラしてると不意に名を呼ばれた。
「……え、あ」
「ちゃた……」
そうしてショットの手が頬に触れて、グイと無理やり顔を上げさせられる。
「っあ、何……」
ふと気付くとショットの息が乱れてて、見たことの無いギラギラした目付きで俺を見てた。それに、いつの間にか手の中のモノもすっかり固くなってた。
「っん」
溶けたような青緑の瞳が目の前にある。今、俺たちが何してるのかも分かってない馬鹿のくせに、こいつ一丁前にオスの顔して。
「ちゃた、なにこれ、おれ、ふ……っやば」
「は……えろ」
思わず惚けて呟くとショットに押し倒された。
「きもちい、ちゃた……もっと触ってほしー」
「サルかよてめーは」
笑いながら手を伸ばすとショットの手も真似するように伸びてきた。破っちまいたいほど煩わしく感じながら服を脱いで、ズボンもそこらに放り捨てる。
「いいぜ、よくわからねえままでも。お前は俺の真似してろ……」
ショットのを掴んで上下に動かしてやると最初は不器用に真似してたけど、すぐ俺の上に落ちてきた。
「はっ、はぁ、はぁ……っ」
「もうギブかよ、お子様」
「んー……」
上下交代だ、と上に乗り上げると抱きつかれた。お互い汗ばんでて、ペタペタと気持ち悪い。
「こどもできる?」
「俺とお前じゃ無理」
キスすると何故かショットは笑った。
「ん、ちゃた……っ」
「なんだよ」
「なんか、んん、もれそう」
「ちげえよ、いいから出してみろ」
お互いのを合わせて腰を振ればショットはイヤイヤをする子供みたいに首を振って不機嫌な顔をする。
「いやだ……ちゃた、はっ……もらす」
「違うっつってんだろうが、我慢すんな」
ムードも何もねえ、最低。もう思わず笑いながら追い立てるとショットが一瞬ピクッと跳ねて、俺の首元にしがみついてきた。
「あ……、あっ、あ……はぁ」
「我慢すんなってば、大丈夫だから」
俺ももうイけそうだし、動きを際どくする。
「ん、んー……っ」
ドロッと手にぬるいモンが掛かる感触がして、俺も同じくらいに吐き出した。
「っは、う……、はぁ……っ」
「はあ……ショット君、今のが射精です」
息を切らして放心してるショットにふざけてそう言えば、初めての経験に若干潤んでる目がこっちを向いた。
「しゃせー……?」
「子供ができる種を出したってこと」
「じゃあうまれる?」
「それは無理だな」
「きもかった」
「素直な感想だな」
「これセックス?」
「うんにゃ、これはただのヌキ合いだな」
二人とも倒れこんだまま、そんな間抜けな会話をする。眠たいのか、ショットの呂律が回ってなかった。
「このまま寝たら風邪、ひく……」
「んん」
だめだ、俺も眠い。トクトク言ってるショットの心音が聞こえる胸の上で寝たらだめだと思いながらも意識は薄くなってった。
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