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86 双子は操る

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「じゃあ、授業を再開しようか」
「「はぁい!」」

 ぴしっと手を上げてルーカスの言葉に反応したアイリスとアキレスは、身長よりも高い椅子にうんしょうんしょと座り直して、座り終えた瞬間に安堵したようににへらっと笑った。

「じゃあまずは簡単な魔法操作からーーー………………」

 それからアイリスとアキレスは、ルーカスの指示に従って魔法を操った。今までにも存在していたけれど、決して操り方が分からなかった感覚が自由自在に操れていくようになるというのはとてもわくわくとして、気分がいいものだった。
 自由自在に炎を操るアイリスは、アキレスよりも器用に魔法を編み込んでいく。真っ赤な炎で前世の小説に出てきた朱雀を作って、肩に乗せてみると、なんだか愛着が湧いてきてどんどん新しいことをやって見たい気分になる。

「アイリスばっかりズルい」
「アキレスがぶきよーなだけでしょ?」

 ルーカスにつきっきりになってもらってコツを教えてもらってなお、氷を制御できず部屋中にばら撒いているアキレスはぎゅっと眉間にシワを寄せた。何を作りたいのかは知らないが、どうせアキレスはロクでもなく難しいことをしようとしているのだろう。魔力は理解できても制御はできない。アキレスはアイリスと違って、魔法を習い始める前とあまり変化していなかった。

「アキレス、お手々かして」

 部屋の天井近くに朱雀を飛ばしてから、アイリスはアキレスの手を取った。そして、操り方を覚えたばかりの魔力をアキレスに流し込む。彼のぐしゃぐしゃに乱れた魔力の回路を解きほぐすようにして魔法を補助すると、彼はその感覚を必死に覚えようと四苦八苦し始めた。
 昔から不安だったり、苦しかったりして感情が乱れた時、アキレスとよく抱きしめあっていたアイリスは“何か”をアキレスに流し込んでいた。今思えばそれは魔力であったのだが、その原理を応用した。流し込んだ時、アイリスとアキレスの共鳴する力は尚のこと強くなる。だからこそ、今回はその行動がアキレスにとって最も良いアクセントになるのではないかと思った。

 ーーーぶわぁっ、

 周囲に一気に薄く透明でいて、水色がかかった氷が広がった。その氷はみるみるうちに茎を生み出し、蕾を付け、大輪の花を咲かせた。何重にも折り重なった花弁が美しい花は、多分薔薇だろう。匂いが香ってきそうなほどにリアルな薔薇からは冷たい冷気が放たれている。油断をしたらくしゃみが出てしまいそうだ。

「へっくしゅん」

 むずむずと鼻を擦っていたアイリスだが、くしゃみをしてしまったのは結局アイリスではなく、体調がすこぶる悪そうなルーカスだった。

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読んでいただきありがとうございます😊😊😊

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