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43 漂う匂い

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(………わたしに聞かないでよ。分かるわけないでしょう?お話ししてみないことには、わたしの野生の感もうまいこと働いてくれないし………)
(そうだな。期待しているぞ、山猿アイリス)
(………今、山猿と書いてアイリスって読んだ気がするのは気のせいかしら?)

 アイリスは満面の怒気を孕んだ微笑みを浮かべて、アキレスを睨みつけた。アキレスは感の無駄に鋭いアイリスに向けて心の中で盛大に溜め息を吐いた。そして、肩をすくめて穏やかに微笑んでみせた。

(さあ?どうだろうね?)

 アキレスの返しにイライラし始めたアイリスは、ふと足を止めた。不思議な匂いを感じた気がしたからだ。

「………アイリス?」
「………………アキレス、なんか匂わない?」
「匂い?」

 アキレスは不思議そうに辺りを見回しているアイリスに倣って周りを見回しながら、くんかくんかとあたりに匂いを嗅いでみた。だが、何も匂わない。

「んー、僕にはわからないや」
「そう?なんだかふわふわしたお日さまの匂いみたいなのがするんだけど………」
「………お日さま………………」

 アイリスの話に耳を傾けながら、アキレスは必死に頭を回転させていた。だからだろうか、アキレスは自分達に近づいてくる人間の気配を感じることができなかった。

「おはよう」
「!?」

 後ろから肩にぽんと手を置かれたアキレスは、ビクッと身体を震わせた。そして、後ろから自分の肩を叩いた人物を睨みつけた。が、なぜかチグハグな印象を抱いてしまう少年に、すぐに首を傾げる羽目となってしまった。
 太陽のようにきらきらと輝く自分と同じ色彩のストレートな金髪に、淡いエメラルド色の瞳。豪奢な服は体調を気遣ってか洗練されていて飾りが少なく、背中に一切の装飾がなされていない。

「………第2、王子?」

 アイリスがぽつりと溢した。パッと口元を抑えるが、漏れてしまった声が元に戻ることはない。第2王子はふんわりと穏やかな微笑みを浮かべた。だが、表情は読めない。

「そうだよ、アイリス。僕は君たちのお兄ちゃんのルーカスだよ。2日ぶりだね」
「…ああ!!」

 第2王子、ルーカスの言葉に、ずっと喉に魚の骨が引っかかったかのような違和感をずっと抱いていたアキレスは、何故自分が彼の顔に見覚えがあったのかをはっきりと思い出した。

「上着をかしてくれた謎のきぞくぼっちゃん!!」

*******************

読んでいただきありがとうございます😊😊😊

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感想 6

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