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38 アイリスの煽り
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アキレスの服の袖がぺらりと捲れ上がっていた。袖が捲れた先には傷だらけの腕がのぞいている。
アイリスはアキレスの前にばっと飛び出し、そして彼を庇うようにして国王を睨みつけた。
「………ーーーその傷は?」
「………………」
「言え」
冷たい凍りつくような眼差しに、アイリスはごくんと唾を飲んだ。だが、次瞬間にはにっこりと微笑んでみせた。大の大人ですら怯えて震え上がるような殺気、威圧感の前で、アイリスは余裕の笑みを浮かべて見せたのだ。
「ーーーやだ!!」
アイリスはふんわりと花が綻ぶような笑みを浮かべる。
「あなたにいう必要なんてないわ」
「ーーーー………………」
残酷な響きが出るように、アイリスは工夫した声をわざと出す。アキレスはあーあ、まあたやらかしたという表情をして額を抑えているが、自分が最初にやらかしてしまっている手前、文句を言うことは叶わない。
「ふふふっ、なあに?もんくがあるならわたしたちのことを消せばいいじゃない。国王さまなのでしょう?ぜったいおうせいをしいている国の、国王さまなのでしょう?」
アイリスは満面の微笑みでなおも国王を煽り続ける。アイリスは本当は国王に対して怒っていた。自分達を助けられる立場にありながら、決して自分達を助けることのなかった国王に対して怒っていたのだ。そして、恨んでいたのだ。父親が国王だったと知った瞬間から怒りが浮かんでいたが、アキレスの怪我を冷たい目で見下ろして眉間に皺を寄せるようなことをした今は、比べ物にならないくらいの怒りを抱いていた。
「国王陛下な、アイリス」
「どうでもいいと思うけれど………」
「そういうのはちゃんとしたほうがいいと思う」
「そう、………アキレスがそういうなら」
アイリスの怒りに少しだけでも水を差したいアキレスは、穏やかな表情で訂正を入れるが、怒りに飲まれてしまっているアイリスには全くもって意味がない。
ーーーぶわり、
アイリスの周りに赤い印象の薔薇の花びらのような魔力がひらひらと舞う。制御できない魔力が舞っていることにアイリスはなんとなく気がつきながらも、無視をして国王に視線を向ける。
「なあに?言いたいことがあるならちゃーんと言わなくちゃ」
アイリスはにんまりと意地の悪い笑みを浮かべ、大人が子供に言い聞かせるような口調で国王に話しかけた。
*******************
読んでいただきありがとうございます😊😊😊
アイリスはアキレスの前にばっと飛び出し、そして彼を庇うようにして国王を睨みつけた。
「………ーーーその傷は?」
「………………」
「言え」
冷たい凍りつくような眼差しに、アイリスはごくんと唾を飲んだ。だが、次瞬間にはにっこりと微笑んでみせた。大の大人ですら怯えて震え上がるような殺気、威圧感の前で、アイリスは余裕の笑みを浮かべて見せたのだ。
「ーーーやだ!!」
アイリスはふんわりと花が綻ぶような笑みを浮かべる。
「あなたにいう必要なんてないわ」
「ーーーー………………」
残酷な響きが出るように、アイリスは工夫した声をわざと出す。アキレスはあーあ、まあたやらかしたという表情をして額を抑えているが、自分が最初にやらかしてしまっている手前、文句を言うことは叶わない。
「ふふふっ、なあに?もんくがあるならわたしたちのことを消せばいいじゃない。国王さまなのでしょう?ぜったいおうせいをしいている国の、国王さまなのでしょう?」
アイリスは満面の微笑みでなおも国王を煽り続ける。アイリスは本当は国王に対して怒っていた。自分達を助けられる立場にありながら、決して自分達を助けることのなかった国王に対して怒っていたのだ。そして、恨んでいたのだ。父親が国王だったと知った瞬間から怒りが浮かんでいたが、アキレスの怪我を冷たい目で見下ろして眉間に皺を寄せるようなことをした今は、比べ物にならないくらいの怒りを抱いていた。
「国王陛下な、アイリス」
「どうでもいいと思うけれど………」
「そういうのはちゃんとしたほうがいいと思う」
「そう、………アキレスがそういうなら」
アイリスの怒りに少しだけでも水を差したいアキレスは、穏やかな表情で訂正を入れるが、怒りに飲まれてしまっているアイリスには全くもって意味がない。
ーーーぶわり、
アイリスの周りに赤い印象の薔薇の花びらのような魔力がひらひらと舞う。制御できない魔力が舞っていることにアイリスはなんとなく気がつきながらも、無視をして国王に視線を向ける。
「なあに?言いたいことがあるならちゃーんと言わなくちゃ」
アイリスはにんまりと意地の悪い笑みを浮かべ、大人が子供に言い聞かせるような口調で国王に話しかけた。
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読んでいただきありがとうございます😊😊😊
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