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21 男たちの会話

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を俺に渡せ」

 男は、顔色の悪くてぐったりとしている大事な双子の姉のアイリスのことを指差している。アキレスは男の言葉に、ひゅっと息を飲んだ。

「………お前、自分がなに言ってんのか分かってんのか?」
「はあー、………王城にお前らを王城に迎えるのは決定事項だ。お前ではは運べないだろう」
「………いい加減にしろ!!どれだけ僕らをもてあそべば気がすむんだ!!」
「………………」

 男は何も言わずに、ただ冷たい表情でアキレスのことを見下ろしている。アキレスはぎりっと歯を噛み締めた。そして、ぎろりと男を睨んだ。

「はあー、………そっちの要求はのむ。王城には行ってやる。ーーーだが、アイリスは僕がはこぶ。お前らには指1本触れさせない」
「分かった。好きにすればいい。行くぞ、エドワード」
「………よろしいのですか?」
「構わない。こちらがあちらに手を出せなかったのは事実だ。あのくらいの要求ならば構わないだろう。ーーーそれに、元より俺はアレらには『自由』を与えるつもりだった。王城にさえいれば何をしたって文句は言わん。傲慢に振る舞おうが、大量に金を使おうが、何も、な」
「そう、ですか………」

 アキレスはアイリスを背中におぶり直しながら、男たち、父上と異母兄の会話に耳を傾けた。父親を信用する気はさらさらないが、こちらに多少なりとも罪悪感を持っていることを知られたことは、多少のアドバンテージにはなるだろう。アキレスはいつもの冷静沈着さを取り戻し、父親と異母兄を観察した。
 2人の共通点は太陽のように眩しい金髪の色彩と、濃いエメラルドのようなきらきらした瞳、あとは全体的な雰囲気と顔立ちだ。身長は異母兄の方が圧倒的に低く、170センチメートルくらい。父親は185センチメートルくらいあるだろう。異母兄の身長は、ちょうど亡くなった母親と同じくらいだ。高身長に見えたあの女も、男と並べば多分小さく見えるのだろう。
 アキレスはぼーっと彼らを見つめた。存外彼も疲れ切っていたのかもしれない。アキレスはふらつく足取りでアイリスのことを運んだ。
 落とすまいと必死になって縋るように背負っていることには、誰1人として気がついていないだろう。
 そう、背負っている本人すらも気がついていないのだから。

*******************

読んでいただきありがとうございます😊😊😊

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