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6 嵐の過ぎた後
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「………怪我、だいじょうぶか?」
「うん、問題ないよ」
アイリスはすっと自分の手を持ち上げた。
そこには深く突き刺さったはずのハイエルフの水の攻撃魔法の痛々しい傷跡が、もうほとんどなかった。頬の傷跡についてはもう完璧に消え去ってしまっている。
「不思議だよね。もうこんなに治っちゃうなんて」
「そうだな。どんなおー怪我でもしばらくすれば治るなんて、おかしーよな」
「………おかしいけれど、助けられてるんだからもんく言っちゃダメだよ」
「………はあー、クソババァからの遺伝じゃないっていうのが唯一の救いだな」
双子は母親譲りの瞳を見合わせて苦笑した。青いサファイアのようなキラキラした瞳は、控えめに言ってもとても綺麗だ。水色の髪の碌でなしハイエルフからの遺伝でなかったならば、純粋に喜んでいただろう。
「じゃあ、げろげろ片付けよっか」
「そうだな………」
双子は一応残しておいたビリビリシーツの残りを引っ張って来て、ゲロゲロを片付けた。残念なことに、エルフの子供でありながら魔法の使い方を知らない双子は魔法が使えない。耳が長いからエルフにしか見えないが、2人はエルフのように自由自在に精霊とお話することはできないのだ。精霊自体は見たことはあるが、アキレスはものすごく嫌われている。アイリスはそこそこ好かれているが、アキレスを嫌うものは全て敵なので、相入れることは決してできない。
「うげー、におい残った」
「お水もってこなきゃね………」
「ねー、」
部屋の端にあった水甕から腐った水を取り出すために、双子はもう1つのビリビリ枕カバーを水に中にどぽんと漬け込んだ。
「うえー、水きたねー」
「………じょーすいきが欲しい………………」
文句を言いながらもしっかりと後片付けをした双子は、ぐちゃぐちゃぼお部屋を見て溜め息を吐いた。
「これって人間のお部屋?」
「いや?家畜じゃね?」
「家畜以下じゃないかな?」
「アイリス、………言ってて悲しくなるからやめよう」
「そうね」
双子はシーツも無くなり、引き裂かれたマットレスが剥き出しになったマットレスにぼふんとダイブした。手を繋いでぎゅっと抱き合うと、ぽかぽかした体温が心地良い。双子はそうっと眠りについた。
2人で『自由』になりたいと、理不尽極まりない神に深い深い願いを乞いながら。
*******************
読んでいただきありがとうございます😊😊😊
「うん、問題ないよ」
アイリスはすっと自分の手を持ち上げた。
そこには深く突き刺さったはずのハイエルフの水の攻撃魔法の痛々しい傷跡が、もうほとんどなかった。頬の傷跡についてはもう完璧に消え去ってしまっている。
「不思議だよね。もうこんなに治っちゃうなんて」
「そうだな。どんなおー怪我でもしばらくすれば治るなんて、おかしーよな」
「………おかしいけれど、助けられてるんだからもんく言っちゃダメだよ」
「………はあー、クソババァからの遺伝じゃないっていうのが唯一の救いだな」
双子は母親譲りの瞳を見合わせて苦笑した。青いサファイアのようなキラキラした瞳は、控えめに言ってもとても綺麗だ。水色の髪の碌でなしハイエルフからの遺伝でなかったならば、純粋に喜んでいただろう。
「じゃあ、げろげろ片付けよっか」
「そうだな………」
双子は一応残しておいたビリビリシーツの残りを引っ張って来て、ゲロゲロを片付けた。残念なことに、エルフの子供でありながら魔法の使い方を知らない双子は魔法が使えない。耳が長いからエルフにしか見えないが、2人はエルフのように自由自在に精霊とお話することはできないのだ。精霊自体は見たことはあるが、アキレスはものすごく嫌われている。アイリスはそこそこ好かれているが、アキレスを嫌うものは全て敵なので、相入れることは決してできない。
「うげー、におい残った」
「お水もってこなきゃね………」
「ねー、」
部屋の端にあった水甕から腐った水を取り出すために、双子はもう1つのビリビリ枕カバーを水に中にどぽんと漬け込んだ。
「うえー、水きたねー」
「………じょーすいきが欲しい………………」
文句を言いながらもしっかりと後片付けをした双子は、ぐちゃぐちゃぼお部屋を見て溜め息を吐いた。
「これって人間のお部屋?」
「いや?家畜じゃね?」
「家畜以下じゃないかな?」
「アイリス、………言ってて悲しくなるからやめよう」
「そうね」
双子はシーツも無くなり、引き裂かれたマットレスが剥き出しになったマットレスにぼふんとダイブした。手を繋いでぎゅっと抱き合うと、ぽかぽかした体温が心地良い。双子はそうっと眠りについた。
2人で『自由』になりたいと、理不尽極まりない神に深い深い願いを乞いながら。
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読んでいただきありがとうございます😊😊😊
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