《完》わたしの刺繍が必要？無能は要らないって追い出したのは貴方達でしょう？

38 アイーシャの朝

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　朝の8時、アイーシャはきらきらと輝く朝日の眩しさに目を覚ました。

「うぅっ、」
「おはようございます。アイーシャお嬢様、今日のご予定は朝食後から大奥様と奥様とのブロッサム商会でのお買い物です」
「はぅー、」

　ベラに寝台のカーテンを開けられたアイーシャは、寝っ転がったまま枕を抱いてこっくりこっくりと危なっかしく船を漕いだ。

「………………」
「ーーーアイーシャお嬢様はとても朝が苦手でいらっしゃる？」

　アイーシャは何も答えずにふにゃふにゃしていたが、精霊達がピカピカと光り輝いてお返事をしたのでベラはふうむと首を捻った。

「アイーシャお嬢様、お着替えをお手伝いただきますね」

　有言実行な有能侍女ベラは、アイーシャの荷物の中で最も飾りの多かった見栄えのするお洋服をアイーシャに着せた。それでも高位貴族のご令嬢としてはちょっと味気なかったが、真っ直ぐな長い黒髪を複雑に編み上げて、カリーナから送られた宝石を身に付けさせれば、気品溢れるとても美しい公爵令嬢に早変わりした。アイーシャのピンと伸びた真っ直ぐな背筋に、憂いを帯びた表情、まさに深窓のご令嬢であった。それが、朝のお寝ぼけでただ眠いだけであったとしても………。

「まさに原石ですね」

　有能な侍女は新たな主人が磨けば磨くほどに光る至宝の原石であることに歓喜し、無意識の内に拳をぎゅっと握り締めた。今日はお嬢様に似合う服に装飾品、靴などありとあらゆる物を買って貰おうと息巻いたのはベラは、早速今日の楽しいお買い物に思いを馳せた。

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