不思議の国のさくら〜永遠の親友〜

さくらは向かう

　懐かしくて幸せな思い出は、今ではとっても悲しいけれどはさくらだけのもの。記憶が失われているもかは、既視感に襲われながらも事実を突き止めることができなくて、結局はさくらに撫でられ続けた。幸せだけは感じられる感触に耽ることが、今は最も正しいと思った。

「『ロブスターのカドリール』は知っているかい？」

　学校でのウミガメの遊びが佳境に入ってきたのを雰囲気で感じ取りながら、彼の長い長いお話を右耳から左耳に流していたさくらは、唐突な問いかけに首を傾げた。そもそも、どのみち、さくらは『ロブスターのカドリール』なんてものを知らない。
　ウミガメとグリフォンは、首を傾げて黙ってしまったさくらに『ロブスターのカドリール』という4人組のダンスのやり方を説明し、節をつけて実演してみせる。
　正直に言って上手には見えないし、ウミガメは短い足のせいかふらふらすってんと転んでしまう。

「ヘンテコなダンス」
(もか………、それは思っていても言ってはいけないことよ………)

　さくらはあまりに率直すぎるもかの意見に、苦笑してやがてウミガメやグリフォン、もかと共に踊り始めた。リズム通りに踊るという行為は思っていたよりもずっとずっと楽しくて、さくらは時間も忘れて踊り続けた。

「これより、裁判を始める！！」

　時間も忘れてダンスを踊っていると、裁判の始まりを告げる呼び声が聞こえてきた。さくらはウミガメとグリフォンにこれからのことを目線で尋ねた。すると、グリフォンは唄を歌っているウミガメを放っておいて、さくらを阿鼻叫喚の裁判の場へ連れて行った。

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