上 下
29 / 36

さくら、逃げる

しおりを挟む
「さ、さくらぁ、もか、もう限界………」

 もかがつんつんとさくらの服の袖を引っ張って訴えてくるのを受け、さくらは周囲の障害物を泣け無しの体力でくぐり抜けて海岸近くの岩場に逃げ込んだ。

「ああああああああ♪」
「ぐあああああああ♪」

 そこにはウミガメとグリフォンというなんとも奇妙な先客が存在していた。そして、さくらともかは馬鹿馬鹿しいこと極まりない話と歌を長時間聞くことになった。
 げんなりと溜め息をついて、さくらはもかをぎゅっと抱きしめた。

「ふわわっ!く、くすぐったいよ、さくら」
「そーだねぇー」
「さくらって本当にもふもふが好きだね!!」
「そう?」

 言いながらもわしゃわしゃと撫でる手を休めないさくらは、もかに癒しを求める。

 ーーーさく、さくさくっ、

 唐突にウミガメとグリフォンの無意味な会話の間に砂を踏み締める音が響き始めて、さくらは音の方にもかを抱いたまま視線を向けた。やってきたのはこの場に全く似合わない豪奢なドレスを身につけた不可解なところばかりの公爵夫人だった。

「ご機嫌よう」

 にこりと模範のような微笑んだ公爵夫人はなぜか上機嫌で、さくらは首を傾げる。

「あの、何をしに………」
「この世に意味のない行動なんてたくさん存在しているわ。だから、その1つ1つに意味を見出してはいけないの」
「は、はあ?じゃあ、何故ここに………」
「わたくしが来たかったからよ。人の元を訪れること、それはつまりその人に用事があって行動しているの」
(………さっきと言ってたことが噛み合っていないような………?)

 さくらは首を傾げて苦笑いを浮かべたのだった。

******************

読んでいただきありがとうございます😊😊😊

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

僕とシロ

マネキネコ
ファンタジー
【完結済】僕とシロの異世界物語。 ボクはシロ。この世界の女神に誘われてフェンリルへと転生した犬のシロ。前回、ボクはやり遂げた。ご主人様を最後まで守り抜いたんだ。「ありがとう シロ。楽しかったよ。またどこかで……」ご主人様はそう言って旅立たっていかれた。その後はあっちこっちと旅して回ったけど、人と交われば恐れられたり うまく利用されたりと、もうコリゴリだった。そんなある日、聞こえてきたんだ、懐かしい感覚だった。ああ、ドキドキが止まらない。ワクワクしてどうにかなっちゃう。ホントにご主人様なの。『――シロおいで!』うん、待ってて今いくから…… ……異世界で再び出会った僕とシロ。楽しい冒険の始まりである………

異世界子供会:呪われたお母さんを助ける!

克全
児童書・童話
常に生死と隣り合わせの危険魔境内にある貧しい村に住む少年は、村人を助けるために邪神の呪いを受けた母親を助けるために戦う。村の子供会で共に学び育った同級生と一緒にお母さん助けるための冒険をする。

とじこめラビリンス

トキワオレンジ
児童書・童話
【東宝×アルファポリス第10回絵本・児童書大賞 優秀賞受賞】 太郎、麻衣子、章純、希未の仲良し4人組。 いつものように公園で遊んでいたら、飼い犬のロロが逃げてしまった。 ロロが迷い込んだのは、使われなくなった古い美術館の建物。ロロを追って、半開きの搬入口から侵入したら、シャッターが締まり閉じ込められてしまった。 ここから外に出るためには、ゲームをクリアしなければならない――

【完結】だからウサギは恋をした

東 里胡
児童書・童話
【第2回きずな児童書大賞応募作品】鈴城学園中等部生徒会書記となった一年生の卯依(うい)は、元気印のツインテールが特徴の通称「うさぎちゃん」 入学式の日、生徒会長・相原 愁(あいはら しゅう)に恋をしてから毎日のように「好きです」とアタックしている彼女は「会長大好きうさぎちゃん」として全校生徒に認識されていた。 困惑し塩対応をする会長だったが、うさぎの悲しい過去を知る。 自分の過去と向き合うことになったうさぎを会長が後押ししてくれるが、こんがらがった恋模様が二人を遠ざけて――。 ※これは純度100パーセントなラブコメであり、決してふざけてはおりません!(多分)

【完結】アシュリンと魔法の絵本

秋月一花
児童書・童話
 田舎でくらしていたアシュリンは、家の掃除の手伝いをしている最中、なにかに呼ばれた気がして、使い魔の黒猫ノワールと一緒に地下へ向かう。  地下にはいろいろなものが置いてあり、アシュリンのもとにビュンっとなにかが飛んできた。  ぶつかることはなく、おそるおそる目を開けるとそこには本がぷかぷかと浮いていた。 「ほ、本がかってにうごいてるー!」 『ああ、やっと私のご主人さまにあえた! さぁあぁ、私とともに旅立とうではありませんか!』  と、アシュリンを旅に誘う。  どういうこと? とノワールに聞くと「説明するから、家族のもとにいこうか」と彼女をリビングにつれていった。  魔法の絵本を手に入れたアシュリンは、フォーサイス家の掟で旅立つことに。  アシュリンの夢と希望の冒険が、いま始まる! ※ほのぼの~ほんわかしたファンタジーです。 ※この小説は7万字完結予定の中編です。 ※表紙はあさぎ かな先生にいただいたファンアートです。

運よく生まれ変われたので、今度は思いっきり身体を動かします!

克全
児童書・童話
「第1回きずな児童書大賞」重度の心臓病のため、生まれてからずっと病院のベッドから動けなかった少年が12歳で亡くなりました。両親と両祖父母は毎日のように妾(氏神)に奇跡を願いましたが、叶えてあげられませんでした。神々の定めで、現世では奇跡を起こせなかったのです。ですが、記憶を残したまま転生させる事はできました。ほんの少しだけですが、運動が苦にならない健康な身体と神与スキルをおまけに付けてあげました。(氏神談)

家庭菜園物語

コンビニ
ファンタジー
お人好しで動物好きな最上 悠(さいじょう ゆう)は肉親であった祖父が亡くなり、最後の家族であり姉のような存在でもある黒猫の杏(あんず)も静かに息を引き取ろうとする中で、助けたいなら異世界に来てくれないかと、少し残念な神様に提案される。 その転移先で秋田犬の大福を助けたことで、能力を失いそのままスローライフをおくることとなってしまう。 異世界で新しい家族や友人を作り、本人としてはほのぼのと家庭菜園を営んでいるが、小さな畑が世界には大きな影響を与えることになっていく。

妖精さん達と暮らそう 改訂版

東郷 珠
児童書・童話
私にしか見えない妖精さん。 色んな妖精さんが、女の子を助けます。 女の子は、妖精さんと毎日楽しく生活します。 妖精さんと暮らす女の子の日常。 温かく優しいひと時を描く、ほのぼのストーリーをお楽しみ下さい。

処理中です...