不思議の国のさくら〜永遠の親友〜

さくらは巻き込まれる

「！？」

　先程の楽観的思考はどこにいったのか、さくらはあっという間に途方に暮れてしまった。なぜなら、そのクロッケー大会では、槌の代わりにフラミンゴ、ボールの代わりにハリネズミ、ゲートの代わりに生きたトランプを使っていたのだ。当然のことだが、このゲームはすぐに大混乱に陥った。

「わぅっ！！」
「もか！」

　もかの上に覆いかぶさって、さくらは縦横無尽に走るフラミンゴの強力な脚力やころころと危機から逃げるかの如く転がり回るハリネズミの鋭い針、宙を舞うさくらの身体よりもずっとずっと大きなトランプからもかを守った。

(なにが………)

　あまりにひどい惨状に、さくらの思考は考えることを放置してしまう。そこに、特徴的な笑みを浮かべたチェシャ猫が空中に頭だけ出して出現した。

「みゃーみゃっみゃー！やーいやーい！暴君女王！！」

　変んなことを叫んだチェシャ猫に、もちろん女王は顔を真っ赤にして怒った。そして、周囲の下僕たちに飼い主たる公爵夫人を呼び出すように命じた。しかし、女王が飼い主の公爵夫人を呼び出すころには、チェシャ猫は再び姿を消してしまっていた。色々無礼なことを叫んでおいて、自分が怒られる前に逃げ出すとは要領の良すぎる猫だ。女王の不機嫌に巻き込まれることになるであろう面子は深々と溜め息をついた。

「ーーーチェシャ猫がいたなんて驚きね」

　そして、混沌たる場所に優雅に登場した公爵夫人はのびのびとした口調で言った。
　さくらは正直に言ってこの世界には常識人というものがいないのかと叫びたくなってしまった。

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