もふもふ好きのお姫様

蝶の間

　アルノルトお兄様が去った後、2時間ほどぶっ続けで執務をした私はふと思いついて、往生の奥深くにある部屋へと足を進め始めました。
　幾度にも張られた魔法での拒絶という名の規制線と迷路ぬなるように作られた複雑な構造。その奥に進むに連れて、空気は重く、吐き気を催すものへと変化していきます。

　ーーーカツンっ、

　ヒールの踵を鳴らして止まった私の視線の先には、普通に王城の空間と何1つ変わらない美しい扉があって、壁があります。違うのはやっぱり空気だけで、そのことが私の中で苦しみに変化していきます。

　ーーーぎいっ、

　豪奢な扉を開けると、ぶわっと紫色の蝶が溢れ出してきて、私は顔を覆ってぐっと部屋から顔を背けました。溢れ出ている紫色の美しい蝶は、部屋から2メートル離れるとぶわっと炎に燃やされたかのようにチリチリになって消えていきます。この現象は、この“呪い”を外に出さないために魔法をかけたアインスお兄様によるものです。何度も何度も繰り返してかけた魔法は、もう強固な呪いにもびくともしないくらいに強固なものになっていて、私はその美しい魔法を見つめながら、押してくる蝶を避けて室内へと入りました。
　私が室内に入った途端にしまった扉を横目に、スッと真っ暗な世界に視線を向けます。

　ーーーぼぼぼっ、

「………蝋燭が減っていますわね。」

　数百の蝋燭が一斉に道を開くように彼女の元に、私を導いていく光景を見つめながら、私は魔法で蝋燭を追加しました。キャンドルにはお花の匂いをつけることも忘れません。

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