もふもふ好きのお姫様

第1王子とその婚約者

▫︎◇▫︎

　ーーーコンコンコン、

「どうぞ。」

　目を覚まして直ぐなことを悟られないようにすっと瞳を閉じ気味にして返事をした私は、ぐっと椅子に座ったまま背筋を伸ばしました。数分しか眠っていなかったはずなのですが、身体はこきこきと小気味の良い音を奏でてしまいます。

「ようっ、シャル。豚さん捕縛おめでとう。」

　きらきらと窓から差す陽光に金髪を照らされたアルノルトお兄様は、にかっといい感じの笑みを浮かべて、私が数刻前に捉えて衛兵に引き渡した豚さんをポンっと床に投げました。

「んんー！？んんんんんんんー！！」

「おぉー、威勢の良い状態で捕まえられたようで何よりだ。こんなに威勢の良い豚は久方ぶりに見た。」

　豚さんが何か叫び声をあげますが、残念ながら魔法の猿轡さるぐつわのせいで何を言っているのかさっぱりわかりません。アルノルトお兄様もよく分からないのか、笑顔で聞き流しています。

「もう、アル様。そんなことを言っては、豚さんに失礼よ。もっといい感じなニックネームをつけなくちゃ。」

「はははっ、それもそうか。これ如きに豚の名前を使うのは失礼だな。」

「でしょう？」

　漆黒の艶やかなロングヘアを肩あたりでお団子にし、黒曜石色の瞳を楽しげに揺らしたのは、私の幼馴染のクロエーラです。
　彼女は今現在アルノルトお兄様との婚姻に向けて王城にて妃教育を受けています。その関係で、妃教育を私の画策によってすでに終えていたクロエーラは、ここ最近は常にアルノルトお兄様と共に行動をしております。よって、今日も彼女は私にお話を聞きにきたアルノルトお兄様についてきたようです。

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